デ・ケテラーレ、復調の兆し~アタランタで与えられた「適切な役割」について~
昨シーズンの不振から立ち直るべく、今夏のメルカートでアタランタに移籍したシャルル・デ・ケテラーレ。
嬉しいことに、彼の新天地でのスタートは非常に順調です。
開幕デビュー戦でゴールを奪うと、第3節にもアシストを記録。近いようで遠かった「結果」が今季は早速出始めています。
無論、内容面においても昨季(ミラン)と今季(アタランタ)とで変化が生じている点も注目されるべきでしょう。
そこで今回はデ・ケテラーレについて、アタランタでのここまでのプレーぶりを振り返りつつ、復調傾向にある理由を考えていきたいと思います。
まず始めに注目していきたいのはデ・ケテラーレの「ポジション」についてです。

――参考1:今季ここまでのデ・ケテラーレのヒートマップ
アタランタでのデ・ケテラーレはここまで2トップの一角として起用されることが多く、具体的には上掲のように「右サイド前方」でのプレーが中心となっています。
この点、昨季ミランでの彼は所謂トップ下の位置での起用がほとんどであり、プレーエリアも割と満遍なく前後左右に広がっていますね。

――参考2:2022-23シーズンのセリエAにおけるデ・ケテラーレのヒートマップ
しかしながら、ミランでのデ・ケテラーレのプレーぶりは「窮屈」と評する他ないものでした。
良くも悪くもチームとしてポジショニングの制約が少ないことで、彼は状況に応じた適切な立ち位置を見つけるのに大苦戦。またビルドアップ時には相手の守備に応じて積極的に受けに下がる必要がありましたが、これはゴール方向への質の高いプレーを強みとするデ・ケテラーレにとって望ましい役割とはいえませんでした。

なお、このこと(ポジション・役割のミスマッチ)については先日の記者会見にてデ・ケテラーレ本人も示唆しています。
デ・ケテラーレ本人が語るように、アタランタでの彼はより継続的に高い位置でプレーできます。また、その動きには「幅」があり、サイドに流れてチャンスメイクする形も作り出しやすいです。

――シーン1:右サイド深くで味方WBがボールを持つ間、サポートのために同サイドに移動するデケテラーレ(CDK)

――その後の場面。味方WBとのワンツーで中央への切り込みをサポートする

――その後の場面。流れの中でサイドに移動したデ・ケテラーレに再びパスが渡る

――その後の場面。ファーサイドから飛び込む味方に対し、デ・ケテラーレから正確なクロスが供給される。これによりCKを獲得し、デ・ケテラーレのアシストからアタランタの1点目が生まれた
元々デケテラーレはこのように、サイド方向に流れてチャンスメイクする動きも特徴の1つとしていたわけですが、昨季のミランだとシステム上の観点やチーム全体の連動性の低さなどにより、そうした動きを見せることは稀でした。
先述の通り、より高い位置でプレーすることが可能になったデ・ケテラーレは必然的にゴール方向へのプレー機会が増加します。
その1つとして注目したいのが「裏への飛び出し」です。
例えば第3節のモンツァ戦ではデ・ケテラーレがスカマッカと共に初先発を果たし、この2トップの良好な関係性が早くも見受けられました。スカマッカが作り出したスペースにデ・ケテラーレが飛び出すという形ですね。

――シーン2:スカマッカへと縦パスが入る

――その後の場面。スカマッカがサイドに流れながらボールキープ。その間にデ・ケテラーレが裏のスペースに飛び出し、スカマッカからパスを引き出す

――その後の場面。デ・ケテラーレがファーサイドに侵入する味方へ正確なクロスを通し、惜しい形を作り出した

――シーン3:左サイドからボールを前進させるアタランタ。ここでスカマッカは下がってボールを受け、相手CBを引き付けつつポストプレー。

――その後の場面。周囲の味方とのパス回しからボールは再びスカマッカへ。ここでモンツァの守備組織は崩れており、最終ラインには綻びがある状況。そこで逆サイドからデ・ケテラーレが侵入し、当該スペースにてパスを引きそうとした
モンツァ戦におけるアタランタの3点目は正に、デ・ケテラーレのそうした動きが活かされたシーンでした。

――シーン4:デ・ケテラーレからスカマッカに縦パスが入る

――その後の場面。ボールはスカマッカを経由して左サイド側へ。ここでデ・ケテラーレはダイアゴナルに鋭く裏のスペースに飛び出し、相手CB2人を引き付ける

――その後の場面。デ・ケテラーレの飛び出しにより相手CB2人が引き付けられた結果、バイタルエリアでスカマッカがフリーになり、そこにパスが入る

――その後の場面。時間とスペースを得たスカマッカから放たれた強烈なミドルシュートがネットに突き刺さり、アタランタが3点目を獲得。モンツァはボランチが急いでカバーに入ろうとするが間に合わなかった
ガスペリーニ監督はFWを優秀な点取り屋に鍛え上げる手腕にも長けており、デ・ケテラーレもまたその恩恵を十分に受けられるはずです。オフザボール時の動きに磨きをかけると共に、ゴール前での冷静さを身に付けられれば驚異的な存在になれるでしょう。
ここまでで見てきたような変化により、チームのチャンスに絡む頻度が増えているデ・ケテラーレですが、今のところは肝心のチャンスシーンにて少しモタついてしまう場面が見られます。
例えばゴール前の狭いスペースで受けた際に十分なボールコントロールが出来ず、決定機にまで繋げ切れないといったパターンです。

――シーン5:相手ボックス内でスカマッカが相手CBを押し下げ、それにより生じた手前のスペースにデ・ケテラーレが侵入。左サイドからパスを引き出す

――その後の場面。しかしトラップ時にボールが浮いてしまう

――その後の場面。浮き球のボールを何とか処理しようとするも、相手にクリアされた

――シーン6:ゴール前のハーフスペースにてパスを引き出すデ・ケテラーレ

――その後の場面。ボールを受けたデ・ケテラーレの前方にはスペースと選択肢(味方WB)があり、彼のパス技術であれば決定機を作り出せそうな状況。しかしトラップ時のボールコントロールが十分ではなく少しモタついてしまい、パス出しのタイミングを逸してしまった
如何に素晴らしいキック精度・ビジョンを有していても、トラップ時のボールコントロールが十分でないとそうした能力をフルに活かすのは難しくなります。おそらく今はまだ、セリエAにおけるスペース感覚に適応している最中だと考えられますね。
しかし裏を返せば、セリエAディフェンダーとのタイトな距離感に慣れていくことでプレーの精度も上がっていくでしょう。そうなった時にはいよいよデ・ケテラーレの本領が存分に発揮されると思います。
今シーズンが始まってまだ3試合ではありますが、既に昨季記録したスコアポイントを上回っているデ・ケテラーレ。
良いスタートを切ることが出来たことで自信も増したはずですし、アタランタでなら引き続き適切な環境下でプレー出来そうだという事で、ここから更なる成長を遂げていくための要素は十分に揃ったといえるでしょう。昨季の鬱憤を晴らす活躍に期待したいですね。
デ・ケテラーレ個人のファンとして、今後も彼のパフォーマンスについては注目していこうと思います。
嬉しいことに、彼の新天地でのスタートは非常に順調です。
開幕デビュー戦でゴールを奪うと、第3節にもアシストを記録。近いようで遠かった「結果」が今季は早速出始めています。
無論、内容面においても昨季(ミラン)と今季(アタランタ)とで変化が生じている点も注目されるべきでしょう。
そこで今回はデ・ケテラーレについて、アタランタでのここまでのプレーぶりを振り返りつつ、復調傾向にある理由を考えていきたいと思います。
ポジション・役割
まず始めに注目していきたいのはデ・ケテラーレの「ポジション」についてです。

――参考1:今季ここまでのデ・ケテラーレのヒートマップ
アタランタでのデ・ケテラーレはここまで2トップの一角として起用されることが多く、具体的には上掲のように「右サイド前方」でのプレーが中心となっています。
この点、昨季ミランでの彼は所謂トップ下の位置での起用がほとんどであり、プレーエリアも割と満遍なく前後左右に広がっていますね。

――参考2:2022-23シーズンのセリエAにおけるデ・ケテラーレのヒートマップ
しかしながら、ミランでのデ・ケテラーレのプレーぶりは「窮屈」と評する他ないものでした。
良くも悪くもチームとしてポジショニングの制約が少ないことで、彼は状況に応じた適切な立ち位置を見つけるのに大苦戦。またビルドアップ時には相手の守備に応じて積極的に受けに下がる必要がありましたが、これはゴール方向への質の高いプレーを強みとするデ・ケテラーレにとって望ましい役割とはいえませんでした。

デ・ケテラーレのトップ下適性について
※関連記事
なお、このこと(ポジション・役割のミスマッチ)については先日の記者会見にてデ・ケテラーレ本人も示唆しています。
アタランタでの僕はより高い位置で、ゴールの近くでプレーできるんだ。それによって僕は再びベストな自分になれる。でも、去年は攻撃的ミッドフィルダーだったね
デ・ケテラーレ本人が語るように、アタランタでの彼はより継続的に高い位置でプレーできます。また、その動きには「幅」があり、サイドに流れてチャンスメイクする形も作り出しやすいです。

――シーン1:右サイド深くで味方WBがボールを持つ間、サポートのために同サイドに移動するデケテラーレ(CDK)

――その後の場面。味方WBとのワンツーで中央への切り込みをサポートする

――その後の場面。流れの中でサイドに移動したデ・ケテラーレに再びパスが渡る

――その後の場面。ファーサイドから飛び込む味方に対し、デ・ケテラーレから正確なクロスが供給される。これによりCKを獲得し、デ・ケテラーレのアシストからアタランタの1点目が生まれた
元々デケテラーレはこのように、サイド方向に流れてチャンスメイクする動きも特徴の1つとしていたわけですが、昨季のミランだとシステム上の観点やチーム全体の連動性の低さなどにより、そうした動きを見せることは稀でした。
裏への飛び出し
先述の通り、より高い位置でプレーすることが可能になったデ・ケテラーレは必然的にゴール方向へのプレー機会が増加します。
その1つとして注目したいのが「裏への飛び出し」です。
例えば第3節のモンツァ戦ではデ・ケテラーレがスカマッカと共に初先発を果たし、この2トップの良好な関係性が早くも見受けられました。スカマッカが作り出したスペースにデ・ケテラーレが飛び出すという形ですね。

――シーン2:スカマッカへと縦パスが入る

――その後の場面。スカマッカがサイドに流れながらボールキープ。その間にデ・ケテラーレが裏のスペースに飛び出し、スカマッカからパスを引き出す

――その後の場面。デ・ケテラーレがファーサイドに侵入する味方へ正確なクロスを通し、惜しい形を作り出した

――シーン3:左サイドからボールを前進させるアタランタ。ここでスカマッカは下がってボールを受け、相手CBを引き付けつつポストプレー。

――その後の場面。周囲の味方とのパス回しからボールは再びスカマッカへ。ここでモンツァの守備組織は崩れており、最終ラインには綻びがある状況。そこで逆サイドからデ・ケテラーレが侵入し、当該スペースにてパスを引きそうとした
モンツァ戦におけるアタランタの3点目は正に、デ・ケテラーレのそうした動きが活かされたシーンでした。

――シーン4:デ・ケテラーレからスカマッカに縦パスが入る

――その後の場面。ボールはスカマッカを経由して左サイド側へ。ここでデ・ケテラーレはダイアゴナルに鋭く裏のスペースに飛び出し、相手CB2人を引き付ける

――その後の場面。デ・ケテラーレの飛び出しにより相手CB2人が引き付けられた結果、バイタルエリアでスカマッカがフリーになり、そこにパスが入る

――その後の場面。時間とスペースを得たスカマッカから放たれた強烈なミドルシュートがネットに突き刺さり、アタランタが3点目を獲得。モンツァはボランチが急いでカバーに入ろうとするが間に合わなかった
ガスペリーニ監督はFWを優秀な点取り屋に鍛え上げる手腕にも長けており、デ・ケテラーレもまたその恩恵を十分に受けられるはずです。オフザボール時の動きに磨きをかけると共に、ゴール前での冷静さを身に付けられれば驚異的な存在になれるでしょう。
更なる伸びしろ
ここまでで見てきたような変化により、チームのチャンスに絡む頻度が増えているデ・ケテラーレですが、今のところは肝心のチャンスシーンにて少しモタついてしまう場面が見られます。
例えばゴール前の狭いスペースで受けた際に十分なボールコントロールが出来ず、決定機にまで繋げ切れないといったパターンです。

――シーン5:相手ボックス内でスカマッカが相手CBを押し下げ、それにより生じた手前のスペースにデ・ケテラーレが侵入。左サイドからパスを引き出す

――その後の場面。しかしトラップ時にボールが浮いてしまう

――その後の場面。浮き球のボールを何とか処理しようとするも、相手にクリアされた

――シーン6:ゴール前のハーフスペースにてパスを引き出すデ・ケテラーレ

――その後の場面。ボールを受けたデ・ケテラーレの前方にはスペースと選択肢(味方WB)があり、彼のパス技術であれば決定機を作り出せそうな状況。しかしトラップ時のボールコントロールが十分ではなく少しモタついてしまい、パス出しのタイミングを逸してしまった
如何に素晴らしいキック精度・ビジョンを有していても、トラップ時のボールコントロールが十分でないとそうした能力をフルに活かすのは難しくなります。おそらく今はまだ、セリエAにおけるスペース感覚に適応している最中だと考えられますね。
しかし裏を返せば、セリエAディフェンダーとのタイトな距離感に慣れていくことでプレーの精度も上がっていくでしょう。そうなった時にはいよいよデ・ケテラーレの本領が存分に発揮されると思います。
おわりに
今シーズンが始まってまだ3試合ではありますが、既に昨季記録したスコアポイントを上回っているデ・ケテラーレ。
良いスタートを切ることが出来たことで自信も増したはずですし、アタランタでなら引き続き適切な環境下でプレー出来そうだという事で、ここから更なる成長を遂げていくための要素は十分に揃ったといえるでしょう。昨季の鬱憤を晴らす活躍に期待したいですね。
デ・ケテラーレ個人のファンとして、今後も彼のパフォーマンスについては注目していこうと思います。