ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴 【前編】
今回は、どの試合でもおおむね当てはまったミランの攻撃・守備におけるプレー原則(戦術上の指針のようなもの)を見ていきたいと思います。
続き物ですので、前回の記事をまだ読んでいないという方はコチラからどうぞ。
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■攻撃におけるプレー原則
ガットゥーゾ・ミランに当てはまる主な特徴の1つは、「後方から徹底的にショートパスで繋いでいく」というものです。
仮に相手が前から激しいプレスをかけてこようがお構いなく、GK、4バック、アンカーの計6人を中心にショートパスを繋ごうとします。

そして相手のプレスを上手くかわせた後は、チームの持ち味である走力を活かして一気に前線にボールを運んでチャンスを作ろうというのがおおまかなプレー原則でした。
しかし残念ながら、このメカニズムはそう上手く機能していないのが現状です。
実際のところ、相手が激しいプレスをかけてきた場合はほとんど思い通りにボールを回せず、大抵はサイドにボールを誘導され手詰まり状態となり、そこから精度の低いロングボールを蹴らざるを得ないという状況に追い込まれてしまっていました。
しかも最悪の場合は自陣ゴール前でミスパスをしてしまい、その結果、相手に決定機はおろか得点を許してしまうということも1度や2度じゃありませんでした…(特にシーズン序盤はそうでした)。

例えば上図のように、相手に1対1で前からマンマーク気味に付かれた場合に特に苦戦していましたね。
これははダービー戦における一幕です。ドンナルンマ→ムサッキオ→カラブリアと繋ぐも相手がマンマーク気味にハイプレス。下がってきたスソにもアサモアが付いてきてパスコースを封じられました。
こういった際、ボナベントゥーラないしチャルハノールが下りてきてビルドアップに加わる形が時折見られましたが即興的で、意図した形ではないように見受けられました。
とはいえ最近の試合では改善の兆しが見られます。というのも、予めバカヨコもしくはケシエといったフィジカルの強い選手をやや高めの位置にポジショニングさせてロングボールのターゲットとすることで、後ろで詰まった(詰まりそうな)時は彼らを起点にボールを前進させるといったビルドアップの方法を身につけつつある印象です。
根本的な解決ではないかもしれませんが、以前よりは相手に好き放題やられることはなくなったと思います。
■守備におけるプレー原則
ミランの守備におけるプレー原則として、まず第一に「ミドルゾーン(ピッチを横に3等分したときの真ん中のスペース)に素早く守備ブロックを形成する」というのが挙げられるでしょう。
これはシステムが4-3-3でも4-4-2でも3バックでも変わりません。
例えば攻撃的なチームであれば、ボールを失ったら即時奪還を目指してその場でハイプレスをしかけるといった場合もあると思いますが、ミランはそうではなく基本的に守備ブロックの形成を重視している印象です。
そして、相手が一定のラインを越えてボールを運んで来たら素早くプレスを仕掛けてサイドに誘導し、そこでボール奪取を狙います。
また、相手がバックラインでパスを回している場合やパスを後ろへ戻したりした後はそのままボールに食いつき、ハイプレスに移行する場面も見られますね。
陣形を整えた後、プレスをかけに行く場合は(自分・味方のシステムにもよりますが)インサイドハーフの両方が相手CBにプレスを仕掛け、トップのイグアインは相手アンカーを見るという形が多く見られました。



以上のようにして、(シーズン序盤は)アグレッシブな守備を行って相手をなかなか自由にさせず、プレスを外されてボールを運ばれた際にも素早い帰陣(リトリート)を見せたミラン。
運動量と献身性は近年のミランでも最高クラスだと思います。ガットゥーゾ監督の指導の賜物でしょうね。
しかし、開幕から10試合連続失点という不名誉な記録を残したことからも分かる通り、守備面に関しては多くの問題を抱えていたのも事実。
その点に関しては次々回の【後編】にて分析していきたいと思います。
…以上が、僕が考えるミランの攻守における基本的なプレー原則でした。
次回は攻撃の局面を詳しく見ていく予定です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ガットゥーゾ・ミランに当てはまる主な特徴の1つは、「後方から徹底的にショートパスで繋いでいく」というものです。
仮に相手が前から激しいプレスをかけてこようがお構いなく、GK、4バック、アンカーの計6人を中心にショートパスを繋ごうとします。

そして相手のプレスを上手くかわせた後は、チームの持ち味である走力を活かして一気に前線にボールを運んでチャンスを作ろうというのがおおまかなプレー原則でした。
しかし残念ながら、このメカニズムはそう上手く機能していないのが現状です。
実際のところ、相手が激しいプレスをかけてきた場合はほとんど思い通りにボールを回せず、大抵はサイドにボールを誘導され手詰まり状態となり、そこから精度の低いロングボールを蹴らざるを得ないという状況に追い込まれてしまっていました。
しかも最悪の場合は自陣ゴール前でミスパスをしてしまい、その結果、相手に決定機はおろか得点を許してしまうということも1度や2度じゃありませんでした…(特にシーズン序盤はそうでした)。

例えば上図のように、相手に1対1で前からマンマーク気味に付かれた場合に特に苦戦していましたね。
これははダービー戦における一幕です。ドンナルンマ→ムサッキオ→カラブリアと繋ぐも相手がマンマーク気味にハイプレス。下がってきたスソにもアサモアが付いてきてパスコースを封じられました。
こういった際、ボナベントゥーラないしチャルハノールが下りてきてビルドアップに加わる形が時折見られましたが即興的で、意図した形ではないように見受けられました。
とはいえ最近の試合では改善の兆しが見られます。というのも、予めバカヨコもしくはケシエといったフィジカルの強い選手をやや高めの位置にポジショニングさせてロングボールのターゲットとすることで、後ろで詰まった(詰まりそうな)時は彼らを起点にボールを前進させるといったビルドアップの方法を身につけつつある印象です。
根本的な解決ではないかもしれませんが、以前よりは相手に好き放題やられることはなくなったと思います。
■守備におけるプレー原則
ミランの守備におけるプレー原則として、まず第一に「ミドルゾーン(ピッチを横に3等分したときの真ん中のスペース)に素早く守備ブロックを形成する」というのが挙げられるでしょう。
これはシステムが4-3-3でも4-4-2でも3バックでも変わりません。
例えば攻撃的なチームであれば、ボールを失ったら即時奪還を目指してその場でハイプレスをしかけるといった場合もあると思いますが、ミランはそうではなく基本的に守備ブロックの形成を重視している印象です。
そして、相手が一定のラインを越えてボールを運んで来たら素早くプレスを仕掛けてサイドに誘導し、そこでボール奪取を狙います。
また、相手がバックラインでパスを回している場合やパスを後ろへ戻したりした後はそのままボールに食いつき、ハイプレスに移行する場面も見られますね。
陣形を整えた後、プレスをかけに行く場合は(自分・味方のシステムにもよりますが)インサイドハーフの両方が相手CBにプレスを仕掛け、トップのイグアインは相手アンカーを見るという形が多く見られました。



以上のようにして、(シーズン序盤は)アグレッシブな守備を行って相手をなかなか自由にさせず、プレスを外されてボールを運ばれた際にも素早い帰陣(リトリート)を見せたミラン。
運動量と献身性は近年のミランでも最高クラスだと思います。ガットゥーゾ監督の指導の賜物でしょうね。
しかし、開幕から10試合連続失点という不名誉な記録を残したことからも分かる通り、守備面に関しては多くの問題を抱えていたのも事実。
その点に関しては次々回の【後編】にて分析していきたいと思います。
…以上が、僕が考えるミランの攻守における基本的なプレー原則でした。
次回は攻撃の局面を詳しく見ていく予定です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。