ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴 【中編】
今回は予告通り、攻撃の局面において見られたミランの攻撃パターンについて語っていきたいと思います。
続き物ですので、前回までの記事を未読だという方は以下の記事を先に閲覧していただけると幸いです。
続き物ですので、前回までの記事を未読だという方は以下の記事を先に閲覧していただけると幸いです。
〇イグアインのスペースメイクとインサイドハーフの飛び出し
ローマ戦を中心に見られた攻撃の組み立て~崩しの局面における形としては、トップのイグアインが(時には相手マーカーを引き連れながら)積極的に下がってきてボールを引き出し、崩しの起点として機能するというものがあります。


また、その派生形として、そのイグアインが空けたスペースにインサイドハーフのボナベントゥーラないしケシエが飛び出していくというのもありました。


このメカニズムの採用には、上記3選手のプレースタイルに依るところが大きいでしょう。
イグアインはDFライン上での駆け引きを特長とする典型的なストライカーというよりは、積極的に下がってきてボールに触ることを好む選手です。
また、ゴール前ではヘディングに飛び込むことには消極的で、むしろ一歩下がって(それこそエリア外で)ボールを受けようとするシーンも多々見られます。
一方インサイドハーフのボナベンとケシエですが、両者ともにビルドアップに積極的に関与するタイプというよりは、前線への飛び出しに特長のある選手です。
特に前者はエリア付近でのチャンスメイクやエリア内に飛び込んでのシュート、後者はエリア近くまでを短時間で走り切る圧倒的なスプリントを持ち味としています。
つまり、先に挙げた崩しのメカニズムは上述の3者の特徴(特長)を上手く噛み合わせ、組織の中で機能させようとして出来たものだといっても良いと思います。
こういったトップと中盤の関係性は上述のローマ戦の他に、相手のプレスが緩かったジェノア、ウディネーゼ戦などでもよく見られました(後者の2つの時は4-3-3ではありませんでしたし、メンバーもこの3人ではありませんでしたが)。
〇ウイングのハーフスペース活用
近年のサッカー界では「ハーフスペース」という概念が広く浸透し、重要視されるようになっています。
念のため説明しますと、ハーフスペースとは「ピッチを縦に5分割した際のインサイドレーン」を指す戦術用語です。

そして最近は多くのチームがこのスペースの活用を目論んでいます。
もちろんミランもその1チームです。
崩しの局面においてはリカロド、カラブリアといったSBがサイドを攻め上がり、スソ、チャルハノールの両ウイングがハーフスペースへと移動。1トップのイグアインやインサイドハーフとの距離を近くし、ワンツーパスなどによるコンビネーションを活かして突破を図ります。
しかし、このスペースを活かせない時のミランはかなり単調なサイド攻撃に終始してしまっていましたし、その際にはイグアインが中央で孤立するといった事態に陥りがちでした。そして残念ながらそういう場面は多かったと記憶しています。
また、左サイドのチャルハノールがローマ戦を除くほぼすべての試合で本調子でなかったこともあり、ファイナルサードの局面においてはスソの個の力に多くを依存していた試合もかなり多かったですね。
〇スソを活かす2つの方法
となれば、チームとしてはスソがファイナルサードの局面において存分に力を発揮できるようにする必要があります。
その点については、ミランは守備免除とSBの動きにより実現させていたかと思います。
前者については文字通り、守備にはあまり積極的には参加せず、攻撃のための体力を温存すると共にカウンターに備えるというものです。
これは過密日程に突入してから特に顕著になっていたかと思います。
そしてより重要なのが後者の「SBの動き」です。具体的な動きとして、SBがスソの前に飛び出していくことで対面のスソのマーカー(主に相手SB)を引き付けるというオーソドックスな動きがまず挙げられます。
また下図のように、SBが高い位置を取ることで相手のSBを予め前に飛び出させない(飛び出した場合はカラブリアがフリーになるため)ようにすることで、スソが後方からフリーでボールを受けられるようにするというメカニズムも見られました(アバーテがSBを務めるときにも良く見られたコンビネーションだったかと思います)。

以上のような形でスソを比較的自由にさせ、彼のキレキレのドリブル突破からの高精度シュート・クロスで得点を量産しました。
リーグ戦におけるここまでのミランの総得点が21。そしてスソの成績が4ゴール8アシストであることを考えると、彼がどれほどチームの得点に絡んでいるかが良く分かりますね。
…以上が、僕の考えるミランの攻撃の局面における具体的な攻撃戦術でした。
ラストとなる次回は守備の局面における戦術、もとい問題点について分析していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ローマ戦を中心に見られた攻撃の組み立て~崩しの局面における形としては、トップのイグアインが(時には相手マーカーを引き連れながら)積極的に下がってきてボールを引き出し、崩しの起点として機能するというものがあります。


また、その派生形として、そのイグアインが空けたスペースにインサイドハーフのボナベントゥーラないしケシエが飛び出していくというのもありました。


このメカニズムの採用には、上記3選手のプレースタイルに依るところが大きいでしょう。
イグアインはDFライン上での駆け引きを特長とする典型的なストライカーというよりは、積極的に下がってきてボールに触ることを好む選手です。
また、ゴール前ではヘディングに飛び込むことには消極的で、むしろ一歩下がって(それこそエリア外で)ボールを受けようとするシーンも多々見られます。
一方インサイドハーフのボナベンとケシエですが、両者ともにビルドアップに積極的に関与するタイプというよりは、前線への飛び出しに特長のある選手です。
特に前者はエリア付近でのチャンスメイクやエリア内に飛び込んでのシュート、後者はエリア近くまでを短時間で走り切る圧倒的なスプリントを持ち味としています。
つまり、先に挙げた崩しのメカニズムは上述の3者の特徴(特長)を上手く噛み合わせ、組織の中で機能させようとして出来たものだといっても良いと思います。
こういったトップと中盤の関係性は上述のローマ戦の他に、相手のプレスが緩かったジェノア、ウディネーゼ戦などでもよく見られました(後者の2つの時は4-3-3ではありませんでしたし、メンバーもこの3人ではありませんでしたが)。
〇ウイングのハーフスペース活用
近年のサッカー界では「ハーフスペース」という概念が広く浸透し、重要視されるようになっています。
念のため説明しますと、ハーフスペースとは「ピッチを縦に5分割した際のインサイドレーン」を指す戦術用語です。

そして最近は多くのチームがこのスペースの活用を目論んでいます。
もちろんミランもその1チームです。
崩しの局面においてはリカロド、カラブリアといったSBがサイドを攻め上がり、スソ、チャルハノールの両ウイングがハーフスペースへと移動。1トップのイグアインやインサイドハーフとの距離を近くし、ワンツーパスなどによるコンビネーションを活かして突破を図ります。
しかし、このスペースを活かせない時のミランはかなり単調なサイド攻撃に終始してしまっていましたし、その際にはイグアインが中央で孤立するといった事態に陥りがちでした。そして残念ながらそういう場面は多かったと記憶しています。
また、左サイドのチャルハノールがローマ戦を除くほぼすべての試合で本調子でなかったこともあり、ファイナルサードの局面においてはスソの個の力に多くを依存していた試合もかなり多かったですね。
〇スソを活かす2つの方法
となれば、チームとしてはスソがファイナルサードの局面において存分に力を発揮できるようにする必要があります。
その点については、ミランは守備免除とSBの動きにより実現させていたかと思います。
前者については文字通り、守備にはあまり積極的には参加せず、攻撃のための体力を温存すると共にカウンターに備えるというものです。
これは過密日程に突入してから特に顕著になっていたかと思います。
そしてより重要なのが後者の「SBの動き」です。具体的な動きとして、SBがスソの前に飛び出していくことで対面のスソのマーカー(主に相手SB)を引き付けるというオーソドックスな動きがまず挙げられます。
また下図のように、SBが高い位置を取ることで相手のSBを予め前に飛び出させない(飛び出した場合はカラブリアがフリーになるため)ようにすることで、スソが後方からフリーでボールを受けられるようにするというメカニズムも見られました(アバーテがSBを務めるときにも良く見られたコンビネーションだったかと思います)。

以上のような形でスソを比較的自由にさせ、彼のキレキレのドリブル突破からの高精度シュート・クロスで得点を量産しました。
リーグ戦におけるここまでのミランの総得点が21。そしてスソの成績が4ゴール8アシストであることを考えると、彼がどれほどチームの得点に絡んでいるかが良く分かりますね。
…以上が、僕の考えるミランの攻撃の局面における具体的な攻撃戦術でした。
ラストとなる次回は守備の局面における戦術、もとい問題点について分析していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。