【零れ落ちた勝利】ミラン対ローマ【2022-23シーズン・セリエA第17節】
今回はセリエA第17節、ミラン対ローマのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

ベースフォーメーション:
ミラン「4-2-3-1」
ローマ「3-4-2-1」
まずはミランの攻撃(ボール保持)とローマの守備についてです。
今回は、前節のサレルニターナ戦(攻撃が良く機能した試合)と比べながら振り返っていきたいと思います。

ローマは主にミドルゾーンでの守備を志向、ベースこそ前節対戦したサレルニターナに近いものがありましたが、そのディテールは大きく異なりました。

――シーン1:基本となるミランの後方の陣形(サレルニターナ戦と同様)とローマの前方の陣形
まずローマの両シャドーの内、ディバラはエイブラハムと強い繋がりを持ち、協力して中央のスペースと(主にベナセルへの)パスコースを消していきます。
一方のザニオーロはテオを注意深く監視。テオが低めの位置でボールを受けた際にはしっかりとプレスをかけ、自由なプレーを阻止していきます。

――シーン2:逆サイドからパスを受けたテオに対し、素早く寄せるザニオーロ
まずここがサレルニターナとの違いでした。すなわちボール出しの起点となる両SB(テオ、カラブリア)にしっかりとプレスをかけ、ビルドアップを妨害していく、と。
2つ目の違いとして挙げられるのは「ライン設定」です。
先日のサレルニターナはハイラインを志向するものの全体的にボールホルダーへの寄せが甘く、中盤スペースも(ミランの動きに惑わされて)空きがちなため、ミランとしてはそこから裏にどんどんパスを通してチャンスを作り出すことが出来ました。
一方、今回のローマは下げるべき時にはしっかりとラインを下げます。そのため前節と比べると裏を使った攻撃の威力は大きく低下してしまった、と、
それでは上記のローマの守備に対し、ミランはどのように対抗したか。
主なポイントになったのが右サイドからのボール前進です。

――参考1:この試合におけるミランのヒートマップ(右攻め)。
テオと比べるとプレッシャーの緩い状況も多々あったカラブリアと、中央を塞がれたため積極的に右サイド側に流れるベナセルが中心となって球出しを担当し、そこにサレマとブラヒムが絡んで前進を図ります。

――シーン3:ここではカラブリアが前方に侵入して相手を引き付け、サイドラインのサレマ(青)にスペースを提供。そしてベナセルからフリーのサレマへとパスが渡り、ボールを前進させた
ただしローマはゴール前中央のスペースをしっかりと固めており、そこへの侵入は警戒していたため、ミランとしては大外からのクロスといった形に攻撃を限定されるシーンが目立ちました。
それでも何度かジルーへのクロスからチャンスを作り出したものの、決めきることが出来ません。
この点については、同サイドからそのまま攻め切るのは難しいため、ミランとしてはもっと横への揺さぶりをかけながら攻めても良かったのではないかと感じました。
例えば、相手ダブルボランチの横に生じるスペースを狙う等です。

――シーン4:利用したいスペースの1つ(黒)
先にも少し触れましたが、ザニオーロはディバラと比べて守備エリアが広く、周囲のテオを監視しながら中盤のヘルプにも入るといった役割を担っていたように見受けられました。しかし完全に中盤ラインに組み込まれるわけでないため、時として中盤エリアにスペースが生まれます。
ミランとしてはそこを積極的に利用したいところでしたし、実際に利用できた時には惜しい形を作り出せていました。

――シーン5:ブラヒムから当該スペースに位置するトナーリにパスが送られる。トナーリは頭でそらしてレオンにスルーパスを供給し、惜しいシーンが作り出された。

――シーン6:後半の一場面。ここでは右サイドでパス回しが行われている間、レオンが当該スペースに侵入する

――その後の場面。レオンがジルーの落としをフリーで受け、惜しい形を作り出した
結局、この試合におけるミランのボール支配率は「61.3%」、前半に限れば「70.7%」を記録しているわけですが、その高いボール保持率を然るべきチャンスに転換できていたかは疑問符が付くところです。
相手の組織的な守備に手を焼いたミランは、トランジションの局面に活路を見出します。
ローマの攻撃を凌ぎながらボールを奪ってカウンターという形により、相手の守備陣形が整う前に攻め込むことでチャンスを作り出していきました。
すると28分、カウンターからブラヒムのシュートでCKのチャンスを得ると、30分にはそのセットプレーからカルルがゴールを決めてミランが先制点を獲得。
更に後半に入って77分。再びカウンターの場面から今度は途中出場のポベガが決め、重要な追加点をゲットしました。
ローマは攻撃において右サイドからの前進を重視していたように見受けられましたが、そこで中心になるべきザニオーロが不発。また左サイドではザレフスキが積極的にドリブルで仕掛けてきたものの、大抵は対面のカラブリアがしっかりと抑え込むことで事なきを得ました。
そのため、オープンプレーにおいてはローマにほとんど危険な形を作られることなく守る事が出来ていたんじゃないかなと。
問題はセットプレーでした。87分、CKからイバニェスに決められると、93分にはFKの流れからエイブラハムにシュートを叩き込まれてまさかの同点に。
一応ミランはガッビアを途中投入するなどして終盤のセットプレーに備えていたとは思うのですが、まんまと立て続けに得点を奪われる結果になってしまいました。
ミラン2-2ローマ
個人的に、この一戦は咀嚼するのが難しいものだったと感じます。
試合展開的には、スコア2-0で85分を超えた時点で「ミランが勝つべき一戦だった」と評されるのは当然です。しかしながら、試合全体を振り返って見た時には少し違った印象を抱いてしまいます。
例えば攻撃に関してはローマのディフェンスを攻略できたとは言えずに攻めあぐね、得点もセットプレーと(チェリクの絶妙なクリアミスを起点とする)カウンターからの2ゴールでした。

――参考2:この試合におけるミランのxG(1.09)。前節サレルニターナ戦(3.81)と比べ大きく減少している
守備に関しても問題があり、試合前から警戒していたはずのローマの強みであるセットプレーから2発を食らっています。それも短時間での2連発という事で、これはセットプレーの機会を多く与えてしまったことも含めて要反省でしょうね。
もの凄く悔しいドローですがミランにも相応の落ち度はありましたし、この教訓を活かして更なるパフォーマンスの向上に努めていってもらいたいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
スタメン

ベースフォーメーション:
ミラン「4-2-3-1」
ローマ「3-4-2-1」
ローマの守備
まずはミランの攻撃(ボール保持)とローマの守備についてです。
今回は、前節のサレルニターナ戦(攻撃が良く機能した試合)と比べながら振り返っていきたいと思います。

【2023年初勝利!】サレルニターナ対ミラン【2022-23シーズン・セリエA第16節】
※関連記事
ローマは主にミドルゾーンでの守備を志向、ベースこそ前節対戦したサレルニターナに近いものがありましたが、そのディテールは大きく異なりました。

――シーン1:基本となるミランの後方の陣形(サレルニターナ戦と同様)とローマの前方の陣形
まずローマの両シャドーの内、ディバラはエイブラハムと強い繋がりを持ち、協力して中央のスペースと(主にベナセルへの)パスコースを消していきます。
一方のザニオーロはテオを注意深く監視。テオが低めの位置でボールを受けた際にはしっかりとプレスをかけ、自由なプレーを阻止していきます。

――シーン2:逆サイドからパスを受けたテオに対し、素早く寄せるザニオーロ
まずここがサレルニターナとの違いでした。すなわちボール出しの起点となる両SB(テオ、カラブリア)にしっかりとプレスをかけ、ビルドアップを妨害していく、と。
2つ目の違いとして挙げられるのは「ライン設定」です。
先日のサレルニターナはハイラインを志向するものの全体的にボールホルダーへの寄せが甘く、中盤スペースも(ミランの動きに惑わされて)空きがちなため、ミランとしてはそこから裏にどんどんパスを通してチャンスを作り出すことが出来ました。
一方、今回のローマは下げるべき時にはしっかりとラインを下げます。そのため前節と比べると裏を使った攻撃の威力は大きく低下してしまった、と、
ミランの攻撃
それでは上記のローマの守備に対し、ミランはどのように対抗したか。
主なポイントになったのが右サイドからのボール前進です。

――参考1:この試合におけるミランのヒートマップ(右攻め)。
テオと比べるとプレッシャーの緩い状況も多々あったカラブリアと、中央を塞がれたため積極的に右サイド側に流れるベナセルが中心となって球出しを担当し、そこにサレマとブラヒムが絡んで前進を図ります。

――シーン3:ここではカラブリアが前方に侵入して相手を引き付け、サイドラインのサレマ(青)にスペースを提供。そしてベナセルからフリーのサレマへとパスが渡り、ボールを前進させた
ただしローマはゴール前中央のスペースをしっかりと固めており、そこへの侵入は警戒していたため、ミランとしては大外からのクロスといった形に攻撃を限定されるシーンが目立ちました。
それでも何度かジルーへのクロスからチャンスを作り出したものの、決めきることが出来ません。
この点については、同サイドからそのまま攻め切るのは難しいため、ミランとしてはもっと横への揺さぶりをかけながら攻めても良かったのではないかと感じました。
例えば、相手ダブルボランチの横に生じるスペースを狙う等です。

――シーン4:利用したいスペースの1つ(黒)
先にも少し触れましたが、ザニオーロはディバラと比べて守備エリアが広く、周囲のテオを監視しながら中盤のヘルプにも入るといった役割を担っていたように見受けられました。しかし完全に中盤ラインに組み込まれるわけでないため、時として中盤エリアにスペースが生まれます。
ミランとしてはそこを積極的に利用したいところでしたし、実際に利用できた時には惜しい形を作り出せていました。

――シーン5:ブラヒムから当該スペースに位置するトナーリにパスが送られる。トナーリは頭でそらしてレオンにスルーパスを供給し、惜しいシーンが作り出された。

――シーン6:後半の一場面。ここでは右サイドでパス回しが行われている間、レオンが当該スペースに侵入する

――その後の場面。レオンがジルーの落としをフリーで受け、惜しい形を作り出した
結局、この試合におけるミランのボール支配率は「61.3%」、前半に限れば「70.7%」を記録しているわけですが、その高いボール保持率を然るべきチャンスに転換できていたかは疑問符が付くところです。
安定のOP、不安のSP
相手の組織的な守備に手を焼いたミランは、トランジションの局面に活路を見出します。
ローマの攻撃を凌ぎながらボールを奪ってカウンターという形により、相手の守備陣形が整う前に攻め込むことでチャンスを作り出していきました。
すると28分、カウンターからブラヒムのシュートでCKのチャンスを得ると、30分にはそのセットプレーからカルルがゴールを決めてミランが先制点を獲得。
更に後半に入って77分。再びカウンターの場面から今度は途中出場のポベガが決め、重要な追加点をゲットしました。
ローマは攻撃において右サイドからの前進を重視していたように見受けられましたが、そこで中心になるべきザニオーロが不発。また左サイドではザレフスキが積極的にドリブルで仕掛けてきたものの、大抵は対面のカラブリアがしっかりと抑え込むことで事なきを得ました。
そのため、オープンプレーにおいてはローマにほとんど危険な形を作られることなく守る事が出来ていたんじゃないかなと。
問題はセットプレーでした。87分、CKからイバニェスに決められると、93分にはFKの流れからエイブラハムにシュートを叩き込まれてまさかの同点に。
一応ミランはガッビアを途中投入するなどして終盤のセットプレーに備えていたとは思うのですが、まんまと立て続けに得点を奪われる結果になってしまいました。
ミラン2-2ローマ
雑感
個人的に、この一戦は咀嚼するのが難しいものだったと感じます。
試合展開的には、スコア2-0で85分を超えた時点で「ミランが勝つべき一戦だった」と評されるのは当然です。しかしながら、試合全体を振り返って見た時には少し違った印象を抱いてしまいます。
例えば攻撃に関してはローマのディフェンスを攻略できたとは言えずに攻めあぐね、得点もセットプレーと(チェリクの絶妙なクリアミスを起点とする)カウンターからの2ゴールでした。

――参考2:この試合におけるミランのxG(1.09)。前節サレルニターナ戦(3.81)と比べ大きく減少している
守備に関しても問題があり、試合前から警戒していたはずのローマの強みであるセットプレーから2発を食らっています。それも短時間での2連発という事で、これはセットプレーの機会を多く与えてしまったことも含めて要反省でしょうね。
もの凄く悔しいドローですがミランにも相応の落ち度はありましたし、この教訓を活かして更なるパフォーマンスの向上に努めていってもらいたいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。