【3季連続のCL権獲得!】ユベントス対ミラン【2022-23シーズン・セリエA第37節】
今回はセリエA第37節、ユベントス対ミランのマッチレビューを行います。
スタメン

ベースフォーメーション:
ユベントス「3-4-3」
ミラン「4-2-3-1」
「引き分けでもOK」のミランと、「勝たなければならない」ユベントス。
両チームの状況の違いというのが、この試合の流れに少なからず影響を与えていたように感じました。
勝利のためには何としても点が欲しいユベントスは、神出鬼没なディマリアの飛び出しやキーンのフィジカルを活かしてチャンスメイク。何度かミランゴールに迫ります。
また、守備においても積極性を見せ、ハイプレスによるボール奪取を試みました。

――参考1:この試合前半における、ユベントスの守備時の平均ポジション
守備時のユーベは4-4-2とも表記できるやや変則的な形を採用。両サイドのキエーザとコスティッチがそれぞれ対面のテオ、カラブリアを守備の基準点としつつ、前からの圧力を強める時はキエーザが上がってキーン、ディマリアと協同してミランの最終ラインにプレス(後半からはサイドの守備に専念)。一方、コスティッチはボールが逆サイドにあるときなどは最終ラインを積極的にカバーする形を採りました。

――シーン1:ハイプレスを仕掛けるユベントス
対するミランは先述の通り「引き分けでもOK」という状況がネガティブに作用してか、いつにもまして狙いの不明瞭なビルドアップが頻発。以下のように最後方で非常に危険なボールロストもしています。

――先ほどの続きの場面。自陣深くにて繋ぐことを選択したクルニッチだが、ケーンにパスをカットされボールロスト
しかしながら、ユーベの方も個人レベル・組織レベル両面でファイナルサードの精度に欠く点はミランと共通しており、惜しい形は作れども決定機には中々至りません。この点についてはミランのDF陣(特にティアウ)を中心とした粘り強い守備も印象的でした。
また、特に前半のユーベはキエーザ周り(右サイド)のやや複雑な守備タスクが十分に実行されない場面がちらほら見られ、ミランはそのエリアを利用してプレス回避を行うことが出来ます。

――シーン2:ハイプレスを仕掛けるユベントスだが、ここでキエーザ(画面外)はテオをマーク中。そのためトモリがフリーとなっており、メニャンからトモリへとパスが通る

――その後の場面。トモリから中盤でフリーのクルニッチへとパスが通り、ボールを前進させた
キエーザが前に出てきたときはテオのマークの受け渡しが求められますが、以下のシーンではテオへの警戒がなくフリーにしています。

――シーン3:前線3枚でハイプレスを仕掛けるユベントスだが、メニャンは左サイドでフリーのテオ(画面外)の確認する

――その後の場面。メニャンからテオへ正確なロングパスが通り、ミランは速攻を開始した
前線のプレスを外された場合、ユーベは潔くリトリートを選択。ミランとしては相手の守備が整う前に攻め切りたいところでしたが、例によって拙攻に終始しました。

――参考2:この試合のグダグダ感を象徴する、両チームのゴール期待値(xG)
ミランの拙攻に関して今回触れておきたいのは、攻撃時のセットアップ(配置)についてです。
前節のサンプドリア戦で5-1と大勝したミランは、前回と同じメンバーでこの試合に臨みました。
相手の守備力の低さに大きく助けられた側面はあるとはいえ、珍しく大量得点できたわけですから同じメンバーで挑むのは分かります。しかし、その実態は少し異なりました。

――参考3:サンプドリア戦前半におけるミランの攻撃時の平均ポジション

――参考4:この試合前半におけるミランの攻撃時の平均ポジション
両試合前半の攻撃時の平均ポジションを見比べると、ブラヒム(10)の基本位置が左寄り・右寄り逆になっていますね。
些細な違いのようにも見えますが、これはレオン(17)との関係性という部分で小さくない変化が生じます。
例えば先のサンプドリア戦や、ミランが珍しく下位相手に勝利した31節のレッチェ戦(参考5)では、ブラヒムが中央左サイド寄りを基本位置とすることで同サイドのレオンやテオと積極的に絡み、チャンスメイクすることが出来ました。

――参考5:レッチェ戦前半におけるミランの攻撃時の平均ポジション
しかし、今回のように右ハーフスペースを基本位置とすることでレオンとの関係性は希薄となり、しかも同サイドで組むことになるのはメシアスとカラブリアです。彼らとの即興的なコンビプレーはたかが知れています。
一方の左サイド側ではハーフスペースに常駐する選手がいなくなることで、サイドに張るレオンへとパスを供給するルートが限られます。CLのインテル戦(セカンドレグ)でも同様の問題を抱えたわけですが、懲りずにまた同じことをやっているわけですね(この試合の後半はトナーリの基本位置が下がり目になり、ブラヒムのプレーエリアが広がるなど、多少の変化はありましたが)。

――シーン4:サンプドリア戦の一場面。ブラヒムがこの位置でパスを引き出す

――この位置で受けられる選手がいることで、左アウトサイド(レオン)への有効なパスルートが生じやすくなる
しかし幸いにも、今回は選手の見事な個人技が炸裂したためゴールを奪う事が出来ました。

――シーン5:前半40分。得点シーンについて
最初のトピックで述べた通り、コスティッチは最終ラインを積極的にサポートする役割を担っています。そのため彼の前方、すなわちユーベの中盤ライン左側は比較的スペースが生まれやすい状態です。

――その後の場面
エリア内の様子を確認し、クロスを上げるための十分な時間とスペースを得たカラブリアはジルーへクロス。ドンピシャなボールに対してこれまたジルーが見事に頭で合わせ、ネットを揺らしました。
決してユーベの守備組織を崩しての得点ではなく、それだけに両者の個人技が引き立ちましたね。
この1点を守り切ったミランが勝利を収め、過去50年間で3度目、2009-10シーズン以来となるユベントス戦シーズンダブルを達成しました。
ユベントス0-1ミラン
技術・戦術両面においてスペクタクル性ほぼ皆無の、はっきり言って内容的には退屈な試合でしたが、この試合で何より欲しかった「勝利」という結果を得られた点は満足です。
今回の結果により現順位ではミランの4位以上が確定。ユベントスの処分(勝ち点剥奪)が覆るといったまさかの事態が起きない限り、来季もCLに出場できることになりました。
ミランの財政事情もあり、とかく財政的メリットにフォーカスが当てられがちなCLですが、何よりクラブの格や求心力を維持・向上する上で欠かせないものだと思います。
また、一ファンとしては欧州最高峰の舞台に贔屓のチームが参加し、他国の強豪クラブと戦うという事で楽しみが増えますし、純粋に嬉しいです。個人的にはこれが一番重要なメリットかもしれませんね。
さて。既に今シーズンのゴールテープを切った感のあるミランですが、まだホームでの最終節ヴェローナ戦が残されています。
いくら4位以上を確定させたとはいえ、ホームの大観衆の前で無様な姿は見せられませんし、気持ち良くシーズンを終えられるようもうひと踏ん張りしてもらいたいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
スタメン

ベースフォーメーション:
ユベントス「3-4-3」
ミラン「4-2-3-1」
両チームのスタンス
「引き分けでもOK」のミランと、「勝たなければならない」ユベントス。
両チームの状況の違いというのが、この試合の流れに少なからず影響を与えていたように感じました。
勝利のためには何としても点が欲しいユベントスは、神出鬼没なディマリアの飛び出しやキーンのフィジカルを活かしてチャンスメイク。何度かミランゴールに迫ります。
また、守備においても積極性を見せ、ハイプレスによるボール奪取を試みました。

――参考1:この試合前半における、ユベントスの守備時の平均ポジション
守備時のユーベは4-4-2とも表記できるやや変則的な形を採用。両サイドのキエーザとコスティッチがそれぞれ対面のテオ、カラブリアを守備の基準点としつつ、前からの圧力を強める時はキエーザが上がってキーン、ディマリアと協同してミランの最終ラインにプレス(後半からはサイドの守備に専念)。一方、コスティッチはボールが逆サイドにあるときなどは最終ラインを積極的にカバーする形を採りました。

――シーン1:ハイプレスを仕掛けるユベントス
対するミランは先述の通り「引き分けでもOK」という状況がネガティブに作用してか、いつにもまして狙いの不明瞭なビルドアップが頻発。以下のように最後方で非常に危険なボールロストもしています。

――先ほどの続きの場面。自陣深くにて繋ぐことを選択したクルニッチだが、ケーンにパスをカットされボールロスト
しかしながら、ユーベの方も個人レベル・組織レベル両面でファイナルサードの精度に欠く点はミランと共通しており、惜しい形は作れども決定機には中々至りません。この点についてはミランのDF陣(特にティアウ)を中心とした粘り強い守備も印象的でした。
また、特に前半のユーベはキエーザ周り(右サイド)のやや複雑な守備タスクが十分に実行されない場面がちらほら見られ、ミランはそのエリアを利用してプレス回避を行うことが出来ます。

――シーン2:ハイプレスを仕掛けるユベントスだが、ここでキエーザ(画面外)はテオをマーク中。そのためトモリがフリーとなっており、メニャンからトモリへとパスが通る

――その後の場面。トモリから中盤でフリーのクルニッチへとパスが通り、ボールを前進させた
キエーザが前に出てきたときはテオのマークの受け渡しが求められますが、以下のシーンではテオへの警戒がなくフリーにしています。

――シーン3:前線3枚でハイプレスを仕掛けるユベントスだが、メニャンは左サイドでフリーのテオ(画面外)の確認する

――その後の場面。メニャンからテオへ正確なロングパスが通り、ミランは速攻を開始した
前線のプレスを外された場合、ユーベは潔くリトリートを選択。ミランとしては相手の守備が整う前に攻め切りたいところでしたが、例によって拙攻に終始しました。

――参考2:この試合のグダグダ感を象徴する、両チームのゴール期待値(xG)
セットアップの怪
ミランの拙攻に関して今回触れておきたいのは、攻撃時のセットアップ(配置)についてです。
前節のサンプドリア戦で5-1と大勝したミランは、前回と同じメンバーでこの試合に臨みました。
相手の守備力の低さに大きく助けられた側面はあるとはいえ、珍しく大量得点できたわけですから同じメンバーで挑むのは分かります。しかし、その実態は少し異なりました。

――参考3:サンプドリア戦前半におけるミランの攻撃時の平均ポジション

――参考4:この試合前半におけるミランの攻撃時の平均ポジション
両試合前半の攻撃時の平均ポジションを見比べると、ブラヒム(10)の基本位置が左寄り・右寄り逆になっていますね。
些細な違いのようにも見えますが、これはレオン(17)との関係性という部分で小さくない変化が生じます。
例えば先のサンプドリア戦や、ミランが珍しく下位相手に勝利した31節のレッチェ戦(参考5)では、ブラヒムが中央左サイド寄りを基本位置とすることで同サイドのレオンやテオと積極的に絡み、チャンスメイクすることが出来ました。

――参考5:レッチェ戦前半におけるミランの攻撃時の平均ポジション
しかし、今回のように右ハーフスペースを基本位置とすることでレオンとの関係性は希薄となり、しかも同サイドで組むことになるのはメシアスとカラブリアです。彼らとの即興的なコンビプレーはたかが知れています。
一方の左サイド側ではハーフスペースに常駐する選手がいなくなることで、サイドに張るレオンへとパスを供給するルートが限られます。CLのインテル戦(セカンドレグ)でも同様の問題を抱えたわけですが、懲りずにまた同じことをやっているわけですね(この試合の後半はトナーリの基本位置が下がり目になり、ブラヒムのプレーエリアが広がるなど、多少の変化はありましたが)。

――シーン4:サンプドリア戦の一場面。ブラヒムがこの位置でパスを引き出す

――この位置で受けられる選手がいることで、左アウトサイド(レオン)への有効なパスルートが生じやすくなる
しかし幸いにも、今回は選手の見事な個人技が炸裂したためゴールを奪う事が出来ました。

――シーン5:前半40分。得点シーンについて
最初のトピックで述べた通り、コスティッチは最終ラインを積極的にサポートする役割を担っています。そのため彼の前方、すなわちユーベの中盤ライン左側は比較的スペースが生まれやすい状態です。

――その後の場面
エリア内の様子を確認し、クロスを上げるための十分な時間とスペースを得たカラブリアはジルーへクロス。ドンピシャなボールに対してこれまたジルーが見事に頭で合わせ、ネットを揺らしました。
決してユーベの守備組織を崩しての得点ではなく、それだけに両者の個人技が引き立ちましたね。
この1点を守り切ったミランが勝利を収め、過去50年間で3度目、2009-10シーズン以来となるユベントス戦シーズンダブルを達成しました。
ユベントス0-1ミラン
雑感
技術・戦術両面においてスペクタクル性ほぼ皆無の、はっきり言って内容的には退屈な試合でしたが、この試合で何より欲しかった「勝利」という結果を得られた点は満足です。
今回の結果により現順位ではミランの4位以上が確定。ユベントスの処分(勝ち点剥奪)が覆るといったまさかの事態が起きない限り、来季もCLに出場できることになりました。
ミランの財政事情もあり、とかく財政的メリットにフォーカスが当てられがちなCLですが、何よりクラブの格や求心力を維持・向上する上で欠かせないものだと思います。
また、一ファンとしては欧州最高峰の舞台に贔屓のチームが参加し、他国の強豪クラブと戦うという事で楽しみが増えますし、純粋に嬉しいです。個人的にはこれが一番重要なメリットかもしれませんね。
さて。既に今シーズンのゴールテープを切った感のあるミランですが、まだホームでの最終節ヴェローナ戦が残されています。
いくら4位以上を確定させたとはいえ、ホームの大観衆の前で無様な姿は見せられませんし、気持ち良くシーズンを終えられるようもうひと踏ん張りしてもらいたいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。