【ゆるふわディフェンスの恩恵】ミラン対サンプドリア【2022-23シーズン・セリエA第36節】

2022-23シーズン・試合サンプドリア戦
今回はセリエA第36節、ミラン対サンプドリアのマッチレビューを行います。

スタメン

【22-23】ミラン対サンプドリア_スタメン
ベースフォーメーション:
ミラン「4-2-3-1」
サンプドリア「4-4-2」


セットアップの修正


インテル戦の反省を踏まえ、この試合のミランはポゼッション時にいくつかの修正を施します。

まずはブラヒムの基本位置を「右サイド側」から「中央やや左サイド(ハーフスペース)寄り」に変更。これによりレオンとの関係性を高め、レオンが左サイドで孤立することのない状態を作り上げます。

一方、前回はひたすら前線に飛び込むなど中盤としての繋ぎの仕事をこなせていなかったトナーリは、今回は右サイド側でチームのパス回しに多く関与。ビルドアップに絡みつつ、機を見た攻め上がりで多くのチャンスに絡んでいきました。

ゆるふわディフェンスの恩恵


ミランのチームパフォーマンスもまずまずながら、何よりこの試合の流れを決定づけたのはサンプドリア側の酷いパフォーマンスでした。

まず、攻撃(ボール保持)時のサンプは安易にボールを手放そうとはせず、後方から繋いでいく形を志向します。
プレッシングを強みとするミランに対し、下位チームの多くはセーフティーなビルドアップによりボールロスト延いては失点のリスクを軽減しにかかるわけですが、サンプは上記の通りです。それでいてパス回しが洗練されているわけではないため、試合開始から危険なボールロストを見せます。


【22-23】ミラン対サンプドリア_戦術分析1
――シーン1:試合序盤、後方で粘り強くパスを回してから前方に展開するサンプだが、GKからのパスはテオにインターセプトされミランのカウンターになる

もちろんどんな状況においても繋ぎ倒すというわけではなく、ミランのハイプレスにより前方にスペースが生じた際にはロングボールも選択しますが、その主な受け手となる前線2トップ(クアリャレッラ、ガッビアディーニ)はミランの2CB(ティアウ、トモリ)に完敗。また、ロングボールという選択がチームとして十分に共有されているわけでもなさそうです。


【22-23】ミラン対サンプドリア_戦術分析2
――シーン2:サンプドリアのバックパスを機にハイプレスを仕掛けるミラン。しかしここでミランは全体を十分に押し上げ切れておらず、GKラヴァーリアには後方にて複数の選択肢(右SBザノーリへのロングパスや、下がってきたウィンクスを経由してフリーのヌイティンクへ展開するなど)があったが、ここではそのまま前線にロングボールを入れる

そして不十分な攻撃態勢からネガティブトランジション・守備へと局面が移行していく際に、サンプの最大の問題ともいえる「球際の弱さ」が露呈します。


【22-23】ミラン対サンプドリア_戦術分析3
――先ほどの続きの場面。ガッビアディーニへロングボールが入るも、ミランの選手たちは後方に十分残っており、また中盤エリアにはスペースが生じている

例えば先のシーンにおいて、前線に当てたロングボールを中盤エリアで拾う事は攻撃においてだけでなく、相手(この場合はミラン)から危険なカウンターを食らわないためにも重要になります。
しかし、サンプはそうした部分(ネガトラ時)にてインテンシティを発揮することはなく、ふわふわな対応に終始。ミランとしてはポジティブトランジションから容易にボールを運ぶことが出来ました。


【22-23】ミラン対サンプドリア_戦術分析4
――先ほどの続きの場面。当該スペースでボールを拾ったブラヒムに2人がかりで対応するサンプだが、あっさりと躱される


【22-23】ミラン対サンプドリア_戦術分析5
――その後の場面。裏に抜け出すレオンへの警戒が甘く、ブラヒムからレオンへと完璧なパスが通り先制点を獲得した

ミランの3点目(PK)に繋がったシーンも典型的です。


【22-23】ミラン対サンプドリア_戦術分析6
――シーン3:クアリャレッラへの縦パスをカットしたトモリ。ここでサンプにはカウンタープレスを仕掛けるチャンスがあるが、アウジェッロは対面のメシアス(黄)から離れて彼をフリーにしてしまう


【22-23】ミラン対サンプドリア_戦術分析7
――その後の場面。フリーで前を向いたメシアス。このあと前方のジルー、トナーリとの連携プレーで突破を図る


【22-23】ミラン対サンプドリア_戦術分析8
――その後の場面。ジルーの落としを受けて密集地帯を抜け出したトナーリから、間髪入れずに裏に抜け出したレオンへスルーパスが通り、PKを誘発した

また、陣形をセットしての守備時においても同様で、個々のプレッシャーがゆるゆるのためミランは簡単にボールを回すことができますし、最も警戒すべきレオンとその周囲への対応も甘々。
ダンフリースを筆頭に非常にタイトなマークでレオンを警戒していた先日のインテルを思い返すと、その差は歴然でした。


【22-23】ミラン対サンプドリア_戦術分析9
――シーン4:緩いプレッシャーの中でパスを回すブラヒムとレオン。その間テオがザノーリを引きずりながら中に入り込み、前方にスペースを生じさせる


【22-23】ミラン対サンプドリア_戦術分析10
――その後の場面。当該スペースに走り込むブラヒムに、レオンからスルーパスが通った

このような「ゆるふわディフェンス」に対してなら、得点力不足に喘ぐミランでも何の問題ありません。
前後半を通じて何度もチャンスを作り続け、結果的に大量5得点をゲット。一方ミランも軽い対応から1失点こそ喫しましたが、全体を通してみればサンプドリアを寄せ付けることなく大勝を収めています。


なお余談ですが、僕が贔屓にしているJリーグの某クラブも近年ゆるふわディフェンスで下位に低迷しているので、ある意味この試合に親近感を覚えた次第です。

ミラン5-1サンプドリア


雑感


正直な感想としてはサンプドリアのあまりに酷い守備の方が印象的だったので、5得点という結果をどう評価すべきか判断の難しい試合でした(内容的には取れて当然だと感じる一方、今のミランが5点も奪えたことは確かに望外の結果…)

いずれにせよ、チームとしての真価が問われるのは次節のユベントス戦、そして最終節のヴェローナ戦(※その時まで彼らが残留争いの最中であった場合)になるでしょう。
今回の大勝でメンタル的に上向きの状態になったであろうことは次戦に向けての好材料ですし、このまま残り2試合に全力を尽くしてもらいたいと思います。

Forza Milan!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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