ビルドアップを激変させたメニャンのパフォーマンスについて~絶対的守護神の帰還~

マイク・メニャン
第24節アタランタ戦にて、161日ぶりにピッチへと戻ってきたマイク・メニャン。

5カ月以上ものブランクがありながらも安定したプレーを見せ、待望の復帰戦を2-0の無失点勝利で飾っています。

メニャンのパフォーマンス
~VSアタランタ~


この試合は、チームの組織的なディフェンスによりアタランタにシュートチャンス自体をほとんど作らせることがなく(※アタランタのシュートは3本で、そのうち枠内はゼロ)、それ故に守備時におけるメニャンの出番というのは限定的なものになりました。

しかし、攻撃面においては復帰早々に存在感を発揮。最後方から積極的にチームのビルドアップに絡み、安定したボール回しに貢献しています。

この点について、メニャン離脱時にGKを務めていたタタルシャヌと比較しながらもう少し掘り下げていきましょう。

例えば第21節のトリノ戦では、相手のプレッシングに対してミランは硬直的なビルドアップに終始し、後方からほとんど有効にボールを繋ぐことが出来ませんでした。その原因の一つとしては、GKタタルシャヌのビルドアップ能力に限界があり、GKを含めた最後方での数的優位を十分に活かせないことが挙げられます。


【22-23】タタルシャヌ_トリノ戦_ヒートマップ
――参考1:トリノ戦におけるタタルシャヌのヒートマップ。

一方、この試合におけるメニャンのヒートマップを見ると、ペナルティエリア内だけでなくその少し外にまで「赤」が広がっている(=そこまで頻繁に動いている)ことが分かります。


【22-23】メニャン_アタランタ戦_ヒートマップ
――参考2:アタランタ戦におけるメニャンのヒートマップ

そこで何をやっているのかというと、もちろんそれはチームのパス回しへの関与です。彼が高めの位置でビルドアップに関わり、時には最終ラインの1人として振る舞いながらパスを捌いていきます。


【22-23】メニャン_アタランタ戦_パス
――参考3:アタランタ戦におけるメニャンのパス本数(44)及びパスを出した位置。ペナルティエリア外では「15本」のパスを記録している


【22-23】タタルシャヌ_トリノ戦_パス
――参考4:トリノ戦におけるタタルシャヌのパス本数(35)及びパスを出した位置。ペナルティエリア外では「6本」のパスを記録している

このようなメニャンの積極性により最後方での数的優位を活かすことができ、また彼のパス能力やポジショニングというのがチームのボトムの陣形に流動性をもたらしてくれます。具体的には、左右CBがサイドに流れたり高い位置を取り易くなったりするわけですね。


【22-23】メニャンVSアタランタ1
――シーン1:ティアウからパスを受けるメニャン。彼がこの位置でパスを受けられることで、左右CBのカルルとトモリは高い位置をキープできる


【22-23】メニャンVSアタランタ2
――シーン2:ここでは高い位置を取ったトモリへメニャンからロングパスが通った

結果として、守備の基準点を乱される相手は前からプレッシングを仕掛けることが難しくなり、一方のミランは後方からのボールの持ち運びが安定する、と。詳しくは次回以降のマッチレビュー記事に譲りますが、上記の点がポジティブな変化として真っ先に挙げたいポイントでした。

枠内シュートを打ってこないアタランタ相手に静かな夜を過ごしたメニャンだったが、彼の存在はチーム全体に更なる安らぎを与えている。メニャンは後方からチームメイトを統率し、自身のトレードマークであるロングボールを何度も試すなど、ビルドアップの局面で自信を持ち続けていることを示した――Tuttosport



約5カ月ぶりの試合という事で、メニャンのプレーも控えめになってしまうかなと戦前は予想していたのですが、彼はモノが違いました。
自身の在否に応じてチームを激変させてしまう彼は正に「カンピオーネ」と称するに相応しい選手ですし、此度の5カ月間の離脱が改めてその価値を際立たせたのではないかと感じますね。

ただそれだけに、今後メニャンが再び負傷離脱するような事態は絶対に起きて欲しくないですし、コンディション管理には細心の注意を払って欲しいと思います。

6Comments

けじ

No title

いつも楽しく拝見させていただいております。
メニャンは想像以上のインパクトでしたね、戦術的な側面はさることながら心理的な面でも大きなプラスをチームにもたらしていることが素人目線でもわかるような内容でした。ミランというかアタランタが前プレを躊躇っているようにも見え、それがカルルやトモリを結果的に楽にしているとも取れるかなと。

辛く苦しい時期は乗り越えた感があるので、夢のCL上位進出のためにデケテラーレ爆発、もしくはレビットかオリギ復活といったもう一押しが欲しいところです。


  • 2023/02/28 (Tue) 06:04
  • REPLY

ミラニスタ311

いつも勉強になります、ありがとうございます。
先日の記事の中で「ベナセル以外にプレス耐性のあるアンカーがいない」と言うように仰っていた点、まさにその通りですが、アタランタ戦を観る限りちがう方法でそれに対する活路を見出せていた気がします。
3バックのいずれかを押し上げてメニャンが最終ラインに入りビルドアップをしていたのは、離脱以前より相手にとって掴みにくそうな印象を受けました。
まだまだ楽観視できませんが、メニャン復帰により、ビルドアップ時の課題はある程度解決したように思えますがいかがでしょうか?

  • 2023/02/28 (Tue) 08:12
  • REPLY

マツモト

メニャンが復活する事によってフィールドプレイヤーが一人増えるわけですから色々変わりますよねトモリ、カルルがCBの位置じゃないところまで上がっていけるということは攻撃も守備も当然強度が出てきますこれで安心して選手は攻撃に意識を向けられる、、、はずだけど

  • 2023/02/28 (Tue) 16:40
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To けじさん

コメントありがとうございます!

メニャンが心理的にもプラスの影響をもたらしてくれているのは間違いないでしょうね。安心してボールを預けられる存在ですし、彼の行う積極的なコーチングも選手たちにプレーのプレー判断に自信や確信を与えてくれるものだと思います。

これから求めたいのは攻撃陣の爆発ですね。仰られた選手たちに加え、個人的にはイブラの(真の意味での)復活に期待しています。

  • 2023/02/28 (Tue) 21:01
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To ミラニスタ311さん

コメントありがとうございます!

仰る通り、ビルドアップ面において非常に大きな改善がなされたのは確かですね。
最終ラインの流動性が高まったことでポジショニングによるプレス回避が可能になりましたし、それによってダブルボランチ(トナーリとクルニッチ)の攻撃時のパフォーマンスも向上していたと思います。

一方、よりハイレベルかつスペースが限定されるような試合展開になった場合、プレス回避の手段は大いに越したことはないですし、その意味でベナセルの重要性は引き続き高いままかなと感じています。ただいずれにせよ、まずは仰るようにメニャンの復帰によって活路を見出せたのは本当に良かったです。

  • 2023/02/28 (Tue) 21:01
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To マツモトさん

コメントありがとうございます!

ここから戦術面の習熟と並行して、技術的な部分でも精度を高めていけると良いですね。

  • 2023/02/28 (Tue) 21:02
  • REPLY