【レオン無双】ミラン対レッチェ【2022-23シーズン・セリエA第31節】

2022-23シーズン・試合
今回はセリエA第31節、ミラン対レッチェのマッチレビューを行います。

スタメン

【22-23】ミラン対レッチェ_スタメン
ベースフォーメーション:
ミラン「4-2-3-1」
レッチェ「4-3-3」


レオン無双


この試合のボール支配率は約「69対31」という事で、ミランがボールを握りレッチェが待ち構えるという基本構図がはっきりしていました。

4-5-1で後方のスペース管理を重視するレッチェに対し、ミランがどのように崩しにかかろうかという事で、今回ポイントとなったのが左サイドです。


【22-23】ミラン対レッチェ_前半平均ポジション
――参考1:この試合前半におけるミランの攻撃時の平均ポジション

普段は右サイド側にポジションを取ることが多いブラヒムですが、この試合では左ハーフスペースを起点に動きます。そして同サイド側のテオ、レオンとブラヒムが流動的に絡みながらチャンスを作り出していく、と。


【22-23】ミラン対レッチェ_戦術分析1
――シーン1:右サイドでボールを回している間、ブラヒムとテオがポジション交換。ブラヒムが下がり、テオが前線に移動する


【22-23】ミラン対レッチェ_戦術分析2
――その後の場面。パスを受けたブラヒムは素早く左サイドのレオン(画面外)に叩く。その間、テオはライン間に潜り込み、相手最終ラインのギャップを突く準備を行う


【22-23】ミラン対レッチェ_戦術分析3
――その後の場面。パスを受けたレオンは裏に抜け出したテオにワンタッチでスルーパス。あわやPK獲得かという惜しいシーンを作り出した

39分にも、左サイドからブラヒムとテオの連携で攻め込みCKを獲得。するとそのCKからレオンがヘディングで決め、ミランが先制に成功します。

レオン「トレーニングの後でもヘディングの練習はしているんだ。監督からも、僕の体格ならもっとヘディングで点を取れと言われているよ」



レオンのヘディングという実に珍しい形での得点でしたが、何にせよスコアが動いたことで試合の流れが変わります。

引いて守り続けるわけにはいかなくなったレッチェは失点後、特に後半からはアグレッシブなプレッシングにより積極的なボール奪取を企図。しかし、それにより背後にスペースを許すリスキーな状況となり、ミランに速攻の機会が度々訪れるようになりました。

すると74分。速攻の機会を得たレオンが自陣からドリブルを開始。そのまま独力で相手PA内に侵入し、ゴールを奪取しました。


【22-23】ミラン対レッチェ_戦術分析4
――シーン2:高い位置からボールを奪いにかかるレッチェ。メニャンのロングパスを受けたテオに対しても、右SBが飛び出してプレッシャーをかける。しかしこれにより、後方のレオンへのマークが手薄になる


【22-23】ミラン対レッチェ_戦術分析5
――その後の場面。ボールを回収しかけたレッチェだが、こぼれ球をクルニッチに拾われる。クルニッチはダイレクトで前方のレオンにパスを出し、フリーのレオンが速攻を開始


【22-23】ミラン対レッチェ_戦術分析6
――その後の場面。先ほどの位置からレオンが1人で持ち込んでゴール

これだけでも脱帽もののプレーですが、これが偶々でも何でもないプレーというのが何より凄いです。つい先日のナポリ戦でも同様の流れからアシストしていますからね。

再びレオンのドリブルが炸裂し、ミランが勝負を決定づけました。


お馴染みの「反省点」


レオンのドッピエッタの活躍により2点を奪うことが出来たミランですが、試合を通して作り出したシュートチャンスの数は多くありませんでした。


【22-23】ミラン対レッチェ_xG
――参考2:この試合における両チームのゴール期待値、及び実際のスコア。ミランのxGは「0.96」に止まり、レッチェ(1.03)を下回った

ピオリ「ファイナルサードでの意思決定に明晰さがなく、あまりにも多くの悪い選択をしてしまっていた」



こういう試合の後にピオリが発する毎度お馴染みのコメントの一つですね。昨季から同様の反省を何度も口にしています。

ところで、(確か)グアルディオラ監督の発言の1つに「監督の仕事はファイナルサードにボールを運ぶ方法を考えること。そこから点を奪うのは選手の仕事だ」という趣旨の有名なものがありますけど、その「監督の仕事」の範囲には「より効率的にチャンスを生み出せるよう、選手の特性を踏まえた人選・役割設定を行うこと」も含まれているはずです。

それでは、今回の試合のように「ファイナルサードでの明晰さを欠いた・ミスが多すぎた」原因は「選手の仕事」だけにあるのでしょうか。
一面的に捉えればその通りですが、そもそも選手の起用法に問題はなかったのかというとそうでもありません。例えば今回の試合でいうと「メシアスの起用法」です。

先述の通りブラヒムが普段と基本位置を変えた事で、前半の右ハーフスペースには主にメシアスが陣取る形となりました。
そこから彼はサイドに開いてパスを受けようとするシーンもあったものの、周囲の配置の関係もあり基本はハーフスペース(ライン間)でパスを引き出し、仕掛けることが求められています。

しかしながら、テクニックやアジリティ、ビジョンといった各要素に別段優れているわけではないメシアスにそのような役割を任せても大した活躍は期待できません。そのことは昨季~今季を通して既に分かっていることです。


【22-23】ミラン対レッチェ_戦術分析7
――シーン3:ティアウからライン間のメシアスに見事な縦パスが入る。これがブラヒムであれば十中八九前を向いて仕掛けられる状況


【22-23】ミラン対レッチェ_戦術分析8
――その後の場面。しかしメシアスは前を向けず、このあとは後方へとドリブルで戻る


【22-23】ミラン対レッチェ_戦術分析9
――その後の場面。ようやく前を向くが、相手は既に帰陣を終えている状態


【22-23】ミラン対レッチェ_戦術分析10
――シーン4:同様にティアウからライン間のメシアスに縦パスが入る


【22-23】ミラン対レッチェ_戦術分析11
――その後の場面。ここでは何とか前を向くも、相手からプレッシャーを受けたためか続くプレーでパスミスしてしまう

こういう試合展開、そして起用法を見るにつけ、デ・ケテラーレやアドリといった新加入選手をまともに使いこなせない(フィットさせられなかった)弊害が出てるなぁと感じます。
本来なら彼らがこういう試合展開でクリエイティビティを発揮し、継続的にチャンスを作り出して得点延いては勝利に貢献するというのが理想でしたし、昨夏の補強コンセプトの1つはそうした「ポジショナルな攻撃の改善」にあったはずですが……結果は今シーズンここまで見てきた通りです。

こうなってしまった以上は、今回のようにどんな形でも1点をもぎ取って相手を引きずり出し、スペースを生じさせてからレオンやテオが個人技で無双するというゲームプランが今後もハマることを願うばかりですね。

ミラン2-0レッチェ


雑感


「CLの前後に行われるリーグ戦」は要注意という事で、このレッチェ戦もまたCL後の危険な試合だったわけですが、無事に勝利を収めることが出来ました。

試合内容・順位ともにまだまだ楽観視できる状況ではないものの、前者に関してはエースのレオンが引き続き結果を残し、後者については2位のラツィオと3位のユベントスが共に今節敗れた事で、彼らに対し勝ち点差を「3」縮めることに成功しています。

このようにいずれもポジティブな状況ではあるという事で、今の好調な流れは是非ともキープしてもらいたいですね。

そのためにも、「4月最後の大一番」である次節のローマ戦には必ず勝利を収めて欲しいと思います。

Forza Milan!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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