ミラン新監督、ピオリの戦術的特徴と実績について

12 Comments
カカニスタ22
はじめに

ジャンパオロの後任として、ミランの新監督に就任したステファノ・ピオリ。



この後任人事には否定的なミラニスタの方が多くいる一方で、中には「そもそもどんな監督なのかよくわからない」という人も少なくないのではないかと。

そこで今回は、ピオリがどのような監督かについて、主に実績面と戦術面の双方から見ていこうと思います。



実績

まずは彼の指導歴を、2010年から振り返っていこうかなと(指導者としてのトップチームデビューは2003年から)

キエーヴォ 2010年6月~2011年6月
パレルモ 2011年6月~2011年8月
ボローニャ 2011年10月~2014年1月
ラツィオ 2014年1月~2016年4月
インテル 2016年11月~2017年5月
フィオレンティーナ 2017年6月~2019年4月




様々なセリエAのクラブを率いています。
ちなみに僕が初めて彼という人物をはっきりと認識したのは2011-12シーズンのボローニャ時代からです。

こうした指導歴の中で特筆すべき実績といえば、何といっても14-15シーズンにラツィオを3位に導いてCL(プレーオフ)権を獲得した点ですね。なお、このシーズンはコッパ・イタリアでも準優勝を果たしています。
強豪との相性はあまり良くありませんでしたが、攻守にアグレッシブなサッカーを展開して見事なシーズンを過ごしました。

後はデ・ブール監督の後任として途中就任したインテルでも見事にチームを立て直し、7連勝を達成するなどしました(終盤に大失速して解任されてしまったのですが…。)



戦術

続いてピオリの戦術的特徴についてですが、そもそも彼は率いる選手の特性に応じて柔軟に組織を作り上げますし、フォーメーション変更もざらに行います。
なので一概に言うことはできないのですが、基本的にどのチームでも共通する特徴としては「ハイラインハイプレス」、「縦への速い攻撃」、「サイド突破メイン」、「エリア内に多くの人数をかける」、「状況に応じたシステム変更」などが挙げられます。

1つずつ見ていきますが、彼は何よりも攻守においてアグレッシブな姿勢を重要視するため、まず守備はアグレッシブに前からプレスをかけていくのが基本で、マンツーマン気味に徹底的に相手を追い込みます。

で、上手くボールを奪えたときは素早くショートパスで繋いで流動的なショートカウンターで沈めるという形が理想。

というわけで、まず何よりも選手たちに運動量が要求されます。

続いて、攻撃(ポゼッション)時についてもスピードを重視した攻めは変わりませんし、相手がハイプレスで来るなら(狙いを付けた)ロングボールでのプレス回避も厭いません。

仮に相手にボールが渡っても、前述の通りハイプレスで奪いにかかって二次攻撃に繋げようということなのでしょう。それに自陣深くで奪われるリスクを背負うよりもいいだろ的な感じですね。


ポゼッションで崩す場合は、基本的にはサイドに3、4人が集まり、三角形ないしダイヤモンドの形を形成して素早くパスを繋ぎ、ボールを持ち運んでいくというのが一つのパターン。
例えばフィオレンティーナ時代では、攻撃時には3-4-3に変更して、サイドのCBと片方のボランチ、加えてWBとウイングの4人がサイドでダイヤモンドの形を作ってボールを素早く回す、みたいな感じですね。

後は裏抜けのパスとか、中盤がサイドに流れてパスを引き出すとか、試合状況や対戦相手のシステムに応じて様々です、ただ、「縦に速く」というのは基本でしょうね。


で、相手を上手く押し込んだ後は、中盤の選手や逆サイドのWGも積極的にエリア内ないしバイタルエリアに侵入し、クロスに備える形が良く見られます。

多分これもピオリのこだわりであって、「人数をエリア内外に多く割いて得点の確率を上げよう」というシンプルながら合理的な考えに基づくものなのでしょう。

インテル、フィオレンティーナ時代もこんな感じでしたが、特にこの形が顕著だったのがラツィオ(3位を獲った14ー15シーズン)時代かなと。
中盤のマウリやパローロ、サイドのカンドレーバやF・アンデルソンがゴールを量産したわけですが(ざっと調べたところ、パローロ、カンドレーバ、アンデルソンはリーグ戦それぞれ10ゴールで、マウリは9ゴール。ちなみにトップはクローゼの13ゴール)、それも彼らの能力以上に上記の戦術的要求に依る所が大きかったでしょうしね。


また、ピオリは試合毎や試合中に頻繁に選手の配置やシステムを変える人物でもあります。
対戦相手のシステム・戦術や試合展開によって柔軟に自チームのシステムを変える点は如何にも戦術家という感じですし、僕が個人的に彼を気に入っているのもこの点が大きいです(ボローニャ時代よりも柔軟性はなくなった印象ですし、結構自滅したりもするのですが。笑)。


最後に、ピオリとジャンパオロの一番の違いの一つとして「選手に与える裁量の余地」が挙げられるかなと。

ジャンパオロは選手に厳格なポジショニングやシンプルなプレーを要求するため、ミランでは早々にパケタと確執を生じさせるなどしていました。

その点ピオリのチームはドリブルも結構使いますし、ポジションも流動的。特に、攻撃の中心に据えた選手にはかなりの自由を与えるので(ヴィオラではキエーザやベナッシ、ラツィオではマウリ、ボローニャではクリスタルドなど)、ジャンパオロの時よりも選手たちは遥かに息苦しさを感じることなくプレーできると思います。



弱点

最後のメイントピックとして、僕の思うピオリの弱点について。
まず彼の指導歴を見てみると、各クラブでの就任期間の短さが目立ちます。
これまでも大抵のクラブで2シーズンは持たず、シーズン終盤に解任(ないし辞任)されていますし、その理由のほとんどは成績不振によるものです。

つまり、継続性に課題があるのかなと。

その理由として考えられるのは、やはり何といっても戦術に起因するものかなと。

例えばピオリのチームは先述の通り、基本的にマンツーマン志向の強いハイラインハイプレスのチームですから運動量が求められますし、誰かが守備を怠ればそこを起点に一気に攻め込まれます。

ですからシーズン終盤になると選手たちのコンディションや集中力が低下し、上記のような守備戦術が上手く機能しなくなるのかなと(彼がフィオレンティーナを率いていた時の最後のミラン戦も、プレスが機能していなくて大分苦戦していましたしね。まぁその相手にミランは負けたのですが。笑)。

また、攻撃時は前線に人数をかけますから、上記のような状態に陥るとカウンターにも非常に弱くなります。

更に、ポジジョンも比較的流動的なので、選手たちの動きが少なくなるとバラバラで無意味に無秩序な陣形となって攻撃が全く機能しなくなります。


つまりまとめると、終盤にコンディションが(場合によってはモチベーションも)低下し運動量が少なくなることによって戦術的に攻守両方が機能しなくなり、結果が出なくなって解任の憂き目に遭う傾向が強いのかなと。



まぁしかし、これまでの解任に関しては同情すべき点もいくらかあったとは思うんですけどね。

例えばボローニャ時代は怪我人が続出した上、そもそも戦力的にも厳しい状況でしたし(チームはピオリを解任して新監督を据えるも、その年あえなく降格)、ラツィオ時代2年目は守備の要であったデ・フライが長期離脱で1シーズンを棒に振りましたし、フィオレンティーナ時代は就任したシーズンに主力の大量放出があった中、若手を成長させつつ上手くやり繰りしていましたし、戦力相応の結果は残していたと思いますしね。



おわりに

僕は結構ピオリが好きなので贔屓目に見ている部分もありますが、少なくとも「結果を出す」という点においては遥かにジャンパオロよりも優秀だと思うので、今回の監督交代自体は決して間違っていなかったかなと。

長期的に任せるには不安はかなりありますが、それでもすぐにチームを上昇させる術を持っている監督なので、現状のチームが目下求める監督像とも一致しますしね。


一番の問題は、間近に控えるレッチェ、ローマ、SPAL、ラツィオ、ユヴェントス、ナポリという強豪揃いの10~11月を上手く乗り切れるかという点です

ここを良い成績で終えられればチームの雰囲気はグッと向上しますし、最高の精神状態で日々のトレーニングや今後の試合に臨むことができるでしょうが、真逆の成績・結果になる可能性も十分に考えられますからね。
新監督就任早々に連敗街道まっしぐらなんて状況になったら目も当てられません。


そして、「シーズン終盤までコンディションが維持できるか」、それと「メイン戦術が機能しなくなった際にプランBを用意できているか」という点も重要です。
途中就任なので難しい状況ではありますが、これまでもその経験はありますし、なんとかそうした経験をフル活用して頑張って欲しい所です。

まずは次節のレッチェ戦。新生ピオリ・ミランのスタートに注目です。


Forza Pioli!!


長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

スポンサーリンク

関連記事

スポンサーリンク

Comments 12

There are no comments yet.
ミラネスタ  
Pioliミラン

ありがとうございます。とても分かりやすい解説で、楽しみに次の試合を待っていられます!
個人的には、キープ力があって、縦へ楔のパスが出せるベナセルは是非スタメンで使ってほしいです。パケタと良いコンビになりそうなんですが。
あと、レオンをCFで、LWGにレビッチ、RWGコンティ入れてガツガツに攻めるところも見てみたいですし・・・ガッビアなんかもプレシーズンマッチで落ち着いてプレーしていましたし、アンカーで・・・(すみません、完全に素人考えの戦術無視ですね。これはゲームの世界ですかね)
とにかく、カカニスタさんの記事読むと不安よりもワクワク感のほうが強くなります。
無理なさらず、また楽しい話題を待っています。
FORZA MILAN !

CL8  

シーズン中の途中解任はあまり好ましくないですが、アンチェロッティの時みたく好転するパターンもあるので、早め早めの監督交代が功を奏すと良いですね!
ジャンパオロが監督をしていても主に選手選考で試合を観たいと思いませんでしたし、良かったかもしれないです。報道によるとベナセルにも酷評されてたようですし…
433で攻守に運動量が要求されるなら、右ウイングのあのお方も起用されないでしょうから、レビッチとレオンの快速ウイングで観てみたいです!

  • 2019/10/11 (Fri) 21:50
  • REPLY
ぴょぴょぴょん  

多少なり攻撃的になるのでピョンテクの復活やレオンレビッチの本領発揮などがないとただ失点が増えるだけになるかもしれないのが恐いところですね。
堅陣をひくタイプではないのでこっからのボスラッシュ的日程での就任はかわいそうな気もしますね。
流石に我らがフロントでもローマラツィオユベントスナポリに全敗したとしても解任とかはないとは思いたいですが、あまり自信を持って言えません(笑)

体制が変わっても相変わらず選手起用への口出しをしてるみたいな噂もありますしどうなることやら。

効果的なプレスを仕込むのも有機的なカウンターを仕込むのも、
ここ数年全然それをしてこなかったチームでは容易ではないでしょうが頑張ってほしいですね。

  • 2019/10/12 (Sat) 17:29
  • REPLY
Joie_de_Myao  

ピオーリ就任後のチーム練習に参加していないロマニョーリなど各国の代表に召集されてる選手たちがミラネッロに戻って練習に合流しないことにはピオーリのサッカーの全貌は分からないでしょうから、まだどうこう言う段階じゃないですね。
ジャンパオロにとって不運だったのはパケタやケシエなど戦術上のキーマンとなる選手が大陸選手権に参加して、なおかつ彼らを擁する国が揃って最後の方まで勝ち残ったためチーム合流が大幅に遅れてしまったこと。もしパケタが新シーズン最初のキャンプに最初から合流してたらジャンパオロもあそこまでスソに固執してたかどうか

  • 2019/10/13 (Sun) 08:45
  • REPLY
リーナ  

それぞれの監督にはそれぞれのキーマンが居ますよね。
ピオリにとってボローニャではディアマンティ、ラツィオではビリアみたいな感じですかね。
ミランだとどうなるか楽しみです。
ハイラインハイプレスだと守備の危機管理は最も重要項目になるので今までの守備対応だと得点どころか失点しまくりになりますね( ´,_ゝ`)

先日のコメントで頂いたロシツキーの件ですが、冷遇ではなくて、彼が怪我による離脱が多かったこと、ウィルシャーとラムジーが台頭したこと、カソルラ、エジルの獲得が大きかったですね(゜ロ゜)
私から言えることはロシツキーはベンゲルサッカーの体現者であることは間違いないです。出場すれば何らかの爪痕を残しますからね( ・∇・)

  • 2019/10/14 (Mon) 10:40
  • REPLY
諭吉  

現戦力でやりくり出来るという部分では、良い人選だったと思います。ただ、スパレッティからの格下げ感がやっぱありますよね。笑
あと契約期間ってどうなってましたっけ??とりあえずCL圏獲得に全力をってことなら分かるんですが、長期的に任せる監督ではないと感じます。

全然関係ない話しですが、ユナイテッドがピョンテク狙ってるみたいですね、正直フィットしそうな感じはしますけど。。。笑

カカニスタ22
カカニスタ22  
To ミラネスタさん

コメントありがとうございます!

いえいえ、こちらこそ読んでいただきとても嬉しいです。

今のミランには特長のある選手が多数在籍していますし、選択肢が豊富なので色々なメンバー選好が考えられますよね。
「どのような組み合わせでチームを機能させるのか」、この点は特にピオリの腕の見せ所だと思いますし楽しみです!

  • 2019/10/17 (Thu) 01:03
  • REPLY
カカニスタ22
カカニスタ22  
To CL8さん

コメントありがとうございます!

確かにジャンパオロ時代はスタメンを見た時点でゲンナリすることも多々ありましたねー…。
今回の監督交代劇で今オフシーズンをほぼほぼ無駄にしたとは言え、この時期の監督交代なら巻き返しは十分に可能だと思いますし、この選択は正解だったとシーズン後に考えられるような結果を残して欲しいですね。

レビッチとレオンのウイングならここ最近のミランで久しく観ていない快速カウンターも能力的に十分に可能ですし、是非とも試して欲しい所です。

  • 2019/10/17 (Thu) 01:04
  • REPLY
カカニスタ22
カカニスタ22  
To ぴょぴょぴょんさん

コメントありがとうございます!

ハイプレスが機能しないとカウンター受け放題のサンドバッグになる恐れがありますからね。
チームとしての完成度が低い就任直後は特に全員の献身的な動きで組織の穴を補う必要がありますし、まずは選手たちのコンディション・モチベーション管理とそのための最適なスタメン選考に期待したいところです。

就任早々の強豪ラッシュは厳しいですよねー(笑)
解任は流石に無いとは思いますが、この就任早々に躓くとチームの雰囲気は最悪になりかねませんし、何とか上手く乗り切って欲しいですね。

  • 2019/10/17 (Thu) 01:05
  • REPLY
カカニスタ22
カカニスタ22  
To Joie_de_Myaoさん

コメントありがとうございます!

確かにジャンパオロに不運な面はありましたね。
ただしそれらはビッグクラブの監督としては上手く処理すべき問題の範疇だと思いますし、個人的に解任は妥当だと思いました。

  • 2019/10/17 (Thu) 01:06
  • REPLY
カカニスタ22
カカニスタ22  
To リーナさん

コメントありがとうございます!

個人的にはラファエル・レオンがピオリ・ミランにとっての攻撃の核になるかなと(というよりなって欲しい。笑)
カンピオーネになり得る逸材ですから、ああいう選手に比較的自由を与えて成長を促すピオリのスタイルはかなりマッチするんじゃないでしょうかね。

ロシツキーの件、納得いたしました。冷遇ではなかったんですね、ベンゲル監督には失礼な事を申し上げてしまいました。
当時はどうしてもロシツキーを贔屓目に観てしまっていたので、途中から出てきて極上のプレーを披露するロシツキーを見るとどうにも歯がゆい気持ちになってしまい、スタメンで出してくれよ!という思いを抱きがちでした(笑)

  • 2019/10/17 (Thu) 01:06
  • REPLY
カカニスタ22
カカニスタ22  
To 諭吉さん

コメントありがとうございます!

>>契約期間ってどうなってましたっけ??

ピオリは一応2年契約(2021年まで)とのことですが、契約には「来季の欧州カップ戦(CL/EL)出場権獲得に失敗した場合は契約解除できる条項がついている」、といった一部報道がありますね。
仮に事実だとすればミラン側に大分有利な条件ですし、この悪条件を呑んでくれたピオリには本当に感謝です。
ただ、長期的に任せるには不安の残る監督であるのは間違いないですね。短期的には素晴らしいと思うのですが。

ピョンテクはどうなりますかねー。
ジャンパオロの下でなら復活は絶望的でしたし放出も個人的には容認派でしたが。ピオリの下でなら復活を果たす可能性は十分にあると思うので、ひとまずは様子見ですかね。

  • 2019/10/17 (Thu) 01:08
  • REPLY