ポベガの苦境の原因について

トンマーゾ・ポベガ
現在のミランにはポテンシャルを発揮できずにもがいている選手が数多くおり、その内の1人がトンマーゾ・ポベガです。

シーズン序盤こそ継続的に出場機会を与えられていたものの、11月に入る頃にはプレー機会が減少。そして年明けからも状況は改善せず、2023年ここまでのプレー時間はわずか208分間に止まっています。

このようなポベガの苦境について、彼の代理人であるパトリック・バスティアネッリ氏は以下のようにコメントしました。

1月までトンマーゾはプレーしていたし、ミラン加入1年目にしては継続性もあった。21試合に出場し、チャンピオンズリーグでも得点するなど良くやっていたよ。この1カ月間はほとんどプレーしなかったが、今は自分の居場所を取り戻すために努力している最中だ。彼はミランでプレーするためのあらゆる資質を備えており、チャンスがあればそれに応えるだろう――Milan News

現在のポベガの苦境については、「彼自身の特徴・パフォーマンス」と「チームのフォーメーション変更」という2つの要素が合わさった結果であるというのが個人的見解です。

というのも、ポベガには「縦のダイナミズム」という明確な武器がある一方で、現時点では攻守ともに安定感を欠くきらいがあります。
例えば攻撃面においてはビルドアップ能力が低く、後方でのポジショニングやボール配給、相手から受けるプレスへの対処といった部分が安定していません。そうした部分はトリノ時代には戦術的にあまり求められておらず、ミランに来てどうなるかというのは加入当初から懸念の一つだったわけですが…。今のところはやはり異なるスタイルへの適応に苦しんでいる印象があります。

ポベガの「これまで」と「これから」

ポベガの「これまで」と「これから」

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守備面についてもフィジカルや走力を活かしたプレス強度こそ魅力的ですが、タックルのタイミングを誤ってファールを犯したり相手に躱されてしまったりといった技術的に未熟な点が散見されます。その結果、例えば第12節のトリノ戦では断トツの6ファールを記録して退場のリスクを高め、また第17節ローマ戦でもわずか20分の出場時間で3回のファールを犯してセットプレーのピンチを招いていました。

このように安定感を欠いてしまうと、先発はもちろんのこと途中出場から試合の流れを落ち着かせて欲しいような展開で起用することも難しくなりますし、それ故にプレー機会が減ってしまう、と。


また、2月以降のミランはベースフォーメーションを「3-4-2-1」に変更しており、このことがポベガにとって更なる向かい風になったように感じます。

ポベガの最大の持ち味である「縦のダイナミズム」を活かすには、積極的に前線へと駆け上がる役割を担わせることが重要です。この点、従来のベースフォーメーション「4-2-3-1」であれば中盤の可変性が高く、ポベガ起用の際には基本的に彼に高めの位置を取らせることでその強みを活かそうとしてきました。


【22-23】ミラン対モンツァ_ミラン攻撃時平均ポジション
――参考1:ポベガがフル出場した第11節モンツァ戦における、ミラン選手の攻撃時の平均ポジション。ポベガ(32)がベナセル(4)よりも高い位置を取り、またトップ下のブラヒム(10)が右サイド側を主戦場としてポベガに前方のスペースを提供する


【22-23】ミラン対モンツァ_戦術分析4
――シーン1:モンツァ戦の一場面。ミランが右サイドでボールを回している間、ポベガが相手最終ライン中央に生じたスペースに飛び込んでパスを引き出そうとする


しかしながら、現在のミランの「3-4-2-1」では基本的にボランチが前方のスペースを見出すことは難しくなりますし、ポベガの長所・短所と今のミランで求められる役割とを合わせて考えたときに起用の優先順位が下がってしまうことは否めませんね。


最後に。チャンスすら与えられないアドリやヴランクスとは異なり、ポベガが定位置を確保できない理由はこれまでのピッチ上のパフォーマンスから推察可能です。

この状況が続くようであればシーズン後の移籍の可能性も否定できなくなりますが、選手登録枠の関係上ポベガはとても貴重な存在ですし、またチーム内の数少ないイタリア人プレーヤーということで、何とか成長してミランで定位置を確保して欲しいと強く思います。

4Comments

シェバシェバ

コメント失礼いたします。

コメントするのはだいぶ久方ぶりではありますが、ブログは拝見しておりました。

ポベガ苦しいですね。今シーズンのピオリはやたらメンバーの固定化をしており、昨シーズンにあった相手に合わせて柔軟に対応する戦術というのが無くなってしまったような気がします。
それだけ新戦力などに信頼がないのかなと思うのですが、今シーズンのトモリの不安定さは顕著だと思います。キャピタルゲインを得られるうちに放出したほうがいいのではないかと思うほどです。

ポベガ絡まりで今の中盤についてはどう思われますか?
というのもベナセルが不在の時にフォーメーションが代わり、守備が驚くほど安定しました。それは、トナーリとクルニッチがある程度バランスを取るタイプのMFで、中央のスペースを埋めたからなのかなと思っております。
それに対してベナセルは頻繁にボールホルダーにプレスをかけており、それがうまく行かないと一気に中央のスペースを使われ、サレルニターナ戦みたいな失点に繋がるのかなと。
ベナセルだけの問題ではないのですが、今の状態だとトナーリ、クルニッチの方が安定するのかなと思ったのですが、どう思われますか?

ポベガの話をほとんどしないうえに長文となり失礼いたしました。

  • 2023/03/22 (Wed) 23:07
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マツモト

ポベガは今のままだと使いづらいですねというか今はレベル的に似たような選手ばかり集めているような気がします当たりが出たとしてもオーナーが言う様にヨーロッパのトップに返り咲くのが目標とするならそこまで成長する選手たちなのだろうか、それともピオーリの使い方や指導が悪いのかターンオーバーが下手なのか能力の限界なのか、イブラとレオンを使っているのにイケイケの前プレはダメでしょスカスカですよ中プレにして

トップ下は大金を出してデブライネやブルーノフェルナンデスの様な攻撃を任せられるクオリティの選手を用意するべき【ケテラーレはすぐには育ちそうに無いし】オーナーが金を出さないのが今の状況の元凶で結果だけ求めても難しいでしょスタジアムも大事だけどクラブの価値を上げるには其れなりの事をしなければ今まで何もやってない、金を出すのはスタジアムが完成してから5年くらいかかるのか❓初仕事は監督や幹部をクビにする事かもいやぁ今年の夏はどうなるのか逆に楽しみかもうーんポベガから大きく逸れましたこの前の試合で不満が溜まりまくりはカカニスタさんと同じですかね

  • 2023/03/23 (Thu) 21:19
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カカニスタ22

カカニスタ22

To シェバシェバさん

シェバシェバさんお久しぶりです~。コメントありがとうございます!

決して盤石とは言えない従来のシステム・メンバーに固執したり新加入選手を全く主力に組み込めなくなったりと、柔軟性を欠くようになってきているのは確かに気になりますね。これらは危険な兆候ですし、一般的に監督交代のタイミングと解されても不思議ではないと思います(実際に交代するかは別として)

>>今の状態だとトナーリ、クルニッチの方が安定するのかなと思ったのですが、どう思われますか?

同感ですね。現時点において、守備時の安定感という点からはクルニッチ&トナーリコンビの方が好印象です。

クルニッチはコンパクト志向が強く、殊に自陣ゴール前において危険なスペースを埋める意識と速度(精度)が高いにように見受けられますし、フィジカルも優れているため現在の手薄な中盤においてもフィルターとして十分に機能している印象を受けます。
一方のベナセルもプレス強度が高く守備にも基本的に貢献できる選手ですが、体格面の限界もあり、例えば対戦相手のフィジカルレベルによってはスペースにボールを持ち運ばれた際の抵抗力に物足りなさを覚えます。先日のウディネーゼ戦2失点目におけるシーンが象徴的ですね。

組織的・戦術的に十分に機能している時であれば良いのですが、中盤が手薄でスペースが生まれがちな現状のシステムですと、ベナセルよりクルニッチ(とトナーリ)の方が安定するのは確かだと個人的にも思います。

  • 2023/03/24 (Fri) 12:29
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カカニスタ22

カカニスタ22

To マツモトさん

コメントありがとうございます!

流石に今の路線のまま欧州トップレベルにまで復権することを目論んでいるわけではないと思います。現在の赤字を解消し、新スタジアムを建てて収益面を大幅に改善してからようやく本格化するのかなぁと。まだまだ辛抱のメルカートは続きそうですね。

そんな中でも的確な選手補強を行うには、やはり迅速なメルカート戦略の策定と実施が不可欠だと思います。その意味で昨夏のオーナー交代に伴う人事面のゴタゴタが選手補強に及ぼした悪影響は大きいですし、今夏また同じ失敗はして欲しくないので僕はフロントの交代には否定的です。監督については今シーズンの結果次第ですが、いずれにせよ迅速な決断と事後の的確な対応は不可欠ですね。

  • 2023/03/24 (Fri) 12:29
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