クルニッチがピオリ監督に好まれる理由について~戦術的柔軟性~
サッスオーロ戦から5試合続けて先発し、チームの復調に貢献してくれています。
クルニッチの戦術的柔軟性
オンザボール時の特長に欠けるクルニッチは、ファンの間でも評価が分かれやすいタイプといえるでしょう。
そのため、彼がポベガやヴランクスを差し置いて起用される現状に納得のいかない方もおられるでしょうが、クルニッチ重用の理由について『GdS』は以下のように報じています。
ピオリがクルニッチを重用する理由は、彼がピッチ上のあらゆるポジションでプレー可能だからだ。クルニッチは攻撃的MFとしてプレーすることが多いが、中盤の底でもプレーできるし、時にはサイドアタッカーやSBでも起用されたことがある
端的にいえば「戦術的柔軟性」こそがクルニッチの魅力であり、ピオリが彼を好んでいる理由という事ですね。
一般的に選手は自分の得意とする役割・ポジションでのプレーに喜びを見出し、それ以外の要求に対しては多少なり抵抗感を覚えるものでしょうが、クルニッチの場合は「監督に要求されたことなら何でもやる」と明言している通り、どんなポジション・役割であっても応じる準備が出来ている、と。
そうした精神的な順応性の高さというのが技術面にも好影響を及ぼしているように見受けられ、クルニッチはどのポジションで起用されても一定のパフォーマンスを発揮していますね。
確かにオフェンシブな能力は高いとは言えませんし、それ故に彼に課すことのできる役割は限定されますが、「守備面」における彼の安定感は特筆すべきものがあります。
守備時の安定感
~VSモンツァ~
この点に関し、ミランの元カピターノにして現在は解説者を務めるアンブロジーニが、先日のモンツァ戦のクルニッチのプレーについて以下のようにコメントしました。
激しい試合の中で、クルニッチはトナーリよりも多くのボールをクリアしていた。また、中盤での複雑なバトルにおいて彼は良いプレーを見せ、状況をシンプルにしてくれていたね。
モンツァはCBの攻め上がりやカプラーリの下がる動きによって何度か中盤エリアに数的優位を作り出し、ボール前進を図りました。
そうした動きに対し、ミランのダブルボランチが如何にそつなく対処できるかというのはチームの守備の安定度に大きく影響します。その点において、クルニッチの貢献度は高かったように見受けられました。

――シーン1:モンツァが右サイドからボールを前進させた場面。その間クルニッチは最終ラインに下がっていた相手ボランチ(ペッシーナ)のマークを行っていたが、速やかに帰陣する

――その後の場面。カプラーリが中盤エリアに顔を出し、ライン間にてパスを引き出そうとする。そこでクルニッチはカプラーリへのパスを警戒して素早く距離を詰めてマーク。結果的に手前のペッシーナへとボールが送られたものの、より危険な選択肢を的確に封じた
また、ゴール前においてもクルニッチの「スペースを埋めるセンス」というのが活かされ、守備の安定に一役買っています。

――シーン2:モンツァ(ロヴェッラ)が右サイド深くへ攻め込んだ場面。ここでクルニッチは、CB間(ティアウとトモリ)に生じた潜在的に危険なスペースを察知して動く

――その後の場面。連係からロヴェッラがゴール前まで持ち込むも、当該スペースはクルニッチがカバー。最終的に事なきを得た
ここ数週間のミランは「崩壊している守備組織を立て直す」というのが第一目標であったわけですが、当該目標達成のために上記のクルニッチの特長は有用です。これこそが、ポベガやヴランクスよりもクルニッチが優先して起用されている技術的理由の一つと考えられますね。
さて。近々ベナセルの復帰が期待されますが、ベナセル復帰後もクルニッチが貴重な戦力であり続けるのは間違いないでしょう。
特に最近はトナーリが明晰さをかなり欠いており、疲労の影響が感じられるため休ませたいところ。そこでベナセルとクルニッチでダブルボランチを構成するという選択は十分に考えられます。
今後も、クルニッチの「縁の下の力持ち」としての貢献に期待したいですね。