4-3-1-2におけるSBの重要性
どうやら治療は順調らしく、代表ウィーク明けには戦列に戻れるかもしれないとのことです。
というのも、開幕戦でミランはウディネーゼに中央を固められてまんまと沈黙したわけですが、その要因としては「前線の組み合わせの悪さ」と同時に、「サイドを上手く使えていないこと」が挙げられます。
そして4-3-1-2においてサイドを有効に使う方法は色々とあるわけですが、どんな方法であろうとSBが絡まないことは通常考えられず、それゆえSBの働きがサイド攻撃の機能性に大きく影響しますからね。
では、具体的にウディネーゼ戦における両SB(ロドリゲス、カラブリア)のパフォーマンスを振り返ってみましょう。

こちらは、両SBがパスを出した際のボジショニングを図示したものです(右攻め、当記事における引用画像・データはいずれも『WhoScored』より)。
なお、クロス本数は両者合わせて3本です。
続いて、比較対象として9年前に行われたミラン対ウディネーゼ戦における両SB(アバーテ、アントニーニ)のポジショニングを見ていきます(なぜ比較対象としてこの試合を選んだか言うと、両チーム及びそのフォーメーションが同じで、かつ戦術やSBのボールタッチ数を始めとするスタッツにも近似性が見られるため)

なお、クロス本数は両者合わせて9本です。
加えて、より視覚的にわかりやすいよう各試合における両SBのヒートマップをご紹介します。
まずこちらが、先日のウディネーゼ戦における両SBのヒートマップ(右攻め)

そしてこちらが、9年前のウディネーゼ戦における両SBのヒートマップ

さて。最初に載せた2つの図を見比べると、顕著な違いとしては「2010年の方がより高い位置でパスを出している(≒積極的に前線に上がっている)」ことが挙げられます。
4-3-1-2の場合、サイドの幅を取るのは一般的にSBになる場合が多いですし、そのためSBには積極的にオーバーラップすることが一般的に求められます。特に中央を固められた場合はこのようにしてサイドを起点にするしかないですから、そうした傾向は強くなりますね。
一方で、上の方(直近のウディネーゼ戦)ではハーフウェイライン近くでのボール出しが多く、中央寄りにポジショニングしている。また、高い位置でボールに絡む頻度が低いといえます。
こうした動きはジャンパオロの戦術にも密接に関わってくる(端的に言うと、SBが低い位置でビルドアップへの貢献を求められるし、中央突破の意識が高い)ため一概に悪いこととは言えないのですが、今回のように中央を固められた場合にはどうしたってSBによるオーバーラップからのサイド崩しが求められます(まして今のミランは中央の狭いスペースを崩せないため。理由は何度も述べているため割愛)。
しかし、こうしてデータを見比べてみるとロドリゲスとカラブリアも前線への攻め上がりが控えめですし、それは試合を観ていてもかなり気になった部分です。
SBを押し上げてサイドを起点に攻めていくなど、もう少し柔軟性のある攻撃を見せてほしいところでしたね。
ただし、ロドリゲスもカラブリアも独力で崩せるタイプではないですし、サイドを連携で崩す意識も今のところは低いため上がったところでそれほど効果的ではない。どちらか一方なら良いのですが、同時起用だと崩しの局面において威力は中々発揮されません。
というわけで、だからこそテオ・エルナンデスのような選手が求められるんですよね。
少ない時間ですがバイエルン戦を観る限り、突破力や狭い所でも果敢に突っ込む積極性は既に証明済みですし、彼のような独力でゴリゴリ前に運べそうな選手はとりわけ4-3-1-2のチームにとっては非常に重要です。
ビルドアップ時におけるプレーなど未知数な面もありますが、彼が復帰することでチームのサイド攻撃が改善することは間違いないと思います。
ちなみに、同様の期待はコンティにも懸かりますね。
彼はまず何よりもあの酷い守備を何とかする必要がありますが、復活を果たせれば攻撃において非常に頼りになる存在です。
対戦相手の状況(弱いサイド)に応じてコンティとエルナンデスを使い分けできるようになれば理想的ですね。
○おわりに
先日の敗戦を受けシステム変更が濃厚になったため、今ほどエルナンデスの重要性が高いわけではなくなるかもしれません
しかし4-3-3ならともかく、4-3-2-1(中央突破メイン)でいくのであればSBの攻撃性能は変わらず非常に重要ですし、彼に懸かる期待というのは依然として滅茶苦茶大きいままです。もちろん4-3-3であっても彼のようなタイプがいて困ることはありません。
とにもかくにも彼の復帰が本当に待ち遠しいですね。
持ち前の推進力を存分に活かし、チームを色んな意味で押し上げていって欲しいと思います。