ミランVSマンツーマンディフェンス~ ”レジスタ”メニャンの積極的活用~
先日のトリノ戦では、ビルドアップの局面においてGKメニャンが大きな貢献を果たしました。
確かにメニャンが後方でのパス回しに積極的に関与するのは珍しい話ではないものの、その「度合い」という点に着目すると、今回のパフォーマンスは特筆に値します。
というのも、昨季におけるメニャンの平均パス本数が約「33本」であったのに対し、このトリノ戦では「68本」を記録。通常時の倍以上となるパスを供給しました。

――参考1:トリノ戦における最終ラインメンバーのパス本数。メニャンはトモリに次いでチーム2位のパス本数を記録
そこで今回は、後方でのビルドアップに際して益々影響力を増したように見られるメニャンに焦点を当てつつ、マンツーマン志向の強い相手の守備に対するミランの対抗手段について見ていきたいと思います。
前回のマッチレビュー記事にて言及した通り、トリノはマンツーマン志向の強い守備を実行し、前線からミランのビルドアップを妨害しにかかりました。

――参考1:前線から抑えにかかるトリノ
そこでポイントになったのがメニャンの存在です。トリノはGKメニャンに対してはプレスに行かず(数的なリスクを考慮して中々行けず)、そのパスコースを全てマークする形を基本としたため、メニャンは比較的自由にボールを持つことが出来ました。
そしてメニャンがDFラインの一員として振る舞えるパーソナリティーと技術的特性を備えていることにより、他のDFラインのメンバーは大胆な動き(ポジショニング)を行い易くなります。そのためまずミランとしては「(メニャンを含む)DF陣の流動的な動き」を駆使することで、トリノのマンツーマン守備を回避しにかかりました。

――シーン2:テオが対面のベッラノーヴァを引き連れて中央に移動。これにより生じた左サイドのスペースにトモリが流れてサナブリアのマークを外し、メニャンから縦パスを引き出す

――その後の場面。フリーでボールを受けたトモリはそのまま前進していった

――シーン3:カラブリアが対面のヴォイヴォダを引き連れて中央に移動。これにより生じた右サイドのスペースにチャウが流れ、メニャンからパスを引き出した
上掲はサイドに開くCBを経由してのボール前進ですが、以下のように中に侵入していくSBを経由してのプレス回避も披露しています。

――シーン4:アンカーのクルニッチが対面のヴラシッチを引き連れて前方に移動。それにより生じた中央のスペースにテオが侵入していく

――その後の場面。中央に侵入してきたテオに、メニャンから正確なパスが遅れる

――その後の場面。テオに対してはベッラノーヴァが付いてくるが、テオはクルニッチのスペースメイクによって得た中盤のスペースを利用。レオンとのワンツーで中央突破を図る

――その後の場面。テオがフリーで前を向き、この後非常に惜しい形を作り出した
後方から中盤の選手に直接ボールを送り・前進させることが難しい状況の中、ミランはこのようにメニャンとDF陣の流動的な動きを利用することでトリノに対抗していきました。
もう一つ、ミランがトリノのプレッシング対抗策として主に準備していたのが「ロングボール」です。
前線から人数をかけて抑えにかかるトリノですが、その後方では数的同数でミランのアタッカー陣と対峙する状況が生じます。そこでミランとしては素早く前線にボールを入れ、一気に攻め込み得るチャンスを活かしたいところ。
この点、ミランは単に前線のジルーにロングボールを入れる形を採るのではなく、彼を囮として利用することで相手最終ラインを乱れさせ、そこを機動力のあるアタッカーに突かせるという形を主に採用しました。

――シーン5:ミランは自陣深くに5人の相手選手を引き付ける。ここで、メニャンは前線へのロングボールを選択

――その後の場面。ここでジルーは下がることで対面のCBボンジョルノを最終ラインから誘き出す。一方、レオンとプリシッチの2人が最前線に侵入して2対2の局面を作る。メニャンからのボールをプリシッチが前方に流し、それをレオンが拾う

――一気に相手PA内にまでボールを持ち込み、チャンスを作り出した
この際に相手最終ラインへのアタックを主導するのはレオン、プリシッチですが、そこにはラインデルスも積極的に加わります。抜群の運動量と機動力を持つ彼が絡むことで、相手に更なる負荷をかけることが可能になる、と。

――シーン6:メニャンが前線へのロングボールを選択

――ここではラインデルスも裏に飛び出し、前線で3対3の状況を作り出す。メニャンからのロングボールは、ラインデルスに付いていたリッチがクリア

――その後の場面。こぼれ球をレオンが拾い、そのままシュートにまで持ち込んだ

――シーン7:メニャンが前線へのロングボールを選択

――その後の場面。リッチがジルーとの交錯で転倒し、ラインデルスがフリーになる。こぼれ球は惜しくもプリシッチに届かなかったものの、もしここで繋がっていれば3対2のビッグチャンスが生まれていた
こうした彼らの動きを活かしているのがメニャンです。
上掲のシーンはいずれも、優れたパス判断とキック精度を兼備したメニャンによるロングボールが起点となって生まれました。
トリノと同様にアグレッシブな守備で臨んできた開幕節のボローニャとの一戦でも、メニャンは「55本」のパスを記録。昨年以前の平均と比べてパス本数が大きく増加しています。
今季のメニャンはビルドアップの局面にて益々その価値を示すはずです。対戦相手の戦術にもよるでしょうが、例えばここ2節のようにアグレッシブな守備を仕掛けてくる相手に対しては引き続き非常に重要な貢献を果たすでしょう。
守護神兼レジスタとして、今後もチームを支え続けてもらいたいと思います。
確かにメニャンが後方でのパス回しに積極的に関与するのは珍しい話ではないものの、その「度合い」という点に着目すると、今回のパフォーマンスは特筆に値します。
というのも、昨季におけるメニャンの平均パス本数が約「33本」であったのに対し、このトリノ戦では「68本」を記録。通常時の倍以上となるパスを供給しました。

――参考1:トリノ戦における最終ラインメンバーのパス本数。メニャンはトモリに次いでチーム2位のパス本数を記録
そこで今回は、後方でのビルドアップに際して益々影響力を増したように見られるメニャンに焦点を当てつつ、マンツーマン志向の強い相手の守備に対するミランの対抗手段について見ていきたいと思います。
DF陣の流動的な動き
前回のマッチレビュー記事にて言及した通り、トリノはマンツーマン志向の強い守備を実行し、前線からミランのビルドアップを妨害しにかかりました。

――参考1:前線から抑えにかかるトリノ
そこでポイントになったのがメニャンの存在です。トリノはGKメニャンに対してはプレスに行かず(数的なリスクを考慮して中々行けず)、そのパスコースを全てマークする形を基本としたため、メニャンは比較的自由にボールを持つことが出来ました。
そしてメニャンがDFラインの一員として振る舞えるパーソナリティーと技術的特性を備えていることにより、他のDFラインのメンバーは大胆な動き(ポジショニング)を行い易くなります。そのためまずミランとしては「(メニャンを含む)DF陣の流動的な動き」を駆使することで、トリノのマンツーマン守備を回避しにかかりました。

――シーン2:テオが対面のベッラノーヴァを引き連れて中央に移動。これにより生じた左サイドのスペースにトモリが流れてサナブリアのマークを外し、メニャンから縦パスを引き出す

――その後の場面。フリーでボールを受けたトモリはそのまま前進していった

――シーン3:カラブリアが対面のヴォイヴォダを引き連れて中央に移動。これにより生じた右サイドのスペースにチャウが流れ、メニャンからパスを引き出した
上掲はサイドに開くCBを経由してのボール前進ですが、以下のように中に侵入していくSBを経由してのプレス回避も披露しています。

――シーン4:アンカーのクルニッチが対面のヴラシッチを引き連れて前方に移動。それにより生じた中央のスペースにテオが侵入していく

――その後の場面。中央に侵入してきたテオに、メニャンから正確なパスが遅れる

――その後の場面。テオに対してはベッラノーヴァが付いてくるが、テオはクルニッチのスペースメイクによって得た中盤のスペースを利用。レオンとのワンツーで中央突破を図る

――その後の場面。テオがフリーで前を向き、この後非常に惜しい形を作り出した
後方から中盤の選手に直接ボールを送り・前進させることが難しい状況の中、ミランはこのようにメニャンとDF陣の流動的な動きを利用することでトリノに対抗していきました。
効果的なロングボール
もう一つ、ミランがトリノのプレッシング対抗策として主に準備していたのが「ロングボール」です。
前線から人数をかけて抑えにかかるトリノですが、その後方では数的同数でミランのアタッカー陣と対峙する状況が生じます。そこでミランとしては素早く前線にボールを入れ、一気に攻め込み得るチャンスを活かしたいところ。
この点、ミランは単に前線のジルーにロングボールを入れる形を採るのではなく、彼を囮として利用することで相手最終ラインを乱れさせ、そこを機動力のあるアタッカーに突かせるという形を主に採用しました。

――シーン5:ミランは自陣深くに5人の相手選手を引き付ける。ここで、メニャンは前線へのロングボールを選択

――その後の場面。ここでジルーは下がることで対面のCBボンジョルノを最終ラインから誘き出す。一方、レオンとプリシッチの2人が最前線に侵入して2対2の局面を作る。メニャンからのボールをプリシッチが前方に流し、それをレオンが拾う

――一気に相手PA内にまでボールを持ち込み、チャンスを作り出した
この際に相手最終ラインへのアタックを主導するのはレオン、プリシッチですが、そこにはラインデルスも積極的に加わります。抜群の運動量と機動力を持つ彼が絡むことで、相手に更なる負荷をかけることが可能になる、と。

――シーン6:メニャンが前線へのロングボールを選択

――ここではラインデルスも裏に飛び出し、前線で3対3の状況を作り出す。メニャンからのロングボールは、ラインデルスに付いていたリッチがクリア

――その後の場面。こぼれ球をレオンが拾い、そのままシュートにまで持ち込んだ

――シーン7:メニャンが前線へのロングボールを選択

――その後の場面。リッチがジルーとの交錯で転倒し、ラインデルスがフリーになる。こぼれ球は惜しくもプリシッチに届かなかったものの、もしここで繋がっていれば3対2のビッグチャンスが生まれていた
こうした彼らの動きを活かしているのがメニャンです。
上掲のシーンはいずれも、優れたパス判断とキック精度を兼備したメニャンによるロングボールが起点となって生まれました。
おわりに
トリノと同様にアグレッシブな守備で臨んできた開幕節のボローニャとの一戦でも、メニャンは「55本」のパスを記録。昨年以前の平均と比べてパス本数が大きく増加しています。
今季のメニャンはビルドアップの局面にて益々その価値を示すはずです。対戦相手の戦術にもよるでしょうが、例えばここ2節のようにアグレッシブな守備を仕掛けてくる相手に対しては引き続き非常に重要な貢献を果たすでしょう。
守護神兼レジスタとして、今後もチームを支え続けてもらいたいと思います。