クリスティアン・プリシッチの特徴・プレースタイルについて~魅力的な攻撃センス~
先日、クリスティアン(クリスチャン)・プリシッチのミラン移籍が正式発表されました。
契約期間は2027年6月までの4年間で、1年間の延長OP付き。背番号は「11」を付けるとのこと。
また、報道によると移籍金は2200万ユーロで、年俸は約400万ユーロと伝えられています。
今回はそんなプリシッチについて、その特徴やプレースタイルを確認していきたいと思います。
プリシッチは24歳のアメリカ人アタッカー。なおクロアチア国籍を取得しているため、EU圏選手でもあります。
わずか17歳でドルトムントにてトップチームデビューを果たすと、ブンデスリーガの外国人プレーヤーとしては最年少でゴールを記録。またアメリカ代表でも同国史上最年少ゴールを記録するなど、鮮烈なデビューシーズンを送りました。
結局ドルトムントでは4シーズンを過ごし、計127試合で19ゴール・26アシストを記録。その後6000万ユーロで移籍したチェルシーでも4年間で145試合26ゴール・21アシストを記録し、今夏ミランへ加入という流れです。
また、プリシッチはアメリカ代表でも既に60試合のキャップを重ね、昨年のW杯では中心選手としてチームを牽引。24歳にして実に多くの経験を持っている選手だといえますね。
続いてプリシッチのプレースタイル・特徴についてですが、この点はプリシッチ自身がミラン加入後の公式インタビューにて語っています。
1つ目の特徴として挙げられるのは「ドリブル能力」です。
プリシッチは自身の持つ優れたボールコントロール(テクニック)と加速力を活かし、積極的にボールを前方へと持ち運んでいく事が出来ます。

――シーン1:サイドでボールを持ったプリシッチ(赤)

――その後の場面。果敢にドリブルで仕掛け、突破を図った

――シーン2:ライン間でパスを引き出すプリシッチ

――その後の場面。プリシッチがフリーで前を向き、ボールを運んでいった
またデータからも、プリシッチが積極的に危険なエリアへとボールを持ち運んでいることや、ドリブルで何度も対面の相手を抜き去っていることが分かりますね(※データは近年プリシッチが最も良い成績を残した19-20シーズンのものを参照)。

――参考1:2019-20シーズンにおけるプリシッチのドリブルに関する1試合平均のスタッツ、及びプレミアリーグのアタッカーと比較したパーセンタイル
こうしたドリブル能力は相手の注意を引き付け、その周囲にスペースを生み出すことも可能にします。そのため当該スペースへと味方が走り込み、そこへプリシッチがパスを通すといった連係プレーにより、相手の守備組織を崩すことが出来る、と。

――シーン3:プリシッチ(赤)がサイドでボールを持つ

――その後の場面。プリシッチが中央に切り込み、相手ボランチの注意を引き付ける。その間味方アタッカーが背後のスペースに侵入し、プリシッチからパスを引き出そうとする

――その後の場面。プリシッチからフリーの味方アタッカーへとパスが通り、チャンスへと繋がった
個の突破だけではなく連携による打開を織り交ぜることで、プリシッチのドリブルは組織的に大きな効果を発揮するでしょう。
ドリブルによる打開を強みとするプリシッチですが、それだけでなくオフザボールにおいても積極的かつ素早いプレーを見せます。
例えば相手最終ラインのギャップを突く動きです。

――シーン4:「シーン2」の続きの場面。プリシッチはボールを運んだ後、左サイドに展開する

――その後の場面。ボールを離した後、プリシッチはシームレスに相手DFラインの背後へと飛び出そうとする

――シーン5:別の場面。味方WBがボールを持ち込む間、プリシッチは相手最終ラインのギャップから外に流れてパスを引き出す

――その後の場面。ボールを受けたプリシッチに対しては相手SBの他に、相手CBも出てきて対処する。これにより中央ゴール前にスペースが生まれ、そこには味方WBが走り込む

――その後の場面。プリシッチが当該スペースにクロスを送り、決定機を演出した
このように相手SB-CB間にタイミング良く侵入することでパスを引き出したり、当該相手SB・CBを引き付けてスペースを作り出したりといった形でチャンスに絡むことが出来る、と。
また、こうしたゴール方向への意識は「ゴール前でのボールタッチ回数」という形にも表れています。

――参考2:2019-20シーズンにおけるプリシッチのボールタッチに関する1試合平均のスタッツ、及びプレミアリーグのアタッカーと比較したパーセンタイル。相手PA内で多くのボールに触ることが出来ている
フィジカル(肉体的強さ)や身長(ヘディング)に別段優れているわけではないプリシッチにとって、相手ゴール前でスペースを見出し・侵入し・利用するためのスピードとプレー判断・精度は違いを作り出す上で特に重要です。この点、彼にはその手の能力が水準以上に備わっているように見受けられますね。

――シーン6:左サイドから崩しにかかるチェルシー。この時プリシッチは逆サイドにいたが、ニアにスペースが生まれることを察知し、素早く走り込む

――その後の場面。クロスに頭で合わせ、ポスト直撃のシュートを放った
続いて言及する特徴は「多様な起用法」という事で、プリシッチ自身が語るように、彼は2列目の様々なポジションでプレー可能です。実際にこれまでのキャリアでは2列目のポジションを満遍なく務めてきました。

――参考3:これまでのプリシッチの出場ポジション
大枠の役割自体はどのポジションでも変わりませんが、サイドでも中央でもドリブルや飛び出しを活かしたプレーを行えるという点は有用です。もしミランにおいても触れ込み通りどのポジションでも起用できるなら、非常に重宝されるでしょうね。
最後に、ネガティブなポイントとして「怪我耐性」にも言及しておきます。

――参考4:これまでのプリシッチの負傷履歴
プリシッチは2017年以降、毎年のように負傷離脱を経験。またチェルシー移籍後は離脱時期が長引くようになるなど悪化し、在籍4年間で1シーズン平均14試合ほどを怪我で欠場していました。明らかに多いですね。
環境が変わることで改善する可能性も考えられますが、守備時にも強度が強く求められるであろうミランにおいて、どこまで継続してプレーできるかはやはり現時点で疑問の余地があります。
上記で挙げたポジティブな特徴も、全て「試合出場」を前提としたものです。もし負傷離脱が多いようだとそうしたメリットを中々享受できず、更にはチーム戦術へのフィット・パフォーマンスの向上にも時間がかかってしまうでしょうね。
プリシッチはブラヒムの後釜として位置づけることができ、上手くフィットすれば攻撃面においてはブラヒム以上のものを提供してくれる可能性が高いと考えられます(もちろん、くどいようですがそれには負傷離脱が少なく済むことが前提)
ここ3年ほどで市場価格を急激に落としたとはいえ、24歳という現在の年齢を考慮すれば挽回は十分に可能でしょう。
願わくはミランで復活と更なる成長を遂げ、チームの勝利に継続的に貢献してもらいたいと思います。
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契約期間は2027年6月までの4年間で、1年間の延長OP付き。背番号は「11」を付けるとのこと。
また、報道によると移籍金は2200万ユーロで、年俸は約400万ユーロと伝えられています。
今回はそんなプリシッチについて、その特徴やプレースタイルを確認していきたいと思います。
基本情報
プリシッチは24歳のアメリカ人アタッカー。なおクロアチア国籍を取得しているため、EU圏選手でもあります。
わずか17歳でドルトムントにてトップチームデビューを果たすと、ブンデスリーガの外国人プレーヤーとしては最年少でゴールを記録。またアメリカ代表でも同国史上最年少ゴールを記録するなど、鮮烈なデビューシーズンを送りました。
結局ドルトムントでは4シーズンを過ごし、計127試合で19ゴール・26アシストを記録。その後6000万ユーロで移籍したチェルシーでも4年間で145試合26ゴール・21アシストを記録し、今夏ミランへ加入という流れです。
また、プリシッチはアメリカ代表でも既に60試合のキャップを重ね、昨年のW杯では中心選手としてチームを牽引。24歳にして実に多くの経験を持っている選手だといえますね。
特徴・プレースタイル
続いてプリシッチのプレースタイル・特徴についてですが、この点はプリシッチ自身がミラン加入後の公式インタビューにて語っています。
ドリブルや背後への素早い動き出しでゲームをオープンにするのが僕の長所だと思っている。だからそうした特徴を発揮しやすいトップ下や左ウイング、右ウイングといったポジションでプレーするのが快適なんだ。
1.ドリブル
1つ目の特徴として挙げられるのは「ドリブル能力」です。
プリシッチは自身の持つ優れたボールコントロール(テクニック)と加速力を活かし、積極的にボールを前方へと持ち運んでいく事が出来ます。

――シーン1:サイドでボールを持ったプリシッチ(赤)

――その後の場面。果敢にドリブルで仕掛け、突破を図った

――シーン2:ライン間でパスを引き出すプリシッチ

――その後の場面。プリシッチがフリーで前を向き、ボールを運んでいった
またデータからも、プリシッチが積極的に危険なエリアへとボールを持ち運んでいることや、ドリブルで何度も対面の相手を抜き去っていることが分かりますね(※データは近年プリシッチが最も良い成績を残した19-20シーズンのものを参照)。

――参考1:2019-20シーズンにおけるプリシッチのドリブルに関する1試合平均のスタッツ、及びプレミアリーグのアタッカーと比較したパーセンタイル
こうしたドリブル能力は相手の注意を引き付け、その周囲にスペースを生み出すことも可能にします。そのため当該スペースへと味方が走り込み、そこへプリシッチがパスを通すといった連係プレーにより、相手の守備組織を崩すことが出来る、と。

――シーン3:プリシッチ(赤)がサイドでボールを持つ

――その後の場面。プリシッチが中央に切り込み、相手ボランチの注意を引き付ける。その間味方アタッカーが背後のスペースに侵入し、プリシッチからパスを引き出そうとする

――その後の場面。プリシッチからフリーの味方アタッカーへとパスが通り、チャンスへと繋がった
個の突破だけではなく連携による打開を織り交ぜることで、プリシッチのドリブルは組織的に大きな効果を発揮するでしょう。
2.ゴール前への飛び出し
ドリブルによる打開を強みとするプリシッチですが、それだけでなくオフザボールにおいても積極的かつ素早いプレーを見せます。
例えば相手最終ラインのギャップを突く動きです。

――シーン4:「シーン2」の続きの場面。プリシッチはボールを運んだ後、左サイドに展開する

――その後の場面。ボールを離した後、プリシッチはシームレスに相手DFラインの背後へと飛び出そうとする

――シーン5:別の場面。味方WBがボールを持ち込む間、プリシッチは相手最終ラインのギャップから外に流れてパスを引き出す

――その後の場面。ボールを受けたプリシッチに対しては相手SBの他に、相手CBも出てきて対処する。これにより中央ゴール前にスペースが生まれ、そこには味方WBが走り込む

――その後の場面。プリシッチが当該スペースにクロスを送り、決定機を演出した
このように相手SB-CB間にタイミング良く侵入することでパスを引き出したり、当該相手SB・CBを引き付けてスペースを作り出したりといった形でチャンスに絡むことが出来る、と。
また、こうしたゴール方向への意識は「ゴール前でのボールタッチ回数」という形にも表れています。

――参考2:2019-20シーズンにおけるプリシッチのボールタッチに関する1試合平均のスタッツ、及びプレミアリーグのアタッカーと比較したパーセンタイル。相手PA内で多くのボールに触ることが出来ている
フィジカル(肉体的強さ)や身長(ヘディング)に別段優れているわけではないプリシッチにとって、相手ゴール前でスペースを見出し・侵入し・利用するためのスピードとプレー判断・精度は違いを作り出す上で特に重要です。この点、彼にはその手の能力が水準以上に備わっているように見受けられますね。

――シーン6:左サイドから崩しにかかるチェルシー。この時プリシッチは逆サイドにいたが、ニアにスペースが生まれることを察知し、素早く走り込む

――その後の場面。クロスに頭で合わせ、ポスト直撃のシュートを放った
3.多様な起用法
続いて言及する特徴は「多様な起用法」という事で、プリシッチ自身が語るように、彼は2列目の様々なポジションでプレー可能です。実際にこれまでのキャリアでは2列目のポジションを満遍なく務めてきました。

――参考3:これまでのプリシッチの出場ポジション
大枠の役割自体はどのポジションでも変わりませんが、サイドでも中央でもドリブルや飛び出しを活かしたプレーを行えるという点は有用です。もしミランにおいても触れ込み通りどのポジションでも起用できるなら、非常に重宝されるでしょうね。
4.怪我耐性
最後に、ネガティブなポイントとして「怪我耐性」にも言及しておきます。

――参考4:これまでのプリシッチの負傷履歴
プリシッチは2017年以降、毎年のように負傷離脱を経験。またチェルシー移籍後は離脱時期が長引くようになるなど悪化し、在籍4年間で1シーズン平均14試合ほどを怪我で欠場していました。明らかに多いですね。
環境が変わることで改善する可能性も考えられますが、守備時にも強度が強く求められるであろうミランにおいて、どこまで継続してプレーできるかはやはり現時点で疑問の余地があります。
上記で挙げたポジティブな特徴も、全て「試合出場」を前提としたものです。もし負傷離脱が多いようだとそうしたメリットを中々享受できず、更にはチーム戦術へのフィット・パフォーマンスの向上にも時間がかかってしまうでしょうね。
おわりに
プリシッチはブラヒムの後釜として位置づけることができ、上手くフィットすれば攻撃面においてはブラヒム以上のものを提供してくれる可能性が高いと考えられます(もちろん、くどいようですがそれには負傷離脱が少なく済むことが前提)
ここ3年ほどで市場価格を急激に落としたとはいえ、24歳という現在の年齢を考慮すれば挽回は十分に可能でしょう。
願わくはミランで復活と更なる成長を遂げ、チームの勝利に継続的に貢献してもらいたいと思います。