18-19シーズンのガットゥーゾ・ミランを振り返る 【前編】
※【導入】→コチラの記事
〇基本フォーメーション・戦術など
はじめに、シーズン序盤~中盤戦におけるガットゥーゾ・ミランの特徴をごく簡単に説明します(コチラの「ガットゥーゾ・ミランの戦術的特徴」にて詳述しているので、未読の方はご覧ください)

フォーメーションは4-3-3。スタメンも出場停止やELでの温存を除けばこのメンバーで固定されていました。
次に戦術についてですが、攻撃に関しては後方からショートパスで丁寧に繋いでいくポゼッションを志向。
相手のファーストプレスを躱せた後は、「イグアインの下がる動きに合わせて両インサイドハーフが飛び出し、そこへのロングボールないしイグアインへ縦パスを入れていく」形と、「右サイドに張るスソにボールを預け、そこで周囲のケシエやカラブリアが絡んでいく」形によってボールを前進させていくのがメイン。
最後の局面はスソ無双。彼のシュートもしくはクロスによって序盤はチャンスを量産していました。
次に守備に関しては、ハイプレス~ミドルプレスが基本。
相手CBがボールを持ったら、片方(もしくは両方)のインサイドハーフが飛び出してプレスをかけることでボールをサイドに誘導し、そこで奪うかロングボールを蹴らせようという狙いが見えました。
さて。ではいよいよ本題に移ります。
・2節ナポリ(A)3-2●
・3節ローマ(H)2-1〇
ジェノバにある橋の崩落事故により、第一節のジェノア戦が延期。
ということで、ミランの開幕試合は昨季2位のナポリが相手となりました。
ガットゥーゾ監督とアンチェロッティ監督の師弟対決としても注目を集めたこの試合は、ミランが2点を先取しながら3点を奪い返され、まさかの大逆転敗北。
この試合で真っ先に思い出すのが、途中投入されたバカヨコの酷すぎるパフォーマンス。
この時はまさか、彼が後にシーズンMVP級の活躍をするとは露にも思いませんでした(笑)
続いての相手は昨季3位のローマ。開幕から強豪との連戦という難しい状況の中、ミランはローマ相手に素晴らしいパフォーマンスを披露。
ローマの調子が悪かったのもあったでしょうが、攻守ともにアグレッシブな動きで試合の主導権を握り続け、1-1で迎えた後半アディショナルタイム、イグアインからパスを受けたクトローネがネットを揺らして劇的勝利を収めました。
この試合は、今季の個人的ベスト試合候補の一つですね。
〇痛恨の3引き分け
・4節カリアリ(A)1-1△
・EL1節デュドランジュ(A)0-1〇
・5節アタランタ(H)2-2△
・6節エンポリ(A)1-1△
代表ウィーク明けのカリアリ戦、ミランは低調なパフォーマンスに終始し1-1の引き分け。
早くもこの頃から、ミランの志向していた「後方から丁寧にショートパスを繋いでいくスタイル」の不向きさが露になっていきます。
ドンナルンマの足技の弱さ、中盤のサポート不足(ポジショニングの悪さ)は特に深刻で、相手がハイプレスをかけてきたらもうお手上げ状態。
苦し紛れのロングボールを蹴るか、無理に繋ごうとして自陣深くでボールを奪われるかといった展開の連続でした。
圧倒的戦力差のあるデュドランジュ相手には危なげなく勝利(しかし内容は決して良くはない)したものの、その後のアタランタ(当時絶不調)とエンポリ相手にまたしても引き分け。
3連勝してもおかしくない、というよりCL権を獲る上では勝つべき3連戦を3引き分けという結果で終え、早くも暗雲が立ち込めました。
〇止まらない失点
・7節サッスオーロ(A)1-4〇
・EL2節オリンピアコス(H)3-1〇
・8節キエーヴォ(H)3-1〇
・9節インテル(A)1-0●
・EL3節ベティス(H)1-2●
当時3位と好調をキープしていたサッスオーロ相手に1-4で勝利を収めたミラン。
イグアインを筆頭にCFが次々と離脱し、その結果カスティジェホを3トップの中央に据えるという苦しいチーム状況の中、悪い流れを断ち切る非常に大きな1勝でした。
その後オリンピアコス、キエーヴォ相手に快勝し、良い流れでダービーマッチを迎えたものの、アディショナルタイムにイカルディに決められ敗戦。
この敗戦のショックを引きずり、ELのベティス戦でも内容・結果ともに完敗しました。
特筆すべきは失点の多さ。
一番最初に述べたミランの守備戦術はほとんどの状況において機能せず、インサイドハーフが相手CBにプレスをかけることで生じるアンカーの両脇のスペースを相手に利用され、突破を許すシーンが頻発しました。
ビリアは広大なスペースの対処に忙殺され、ボナベントゥーラとケシエは(機能しない)プレス→プレスバックを何度も行うことで疲弊。
この頃にボナベントゥーラ、ビリア共に怪我による長期離脱を強いられたわけですが、こうした守備の機能不全による選手の酷使と決して無関係ではないでしょうね
また、リトリート後の守備も緩く、2ライン間が不自然に空いていたりポジショニングがおかしかったりと問題が露呈。
おまけに前述のビルドアップを懲りずに続けていたこともあり、ボール奪取からのシュートカウンターをくらうシーンも頻発しました。
失点地獄はこれからもしばらく続くわけですが、こうした状況では無理もありませんでしたね。
〇システム変更の効果
・10節サンプドリア(H)3-2〇
・1節ジェノア(H)2-1〇
・11節ウディネーゼ(A)0-1〇
・EL4節ベティス(A)1-1△
ボナベントゥーラの離脱も影響してか、ミランはサンプドリア戦でシステムをこれまでの4-3-3から4-4-2へと変更。
この試合では2トップを組んだイグアインとクトローネが躍動し、それぞれ1ゴールずつ決め勝利に貢献してくれました。
その後はコロコロとシステムを変え始めるミラン。ジェノア戦(3-4-3)、ウディネーゼ戦(4-4-2)、ベティス戦(3-5-2)を終え、2勝1分と好成績を残しました。
そうは言ってもこのシステム変更が効果的だったかというとそんなことはなく、3試合のいずれも内容的には決して良いものではありませんでした。
その証拠にジェノア戦、ウディネーゼ戦共に決勝ゴールが決まったのは後半アディショナルタイム、カピターノであるDFロマニョーリのスーパーゴールという非常に劇的かつ薄氷の勝利でしたしね。
とりあえず前編はここで終わります。
※【中編】→コチラの記事