【復活の証明】ミラン対アタランタ【2022-23シーズン・セリエA第24節】
今回はセリエA第24節、ミラン対アタランタのマッチレビューです。
スタメン

ベースフォーメーション:
ミラン「3-4-2-1」
アタランタ「3-4-1-2(3-5-2)」
まずはミランの攻撃(ボール保持)とアタランタの守備についてです。
前回の記事「メニャンの復帰による変化」の中で言及した通り、この試合のミランは後方からのビルドアップが大きく改善。GKメニャンを積極的に組み込んだパス回しによってアタランタの前からのプレッシングを抑制し、ボールを前進させていきます。
この点、特にポイントになったのが右サイドからの前進です。

――参考1:この試合におけるミランのヒートマップ
そこでは右CBのカルルがサイド方向に開き、その動きをボランチのクルニッチがサポート。この両者の関係性を1つの軸にしながら、そこに周囲(ブラヒム、トナーリ)が絡んで効果的なボール前進を行いました。

――シーン1:ここではクルニッチが下がり、カルルはサイドに大きく開く。そしてメニャンからカルルへとパスが通った
それに対して、アタランタは主にデローンが中央からサイドへと対応。これにより中盤全体が同サイドにスライドし、コンパクトな陣形を形成してボール奪取を図ります。

――その後の場面。カルルにはデローンが対応し、それに応じて残りのMF2人も帰陣
さて。このような両チームのミドルサードでの攻防において、注目すべきは相手MFが大きくスライドすることで生じる「中央のスペース」です。
ミランとしては如何にして当該スペースに人とボールを送り込むか、一方のアタランタは如何にボールを入れさせず、また入れさせたとしてもその後にしっかりと対応できるかが問われました。
上記の点において、ミランにとってキーマンといえたのが両WB(テオ、メシアス)です。
例えばテオは右サイド中心のボール前進において、積極的に中央寄りにポジショニング。これにより、中央のスペースでボールを受けようします。

――シーン2:相手MFを右サイドに引き付け、中央にスペースを作り出すミラン。そこへはテオがポジショニングし、パスを受けようとする
メシアスもまたサイドを起点としつつも、状況に応じて中央に侵入。そうした両者の動きを筆頭に、チーム全体で崩しを目論みました。
一方のアタランタは、中央のスペースに侵入してきた選手に対しては主に最終ラインからの縦スライドで対応を試みます。そこでミランはいったん前線に楔のパスを当て、相手最終ラインを牽制する等の工夫により当該スペースを攻略していきました。

――シーン3:相手MFを右サイドに引き付け、カルルは前線から下がってきたジルー(画面外)に楔のパスを通す。同時に、メシアスとテオが中央のスペースに侵入してパスを受けようとする

――その後の場面。ジルーの落としをメシアスがフリーで受ける。この後レオン、テオと繋いでゴール前でFKを獲得した
するとミランは25分。テオがフリーで強烈なシュートを放ち、相手GKムッソのOGを誘発して先制に成功。ややラッキーな形ではあったものの、シュートまでの流れは完全に狙い通りのモノだったと考えられます。

――シーン4:先ほどと同様にパスを回しながらアタランタMFを引き付け、生じた中央のスペースにはテオが侵入する。そのテオへのパスコースはCBトロイが警戒し、縦スライドの準備を行う

――その後の場面。フリーで前を向いたカルルは前線のジルーへのロングボールを選択。これにより相手DF陣を押し下げ、テオがフリーで受け得る状況を作り出す

――その後の場面。ジルーのヘディングによる落としをフリーで受けたテオは、強烈なシュートでOGを誘発した
後半になるとミランはシンプルな形(ワンツー突破など)からの縦に速い攻めが増えたため、テオは持ち味とする縦のダイナミズムによるサイド突破を一度ならず披露。
そしてメシアスも積極的にゴールを狙いに動きます。すると86分、レオンからの正確なスルーパスにより抜け出したメシアスが相手GKとの1対1を冷静に制し、貴重な2点目を奪取。勝負を決定づけました。

――シーン5:メシアスは試合終盤でも貪欲に前線へと侵入。レオンからスルーパスを引き出し、最終的に2点目を獲得した
続いてはミランの守備についてです。
前半は先述の安定したボール保持に加え、守備時に積極的な前からのプレッシングを行ったためミランは主導権を握ることに成功。ボール支配率も「58%」とリードしていました。
一方、後半ではアタランタが約「62%」のボール支配率を記録。1点ビハインドとなったアタランタが攻勢を強めたことで、ミランは守勢に回る時間帯が増えた、と。
この点に関し、ミランは直近のトリノ戦、スパーズ戦、モンツァ戦のいずれにおいてもポゼッション率では相手を下回っているというデータがあります(『GdS』)。そしてこの試合でも90分トータルのボール保持率は約「48対52」でした。
とは言え、過去3試合はいずれもウノゼロ(1-0)で勝利を収めています。守勢に回る時間が長くなったとしても、今のミランには強固なバックラインを軸にした守備組織があり、相手に危険なチャンスを作らせることはありませんでした。
それは今節のアタランタ戦も例外ではなく、ミランはボールの位置に関わらず持ち前のアグレッシブなスタイルで相手に対抗していきます。
具体的に見ていくと、まず前からのプレッシング時には普段通り前線3枚で相手のCBを抑えにいく形ですが、自陣での守備においてはブラヒムが中盤ラインを積極的にサポートする形を採ります。

――シーン6:ここでは相手のダイアゴナルなパスを警戒し、ブラヒムが中盤ラインに下がる
これまでのアタランタ戦では、相手の左右CBの攻め上がりやバイタルを使った攻撃に対処し切れず、自陣での守備時に度々ピンチに陥っていたミラン。振り返れば今シーズン前半戦も、バイタルエリアからマリノフスキにぶち込まれて失点を喫しています。

しかし、この試合では3CBとWB・ダブルボランチが中心となり、そうしたアタランタの攻撃をキッチリと封じ込めることに成功しました。

――シーン7:メーレ、ルックマンとの連携からスカルビーニがCB間のギャップを突き、スルーパスを引き出す。そこにはブラヒムが対応。

――その後の場面。スカルビーニとの連携からルックマンが持ち込むが、クルニッチが迅速なカバーリングで進路を塞ぎ、プレーを制限した

――シーン8:別の場面。ホイルンドに縦パスが入るも、この試合で彼を圧倒していたティアウがここでもボールを奪取する

――その後の場面。こぼれ球を拾い仕掛けに入ったボガ(※途中投入)に対し、カルルが迅速な縦スライド対応。スペース・選択肢を制限されたボガは近くのルックマンに預ける

――その後の場面。シュートモーションに入ったルックマンに対し、今度はトモリが鋭いスライディングによりシュートを未然に防いだ
その結果、アタランタに許したシュートは計3本で、枠内シュートに至ってはゼロです。

――参考2:この試合における両チームのゴール期待値
更に、この試合のアタランタのゴール期待値「0.10」というのは彼らの今季ワースト記録という事で、数字上、ミランはアタランタの攻撃に今シーズン最も上手く対応したチームといえますね。
ミラン2-0アタランタ
アタランタとの上位対決を制したミラン。
そして今節は2位インテルが敗れたため、彼らとの勝ち点差が「0」の暫定3位に位置することになりました。
まだまだ5位以下との勝ち点差も小さく油断ならないとは言え、チームパフォーマンスは明らかに上がっています。また、この試合ではメニャンだけでなくイブラの復帰も果たされるなど、今のミランを取り巻く状況は非常にポジティブです。後は攻撃陣がより多くの決定機をモノにできるようになれば…といったところでしょうか。
このままセリエAでしっかりと勝ち点を重ねつつ、CLでの躍進を目指すという形が維持できれば理想的ですし、流れは確実にきているだけに大いに期待していきたいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
スタメン

ベースフォーメーション:
ミラン「3-4-2-1」
アタランタ「3-4-1-2(3-5-2)」
安定のボール運び
まずはミランの攻撃(ボール保持)とアタランタの守備についてです。
前回の記事「メニャンの復帰による変化」の中で言及した通り、この試合のミランは後方からのビルドアップが大きく改善。GKメニャンを積極的に組み込んだパス回しによってアタランタの前からのプレッシングを抑制し、ボールを前進させていきます。
この点、特にポイントになったのが右サイドからの前進です。

――参考1:この試合におけるミランのヒートマップ
そこでは右CBのカルルがサイド方向に開き、その動きをボランチのクルニッチがサポート。この両者の関係性を1つの軸にしながら、そこに周囲(ブラヒム、トナーリ)が絡んで効果的なボール前進を行いました。

――シーン1:ここではクルニッチが下がり、カルルはサイドに大きく開く。そしてメニャンからカルルへとパスが通った
それに対して、アタランタは主にデローンが中央からサイドへと対応。これにより中盤全体が同サイドにスライドし、コンパクトな陣形を形成してボール奪取を図ります。

――その後の場面。カルルにはデローンが対応し、それに応じて残りのMF2人も帰陣
さて。このような両チームのミドルサードでの攻防において、注目すべきは相手MFが大きくスライドすることで生じる「中央のスペース」です。
ミランとしては如何にして当該スペースに人とボールを送り込むか、一方のアタランタは如何にボールを入れさせず、また入れさせたとしてもその後にしっかりと対応できるかが問われました。
両WBの活躍
上記の点において、ミランにとってキーマンといえたのが両WB(テオ、メシアス)です。
例えばテオは右サイド中心のボール前進において、積極的に中央寄りにポジショニング。これにより、中央のスペースでボールを受けようします。

――シーン2:相手MFを右サイドに引き付け、中央にスペースを作り出すミラン。そこへはテオがポジショニングし、パスを受けようとする
メシアスもまたサイドを起点としつつも、状況に応じて中央に侵入。そうした両者の動きを筆頭に、チーム全体で崩しを目論みました。
一方のアタランタは、中央のスペースに侵入してきた選手に対しては主に最終ラインからの縦スライドで対応を試みます。そこでミランはいったん前線に楔のパスを当て、相手最終ラインを牽制する等の工夫により当該スペースを攻略していきました。

――シーン3:相手MFを右サイドに引き付け、カルルは前線から下がってきたジルー(画面外)に楔のパスを通す。同時に、メシアスとテオが中央のスペースに侵入してパスを受けようとする

――その後の場面。ジルーの落としをメシアスがフリーで受ける。この後レオン、テオと繋いでゴール前でFKを獲得した
するとミランは25分。テオがフリーで強烈なシュートを放ち、相手GKムッソのOGを誘発して先制に成功。ややラッキーな形ではあったものの、シュートまでの流れは完全に狙い通りのモノだったと考えられます。

――シーン4:先ほどと同様にパスを回しながらアタランタMFを引き付け、生じた中央のスペースにはテオが侵入する。そのテオへのパスコースはCBトロイが警戒し、縦スライドの準備を行う

――その後の場面。フリーで前を向いたカルルは前線のジルーへのロングボールを選択。これにより相手DF陣を押し下げ、テオがフリーで受け得る状況を作り出す

――その後の場面。ジルーのヘディングによる落としをフリーで受けたテオは、強烈なシュートでOGを誘発した
後半になるとミランはシンプルな形(ワンツー突破など)からの縦に速い攻めが増えたため、テオは持ち味とする縦のダイナミズムによるサイド突破を一度ならず披露。
そしてメシアスも積極的にゴールを狙いに動きます。すると86分、レオンからの正確なスルーパスにより抜け出したメシアスが相手GKとの1対1を冷静に制し、貴重な2点目を奪取。勝負を決定づけました。

――シーン5:メシアスは試合終盤でも貪欲に前線へと侵入。レオンからスルーパスを引き出し、最終的に2点目を獲得した
ゴール前の堅守
続いてはミランの守備についてです。
前半は先述の安定したボール保持に加え、守備時に積極的な前からのプレッシングを行ったためミランは主導権を握ることに成功。ボール支配率も「58%」とリードしていました。
一方、後半ではアタランタが約「62%」のボール支配率を記録。1点ビハインドとなったアタランタが攻勢を強めたことで、ミランは守勢に回る時間帯が増えた、と。
この点に関し、ミランは直近のトリノ戦、スパーズ戦、モンツァ戦のいずれにおいてもポゼッション率では相手を下回っているというデータがあります(『GdS』)。そしてこの試合でも90分トータルのボール保持率は約「48対52」でした。
とは言え、過去3試合はいずれもウノゼロ(1-0)で勝利を収めています。守勢に回る時間が長くなったとしても、今のミランには強固なバックラインを軸にした守備組織があり、相手に危険なチャンスを作らせることはありませんでした。
それは今節のアタランタ戦も例外ではなく、ミランはボールの位置に関わらず持ち前のアグレッシブなスタイルで相手に対抗していきます。
具体的に見ていくと、まず前からのプレッシング時には普段通り前線3枚で相手のCBを抑えにいく形ですが、自陣での守備においてはブラヒムが中盤ラインを積極的にサポートする形を採ります。

――シーン6:ここでは相手のダイアゴナルなパスを警戒し、ブラヒムが中盤ラインに下がる
これまでのアタランタ戦では、相手の左右CBの攻め上がりやバイタルを使った攻撃に対処し切れず、自陣での守備時に度々ピンチに陥っていたミラン。振り返れば今シーズン前半戦も、バイタルエリアからマリノフスキにぶち込まれて失点を喫しています。

【妥当な?引き分け】アタランタ対ミラン【2022-23シーズン・セリエA第2節】
※関連記事
しかし、この試合では3CBとWB・ダブルボランチが中心となり、そうしたアタランタの攻撃をキッチリと封じ込めることに成功しました。

――シーン7:メーレ、ルックマンとの連携からスカルビーニがCB間のギャップを突き、スルーパスを引き出す。そこにはブラヒムが対応。

――その後の場面。スカルビーニとの連携からルックマンが持ち込むが、クルニッチが迅速なカバーリングで進路を塞ぎ、プレーを制限した

――シーン8:別の場面。ホイルンドに縦パスが入るも、この試合で彼を圧倒していたティアウがここでもボールを奪取する

――その後の場面。こぼれ球を拾い仕掛けに入ったボガ(※途中投入)に対し、カルルが迅速な縦スライド対応。スペース・選択肢を制限されたボガは近くのルックマンに預ける

――その後の場面。シュートモーションに入ったルックマンに対し、今度はトモリが鋭いスライディングによりシュートを未然に防いだ
その結果、アタランタに許したシュートは計3本で、枠内シュートに至ってはゼロです。

――参考2:この試合における両チームのゴール期待値
更に、この試合のアタランタのゴール期待値「0.10」というのは彼らの今季ワースト記録という事で、数字上、ミランはアタランタの攻撃に今シーズン最も上手く対応したチームといえますね。
ミラン2-0アタランタ
雑感
アタランタとの上位対決を制したミラン。
そして今節は2位インテルが敗れたため、彼らとの勝ち点差が「0」の暫定3位に位置することになりました。
まだまだ5位以下との勝ち点差も小さく油断ならないとは言え、チームパフォーマンスは明らかに上がっています。また、この試合ではメニャンだけでなくイブラの復帰も果たされるなど、今のミランを取り巻く状況は非常にポジティブです。後は攻撃陣がより多くの決定機をモノにできるようになれば…といったところでしょうか。
このままセリエAでしっかりと勝ち点を重ねつつ、CLでの躍進を目指すという形が維持できれば理想的ですし、流れは確実にきているだけに大いに期待していきたいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。