ビルドアップを激変させたメニャンのパフォーマンスについて~絶対的守護神の帰還~
5カ月以上ものブランクがありながらも安定したプレーを見せ、待望の復帰戦を2-0の無失点勝利で飾っています。
メニャンのパフォーマンス
~VSアタランタ~
この試合は、チームの組織的なディフェンスによりアタランタにシュートチャンス自体をほとんど作らせることがなく(※アタランタのシュートは3本で、そのうち枠内はゼロ)、それ故に守備時におけるメニャンの出番というのは限定的なものになりました。
しかし、攻撃面においては復帰早々に存在感を発揮。最後方から積極的にチームのビルドアップに絡み、安定したボール回しに貢献しています。
この点について、メニャン離脱時にGKを務めていたタタルシャヌと比較しながらもう少し掘り下げていきましょう。
例えば第21節のトリノ戦では、相手のプレッシングに対してミランは硬直的なビルドアップに終始し、後方からほとんど有効にボールを繋ぐことが出来ませんでした。その原因の一つとしては、GKタタルシャヌのビルドアップ能力に限界があり、GKを含めた最後方での数的優位を十分に活かせないことが挙げられます。

――参考1:トリノ戦におけるタタルシャヌのヒートマップ。
一方、この試合におけるメニャンのヒートマップを見ると、ペナルティエリア内だけでなくその少し外にまで「赤」が広がっている(=そこまで頻繁に動いている)ことが分かります。

――参考2:アタランタ戦におけるメニャンのヒートマップ
そこで何をやっているのかというと、もちろんそれはチームのパス回しへの関与です。彼が高めの位置でビルドアップに関わり、時には最終ラインの1人として振る舞いながらパスを捌いていきます。

――参考3:アタランタ戦におけるメニャンのパス本数(44)及びパスを出した位置。ペナルティエリア外では「15本」のパスを記録している

――参考4:トリノ戦におけるタタルシャヌのパス本数(35)及びパスを出した位置。ペナルティエリア外では「6本」のパスを記録している
このようなメニャンの積極性により最後方での数的優位を活かすことができ、また彼のパス能力やポジショニングというのがチームのボトムの陣形に流動性をもたらしてくれます。具体的には、左右CBがサイドに流れたり高い位置を取り易くなったりするわけですね。

――シーン1:ティアウからパスを受けるメニャン。彼がこの位置でパスを受けられることで、左右CBのカルルとトモリは高い位置をキープできる

――シーン2:ここでは高い位置を取ったトモリへメニャンからロングパスが通った
結果として、守備の基準点を乱される相手は前からプレッシングを仕掛けることが難しくなり、一方のミランは後方からのボールの持ち運びが安定する、と。詳しくは次回以降のマッチレビュー記事に譲りますが、上記の点がポジティブな変化として真っ先に挙げたいポイントでした。
枠内シュートを打ってこないアタランタ相手に静かな夜を過ごしたメニャンだったが、彼の存在はチーム全体に更なる安らぎを与えている。メニャンは後方からチームメイトを統率し、自身のトレードマークであるロングボールを何度も試すなど、ビルドアップの局面で自信を持ち続けていることを示した――Tuttosport
約5カ月ぶりの試合という事で、メニャンのプレーも控えめになってしまうかなと戦前は予想していたのですが、彼はモノが違いました。
自身の在否に応じてチームを激変させてしまう彼は正に「カンピオーネ」と称するに相応しい選手ですし、此度の5カ月間の離脱が改めてその価値を際立たせたのではないかと感じますね。
ただそれだけに、今後メニャンが再び負傷離脱するような事態は絶対に起きて欲しくないですし、コンディション管理には細心の注意を払って欲しいと思います。