【スマートな試合運び】ミラン対フロジノーネ【2023-24シーズン・セリエA第14節】

2023-24シーズン・試合
今回はセリエA第14節、ミラン対フロジノーネのマッチレビューを行います。

スタメン

【23-24】ミラン対フロジノーネ_スタメン
ベースフォーメーション:
ミラン「4-3-3」
フロジノーネ「4-2-3-1」


プレス回避


まずはミランの攻撃(ボール保持)とフロジノーネの守備についてです。

フロジノーネは機を見て積極的なプレッシングを実行。前線からの圧力を強め、ミランに完全には主導権を握らせまいとする姿勢を見せます。
そこでまずミランとしては、フロジノーネのプレッシングを如何にして回避していくかがポイントになりました。


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析1
――シーン1-1:ミランの陣形

この点、ミランの最後方ではGKメニャン、2CBトモリとテオ、アンカーのラインデルスが軸となり、両サイドはSB(カラブリア、フロレンツィ)が担当。加えてロフタスチークが頻繁に下がってきてサポートを行います。
対するフロジノーネはハイプレス時に4-4-2をベースとするものの、そのままでは中盤の数的不利(ラインデルス、チーク、ムサに対してバレネチェア、ブラビア)は免れません。そこで主に左CBオコリが縦スライド対応によりチークをマークすることで、中盤エリアのスペース・選択肢を封じ込めにかかりました。


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析2
――シーン1-2:ミランに中盤に対する、フロジノーネの基本的な対応関係

一方、こうしたオコリの動きにより最終ラインは手薄となります。そこでミランとしてはムサのダイナミズムを活かし、彼に前線へ飛び出させる形などで当該スペースを狙っていく、と。


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析3
――シーン2:同様の形で前から圧力を強めるフロジノーネ。ここでミランはムサがオコリの背後のスペースへ狙いを付ける


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析4
――その後の場面。カラブリアからパスを受けるチュクウェゼ。ここでムサが手薄な最終ラインに飛び出してパスを引き出し、惜しい形を作り出した

こうした動きは、あとで言及する後半の2点目のシーンにて報われることになります。

崩し


続いては、ビルドアップ確立後のミランの攻撃についてです。
フロジノーネがリトリート後に4-5-1を形成して構えるのに対し、前半のミランはボトムの基本陣形を「3-1」でセット。後方で数的優位を確保します。

テオ・エルナンデス、CBとしての優れたパフォーマンスについて~VSフロジノーネ~

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この点については上掲の記事でも詳述したように、テオの攻撃性能を活かす狙いがあったように思われます。実際、後方にて比較的自由を得たテオは前方のスペースにボールを持ち出すことで、定期的にチームの崩しのスイッチを入れました。


【23-24】テオ_CB_プレースタイル分析12
――シーン3:トモリからパスを受けたテオは、前方のスペースへとボールを持ち運んで崩しのスイッチを入れる


【23-24】テオ_CB_プレースタイル分析2
――その後の場面。左SBフロレンツィとの連携により、テオは敵陣サイド深くへと侵入。そのままクロスにまで持ち込んだ

またこの局面にて、テオと同様に印象的なパフォーマンスを披露したのがラインデルスです。
相手が4-5-1をベースに中央を固める中、相手中盤ラインの手前でスペースを得たラインデルスは持ち前のパスセンスを発揮。比較的スペースの生じやすい相手4バックの横へ正確に展開したり、生じたライン間のスペースに鋭く差し込んだりと、巧みにボールを動かしていきました。


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析5
――シーン4:フリーでパスを受ける。ラインデルス


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析6
――その後の場面。ここでは右サイドでフリーのチュクウェゼへ正確なパスを展開。チャンスを演出した


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析7
――シーン5:別の場面。ここでは左へのサイドチェンジを選択するラインデルス


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析8
――その後の場面。高い位置でボールを受けるフロレンツィ。ここからクロスを入れ、チャンスを作り出した


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析9
――シーン6:別の場面。ここではまずプリシッチが相手中盤ライン手前に下りてきてパスを引き出し、ドリブルによるキープで相手MFを引き付ける


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析10
――その後の場面。プリシッチのキープにより相手MFを1枚引き出すことで、中盤にスペースを生じさせる。当該スペースにはムサが侵入


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析11
――その後の場面。ボールを受けたラインデルスは、ムサへと鋭い縦パスを通しチャンスを演出した

しかしながら、肝心のフィニッシュワークにてチームはやや停滞。右サイド側ではチュクウェゼ、ロフタスチークが揃って精彩を欠き、左サイドに関しても流動的な動きを見せるプリシッチに代わり、高い位置を取ることの多かったフロレンツィの打開力が物足りず。そのためゴール前へとボールを持ち運んでも、決定的なシュートチャンスへと結びつけることが中々出来ませんでした。

それでもミランは何とか相手のミスに付け込み、43分にはカウンターから最後はヨビッチが決めて先制に成功。良い結果を得て試合を折り返します。

後半の修正


相手ゴール前での打開力に問題を抱えたミランは後半、少しシステムを弄りました。

ここでポイントになったのが左SBフロレンツィです。先にも少し触れたように、前半の彼はサイドを起点としつつ積極的に高い位置を取りましたが、後半になるとアンカー横に侵入して中盤の選手として振る舞う頻度を大きく高めます。


【23-24】ミラン対フロジノーネ_前半_攻撃時の平均ポジション
――参考1:この試合「前半」におけるミランの攻撃時の平均ポジション。フロレンツィ(42)の位置に注目


【23-24】ミラン対フロジノーネ_後半_攻撃時の平均ポジション
――参考2:この試合「後半」におけるミランの攻撃時の平均ポジション。フロレンツィ(42)の位置が大きく変わった


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析12
――シーン7:後半の一場面。アンカー脇に入るフロレンツィ

一方、これにより左サイドの高い位置にはプリシッチがポジショニング。前半からやや不安定な守備を見せていた相手右SBのモンテリージに対し、攻撃性能の高いプリシッチをぶつける形で優位性を生み出します。


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析13
――シーン8:サイドに開くプリシッチへムサからボールが渡る。この後、プリシッチはモンテリージに対しドリブルで仕掛ける


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析14
――その後の場面。プリシッチがモンテリージを躱してそのままボックス内に侵入。チャンスを作り出した

すると後半開始早々の50分、メニャンからの正確なロングパスを裏に抜け出したプリシッチが完璧なトラップで処理し、そのままドリブルでゴール前に侵入してネットを揺らしました。


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析15
――シーン9:GKメニャンがボールを持っている場面。ここで相手CBオコリはチークへのパスを警戒して少し前に出ており、最終ラインのケアがやや甘い状況。またモンテリージの周辺ではプリシッチとムサが優位性を生み出す。そこで、メニャンは当該エリアにすかさず正確なロングパスを送り込む


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析16
――その後の場面。メニャンのパスに完璧なトラップで応えたプリシッチ。そのまま手薄な最終ラインをぶち抜き、ゴールを奪った

このゴールが生まれた決定的な要因はメニャンとプリシッチのプレーの質の高さにあったものの、先述したプリシッチの打開力を活かすためのシステム修正や、ムサの飛び出しによる優位性の創出といった戦術的側面もポジティブに影響していたように思いますね。

また、フロレンツィの中盤化の更なるメリットとして、左サイド側の流動性が高まりやすくなることが挙げられるでしょう。
例えばフロレンツィが中盤から最終ラインに下がることで、テオが従来の左SBのような形でサイドに開くことが出来ます。


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析17
――シーン10:フロレンツィが最終ラインに落ち、代わりにテオがサイド前方へと動く


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析18
――その後の場面。メニャンからのロングパスをテオが受けた

そしてボトムの陣形が基本的に「3-2」となることで、(初期位置が)アンカーポジションの選手もまた同様に動きの幅が広がり易くなります。実際に73分には、途中交代でアンカーに入ったアドリとテオの流動的なポジションチェンジにより、フロジノーネのハイプレスを回避していきました。


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析19
――シーン11:アドリが左サイドに落ち、相手MFを1枚引き連れながらパスを引き出す。中盤ではフロレンツィが選択肢になると共に、テオもスペースに侵入


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析20
――その後の場面。フロレンツィが気になる相手SHはテオに付き切れず、アドリからテオにパスが通る


【23-24】ミラン対フロジノーネ_戦術分析21
――その後の場面。フリーでテオが前を向き、速攻を仕掛ける。ここからCKを獲得し、チームの3点目に繋がった

先に失点を許したフロジノーネは積極果敢な守備で対抗してきたものの、2失点目・3失点目(に繋がるCKに至ったシーン)のいずれも前向きな守備を裏返されたことが原因という事で、結果的にその積極性が実を結ぶことはありませんでした。

一方、ミランとしては相手の隙を突いての3得点。スマートなゲーム運びにより無事快勝を収めることに成功しています。

ミラン3-1フロジノーネ

雑感


試合終盤に喫した1失点は余計だったものの、9月以来となる3得点という事で久々にスカッとする試合内容だったのではないかと感じました。

もちろん、今回のフロジノーネが戦力的・戦術的にミランにとって御しやすいタイプの相手だったことは留意すべきですし、継続性が大きな課題となっている今のミランからすると次戦以降の結果が肝要でしょう。

来るアタランタ、ニューカッスルとの2連戦は今後チームが勢いに乗れるかどうかを示す絶好の機会ですし、依然として戦力事情が厳しい中ではありますが頑張ってもらいたいですね。

Forza Milan!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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