【セリエA第13節】 ラツィオ対ミラン 【マッチレポート】
スタメン


前半
〇ラツィオのビルドアップ~恒常的な数的優位~
まずは優勢に試合を進めていたラツィオの攻めから見ていきます。
最初にビルドアップについて。ラツィオは3バックとアンカーのバデリ、GKのストラコシャの計5人が主にビルドアップに関与。
それに対し、ミランは3トップの形を維持したままプレスをかけビルドアップの妨害を図りますが、このプレスはほとんど機能していませんでしたね。
というのも、先述の通りラツィオは後方で少なくとも5人がビルドアップに関与するのに対し、ミランは中盤のフォローがほとんどないために主に3トップのみで対応しているシーンが多かったからです。
そのため常に5対3とラツィオが数的優位を保っており、さほど苦労することなくポゼッションを確立することが出来ました。

中でも効果的だったのが、アチェルビからサイドのCBにボールが渡った後、バデリが相手3トップの背後にポジショニングし、サイドのCBがバデリへとボールを送る形です。
こうすることでミランの前線3人を置き去りにできますから、その後のミランは自陣へと後退せざるを得ませんでした。
〇ラツィオの崩しと決定力不足
このようにしてポゼッションを確立した後は、主にルイス・アルベルトとセルゲイ・ミリンコビッチ・サビッチ(以下セルゲイ)が崩しの起点を担います。
具体的に崩しの1つの形として、彼らが相手ボランチ(ケシエ、バカヨコ)の周囲にポジショニングしてボールを引き出し、そこからサイドに張るWBへ展開→WBがクロスを放り込む(その際、エリア内には常に3人以上が入り込む)というのが挙げられます。
ミランのシステムは上記の通り3-4-2-1ですが、両WBは最終ラインへの帰陣(すなわち5バックの形成)の意識が強いことで、最終ライン手前の中盤に広いスペースが生まれてしまっていました。
そのスペースについては両ボランチのケシエ・バカヨコのモビリティの活用や、チャルハノールの献身的なリトリートにより3ボランチを形成するなどして埋める努力は見られたものの、比較的自由にボールを持たせてしまっていましたね。
その他の形として、圧倒的なフィジカルを持つセルゲイを対象としたロングボールによる単純な崩しも見られました。
以上のようにして多くのチャンスを作ったラツィオ。しかしラストパスやクロスの精度を著しく欠いたことで得点にはなりませんでした。
その原因の1つには、ミラン最終ラインの粘り強い守備があったと思います。
〇ミランの攻撃~チャルハノールのポジショニング
ラツィオが優勢だったとはいえ、ミランもやられっぱなしではありませんでした。
ビルドアップの局面においては相手のハイプレスにいつも通り苦戦したものの、リカロドが務める左サイドでは上手くかわしてビルドアップを確立するシーンも見られました。
そしてその後の崩しの局面において見られた特徴の1つは、本来左サイドを務めているチャルハノールが頻繁に右サイドに顔を出してボールに触っていたことです。
それにより右サイドを務めるスソと連係してボールを前進させようという意図があったのではないかと。
その狙いがはっきり見て取れたのが前半30分頃の場面。


このシーンではチャルハノール→スソ→クトローネ→カラブリアとボールを繋ぎ、最後はチャルハノールがシュートを打ちました。
シュートは大きく枠を外れたものの、相手のDF陣を揺さぶった良い攻めの形だったと思います。
以上のようにしてミランも何度かチャンスを作りましたが、ラツィオと同様に得点を奪うまでには至らず。
前半はスコアレスで終了しました。
後半
〇「動」の采配と「静」の采配
後半も前半とおおむね同様の形でラツィオが優勢に試合を進めますが、相変わらずの決定力によりスコアは動かず。
60分頃にはラインが間延びし始めたこともあり、ミランもチャルハノールやボリーニが惜しいチャンスを作り出し始めました。
65分にラツィオはセルゲイ、ルイス・アルベルトに代えてルカクとコレアを投入。
左WBに入ったルカクの馬力を中心に攻勢を強めます。
しかし、均衡を破ったのはミランでした。
78分、フリーでボールを受けたスソが前線に張っていたカラブリアへ絶妙な浮き球のスルーパス。そのカラブリアからの折り返しを受けたケシエのシュートがワラシに当たってネットに吸い込まれました。
何とか追いつきたいラツィオは82分にカイセドを投入して前線の枚数を増やしつつ、終盤には更にCBのアチェルビも上がってパワープレーに移行。
すると94分、サパタのクリアしたボールをコレアが拾うと、そのまま強烈なシュートを叩き込んで同点に追いつきました。
試合はそこで終了。勝ち点1を分け合いました。
この試合でラツィオのインザーギ監督は交代枠をフル活用して引き分けを手繰り寄せた一方で、ミランのガットゥーゾ監督は交代枠を1つも使わないという非常に珍しい采配を見せました。
ラツィオの猛攻をぎりぎりのところで防いでいた状況下で、交代によりバランスが崩れることを恐れたのだと考えられます。
疲れの見えていたチャルハノールやボリーニに代えてフレッシュなカスティジェホやラクサールを投入しても良いように個人的には思いましたが…。まぁ仕方ないですね。
まとめ
既に当ブログでも言っていますが、引き分けという結果自体はチーム状況や試合内容を踏まえれば決して悪くなかったと思います。
もちろんアディショナルタイムでの失点ですから悔しい気持ちはありますけどね。
次にシステムについて。この試合では何とか1失点に抑えられたわけですが、やはりこのシステムの守備は問題です。
守備の質を人数とハードワークで補おうとするあまり、前線と中盤の選手に過大な負担がかかってしまっているため、彼らの中からまた離脱者がでてもおかしくありません。
特にチャルハノール、カラブリア辺りは相当危ないと個人的には考えています。
とは言えCBが3人も負傷中の状況ではこういった守備戦術になってしまうのもやむを得ないわけですが…。
とりあえず怪我のリスクを減らすため、ミッドウィークに行われるデュドランジュ戦は中盤、前線の選手は総入れ替えする位思い切ってもいいでしょうね、
さて。次節のリーグ戦の相手は今季からセリエAに復帰した古豪パルマです。
元ローマ所属のジェルビーニョを始め、経験豊富な選手が多数在籍している難敵チームです。
暫定成績が6位であることからも、彼らの厄介さが窺い知れます。
再び苦戦が予想されますが、4位に入るためにもここは何としても勝利を収めて欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
〇ラツィオのビルドアップ~恒常的な数的優位~
まずは優勢に試合を進めていたラツィオの攻めから見ていきます。
最初にビルドアップについて。ラツィオは3バックとアンカーのバデリ、GKのストラコシャの計5人が主にビルドアップに関与。
それに対し、ミランは3トップの形を維持したままプレスをかけビルドアップの妨害を図りますが、このプレスはほとんど機能していませんでしたね。
というのも、先述の通りラツィオは後方で少なくとも5人がビルドアップに関与するのに対し、ミランは中盤のフォローがほとんどないために主に3トップのみで対応しているシーンが多かったからです。
そのため常に5対3とラツィオが数的優位を保っており、さほど苦労することなくポゼッションを確立することが出来ました。

中でも効果的だったのが、アチェルビからサイドのCBにボールが渡った後、バデリが相手3トップの背後にポジショニングし、サイドのCBがバデリへとボールを送る形です。
こうすることでミランの前線3人を置き去りにできますから、その後のミランは自陣へと後退せざるを得ませんでした。
〇ラツィオの崩しと決定力不足
このようにしてポゼッションを確立した後は、主にルイス・アルベルトとセルゲイ・ミリンコビッチ・サビッチ(以下セルゲイ)が崩しの起点を担います。
具体的に崩しの1つの形として、彼らが相手ボランチ(ケシエ、バカヨコ)の周囲にポジショニングしてボールを引き出し、そこからサイドに張るWBへ展開→WBがクロスを放り込む(その際、エリア内には常に3人以上が入り込む)というのが挙げられます。
ミランのシステムは上記の通り3-4-2-1ですが、両WBは最終ラインへの帰陣(すなわち5バックの形成)の意識が強いことで、最終ライン手前の中盤に広いスペースが生まれてしまっていました。
そのスペースについては両ボランチのケシエ・バカヨコのモビリティの活用や、チャルハノールの献身的なリトリートにより3ボランチを形成するなどして埋める努力は見られたものの、比較的自由にボールを持たせてしまっていましたね。
その他の形として、圧倒的なフィジカルを持つセルゲイを対象としたロングボールによる単純な崩しも見られました。
以上のようにして多くのチャンスを作ったラツィオ。しかしラストパスやクロスの精度を著しく欠いたことで得点にはなりませんでした。
その原因の1つには、ミラン最終ラインの粘り強い守備があったと思います。
〇ミランの攻撃~チャルハノールのポジショニング
ラツィオが優勢だったとはいえ、ミランもやられっぱなしではありませんでした。
ビルドアップの局面においては相手のハイプレスにいつも通り苦戦したものの、リカロドが務める左サイドでは上手くかわしてビルドアップを確立するシーンも見られました。
そしてその後の崩しの局面において見られた特徴の1つは、本来左サイドを務めているチャルハノールが頻繁に右サイドに顔を出してボールに触っていたことです。
それにより右サイドを務めるスソと連係してボールを前進させようという意図があったのではないかと。
その狙いがはっきり見て取れたのが前半30分頃の場面。


このシーンではチャルハノール→スソ→クトローネ→カラブリアとボールを繋ぎ、最後はチャルハノールがシュートを打ちました。
シュートは大きく枠を外れたものの、相手のDF陣を揺さぶった良い攻めの形だったと思います。
以上のようにしてミランも何度かチャンスを作りましたが、ラツィオと同様に得点を奪うまでには至らず。
前半はスコアレスで終了しました。
後半
〇「動」の采配と「静」の采配
後半も前半とおおむね同様の形でラツィオが優勢に試合を進めますが、相変わらずの決定力によりスコアは動かず。
60分頃にはラインが間延びし始めたこともあり、ミランもチャルハノールやボリーニが惜しいチャンスを作り出し始めました。
65分にラツィオはセルゲイ、ルイス・アルベルトに代えてルカクとコレアを投入。
左WBに入ったルカクの馬力を中心に攻勢を強めます。
しかし、均衡を破ったのはミランでした。
78分、フリーでボールを受けたスソが前線に張っていたカラブリアへ絶妙な浮き球のスルーパス。そのカラブリアからの折り返しを受けたケシエのシュートがワラシに当たってネットに吸い込まれました。
Milan take the lead against Lazio through Kessie [via @TVACM]
— Milan Eye (@MilanEye) 2018年11月25日
DAI RAGAZZIpic.twitter.com/TSwUz9UU1K
何とか追いつきたいラツィオは82分にカイセドを投入して前線の枚数を増やしつつ、終盤には更にCBのアチェルビも上がってパワープレーに移行。
すると94分、サパタのクリアしたボールをコレアが拾うと、そのまま強烈なシュートを叩き込んで同点に追いつきました。
Full time
— CALCIO SQUARE (@calcio_square) 2018年11月25日
Joaquin Correa scored this goal deep in stoppage time to cancel out Franck Kessie’s opener as Lazio were held to a 1-1 draw at home by Milan. #SerieATIM #SerieA #LazioMilan pic.twitter.com/zqCrta7r6H
試合はそこで終了。勝ち点1を分け合いました。
この試合でラツィオのインザーギ監督は交代枠をフル活用して引き分けを手繰り寄せた一方で、ミランのガットゥーゾ監督は交代枠を1つも使わないという非常に珍しい采配を見せました。
ラツィオの猛攻をぎりぎりのところで防いでいた状況下で、交代によりバランスが崩れることを恐れたのだと考えられます。
疲れの見えていたチャルハノールやボリーニに代えてフレッシュなカスティジェホやラクサールを投入しても良いように個人的には思いましたが…。まぁ仕方ないですね。
まとめ
既に当ブログでも言っていますが、引き分けという結果自体はチーム状況や試合内容を踏まえれば決して悪くなかったと思います。
もちろんアディショナルタイムでの失点ですから悔しい気持ちはありますけどね。
次にシステムについて。この試合では何とか1失点に抑えられたわけですが、やはりこのシステムの守備は問題です。
守備の質を人数とハードワークで補おうとするあまり、前線と中盤の選手に過大な負担がかかってしまっているため、彼らの中からまた離脱者がでてもおかしくありません。
特にチャルハノール、カラブリア辺りは相当危ないと個人的には考えています。
とは言えCBが3人も負傷中の状況ではこういった守備戦術になってしまうのもやむを得ないわけですが…。
とりあえず怪我のリスクを減らすため、ミッドウィークに行われるデュドランジュ戦は中盤、前線の選手は総入れ替えする位思い切ってもいいでしょうね、
さて。次節のリーグ戦の相手は今季からセリエAに復帰した古豪パルマです。
元ローマ所属のジェルビーニョを始め、経験豊富な選手が多数在籍している難敵チームです。
暫定成績が6位であることからも、彼らの厄介さが窺い知れます。
再び苦戦が予想されますが、4位に入るためにもここは何としても勝利を収めて欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。