近年のミラノダービー、ミラン劣勢の原因について~試合序盤のアプローチと戦術的問題~
今シーズン5度目のミラノダービーが明後日に行われます。
ここまでの戦績はミランの1勝3敗。明らかに劣勢であるわけですが、その原因については様々な観点から論じることが可能でしょう。
今回のその中の一つと考えられる、「試合序盤(前半)のアプローチ」について見ていきたいと思います。
まず始めに。直近5戦のミラノダービーのスコアは以下の通りです。
インテルはミラノダービー過去5戦すべてにおいて得点を記録。対するミランは1試合だけという有様ですが、今回深堀したいのはインテルの得点の方です。
これらのスコアを時間帯と絡めて見ていくと、興味深い事実と傾向が浮かび上がります。
いずれの試合もインテルが前半に先制ゴールを記録、それも比較的早い時間帯であることが分かります。
先制点の重要性というのは今さら論じるまでもありませんし、それがビッグマッチであれば尚更のことです。インテルはそのことを十分に理解し、非常に高い集中力でもってダービーに臨んでいるのでしょう。そうした心構えが早い時間帯の先制点に、延いては勝利に繋がっているものと思われます。
もちろんミランの方も油断しているとは全く思いませんが、そうしたインテルに抗するだけの精神的・戦術的準備が出来ているかというと疑問の余地があります。
この点について少し戦術的な話をすると、先日の試合(CLファーストレグ)における先制点に繋がった6分の場面において、ミランの中途半端な対応が見られました。

――当該シーンについて
インテルがGKオナナからビルドアップを始めるシーン。ここでミランはハイプレスを選択し、パスを受けたバストーニに対しブラヒムがプレスをかけます。

――その後の場面
しかしバストーニは左サイドでフリーのディマルコに展開。継続的なプレッシャーのためには本来ここにカラブリアが対応しないといけないわけですが、この場面で彼は(おそらくインテル2トップへのロングパスを警戒して)最終ラインに残っており、ディマルコに付くことが出来ていません。

――その後の場面
その後、ブラヒムのプレスバックを受けてディマルコは作り直しを選択。バストーニへとボールを戻し、この後バストーニからオナナへと更にバックパスしました。

――その後の場面
オナナにまで2度追いのプレスをかけるジルーですが、オナナはバストーニに再度パスを出してプレスを回避。継続的なプレッシャーのためには本来ブラヒムがここに対応しなければなりませんが、彼は先ほどプレスバックしたためバストーニへの対応に遅れます。

――その後の場面
遅れてブラヒムが寄せに行こうとしますが、一連のパス回しによってバストーニは前方の状況を確認し、プレーするだけの十分な時間とスペースを得ることができました。そこで、このあと彼は前線のジェコへと正確なロングパスを通します。

――その後の場面。
ロングパスを正確なトラップでコントロールしたジェコは、カラブリアの背後のスペースへと持ち運びボールキープ。それによりトモリのファールを誘発し、このFKが後のCKすなわち先制ゴールへと繋がった、と。
ミラン(というかピオリ)はラツィオ戦やナポリ戦と同じく、相手の中盤に強いマークを付けつつ後方からのビルドアップを制限することでゲームをコントロールしようとしたようですが、インテルの場合は2トップのキープ力を活かしたコンビネーションプレーの質が高いため異なる対策が求められます。
トモリとケアーがジェコとラウタロに対し質的に不利であるにも関わらず、中途半端なハイプレッシングで後方のスペースを空けてしまえば、インテルの前線へのパスで良いようにやられてしまうのは1月のスーペルコッパ(0-3)で実証済みです(もっといえばコンテ・インテル時代から同じようなスタンスでインテルに挑み、度々ボコられています)。先日のダービー戦後に発したファビオ・カペッロの「こんな負け方をしたダービーは初めてではない。別の方法を考えるべきだ」という苦言も尤もでしょう。
もしピオリが現在のチームコンセプトを徹底し、真っ向勝負で勝ちたいのであれば、インテンシティを最大限に高めてインテルのプレーを徹底的に妨害することが考えられます。
直近5戦で唯一勝利した試合(3-2)のように継続的にプレッシャーをかけ続け、相手(この時はチャルハノール)のミスを誘発して同点ゴールを奪うといった形はダービー戦でもあり得るわけで、そういったスタイルを更に突き詰めていくわけですね。
ただし、先に見たようなシステム上の齟齬(例えばSBがインテルのWBに対し継続的なプレッシャーをかけ辛いなど)があるためあまり割の良い方法とは思えません。その実現には選手個々の多大なる献身性と高いパフォーマンスが強く求められ、故にこの形で継続的に勝っていくのは難しいように感じます。
一方、来るCLのインテル戦(セカンドレグ)では上記の方向性でいくしかないでしょう。
ファーストレグで2点のビハインドを背負った以上、今度のミランには少なくとも3得点(PK戦を考慮すれば最低でも2点)が求められますし、そのためには序盤から猛攻を仕掛ける必要があります。最初のトピックで触れたように、ここ最近はインテルに序盤の主導権を握られっぱなしだったのを今度こそはミランが握るべきだというわけですね。
とにかく序盤に先制点を奪って「イケるぞ!」という雰囲気を作り出すことが肝要だと思いますし、もしそれが出来れば奇跡の実現にも近づくのではないでしょうか。
ここまでの戦績はミランの1勝3敗。明らかに劣勢であるわけですが、その原因については様々な観点から論じることが可能でしょう。
今回のその中の一つと考えられる、「試合序盤(前半)のアプローチ」について見ていきたいと思います。
最近のミラノダービーの「先制点」
まず始めに。直近5戦のミラノダービーのスコアは以下の通りです。
ミラン0-3インテル
ミラン3-2インテル
ミラン0-3インテル
ミラン0-1インテル
ミラン0-2インテル
インテルはミラノダービー過去5戦すべてにおいて得点を記録。対するミランは1試合だけという有様ですが、今回深堀したいのはインテルの得点の方です。
これらのスコアを時間帯と絡めて見ていくと、興味深い事実と傾向が浮かび上がります。
ミラン0-3インテル→04分にインテル先制
ミラン3-2インテル→21分にインテル先制
ミラン0-3インテル→10分にインテル先制
ミラン0-1インテル→34分にインテル先制
ミラン0-2インテル→08分にインテル先制
いずれの試合もインテルが前半に先制ゴールを記録、それも比較的早い時間帯であることが分かります。
先制点の重要性というのは今さら論じるまでもありませんし、それがビッグマッチであれば尚更のことです。インテルはそのことを十分に理解し、非常に高い集中力でもってダービーに臨んでいるのでしょう。そうした心構えが早い時間帯の先制点に、延いては勝利に繋がっているものと思われます。
もちろんミランの方も油断しているとは全く思いませんが、そうしたインテルに抗するだけの精神的・戦術的準備が出来ているかというと疑問の余地があります。
戦術的な問題
この点について少し戦術的な話をすると、先日の試合(CLファーストレグ)における先制点に繋がった6分の場面において、ミランの中途半端な対応が見られました。

――当該シーンについて
インテルがGKオナナからビルドアップを始めるシーン。ここでミランはハイプレスを選択し、パスを受けたバストーニに対しブラヒムがプレスをかけます。

――その後の場面
しかしバストーニは左サイドでフリーのディマルコに展開。継続的なプレッシャーのためには本来ここにカラブリアが対応しないといけないわけですが、この場面で彼は(おそらくインテル2トップへのロングパスを警戒して)最終ラインに残っており、ディマルコに付くことが出来ていません。

――その後の場面
その後、ブラヒムのプレスバックを受けてディマルコは作り直しを選択。バストーニへとボールを戻し、この後バストーニからオナナへと更にバックパスしました。

――その後の場面
オナナにまで2度追いのプレスをかけるジルーですが、オナナはバストーニに再度パスを出してプレスを回避。継続的なプレッシャーのためには本来ブラヒムがここに対応しなければなりませんが、彼は先ほどプレスバックしたためバストーニへの対応に遅れます。

――その後の場面
遅れてブラヒムが寄せに行こうとしますが、一連のパス回しによってバストーニは前方の状況を確認し、プレーするだけの十分な時間とスペースを得ることができました。そこで、このあと彼は前線のジェコへと正確なロングパスを通します。

――その後の場面。
ロングパスを正確なトラップでコントロールしたジェコは、カラブリアの背後のスペースへと持ち運びボールキープ。それによりトモリのファールを誘発し、このFKが後のCKすなわち先制ゴールへと繋がった、と。
ミラン(というかピオリ)はラツィオ戦やナポリ戦と同じく、相手の中盤に強いマークを付けつつ後方からのビルドアップを制限することでゲームをコントロールしようとしたようですが、インテルの場合は2トップのキープ力を活かしたコンビネーションプレーの質が高いため異なる対策が求められます。
トモリとケアーがジェコとラウタロに対し質的に不利であるにも関わらず、中途半端なハイプレッシングで後方のスペースを空けてしまえば、インテルの前線へのパスで良いようにやられてしまうのは1月のスーペルコッパ(0-3)で実証済みです(もっといえばコンテ・インテル時代から同じようなスタンスでインテルに挑み、度々ボコられています)。先日のダービー戦後に発したファビオ・カペッロの「こんな負け方をしたダービーは初めてではない。別の方法を考えるべきだ」という苦言も尤もでしょう。
もしピオリが現在のチームコンセプトを徹底し、真っ向勝負で勝ちたいのであれば、インテンシティを最大限に高めてインテルのプレーを徹底的に妨害することが考えられます。
直近5戦で唯一勝利した試合(3-2)のように継続的にプレッシャーをかけ続け、相手(この時はチャルハノール)のミスを誘発して同点ゴールを奪うといった形はダービー戦でもあり得るわけで、そういったスタイルを更に突き詰めていくわけですね。
ただし、先に見たようなシステム上の齟齬(例えばSBがインテルのWBに対し継続的なプレッシャーをかけ辛いなど)があるためあまり割の良い方法とは思えません。その実現には選手個々の多大なる献身性と高いパフォーマンスが強く求められ、故にこの形で継続的に勝っていくのは難しいように感じます。
一方、来るCLのインテル戦(セカンドレグ)では上記の方向性でいくしかないでしょう。
ファーストレグで2点のビハインドを背負った以上、今度のミランには少なくとも3得点(PK戦を考慮すれば最低でも2点)が求められますし、そのためには序盤から猛攻を仕掛ける必要があります。最初のトピックで触れたように、ここ最近はインテルに序盤の主導権を握られっぱなしだったのを今度こそはミランが握るべきだというわけですね。
とにかく序盤に先制点を奪って「イケるぞ!」という雰囲気を作り出すことが肝要だと思いますし、もしそれが出来れば奇跡の実現にも近づくのではないでしょうか。