【久しぶりのマッチレビュー】フィオレンティーナ対ミラン【2023-24シーズン・セリエA第30節】

2023-24シーズン・試合フィオレンティーナ戦
今回はセリエA第30節、フィオレンティーナ対ミランのマッチレビューを行います。

今シーズンもいよいよ終盤ということで、この手のマッチレビュー記事も復活させていく予定です。時間とモチベーションの関係で不定期止まりになるかもしれませんが、好評だったら出来る限り頑張ります。

スタメン
【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_スタメンベースフォーメーション:
フィオレンティーナ「4-2-3-1」
ミラン「4-3-3」


ビルドアップの安定


ここ数シーズン、苦戦を余儀なくされていたフィオレンティーナ(ヴィオラ)の本拠地での試合ですが、今回のミランは主導権を握って優勢に試合を進めることができ、特に前半に関しては非常に支配的だったと思います。

その理由について、フィオレンティーナもといイタリアーノ監督率いるチームとの対戦時を振り返りながら考えると、第一に「後方からのビルドアップが安定していたこと」が挙げられるでしょう。

例えば、以前のヴィオラとの試合では相手のマンツーマン志向が強めのプレッシングに対して有効な前進ルートを中々見つけられず、サイドに追い詰められてボールを回収されるといった展開が結構見られました。

しかしこの試合のミランは、最後方にてGKメニャンを積極的に組み込みなからビルドアップ。両CBと共に最終ラインを形成し、ヴィオラの2トップに対して数的優位を形成します。


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析1
――シーン1

他方、一列前では両SB(カラブリア、フロレンツィ)が積極的に絞ることで対面の相手(主にクアメ、イコネ)を引き付け、サイドにスペースを生じさせました。そして当該スペースを積極的に活用することで、ミランは有効かつ安定したボール前進が可能になった、と。


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析2
――シーン2:カラブリアとフロレンツィが内に絞り、イコネとクアメを引き付ける。それにより生じたサイドのスペースはトモリが利用し、ベナセルはCBの動きをフォローするため頻繁に下がる

打開力


当該スペースを利用する方法の1つとして、「サイドに開いたCBによる前進」が挙げられます。最後方での数的優位を活かして前向きでボールを持ったCBが、そのまま前方のスペースを使っていきました。


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析3
――シーン3:メニャンからパスを受けるチャウ。カラブリアがクアメを中央に引き付けているため、チャウの前方にはスペースと選択肢(チュクウェゼ。画面外)がある

これによりヴィオラ守備陣の注意が当該エリアに引きつけられるため、中央へのパスコースが生じやすくなります。また、ミランは両SBを積極的に絞らせるなど中盤に多くの人数を割いているので、彼らが流動的に連動しながら相手の陣形を乱すことで、スペースと選択肢を作り出していきました。


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析4
――先ほどの続きの場面。チャウからパスを受けるチュクウェゼ。一方、ラインデルスはボールサイドに寄ってきており、ライン間にてパスを引き出す

そして、このあと技術的に重要なポイントとなったのが「打開力」です。
たとえライン間にスペースとパスコースを作り出しても、ヴィオラは最終ラインのメンバーが積極的に縦スライドすることで当該エリアを埋めに来ます。そのため簡単にフリーになることはできない状況でした。
したがって彼らのプレスを外し、前にボールを運ぶ力が求められたところ、ミランは序盤からラインデルスやチュクウェゼが積極的な仕掛けを見せます。


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析5
――先ほどの続きの場面。パスを貰ったラインデルスに対してはCBクアルタが素早く対応。また、ここでは先ほど下がってボールを受けたチュクウェゼに対してビラーギが対応していたため、最終ライン(特に黒丸のエリア)はかなり手薄な状態となっている


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析6
――その後の場面。ヴィオラの最終ラインの状況をしっかりと認識していたラインデルスはワンタッチで当該エリアに持ち出し、クアルタを躱して速攻に移行。惜しい形を作り出した


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析7
――シーン4:同様の場面。後方での数的優位と作り出したサイドのスペースを活かして前進するミラン。なお、ここではロフタスチークが下がってきており、その動きに対応するCBクアルタ(画面外)が引っ張り出される


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析8
――その後の場面。ドリブルでここまで持ち運んだチャウは、中央に侵入したチュクウェゼにパス。


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析9
――チュクウェゼに対し、所定の位置から大きく外れて対応するビラーギ(とクアルタ)。その背後には大きなスペースが残されており、チュクウェゼは突破を図る


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析10
――その後の場面。ビラーギを躱したチュクウェゼが一気に前進し、決定機を演出した

このようにヴィオラは最終ラインが手薄になるリスクを負っているため、ミランからすると上記のようにして速攻に持ち込めれば最前線で優位性を作りやすい状況です。すると16分には理想的なシチュエーションから最後はチュクウェゼが決定機を迎えました。


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析11
――シーン5:ここではベナセルがサイドに流れ、メニャンからパスを受ける


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析12
――その後の場面。ベナセルからチュクウェゼにパス。ここでミランの流動的なポジショニングによってヴィオラの守備組織は大きく乱れており、中央エリアには利用可能なスペースが空いている状態。この後、チュクウェゼのパスは相手に当たりながらもロフタスチークの下へ


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析13
――その後の場面。中央のスペースを使ってロフタスチークが前進し、この後にレオンへパス。その間、最前線にはジルーだけでなくカラブリアとチュクウェゼが飛び込み、手薄なヴィオラの最終ラインに対して優位性を作り出す


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析14
――その後の場面。クアルタの帰陣が間に合わず、ファーサイドではチュクウェゼがフリーで待ち構える。そのエリアにクロスが送られ、決定機を迎えた

ラインデルスとレオンの連携


ここまでは右サイド起点の攻撃を振り返ってきましたが、それでは逆サイドではどうだったか。
そちらのスペースは主にラインデルスが活用します。サイドに流れた彼が対面の相手マーカーから逃れて前向きでボールを受けることで、前方にいるレオンとの連携から決定機を作り出していきました。


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析15
――シーン6:ラインデルスがサイドに流れ、トモリからパスを受ける


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析16
――その後の場面。背後のスペースへ飛び出したレオンにラインデルスからスルーパスが送られ、チャンスシーンとなった


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析17
――シーン7:ここでは左SBフロレンツィが通常の位置でボールを受け、前方へのロングボールを選択。一方、ロフタスチークがボールサイドに下がってくることでマンドラゴラを引き付ける。これにより、前方サイドに流れているラインデルス(※画面外)がフリーになった


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析18
――その後の場面。左サイドで数的優位を形成するミラン。フロレンツィからのロングボールをレオンが落とし、こぼれ球をラインデルスが拾う


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析19
――その後の場面。数的優位を活かすことでレオンがニアゾーンへスルーパスを引き出し、大きなチャンスを作り出した

ラインデルスのスルーパス能力はジルーとの関係においては活きませんが、レオンとの関係においては大きな成果を出します。たとえシンプルな1本のスルーパスだったとしても、レオンのダイナミズムと合わさることで破壊力のある連携プレーになる、と。

すると53分。ラインデルスからのスルーパスを受けたレオンが相手DFとGKをぶち抜き、無人のゴールへ流し込むことに成功しています。


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析20
――シーン8:ヴィオラの人数をかけた攻めを凌いだミランはロングカウンターに移行。まずは前方サイドのラインデルス(画面外)にボールを送る


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析21
――その後の場面。ボールを受けたラインデルスは裏を狙うレオンへのパスコースを見出し、正確なスルーパスを供給。


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_戦術分析22
――その後の場面。レオンは対面のミレンコビッチを寄せ付けずに一気にゴール前に侵入。そのまま相手GKをも躱し、ネットを揺らした

ロフタスチークの先制点に続くこの追加点が決勝ゴールとなり、ミランが勝利を収めました。

フィオレンティーナ1-2ミラン

雑感


この試合のミランは作り出したサイドのスペースを起点に機能的な攻撃を見せるなど、多くの決定機を創出。結果的には接戦となってしまったものの、作り出したチャンス的には3点、4点取れていても不思議ではありませんでした。


【23-24】フィオレンティーナ対ミラン_スタメン
――参考1:この試合における両チームのスコア、及び得点期待値(ヴィオラ:1.70、ミラン:3.17)

チームの中心的存在であるテオとプリシッチがそれぞれ欠場・ベンチスタートの中、能動的な戦術をしっかりと準備し遂行させたピオリ監督は見事だったと思いますし、今回はヴィオラ(イタリアーノ)との過去対戦時の反省を大いに活かしていたように感じました。そのため非常に好印象ですし、ビッグマッチの多い4月もこの調子で頑張ってもらいたいですね。

Forza Milan!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

0Comments