テオ・エルナンデスがミランにもたらしたもの ~そのプレースタイルと改善点~
プレシーズンマッチでの負傷によりシーズン開始に出遅れたものの、4節インテル戦に途中出場してデビューを果たすと、その後は全試合にフル出場中。
現在はピオリの指揮下にて、ミランの戦術上のキーマンになっています。
今回は、知っている方も多いとは思われますが、今一度彼のピッチ上におけるプレースタイルを振り返っていこうかなと。
持ち前のスピードとフィジカルとスタミナを活かしてどんどん前へと走って縦パスを引き出しつつ、隙あらばドリブルを仕掛けて突破を図ります。
14 - No defender completed more dribbling than Theo Hernandez (14) in the Serie A 2019/20. Propeller. pic.twitter.com/Qw02sT34Ga
— OptaPaolo (@OptaPaolo) 2019年11月5日
1カ月ほど前のデータになりますが、こちらによるとテオのドリブル成功数は14回。これは今季のセリエAディフェンダーの中で最多の数字です。
こうしたスタイルは縦への意識が強いピオリのサッカーとの親和性が非常に高く、彼の動きを起点にして一気に速攻を仕掛ける場面も目立ちますね。
そして、一端ポゼッションを確立して相手を押し込んだ後は、ウインガーのような形で左サイドの最前線にポジショニングします。
こうしたテオの動きにより、最大の恩恵を受けているのがチャルハノールです。
昨季のガットゥーゾ監督時代に引き続き、ピオリの下でも左ウイングで起用されている彼ですが、攻撃時はほぼトップ下といって差し支えないポジショニングをします。

――前節のボローニャ戦におけるワンシーン(『Dazn』より)。テオ(黄)が左サイドの前線に張り、チャルハノール(赤)が中央にポジショニング
彼は動きながらパスを受けるのが得意な選手ですが、一方でキープやドリブルは得意ではないため、サイドに固定されても全く活きるタイプではありません。ですので、純粋なウインガーとしてのプレーはできないと。
そういうわけで、昨季も基本的には左サイドを始点としながらも、中央や右サイドに頻繁に顔を出していくプレーをしていたわけですが、その際には「誰が左サイドを使うの?」という問題点が浮上。
当時のミランの左SBはロドリゲスでしたが、彼は積極的にオーバーラップを仕掛けられるタイプではなく、どちらかというと後方支援型のため、左サイドの幅を取れずにパスが詰まる状況が頻発しました(冬にパケタが加入し、彼とチャルハノールの流動的なポジションチェンジで何とかしていた時期もありましたが、根本的な解決とはならず)。
そこでテオの話に戻りますが、今季は彼が先述の通りウインガーのような振る舞いが出来るため、攻撃時のチャルハノールがサイドを離れても昨季のような問題点が露呈することはなくなりました。
それに、テオが左サイド高い位置に張ってくれると、逆サイドのスソが得意とするサイドチェンジが活きるというメリットもありますね。
そして、高い位置にポジショニングするということは得点への関与が求められるわけですが、テオは地味に得点力もあるというのが凄い。
彼はここまで4得点を挙げているわけですが、これはピョンテクと並んでチームトップの数字です(ちなみにピョンテクの4ゴールの内3つはPK)。
📊 @MilanNewsit : Theo Hernandez has already scored four goals. Before him, only Kakhaber Kaladze, who scored four goals in the 2001/02 season. pic.twitter.com/9PLLR4GICd
— TeamMilanAC (@TeamMilanAC) 2019年12月10日
ちなみにこちらのデータによると、セリエAでのデビューシーズンにおいて、ミランのDFが4ゴールを決めたのは01-02シーズンのカラーゼ以来とのことです。
19-20シーズンはまだ半分も消化していない状況ですし、テオがこの記録を破るのはほぼ間違いないですね。
さて。以上のように攻撃面で欠かせない存在となっているテオですが、一方で守備面はどうなのか。
この点に関し、ミランのスーパーレジェンドであるアレッサンドロ・コスタクルタ氏が先日のボローニャ戦後に以下のように語りました。
「攻撃の局面において、テオ・エルナンデスは重要な存在となっている。しかし、守備の局面に関しては改善の余地があるね。それさえ改善したら、彼は並外れた選手になれるだろう。」
先日のボローニャ戦にて、テオは見事なシュートでチームの2点目を挙げる活躍を見せてくれたわけですが、一方で1オウンゴール・1PK献上と守備面で悪目立ちしてしまいました。
この試合に限らず、ライン作りやネガティブトランジション時等の判断(すぐに自陣に戻るか、プレスで攻撃を遅らせるかetc…)に関してはややミスが目立ちますし、コスタクルタの言うように守備面は明確な課題だと思います。
ただし、先述の通りウインガーのように振る舞うことも求められるテオの場合、物理的に守備に戻るのが難しいときがありますし、チーム全体で彼の守備面の負担を軽減させる必要はあるとも思いますね(今のところ、ロマニョーリやベナセルがテオの上がった裏のスペースをカバーする動きは見せていますが)。
個人的には、3バックを採用してテオをWBで起用する形がベストかなと思います。これなら逆サイドのWBにコンティも起用できますしね。
最後に。個人的に今夏の新加入選手の中ではベナセル・レオンに次ぐ期待度だったテオなのですが、現在はチームで1・2を争うハイパフォーマンスを披露してくれています。
もちろん、彼の攻撃面の魅力を存分に引き出しているピオリも素晴らしいわけですが、それもテオの潜在能力あってのこと。
まだ22歳と若く、伸びしろは十分にあると思うので、これからが本当に楽しみな選手です。
「ミランでCLタイトルを勝ち獲ること」を自身の夢だと公言するテオのような選手が中心となり、ミランを再びトップクラブへと導いて欲しいですね!
最後まで読んでいただきありがとうございました。