【混乱を引き起こした2つの出来事とは】アタランタ対ミラン【2023-24シーズン・セリエA第15節】

2023-24シーズン・試合
今回はセリエA第15節、アタランタ対ミランのマッチレビューを行います。

スタメン

【23-24】アタランタ対ミラン_スタメン

ベースフォーメーション:
アタランタ「3-4-1-2」
ミラン「4-3-3」


今回のマッチレビューで取り上げるのは「ミランの守備&アタランタの攻撃(ボール保持)」の局面に絞り、ミランに混乱を引き起こした2つの出来事にフォーカスを当てていきます。

基本のセットアップ


混乱が生じた時間帯に言及する前に、まずはお互いの基本セットアップについて確認しておきましょう。


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析1
――シーン1:ハイプレスを仕掛けるミラン

ベースフォーメーション「3-4-1-2」のアタランタに対し、ミランのベースフォーメーション「4―3―3」は陣形の噛み合わせが良く、対応関係が明確になり易い利点がありました。
そのため、ミランとしては効率的に相手の選択肢を管理しつつ、プレッシングによって相手のボール運びを阻んでいく、と。


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析2
――先ほどの続きの場面。ボールはルッジェーリ(左WB)へ展開されるも、そこにはカラブリアが対応。その後ボールを回収した


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析3
――シーン2:ミドルサードでの場面。同様に中盤の選択肢を管理するミラン。コープマイネルスへの縦パスに対し、ラインデルスが厳しいチェックで対応する


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析4
――その後の場面。こぼれ球をプリシッチが拾い、ミランのカウンターとなった

38分には素早いスローインによるリスタートからゴール前でルックマンに仕掛けられて失点。また2トップへの楔のパスなどを起点にプレスを躱され、危険な場面を迎えるシーンもあったものの、後述する後半と比べれば手堅く守れていた印象でした。


1度目の混乱


1-1で迎えた後半、アタランタは重要な戦術修正を行います。

具体的には、ベースとなる陣形を「3-4-1-2」から「3-4-2-1(3-4―3)」へ変更。両ウイング(デ・ケテラーレ、コープマイネルス)をサイド高めに張らせることでミランの両SBを牽制し、これにより後方のWBにスペースを与えました。


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析5
――シーン3:アタランタの前線の陣形と、後方から持ち運ぶルッジェーリ(WB)

守備の基準点をズラされたミランはプレッシングが機能しなくなり、後半立ち上がりから押し込まれます。
元々コープマイネルスを主にマークしていたラインデルスは、相手がサイドに流れたことで守備の基準点を失い迷子に。また、前線ではミランのウイングが相手のCB、WBに対し優位性を作り出される場面が散見され、どちらかをフリーにさせやすくなってしまう、と。


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析6
――シーン4:右サイドからボールを前進させたアタランタは、いったんバックパスにより作り直す


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析7
――その後の場面。ボールは右CBを経由して逆の左CBへ渡る。ここでアタランタはルックマン(※デ・ケテラーレとポジションチェンジ)がカラブリアを牽制し、手前のルッジェーリにチュクウェゼが付く。これによりスカルビーニをフリーにしてしまう。また、逆サイド側ではラインデルスが所定のポジションに戻っておらず、中盤には広大なスペースが生じている


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析8
――その後の場面。スカルビーニがエデルソンとの連携であっさりと中盤スペースに侵入。そのままドリブルでゴール前に持ち運び、シュートを放った


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析9
――シーン5:同様の場面。バックパスによる作り直しを図るアタランタ。ここでミランはプレッシングを仕掛ける


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析10
――その後の場面。ここでチュクウェゼはスカルビーニにプレスに行くが、フリーのルッジェーリ(WB)に展開される


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析11
――その後の場面。例によって中盤にはスペースが生じており、そこにはルックマンが侵入。パスを引き出し、ボールを前進させた

そうしてサイドを起点に押し込み始めたアタランタは、続くフィニッシュワークにおいて「テオの背後」を集中的に狙います。
以前からテオは自身の背後に走り込む相手選手の対応に緩慢な部分が散見されたところ、CBとして出場した際にこの部分が致命的になるのではないかという懸念がありました。

そして前節のフロジノーネ戦では特に問題にならなかったものの、今回のアタランタ戦ではそうした部分が露呈してしまうことになります。


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析12
――シーン6:右サイドからボールを前進させるアタランタ。ここでパシャリッチがテオの背後に走り込み、パスを引き出す


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析13
――その後の場面。ボックス内に侵入したパシャリッチがチャンスを作り出した

優勢に試合を進めたアタランタは55分。サイドを起点に押し込み、最後はデ・ケテラーレのクロスにルックマンが合わせて勝ち越し点を奪いました。


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析14
――シーン7:左サイドから人数をかけて押し込むアタランタ


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析15
――その後の場面。アタランタはパスを繋ぎ、最終的にはサイドのデ・ケテラーレが前方に持ち出す。それと同時に、ゴール前ではルックマンがテオの背後に回り込み、素早くボックス内に飛び込む


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析16
――その後の場面。ルックマンが鋭いクロスに合わせ、ゴールを奪った

その後間もなくして、ミランはチュクウェゼに代えてベナセルを投入。一方、ムサを右サイドに回し、守備時にベースとなる陣形も「5-2-3」へと変更しました。


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析17
――シーン8:ベナセル投入後のミランの守備陣形。ここでアタランタはバックパスによる作り直しを図り、ミランがプレッシングを仕掛ける

これにより中盤、及びサイドでの対応関係を再び明確にしたミランは、徐々に息を吹き返します。


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析18
――その後の場面。先ほどとは異なり、ロフタスチークがスカルビーニにプレスをかけ、ルッジェーリにはムサ(WB)が対応する形を取る。


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析19
――その後の場面。前方のデ・ケテラーレへのパスに対してはカラブリアが対応。また、中盤の選択肢もしっかり管理できている

ちなみにピオリ監督も上記の戦術的問題点は早期に認識していたようで、2失点目を喫する前からベナセルの投入(と多分システム変更)を準備している様子が確認されています。しかし結果的にはアタランタに先手を取られたことで、その対策を打つ前に痛恨の失点を喫してしまった、と。


2度目の混乱


先述のようにしてバランスを取り戻し、いったんは混乱を鎮めたミラン。すると、その後に投入されたヨビッチが80分にネットを揺らし、同点に追いつきます。

一進一退の状況が続く中、2度目の混乱はアディショナルタイム突入後の93分に訪れました。カラブリアが不用意なタックルで相手を倒し、2枚目のイエローカードで退場となってしまいます。

システム変更後のミランは5バックを形成することで、先述したテオ周辺のスペースもカバーしやすい状況となっていたわけですが、カラブリアの退場により再び4バックに。また、88分にラインデルスに代えて中盤としての守備に難のあるアドリを据えていたこともあり、チームは再び混乱に陥ってしまう、と。

すると試合終了間際の95分。中央突破から最後は途中投入のムリエルに華麗なヒールシュートを決められ万事休す。カラブリアの退場により手薄となった最終ラインをまんまと破られての失点でした。


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析20
――シーン9:途中交代のミランチュクがCB間のギャップに侵入し、パスを引き出す。ここでアタランタはトモリ―ムサ間のスペース攻略を図り、ムリエルが当該スペースを狙う


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析21
――その後の場面。当該スペースに侵入するムリエル。そこのカバーにアドリが入るも、捕まえきれず


【23-24】アタランタ対ミラン_戦術分析22
――その後の場面。ムリエルへのパスを許し、華麗なヒールシュートを決められた

以前のミランであれば、こういう時に「バランスメーカー」のクルニッチが手堅くチームの穴をフォローしていたわけですが、契約延長交渉が上手くいかずに関係が破綻してしまったのでしょうか。この試合でも彼に出番が訪れることはありませんでした。

アタランタ3-2ミラン

雑感


テオの注意力を始めとする属人的な問題に加え、先述した組織的・戦術的な問題が合わさり、今日も今日とて守備崩壊を起こしたミラン。最終的なスコアは接戦でも、ゴール期待値(xG)という観点からは完敗でした。


【23-24】アタランタ対ミラン_xG
――参考1:この試合における両チームのxG、及び実際のスコア。ミランのxGが「1.01」なのに対し、アタランタは「3.10」

リーグ戦15試合で18失点というのは全体的に守備の良くなかった昨季をも上回るペースであり、これではインテル(7失点)やユベントス(9失点)に及ぶべくもありません。

たとえ怪我人が戻ってきたとしても、現在のような対応力に欠ける守備組織・戦術が根本的に改善されない限り、安定した結果を得るのは極めて難しいはずです。今の不安定なパフォーマンスのままでも最終的にCL圏内に入れる可能性は確かに考えられますが、その目標達成を確実なものにしつつ、更に上を目指したいなら変化は必須でしょう。

ここからの1・2カ月は冬のメルカートが開幕することもあり、フロントの本気度が窺える時期になりそうですね。

Forza Milan!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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