ベナセルの有用性とミランとの絆

イスマエル・ベナセル

昨年1月、ベナセルはミランと2027年までの新契約を結んだ。その際に彼の年俸は150万ユーロから約400万ユーロへ上昇。代理人の変更(※現在はエンツォ・ライオラが代理人)とミランでより多くのトロフィーを獲得するという彼の確固たる意思により、この選択は容易なものとなったのである。
しかしながら、当時ベナセルには国外からの関心もあった。というのもアーセナルがジョルジーニョと契約する前に、かつて自クラブに在籍していたベナセルの復帰を画策していたのだ。
ミランについては今夏の移籍市場にて大きな動きが予想され、数人の「サプライズネーム」が移籍可能リストに載る可能性もあるが、そこにベナセルの名前は入らない。彼は既にプレミアリーグやリーガエスパニョーラからの様々なオファーを断っており、それは自分の現在と未来がミランにあると確信しているからだ
――calciomercato

今季ここまでは公式戦34試合に出場して2ゴール・2アシストを記録しているベナセル。
2月に凡そ1カ月間の戦線離脱を余儀なくされたものの、その時期を除けば継続的にチームに貢献し続けています


そんなベナセルにまつわる最近の注目ポイントといえば、やはり「トップ下起用」が真っ先に挙げられるでしょう。

これまでのベナセルの役割は「中盤の低いエリアにて後方からのビルドアップに深く関与する」といったものがメインであり、高めの位置で起用されるのはチームの守備強度を高める目的で途中から投入されるときなど、機会がかなり限定されていました。

しかし、先日の第28節ナポリ戦にてスタートからトップ下で起用されると、その後のエンポリ戦、CLナポリ戦と3連続で同様のポジション・役割を担当。

その理由としては、まず相手アンカーのケアという「守備的な側面」が考えられます。ナポリのロボツカ、エンポリのマリンといった小回りの利くタイプの選手に対し、同様に敏捷性のあるベナセルによる粘り強いマーキングで封じてしまおうということですね。
実際に彼らの自由を許さなかったことで、相手のビルドアップに悪影響を及ぼすことが出来ていたと思います。

一方、攻撃面においては持ち味の一つである「後方からの配給能力」が制限され、エンポリ戦のように前方のスペースがない試合では存在感が希薄になりますし、先のCLナポリ戦でもタッチ数が「29回(※ベナセルの平均タッチ数は約65回)」に止まるなど、トップ下起用による好ましくない影響も感じられるところです。

ただし、それでもナポリとのリーグ戦ではブラヒムと協力して相手の前線からのプレッシングに対する出口として機能したり、以下のように持ち前のダイナミズムを活かしてスペースメイクを行い、チャンスに絡んだりなどポジティブな要素は各所に見られます。また、先日のCLナポリ戦でベナセルが決勝ゴールを挙げたことを考えれば、此度の起用については大正解だったといえるでしょう。


【22-23】ナポリ対ミラン_戦術分析8
――シーン1:サイドでボールを持ったレオンに対し、対面の相手マーカーを引っ張ることでカットインをサポート


【22-23】ナポリ対ミラン_戦術分析10
――その後の場面。レオンが中央に切り込んだ後、前方サイド方向に流れていたベナセルにパス。この後のベナセルのクロスをきっかけに、ミランが2点目を奪った


【22-23】ミラン対ナポリ_ベナセル1
――シーン2:速攻の場面。


【22-23】ミラン対ナポリ_ベナセル2
――ベナセルのフリーランにより相手CBを引っ張り、サレマからジルーへの決定的なパスコースが生まれた

万能な解決策ではなくとも、一つの戦術的オプションとしては有効であることを示したと考えられますし、これによりチームにとってのベナセルの有用性(価値)が更に高まったのではないかと思いますね。

そしてミランのベナセルに対する評価が更に上がった一方、ベナセルもまた先日のナポリ戦前にミランへの愛を包み隠さずに語るなど、両者の関係が極めて良好であることが窺えます。

世界最高のクラブの1つであるミランに所属すると、そのクレイジーな歴史を日々感じることができる。そうして、ここがどれだけスペシャルなチームなのかを自然と理解できるというわけさ。僕がこのクラブに恋をした理由だね



この蜜月関係は今後も末永く続いて欲しいですね。

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