【危機的状況】ラツィオ対ミラン【2022-23シーズン・セリエA第19節】

2022-23シーズン・試合ラツィオ戦
今回はセリエA第19節、ラツィオ対ミランのマッチレビューを行います。

スタメン

【22-23】ラツィオ対ミラン_スタメン
ベースフォーメーション:
ラツィオ「4-3-3」
ミラン「4-2-3-1」


プレス回避


試合内容について、多くを語る必要はないのかもしれません。
前回2度の記事に分けて触れた「ミランの問題点」に対し、(少なくともピッチ上の現象から判断して)何ら明確な対策を講じることなく臨んだピオリ・ミラン。その結果ラツィオに蹂躙され「4-0」の完敗を喫しました。

その要因の一つとしては、得意のプレッシングが機能せずにレオン・ブラヒム周りのスペースからボールを持ち出され、そのまま同サイドを攻められるかサイドチェンジからの仕掛けといった形で次々とピンチに陥ってしまったことが挙げられます。


【22-23】ラツィオ対ミラン_戦術分析1
――シーン1:ラツィオがチームとしてミランの弱所を把握していることが分かる2点目のシーン。左サイドでのパス回しによりミラン選手を引き付けた後、右CBカサーレにバックパス。逆サイドへの展開を阻止しにレオンが寄せに行くもプレッシャーが緩いため、ラツィオは中盤(カタルディ)を経由して悠々と逆サイドのマルシッチにパスを通す。


【22-23】ラツィオ対ミラン_戦術分析2
――その後の場面。右サイドからボールを持ち出したマルシッチは前方のペドロに預け、自らもオーバーラップしてデストに対し2対1の状況を作り出す。その後、ペドロがDFラインのギャップにスルーパスを通して勝負あり。トナーリは淡白な対応、カルルはゴール前から離れる動きでいずれもデストをフォローせず

一応このラツィオ戦ではレオンの守備時の第一タスクを「対面の右SB(マルシッチ)のマーク」とし、左サイドを容易に破られまいとする意図は見受けられました。
しかし、それによりジルーは相手の2CBに対し数的不利となり、後方からの相手のビルドアップを制限しづらくなります。


【22-23】ラツィオ対ミラン_戦術分析3
――シーン2:ジルー対ロマニョーリ&カサーレ

そこで段階的にブラヒムがアンカーのカタルディのマークを離して相手CBへプレッシャーをかける役目を担いましたが、そうしたプレスをレイオフによって回避するのはラツィオ(というよりサッリ率いるチーム)の十八番です。瞬間的にフリーとなるカタルディに次々とパスが送られ、ミランは後退を余儀なくされる、と。


【22-23】ラツィオ対ミラン_戦術分析4
――シーン3;カサーレに対して寄せに行くブラヒムだが、サビッチを経由したレイオフでカタルディがフリーでボールを受ける


【22-23】ラツィオ対ミラン_戦術分析5
――シーン4:同様の場面。ここではロマニョーリに寄せに行くブラヒムだが、サビッチ経由でカタルディがフリーでボールを受ける


サイドチェンジからの仕掛け


この拙守に関し、前2回の記事ではハッキリとは言及できませんでしたが、「サイドチェンジからの仕掛け」というのも最近のミランが頻繁にやられる形の一つといえます。
片側サイドにボールを誘導&陣形を圧縮し、コンパクトかつアグレッシブにボールを奪いにかかりたいミランですが、先述の通りプレッシングが機能していないため、手薄なエリアへの展開を許す形が目立ってしまうわけですね。


【22-23】ラツィオ対ミラン_戦術分析6
――シーン5:上述シーンと同様の流れでカタルディにボールが渡る


【22-23】ラツィオ対ミラン_戦術分析7
――その後の場面。カタルディからワンタッチで手薄なミラン側右サイドへ展開される

その結果、頻繁に訪れるシチュエーションが「相手左サイドアタッカーvsカラブリア」というものです。
シーズン再開初戦のサレルニターナ戦ではブラダリッチ、続くローマ戦ではザレフスキとマッチアップしたカラブリア。彼らには概ね問題なく対応できたものの、レッチェ戦ではディ・フランチェスコに背後のスペースを何度も突かれて背走を余儀なくされました。

そして今節ラツィオ戦ではヴェローナ時代から度々やられているザッカーニと対峙します。


【22-23】ラツィオ対ミラン_戦術分析8
――シーン6:ドリブルで仕掛け、カラブリアを縦に抜くザッカーニ

結果は周知の通りで、ザッカーニに頻繁に右サイドを崩され1ゴール・1アシストを許しました。


ラツィオ4-0ミラン


雑感


先述のように守備はボロボロで、攻撃面も中央(ライン間)をほとんど活用できずサイド一辺倒の攻撃に止まり無得点。(攻撃面の詳細は割愛します)
相手のラツィオが素晴らしいパフォーマンスを披露したという事情を考慮しても、昨季の優勝チームとしてはあまりに情けない内容です。

心情的にあまり認めたくはありませんが、かつてサビッチを完封していたケシエを思い出すと彼の不在が部分的に大きな痛手になっていることは否めませんし、残念ながら自陣ゴール前での集中力や危機察知能力という点で現状のトナーリは全くもって物足りません。

ケアーも今はもう自分のプレーだけで一杯一杯な様子ですし、他のバックラインの選手たちも同様(タタルシャヌやカルルは自分のプレーすら覚束ないですが)。ガタがきてる現在のシステムに固執し続ける限り、もうメニャンの復帰しか上がり目はないかもしれませんね。

まぁ今後の具体的な動向については別記事に譲るとして…。現在のミランは辛うじてまだ2位をキープしているという事で、順位上はまだ悲観的になる状況ではありません。
とにかく次戦のサッスオーロ戦に向け、心身のコンディション調整並びに戦術的調整にも励んでもらいたいと思います。

Forza Milan!


最後まで読んでいただきありがとうございました。

6Comments

ミラニスタ

いつも鋭い観察眼で勉強になります。楽しく拝見しております。
前線からのプレスは全く網にかけられませんでしたね。好調時はこれぞミランといったハイプレス戦術だったのですが、クルニッチの不在もじわじわと効いてきている気がします。

カカニスタ22

カカニスタ22

To ミラニスタさん

はじめまして(ですかね?)。コメントありがとうございます!

記事内でも言及した戦術的側面はもちろん、疲労蓄積といった体力的な側面、更には失点が続いていることによりネガティブな気持ちに支配されているといった精神的な側面など、プレスの機能不全には色々な原因が積み重なっているように見受けられますね。

クルニッチはこのラツィオ戦でベンチ入り出来たので、これからまた貴重な戦力として起用されそうですね。ベナセルが欠場する次節にも早速出番があるかもしれません。

  • 2023/01/26 (Thu) 13:15
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レッドチリ

ケシエの移籍は確かに大きいですが、今シーズンはとにかく開幕から失点が多いイメージです。
カルルやトモリはスピードに関しては問題無いですが、ライン統率等に正直不安を感じます。ベテラン頼みになりますが、ケアーの復調とメニャンの復帰を祈るしかないです。

  • 2023/01/26 (Thu) 15:35
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カカニスタ22

カカニスタ22

To レッドチリさん

コメントありがとうございます!

メニャンの復帰やケアーの復調まで、厳しい状況が続きそうですねぇ。

  • 2023/01/26 (Thu) 23:10
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マツモト

守備絶対主義、守備が安定していれば点は誰かが入れるなんならFWいらない的な考えの人間なんですがその守備の歯車が狂いすぎ、最初は「長いシーズンこういう時期もあるよね」と思っていたが何か違う。
ミランの戦い方だとサイドチェンジをうまくやられるとスペースが有りすぎで危険というのは分かっていたけど個々の運動量と危機察知で乗り切っていたのが今は見る影も無し、研究もしっかりされているのでこのままのやり方ではもうダメでしょうピオーリも大きく見直したいようなコメントをやっとしてましたので大胆な改革に期待します。

レオンの売却とかアグエル的な違うタイプのセンターFWとか4-5-1でMF増やすとかモイーズ放り込み戦略のみとか新人を全員スタメンで出すとか何か手を打ってくれたならダメでも納得するから。

  • 2023/01/27 (Fri) 00:22
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カカニスタ22

カカニスタ22

To マツモトさん

コメントありがとうございます!

次節はベナセルがサスペンションという事もあり否が応でも変化が求められるので、そこで何をチョイスするかには注目ですね。

  • 2023/01/27 (Fri) 07:48
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