【n回目の苦戦】ミラン対エンポリ【2022-23シーズン・セリエA第29節】
今回はセリエA第29節、ミラン対エンポリのマッチレビューを行います。
スタメン

ベースフォーメーション:
ミラン「4-2-3-1」
エンポリ「4-3-1-2」
試合前はトップ下での先発が予想されていたポベガでしたが、実際の彼はボランチで起用され上記の役割を担いました。
そしてベナセルが前節に引き続きトップ下のポジションに入り、サレマと共にダブルトップ下のような形に。前線はレビッチとオリギが2トップとなり、両サイドのスペースはカラブリアとテオが積極的に上がって利用するというのが攻撃(ポゼッション)時の基本形ですね。

――参考1:この試合前半におけるミランの攻撃時の平均ポジション
幅を取る両SBによって相手のMF(インサイドハーフ)やSBをサイドに開かせ、それにより生じやすい中央のスペース(ライン間)をダブルトップ下が中心となって利用するというのが一つの攻撃の狙いだったように思われます。

――シーン1:カラブリアからサレマへとボールが渡る

――その後の場面。サレマのスルーパスにレビッチが抜け出し、決定機を迎えた
しかし、このようなシーンは非常に限定的でした。
というのも、ミランはボトムの構造を「2CB+ボランチ」で形成するのが基本で、序盤こそ最終ライン右から「ティアウ、トモリ、ポベガ」の並びでボトムの構造を安定させつつ、それにより両SBを高く押し上げるような形を取ります。(230)

――シーン2:前半序盤、ミランのボトムの陣形

――その後の場面。高い位置を取っていたテオに、トモリからロングボールが入った
しかし、徐々にボトムの陣形が安定しなくなり、それによりSBが押し上げられず幅も高さも取れなくなるような場面が頻発し始めることに。
その結果、何がしたいのか良く分からない攻撃となり、次トピックで言及する「エンポリのコンパクトな守備」を前に攻めあぐねる状況が続きました。
ミランは(高い位置からのプレッシングなどで)自らライン間を空けてくれる相手チームに対し、そのスペースを上手く活用することは出来ますが(前節のナポリ戦が好例)、進んでライン間を閉じてくる相手をこじ開ける組織的クオリティはかなり低いです。故に今回のような相手に対し攻めあぐねるのは今に始まった話ではなく、必然の苦戦とすら言えます(レオン・ブラヒムのドリブルやジルーのヘディングなどの個人技に頼れない今回は尚のこと厳しい)

――参考2:この試合前半におけるエンポリの守備時の平均ポジション
エンポリがアグレッシブなアプローチで臨んでくれたら…と試合前は少し期待していましたが、敵将ザネッティは色気を出すことなく勝負に徹しました。ピオリよりもよほど潔く、戦略的な監督ですね。
ピオリは昨季から抱えている課題に何ら具体的な解決策を見出すことができないまま、遂に今シーズンも終盤戦を迎えてしまいました。デ・ケテラーレ、アドリ、デストといったテクニカルな新戦力を誰一人として主力に組み込めず、延いては昨季のチームに明確な戦術的アップデートをもたらせなかったという事で、戦略上の過失は決して小さくないでしょう。
しかしながら、この試合に限って言えばミランが勝利してもおかしくないほどの内容ではありました。
相手の受動的な守備アプローチも相まって、ミランは序盤から試合の主導権を握ります。
更には集中したネガティブトランジションや守備時のプレッシングによってエンポリに反撃の機会をほとんど与えることなく、相手を完全に押し込むことに成功しました。
その結果、ボール支配率は「70対30」、シュート数も「23対2」と明確な差を付けており、ゴール期待値についても以下の通り一方的です。

――参考3:この試合における両チームのゴール期待値(xG)、及び実際のスコア。ミランのxGは「2.24」、対するエンポリのxGは「0.10」
まぁこれだけ圧倒的にボールを支配して相手を押し込めれば、崩しのクオリティが低かろうともチャンスシーンは訪れます。
ピオリの下ではチャンスの質ではなく量で勝負するスタイルを貫く他なさそうですし、今後も同様の相手に対し同様の試合展開を作れれば、確率的に勝ち越すことは出来るのではないでしょうか。また、その際にまともなストライカーが前線にいれば更に勝率を上げることが可能になるはずです。
ミラン0-0エンポリ
受動的なアプローチを採る相手に対する戦術的欠点や監督のターンオーバーの拙さは以前からの懸念材料でしたので、正直言って今回の結果に大きなショックは受けていません。もちろん勝って欲しかったですけどね。
先述した監督コメントにもある通り、チームの全体的なパフォーマンスは悪くないですし、気落ちすることなく次のナポリとの大一番に備えてもらいたいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
スタメン

ベースフォーメーション:
ミラン「4-2-3-1」
エンポリ「4-3-1-2」
ミランの攻撃時の陣形
ポベガ「僕はサイドのテオとカラブリアにスペースを与えるため、DFラインの間に下がるようにピオリ監督から言われていた。僕たちはいつも高い位置でボールを回収し、ボールをキープして常に優位に立つことを心がけているよ」
試合前はトップ下での先発が予想されていたポベガでしたが、実際の彼はボランチで起用され上記の役割を担いました。
そしてベナセルが前節に引き続きトップ下のポジションに入り、サレマと共にダブルトップ下のような形に。前線はレビッチとオリギが2トップとなり、両サイドのスペースはカラブリアとテオが積極的に上がって利用するというのが攻撃(ポゼッション)時の基本形ですね。

――参考1:この試合前半におけるミランの攻撃時の平均ポジション
幅を取る両SBによって相手のMF(インサイドハーフ)やSBをサイドに開かせ、それにより生じやすい中央のスペース(ライン間)をダブルトップ下が中心となって利用するというのが一つの攻撃の狙いだったように思われます。

――シーン1:カラブリアからサレマへとボールが渡る

――その後の場面。サレマのスルーパスにレビッチが抜け出し、決定機を迎えた
しかし、このようなシーンは非常に限定的でした。
というのも、ミランはボトムの構造を「2CB+ボランチ」で形成するのが基本で、序盤こそ最終ライン右から「ティアウ、トモリ、ポベガ」の並びでボトムの構造を安定させつつ、それにより両SBを高く押し上げるような形を取ります。(230)

――シーン2:前半序盤、ミランのボトムの陣形

――その後の場面。高い位置を取っていたテオに、トモリからロングボールが入った
しかし、徐々にボトムの陣形が安定しなくなり、それによりSBが押し上げられず幅も高さも取れなくなるような場面が頻発し始めることに。
その結果、何がしたいのか良く分からない攻撃となり、次トピックで言及する「エンポリのコンパクトな守備」を前に攻めあぐねる状況が続きました。
n回目の苦戦
ザネッティ(エンポリ監督)「はっきり言おう。この試合における我々の最大のポイントは『引いてライン間のスペースを奪う』ことにあった。劣勢を強いられるチームにとって、こういう試合をしなければならない時もある。ミランにスペースを与えれば、ゴールを奪われてしまうリスクがあったからね。」
ミランは(高い位置からのプレッシングなどで)自らライン間を空けてくれる相手チームに対し、そのスペースを上手く活用することは出来ますが(前節のナポリ戦が好例)、進んでライン間を閉じてくる相手をこじ開ける組織的クオリティはかなり低いです。故に今回のような相手に対し攻めあぐねるのは今に始まった話ではなく、必然の苦戦とすら言えます(レオン・ブラヒムのドリブルやジルーのヘディングなどの個人技に頼れない今回は尚のこと厳しい)

――参考2:この試合前半におけるエンポリの守備時の平均ポジション
エンポリがアグレッシブなアプローチで臨んでくれたら…と試合前は少し期待していましたが、敵将ザネッティは色気を出すことなく勝負に徹しました。ピオリよりもよほど潔く、戦略的な監督ですね。
ピオリは昨季から抱えている課題に何ら具体的な解決策を見出すことができないまま、遂に今シーズンも終盤戦を迎えてしまいました。デ・ケテラーレ、アドリ、デストといったテクニカルな新戦力を誰一人として主力に組み込めず、延いては昨季のチームに明確な戦術的アップデートをもたらせなかったという事で、戦略上の過失は決して小さくないでしょう。
決定力不足
しかしながら、この試合に限って言えばミランが勝利してもおかしくないほどの内容ではありました。
ピオリ「我々は素晴らしいインテンシティでプレーし、相手に何も許さず、後半には勝つためにすべきことを全部やったがゴールが入らなかった。チーム状態は良いと思う。ネガティブな結果だが、ネガティブなパフォーマンスではないよ。
ゴールはFWに期待するものだ。レビッチが前半のチャンスで決めていれば、またオリギがもう少し運良くヒールで決められていれば、結果は変わっていたかもしれない。」
相手の受動的な守備アプローチも相まって、ミランは序盤から試合の主導権を握ります。
更には集中したネガティブトランジションや守備時のプレッシングによってエンポリに反撃の機会をほとんど与えることなく、相手を完全に押し込むことに成功しました。
その結果、ボール支配率は「70対30」、シュート数も「23対2」と明確な差を付けており、ゴール期待値についても以下の通り一方的です。

――参考3:この試合における両チームのゴール期待値(xG)、及び実際のスコア。ミランのxGは「2.24」、対するエンポリのxGは「0.10」
まぁこれだけ圧倒的にボールを支配して相手を押し込めれば、崩しのクオリティが低かろうともチャンスシーンは訪れます。
ピオリの下ではチャンスの質ではなく量で勝負するスタイルを貫く他なさそうですし、今後も同様の相手に対し同様の試合展開を作れれば、確率的に勝ち越すことは出来るのではないでしょうか。また、その際にまともなストライカーが前線にいれば更に勝率を上げることが可能になるはずです。
ミラン0-0エンポリ
雑感
受動的なアプローチを採る相手に対する戦術的欠点や監督のターンオーバーの拙さは以前からの懸念材料でしたので、正直言って今回の結果に大きなショックは受けていません。もちろん勝って欲しかったですけどね。
先述した監督コメントにもある通り、チームの全体的なパフォーマンスは悪くないですし、気落ちすることなく次のナポリとの大一番に備えてもらいたいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。