ミランの3-4-2-1とレオンの役割について
先日、トリノ戦で3試合ぶりのスタメン復帰を果たしたラファエル・レオン。
そのパフォーマンスについてはポジティブなものとは言い難く、『GdS』による選手採点でもチームワーストとなるなど、彼個人にとって勢いを取り戻す一戦にはなりませんでした。
レオンはトリノ戦で3-4-2-1の左サイドアタッカーとして先発したわけですが、これを従来の4-2-3-1のソレと比較すると、一般的に「中央寄りのポジションでプレーする」傾向が強くなります。

――参考1:トリノ戦前半、攻撃時におけるミランの平均ポジション(数字は背番号。レオンは17)
これを彼にとっての「新たな役割」と解釈するかどうかは人によるでしょうが、少なくともシステムを動的に捉えたとき、レオンが同様の役割を担うことは珍しくありませんでした。
一例として、第19節のラツィオ戦を挙げることが出来ます。

――参考2:ラツィオ戦前半、攻撃時におけるミランの平均ポジション
この試合の攻撃時は左SBのデストが積極的に高めの位置を取り、それに応じてレオンが内に絞る形を基本としました。そして後方では2CB+右SBの3枚で主にバックラインを構成し、ダブルボランチ(4、8)と共にビルドアップの中心となります。これをあえてシステム表記するなら「3-4-2-1(3-2-4-1)」となり、攻撃時はトリノ戦と同様の形になるわけですね(右CBの位置がサイド寄りになるなど、もちろんディテールに違いはありますが)。
それではこちらの試合のレオンはどうだったか振り返ると、これまたトリノ戦と同様に存在感は希薄でした。
無論、チーム自体のパフォーマンスが酷かったという側面はあるものの、そうした低パフォーマンスの責任の一端は彼の能力にもあります。
というのも、一般的に同システムのシャドーにはライン間でスペースを見つけ、後方からパスを引き出してボールを前進させるスキルをチームのポゼッション時に求めたいわけですが、そうしたスキルに乏しいレオンがそのようなプレーを見せるシーンというのはかなり限定的です。
この試合(やトリノ戦)でも彼が行ったのは、裏抜けを始めとする「前」にベクトルが向けられたプレーが中心であり、上記の技術的理由に基づきピオリもレオンの役割を規定している節があります。前掲した攻撃時の選手の平均ポジションを見ても、ブラヒム(10)と比べてレオン(17)は高い位置を取っていますしね。

――シーン1:後方からのロングボールを受けるジルー。レオンはその近くにポジショニングし、落としに備える

――落としを受けたレオンはそのままドリブルで仕掛けていった
選手の特性・気質に合わせた役割を設定するという方向性自体は良いことですが、それは必ずしも組織的なレベルにおいて最良の選択であるとは限りません。
例えば上記のようにレオンに前線を意識したプレーをさせたはいいものの、それにより中盤エリア左側にて後方からパスを引き出すような選手が不在がちとなり、パスルートは大きく制限されます。結果、左からは多くの場合、アウトサイドを走るデストへのロングパスからの前進という形に止まりました。

――シーン2:トモリが後方から持ち込む場面。逆サイド側のブラヒムと異なり、レオン(画面外)は前線にいる。

――シーン3:ベナセルから大外のデストに正確なサイドチェンジが通る

――その後の場面。レオンが裏に抜け、デストからパスを引き出した(しかしパスカットされる)
改善策の1つとしてはシステムを「3-4-1-2」としてレオンの先の役割を明確にし、トップ下の選手にライン間を左右に動き回ってもらうというのが考えられますが、そのような役割をこなせるスキルを有していたチャルハノールは退団。一方、ブラヒムにはそれを任せられるだけの技術はありそうですがプレービジョンに欠けるところがあり、また素質は十分にあるであろうデ・ケテラーレやアドリはピオリに冷遇され出番がない(少ない)という状況です。
「3-4-2-1」をベースにしていく上で、今後どのように攻撃(ポゼッション)を改善していくつもりなのかは非常に気になります。上記の戦術的欠点は甘受しつつも、それを補って余りある攻めの形を作れれば別にそれでも良いのですが、今の(というよりこれまでの)ピオリ采配を見ているとこの点は楽観視したくても出来ません。
まぁでも今は守備組織(プレッシング)の再構築に重点を置いているのは分かりますし、ボール奪取からのカウンターという本来の強みを取り戻すとこまでいければ攻守ともにチームパフォーマンスは改善できます。当面はそこが目標になりそうですかね。
最後に。少なくとも今シーズン末まではレオンがチームのエースであることに変わりないでしょうし、それ故に彼に懸かる責任や期待も大きくなります。
そして新システムにおいては、あまり得意とは言えない中央エリアでのプレー機会増加が予想されるからこそ、レオンに意識を大きく変化させるべきタイミングが訪れたといえるかもしれません。
具体的にはCF(ジルー)を始めとする周囲の味方との連動意識を向上させ、効果的にスペースを生み出し・使うことが挙げられます。それが継続的に出来るようになった場合、チャンスシーンはもっと増えるでしょう。
レオンがスペースのない時にも安定して活躍できるようになれば、チームにとっても非常にありがたい話といえますね。
正直難しいとは思いますが、今回の戦術的変更がレオンにもポジティブな影響を与えることを期待したいです。
そのパフォーマンスについてはポジティブなものとは言い難く、『GdS』による選手採点でもチームワーストとなるなど、彼個人にとって勢いを取り戻す一戦にはなりませんでした。
レオンの役割
レオンはトリノ戦で3-4-2-1の左サイドアタッカーとして先発したわけですが、これを従来の4-2-3-1のソレと比較すると、一般的に「中央寄りのポジションでプレーする」傾向が強くなります。

――参考1:トリノ戦前半、攻撃時におけるミランの平均ポジション(数字は背番号。レオンは17)
これを彼にとっての「新たな役割」と解釈するかどうかは人によるでしょうが、少なくともシステムを動的に捉えたとき、レオンが同様の役割を担うことは珍しくありませんでした。
一例として、第19節のラツィオ戦を挙げることが出来ます。

――参考2:ラツィオ戦前半、攻撃時におけるミランの平均ポジション
この試合の攻撃時は左SBのデストが積極的に高めの位置を取り、それに応じてレオンが内に絞る形を基本としました。そして後方では2CB+右SBの3枚で主にバックラインを構成し、ダブルボランチ(4、8)と共にビルドアップの中心となります。これをあえてシステム表記するなら「3-4-2-1(3-2-4-1)」となり、攻撃時はトリノ戦と同様の形になるわけですね(右CBの位置がサイド寄りになるなど、もちろんディテールに違いはありますが)。
それではこちらの試合のレオンはどうだったか振り返ると、これまたトリノ戦と同様に存在感は希薄でした。
無論、チーム自体のパフォーマンスが酷かったという側面はあるものの、そうした低パフォーマンスの責任の一端は彼の能力にもあります。
というのも、一般的に同システムのシャドーにはライン間でスペースを見つけ、後方からパスを引き出してボールを前進させるスキルをチームのポゼッション時に求めたいわけですが、そうしたスキルに乏しいレオンがそのようなプレーを見せるシーンというのはかなり限定的です。
この試合(やトリノ戦)でも彼が行ったのは、裏抜けを始めとする「前」にベクトルが向けられたプレーが中心であり、上記の技術的理由に基づきピオリもレオンの役割を規定している節があります。前掲した攻撃時の選手の平均ポジションを見ても、ブラヒム(10)と比べてレオン(17)は高い位置を取っていますしね。

――シーン1:後方からのロングボールを受けるジルー。レオンはその近くにポジショニングし、落としに備える

――落としを受けたレオンはそのままドリブルで仕掛けていった
選手の特性・気質に合わせた役割を設定するという方向性自体は良いことですが、それは必ずしも組織的なレベルにおいて最良の選択であるとは限りません。
例えば上記のようにレオンに前線を意識したプレーをさせたはいいものの、それにより中盤エリア左側にて後方からパスを引き出すような選手が不在がちとなり、パスルートは大きく制限されます。結果、左からは多くの場合、アウトサイドを走るデストへのロングパスからの前進という形に止まりました。

――シーン2:トモリが後方から持ち込む場面。逆サイド側のブラヒムと異なり、レオン(画面外)は前線にいる。

――シーン3:ベナセルから大外のデストに正確なサイドチェンジが通る

――その後の場面。レオンが裏に抜け、デストからパスを引き出した(しかしパスカットされる)
改善策の1つとしてはシステムを「3-4-1-2」としてレオンの先の役割を明確にし、トップ下の選手にライン間を左右に動き回ってもらうというのが考えられますが、そのような役割をこなせるスキルを有していたチャルハノールは退団。一方、ブラヒムにはそれを任せられるだけの技術はありそうですがプレービジョンに欠けるところがあり、また素質は十分にあるであろうデ・ケテラーレやアドリはピオリに冷遇され出番がない(少ない)という状況です。
「3-4-2-1」をベースにしていく上で、今後どのように攻撃(ポゼッション)を改善していくつもりなのかは非常に気になります。上記の戦術的欠点は甘受しつつも、それを補って余りある攻めの形を作れれば別にそれでも良いのですが、今の(というよりこれまでの)ピオリ采配を見ているとこの点は楽観視したくても出来ません。
まぁでも今は守備組織(プレッシング)の再構築に重点を置いているのは分かりますし、ボール奪取からのカウンターという本来の強みを取り戻すとこまでいければ攻守ともにチームパフォーマンスは改善できます。当面はそこが目標になりそうですかね。
最後に。少なくとも今シーズン末まではレオンがチームのエースであることに変わりないでしょうし、それ故に彼に懸かる責任や期待も大きくなります。
そして新システムにおいては、あまり得意とは言えない中央エリアでのプレー機会増加が予想されるからこそ、レオンに意識を大きく変化させるべきタイミングが訪れたといえるかもしれません。
具体的にはCF(ジルー)を始めとする周囲の味方との連動意識を向上させ、効果的にスペースを生み出し・使うことが挙げられます。それが継続的に出来るようになった場合、チャンスシーンはもっと増えるでしょう。
レオンがスペースのない時にも安定して活躍できるようになれば、チームにとっても非常にありがたい話といえますね。
正直難しいとは思いますが、今回の戦術的変更がレオンにもポジティブな影響を与えることを期待したいです。