ピオリ・ミラン初陣!ミラン対レッチェ 【セリエA第8節マッチレポート】
スタメン

ミランのスタートポジションは4-3-3.ただし、後述しますが攻撃時は様変わりします。
対するレッチェは予想通り4-3-1-2。
○ピオリ・ミランの戦術的動き方について
新生ピオリ・ミランが見違えるプレーを見せます。
攻撃に関してはテンポ良くスピーディにパスを回しつつ、流動的な動きとフリーランでスペースを作りチャンスを作っていきます。
具体的にその動き方を箇条書きしていくと、まず
・左ウィングのチャルハノールが攻撃時は積極的に中央にポジショニングする
チャルハノールを左ウィングで起用するのはガットゥーゾ監督時代と同じですが、違うのはその動き方。
以前はサイドに張り、そこから断続的に中央に入るというのが基本的なパターンでしたが、今回は初っ端から中央寄りに移動し、そこでボールを受けるパターンです。
以前の場合だと、チャルハノールは独力での突破力は低く、キープ力も高いわけではないためボールがサイドで詰まることが多かったですし、中央に移動しても空けたサイドのスペースを使う選手がおらずバランスが悪かったんですよね(パケタが加入して少しだけ改善しましたが、付け焼刃感は否めず)。
しかし今回のような動きと戦術(ワンタッチ・ツータッチでテンポ良くボールを離す)であれば持ち味のフリーラン(質・量ともに非常に良い)が存分に発揮されますし、選手の距離間が短くボールも離しやすいため彼のパス判断の良さも活きます。
で、かつての欠点であったサイドの問題については
・左SBのテオ・エルナンデスが圧倒的な推進力で前線に駆け上がり、1トップのレオンも時折流れつつサイドを使う
以前同ポジションを務めていたロドリゲスとは違い、テオはサイドをガンガン駆け上がりますし、ドリブルでの推進力もあるため一人でもボールを運べます。
そして1トップのレオンも頻繁にサイドに流れて、そこから仕掛けることのできる選手です。
というわけで、チャルハノールが空けたスペースは彼らが使えるため、以前のサイドの問題も解消されると。

――試合開始直後の得点チャンスのシーン。チャルハノール(赤)が中央に流れ、テオ(黄)がサイドを駆け上がる。そこで1トップのレオン(紫)が左に流れてボールを受け、ケシエ(青)、チャルハノールと細かくパスを繋いでゴール前で決定機を迎えた。
また、一方で右サイドに関しては
・スソはサイドに張り、右SBのコンティの上りは比較的控えめ
パスの判断が悪いスソを中央寄りに置いても無駄に流れが止まるだけなので、サイドに張らせ、例の得意な形を作ることに専念させる一方で、コンティは比較的下がり目に位置してボールを前線に供給しつつ、被カウンターに備えます(コンティが上がる時はスソが内に移動)。
コンティの役割は明らかにミスマッチですが、今回はそのポジションに収まるべきカラブリアが出場停止のため致し方ないかなと。
続いて中盤についてですが
・パケタが積極的にエリア近辺にポジショニングする一方で、ケシエとビリアは下がり目に位置してトランジションに備える
以前は、攻撃センスにかなり欠けるケシエが考えなしにすぐに前線に駆け上がり、中央付近に駐在するという訳の分からない動きが頻発していたわけですが、今回は左サイド中央寄りでパスを散らしつつ、テオが駆け上がることで生じる裏のスペースをカバーする動きが良く見られました。
一方で、パケタがエリア近辺に積極的に顔を出し、得点に絡もうとする動きを見せます。
この役割であれば彼の攻撃センスをより活かせますからね。それに相性の良さ気なチャルハノールが近い位置にポジショニングするので絡みやすいですしね。

――ケシエ(黄)とパケタ(赤)のポジショニングの違い
最後に。コチラがこの試合における各選手の平均ポジションです(『WhoScored』より。右攻め。数字は背番号)。

上記で説明した各選手の動きが良く反映されている図かなと。無理矢理フォーメーション表記するなら「3-2-4-1(3-2-2-3)」といったところでしょうか。
このように、ピオリは選手の特性に合わせて役割や(実質的な)配置を課しますし、メンバーの組み合わせに関しても上手いので好きな監督ですね。
この試合に関してはほぼ完璧だと思います。(コンティとスソはアレでしたが、今回は実質的に控えがいなかったので)
○試合展開について
おおむね書きたいことは書いたので、後は試合展開についてサラッと書いていこうかなと。
まずは前半。序盤からミランは積極的な姿勢でチャンスを量産していきます。
レッチェも流石に面食らったのではないかと。前節までと比べると縦への速さが全然違いますしね(笑)
ボールを奪った際、可能ならばすぐに縦へボールを供給し、ワンタッチ・ツータッチでパスを繋いでエリア付近へとボールを運んでいきます。
ポゼッション時は、サイドで密集し、短い距離間を保ちながら速いテンポで細かく崩していこうとします。
守備に関しても切り替えを速くし、すぐにボールを奪い返そうとする姿勢を見せます。
ただし、この点に関しては組織的にまだまだかなと。
一方のレッチェの攻撃は、2トップがサイドに開いてボールを受け、ボールを運んでいく形と、素早い前線へのロングボールがメイン。
上手くいきそうな場面は多々ありましたが、ミランの圧力もあってかパスミスが目立ちました。
また、守備に関してはコンパクトな4-3ブロックに加え、前線の3人も積極的に守備に下がって守る。
こちらも、中盤3枚のサイドへのスライドが間に合わず、主にテオにゴリゴリとサイドを突破され手を焼くシーンが目立ちました。
ミランペースで試合が進む中、20分、ビリアのロングパスに抜け出したチャルハノールが見事なシュートでネットを揺らしました。
縦への意識の高さが生んだゴールといえますね。
前半はその後もミランペースで試合が進みましたが、追加点を奪えず前半終了。
さて後半。後半もミランペースでしたが追加点を奪えずにいると、62分、コンティがハンドして取られたPKの流れからババカルに決められ同点。
試合開始からフルスロットルで臨み、徐々にペースが落ちてきた時間帯での失点。避けるべき失点ですし、これは痛恨です。
67分、運動量が減ってきたレオンとパケタに代え、それぞれピョンテクとクルニッチを投入。
致し方ない交代ではあるのですが、これまではレオンが流れるなどして確保していた左サイドがどうなるかなと。
そんなことを考えていたら80分、ケシエに代えてレビッチ。しっかりと左ウィンガーを入れてくれました。
すると直後の81分、クルニッチとのワンツーで抜け出したチャルハノールがピョンテクにパス。そのボールをピョンテクが冷静に流し込んでミランが逆転に成功。
しかし、アディショナルの92分にカルデローニに見事なシュートを決められ万事休す。試合は2-2で終了。
○雑感
チーム全体(の特に攻撃のパフォーマンス)に関しては前回までと比べると素晴らしいものがありましたし、チャルハノール・テオの躍動、ピョンテクのゴールなど選手個々で見てもポジティブな点は多数ありました。
しかし、何より重要視されていた「勝利」という結果を得ることができなかったというのは痛恨ですし、何度も逃した決定機を決めきれていれば…もしくはつまらないミスで失点しなければ…と悔いの残る試合となってしまいました。
ここから11月末までローマ、SPAL、ラツィオ、ユヴェントス、ナポリという地獄の日程ですし、精神的な意味でも何とか勝ち点3が欲しかったところなのですが…。
次節の相手となるローマも、現在さほど調子が良いわけではありませんし怪我人の多さにも苦しんでいますが、今日のようなミランの守備ではズタズタにやられかねませんからね。
まぁしかし、初陣でここまでピオリのチームらしさというのが出たのは良い意味で想定外でしたし、指針は決して間違ってはいないと思うので、選手・監督にはこの調子で一丸となって日々の練習に取り組んでいって欲しいと思います。
注目は次節以降のメンバーですね。コンティはほぼ間違いなく外れるとして、スソはどうなるか。またレオンとピョンテクの1トップ争いはどうなるかなど、色々と楽しみです。
幸先の悪いスタートとなってしまいましたが、個人的には今後も期待して見ていきたいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。