タイアニ・ラインデルスの特徴・プレースタイルについて~ミランが求めるテクニシャン~

タイアニ・ラインデルス
現在、ミランの中盤の補強候補として有力になっているのがタイアニ・ラインデルスという選手です。

ミランはラインデルスと年俸170万ユーロの5年契約で基本合意に達した。次のステップはAZアルクマールとのクラブ間合意を果たすことだ。ラインデルスはミランの中盤補強候補の筆頭に挙げられている――GdS



今回は、そんなラインデルスの特徴やプレースタイルを見ていきたいと思います。


基本情報


まずは基本情報についてです。

ラインデルスは24歳のオランダ人選手で、主な起用ポジションはセントラルミッドフィルダー。
AZアルクマールには2017年に加入し、その後数年間は下部組織や短期レンタル移籍などで経験を積みました。

AZのトップチームに定着するようになったのは20—21シーズンからで、同シーズンはリーグ戦22試合(720分)プレー。そして翌季は公式戦47試合(2026分)に出場と順調にプレー機会を増やし、6ゴール・2アシストを記録しています。

そして迎えた2022-23シーズン、完全にレギュラーの座を確保したラインデルスはチームの公式戦全試合に先発出場。計54試合(4843分)プレーする鉄人ぶりを披露しつつ、7ゴール・12アシストを記録するなど、飛躍を遂げるシーズンとなりました。

特徴・プレースタイル


ここからはラインデルスの特徴・プレースタイルについてです。


1.優れたテクニックと積極性


ラインデルスは独創的で攻撃志向の強いセントラルMFだ。身長は185センチで利き足は右。ダブルボランチの一角で快適にプレーする。そしてポゼッションに自信があり、積極的なパスとドリブルで印象的なプレーを見せ、AZのビルドアップにおいて重要な役割を果たしている。フィジカルはそれほど強くないが、トリッキーなプレーでボールをコントロールすることが可能だ――Football Italia



ラインデルスの特徴として第一に挙げられるのが「テクニックの高さ」です。



優れたパス・ドリブル能力を駆使しながら積極的にボールを前進させ、相手の守備組織を崩していくというのがラインデルスの得意とする形といえますね。

なお、こうした積極的なプレースタイルというのはデータにも反映されています。


【22-23】ラインデルス_パススタッツ
――参考1:ラインデルスのパスに関するスタッツ、及びエールディヴィジ(オランダリーグ)のMFを対象としたパーセンタイル

例えばパスに関するスタッツを見ると、正確なショート・ミドルパスを多用しながらボールを前進させ、チャンスメイク行っていることが分かります。


【22-23】ラインデルス_ドリブルスタッツ
――参考2:ラインデルスのドリブルに関するスタッツ、及びエールディヴィジのMFを対象としたパーセンタイル

ドリブルに関するスタッツも、パスと同様に高い数値を記録。ファイナルサードや相手PA内へも積極的にドリブルを使って侵入していることが分かりますね。


2.多様なポジション取り



先述した能力を活かす上で重要になるのが「ポジショニングセンス」です。

例えば下がり目の位置でプレーする際、主に周囲の味方MFとピッチの中盤エリアを分担しつつ、パスコース・スペースを作り出す役割が強く求められます。良い形でボールを受けられなければ持ち前のスキルも発揮し辛いですからね。


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析1
――シーン1:AZ対ウェストハムの戦の一場面。ウェストハムの守備時の基本陣形は4-4-2。ここでラインデルスは主にクラーシと協力し、後方からボールを前進させる役割を担う

この点についてラインデルスは流動的に動きながら、味方と連動してパスコース・スペースを生み出す能力を有していることが窺えます。


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析2
――シーン2:クラーシが最終ラインに下がり、相手の2トップに対して最終ラインで数的優位を形成して味方CBの持ち上がりをサポート。一方、ラインデルスはアンカーポジションに入る


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析3
――シーン3:別の場面。ここではラインデルスが最終ラインに下がり、相手FWを牽制して味方CBの持ち運びをサポート


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析4
――シーン4:別の場面。ここではラインデルスがアンカーポジションに入り、相手2トップの間に顔を出すことで第一プレッシャーラインを牽制。左サイドに落ちてきたクラーシへのスペースを作り出す


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析5
――シーン5:別の場面。ここではラインデルスが味方CB、SBと協力し、右サイドで数的優位を形成。この後縦パスを引き出し、ボールを前進させた


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析6
――シーン6:別の場面。ここではクラーシが最終ラインに下がってボールを受け、ドリブルを行い相手第一プレッシャーラインを誘引。それに合わせてラインデルスがポジションを取り直す。


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析7
――その後の場面。クラーシからラインデルスがフリーでパスを引き出す


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析8
――その後の場面。前を向いたラインデルスがドリブルを開始。対面の相手を躱し、中央方向へとボールを運んでいく


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析9
――その後の場面。裏に抜け出す味方アタッカーに合わせてラインデルスがスルーパスを供給。惜しい形を作り出した

また、ラインデルスは一列前のライン間にてパスを引き出すスキルもあり、高めの位置に侵入してボールを受けることも可能です。


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析10
――シーン7:相手中盤ラインの背後に侵入したラインデルスは、味方CBから縦パスを引き出し一気に速攻へ移行


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析11
――その後の場面。ラインデルスは裏に抜け出すストライカーにスルーパスを供給。惜しい形を作り出した


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析12
――シーン8:別の場面。ラインデルスに縦パスが入る


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析13
――その後の場面。ラインデルスは素早くワンタッチで隣の味方に叩き、チャンスメイクを図る


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析14
――シーン9:別の場面。CBからライン間へ楔の縦パス。ここでラインデルスは素早くポストプレーの受け手として動く


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析15
――その後の場面。実際に味方から落としのパスを受けた

そして、こうした特徴はゴール前でも発揮されます。例えばボールがサイド深くに展開された時などにスルスルとバイタルエリア付近に侵入し、フリーでボールを呼び込むといった形ですね。


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析16
――シーン10:右サイド深くにボールが持ち運ばれ、生じたバイタルエリアに走り込むラインデルス


【22-23】ラインデルス_プレースタイル分析17
――シーン11:同様の場面。バイタルエリアに侵入するラインデルス


こうしたラインデルスのプレースタイルは、中盤の選手に多機能性を強く求めるミランのスタイルとも親和性が高いように思われます。


3.守備力



続いて、ラインデルスの「守備」についてです

ラインデルスのあまり際立っていない部分は守備時のプレーだ。プレッシングやインターセプトはお手の物である一方、それ以外の後方での仕事においてはあまり目立たず、相方のボランチにやや負担をかけている――Football Italia



この点に関し、データも参照しておきます。


【22-23】ラインデルス_守備スタッツ
――参考3:ラインデルスの守備に関するスタッツ、及びエールディヴィジのMFを対象としたパーセンタイル

確かにインターセプトの数値が高い一方で、タックルの数値は低いです。
積極的な守備に際しては持ち前の敏捷性や判断力が活きる一方、球際などでのボール奪取能力については今後改善していく必要があると推察できます。

おわりに


来シーズン前半戦にベナセルを欠くミランにおいて、ラインデルスのようなクリエイティブな選手は是非とも欲しいところでしょう。
現状のミランですとクルニッチとコンビを組むことでプレーしやすくなりそうなイメージがありますが、攻守のタスクを明確にしたい場合には、より実質的な守備貢献を果たせる選手が相方だと安定感が増しそうです。

そこで、ラインデルスの他にもう1人補完性の高い選手を獲得することで相乗効果が生まれ易いのではないでしょうか。

ただいずれにせよまずはラインデルスの獲得が実現するかどうかというところで、今後のAZとのクラブ間交渉の行方に注目したいと思います。

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