【2023年初勝利!】サレルニターナ対ミラン【2022-23シーズン・セリエA第16節】
今回はセリエA第16節、サレルニターナ対ミランのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

ベースフォーメーション:
サレルニターナ「3-5-2」
ミラン「4-2-3-1」
まずはミランの攻撃(ボール保持)とサレルニターナの守備について。
開始からしばらくのサレルニターナは前線からのプレッシングを控え、ミドルゾーンにコンパクトな5-3-2の陣形を敷くのが基本。それに対し、ミランは主にDFラインとアンカーポジションに入ったベナセルの5枚が後方に構えてビルドアップを開始します・

――シーン1:ミラン、ビルドアップ時の基本陣形
その際にポイントの1つになったのが「中盤のスペース」です。
というのも、頻繁に高い位置を取るトナーリに対して対面のクリバリはマンツーマンの意識が高く、トナーリの動きに付いていくことで中盤にスペースが生じやすくなります。そこで、ミランとしてはアンカーに入っているベナセル、もしくは当該スペースを利用しにブラヒムやテオ、カラブリアが下がって(上がって)パスを引き出し、ボールを前進させていく、と。

――シーン2:ここでは最前線に位置するトナーリに対し、クリバリが最終ラインに入って対応。それにより中盤にスペースが生じる。そこで、ブラヒムは当該スペースを利用して右サイドのカラブリアからパスを引き出し、ボールを前進させた
もう1つのポイントは「裏のスペース」です。
先述の通りサレルニターナはミドルゾーンでコンパクトな守備陣形の形成を図ったため、DFラインは高めの位置をキープしようとします。しかしながらボールホルダーに対する寄せが甘いことが多く、ミランからすれば相手DFラインの裏を良い形で取りやすくなる結果となりました。

――シーン3:中盤でフリーのブラヒムがパスを受けると、前線の選手たちは裏のスペースを狙う。ここで、ジルーの引っ張る動きによって生じた中央のスペースへレオンが飛び出し、ブラヒムからパスを引き出した
すると10分、レオンがトナーリのスルーパスに反応して抜け出し、飛び出してきたGKを躱して無人のゴールへとシュート。ミランが幸先良く先制点を獲得します。

――シーン4:サイドに開くトナーリにクリバリが付いていく事で、中盤にスペースが生じる。そこでベナセルはテオから縦パスを引き出し、当該スペースを利用して前進を図る

――その後の場面。ベナセルからトナーリへとパボールが渡り、トナーリがワンタッチでサレルニターナのハイラインを突く。そのパスにレオンが抜け出し、先制点に繋がった
続く15分には、レオンの仕掛けをキッカケに相手を押し込み、生じたバイタルエリアのスペースに入り込んだトナーリがクリアボールを拾いシュートを連発。2発目をネットに突き刺し、追加点をゲットしました。
ミランにとって、この試合の主演は何といってもレオンとトナーリの2人だったのではないかと感じます。
レオンは得意とするドリブル突破は言わずもがな、この試合では積極的に裏抜けを行うなどして相手DFを恐怖に陥れました。
トナーリも同様に積極的な飛び出しでチャンスシーンに絡む一方、先の通りクリバリを動かすことでスペースを作り出すといった戦術的な役割も遂行。結果的にも1ゴール・1アシストという事で、申し分のない働きだったと思います。
さて。このようにして開始15分間で2-0としたミランはその後も攻勢をかけ、次々とチャンスを作り出していきました。しかし自らの決定力不足や相手GKオチョアの好セーブに遭い、3点目の獲得には至りません
続いてはミランの守備と、サレルニターナの攻撃についてです。
サレルニターナはセーフティーなビルドアップを重視。前線へのロングボールを多用し、そのこぼれ球を拾うといった形でボール前進を行っていきます。そこから主に右サイドに人数をかけて突破を図る、と。
そのため、ミランとしては持ち味である前線からのプレッシングを活かし辛い展開となりましたが、自陣ゴール前にてDF陣を中心に粘り強い対応を披露。中でもトモリは機敏な反応により、危険なシュートチャンスを防ぐ動きを一度ならず見せています。

――シーン5:WBを起点とする連係プレーからディアがゴール前に侵入。そこへトモリが素早く対応

――トモリの迅速なスライディングにより、危険なシュートを防いだ
後半、2点ビハインドとなって迎えたサレルニターナは前線からのプレッシングを強く志向するようになります。
その一環として守備時の中盤の陣形を少し変え、ヴィリェナが一列上がることでアンカーのベナセルに付き、ボヒネンとクリバリが対面のブラヒムとトナーリに対応。このように対応関係を明確にすることでプレッシャーをかけやすくします。

――シーン6:中盤の陣形を噛み合わせるサレルニターナ

――その後の場面。カラブリからブラヒムへのパスをボヒネンがカットした
更に63分にはボナッツォーリを投入し、ピョンテク、ディアに彼を加え、前線の圧力を高めました。

――シーン7:ここではボナッツォーリとピョンテクが前線に構え、ディアがライン間でパスを引き出した
対するミランは、引き続き裏のスペースを狙い所の1つとします。

――シーン8:前からの圧力を強めるサレルニターナに対し、ミランは裏のスペースを狙う。前線のジルーが引いて相手CBを引き付け、その背後に走り込んだレオンがカルルからロングボールを引き出した
また、サレルニターナが攻勢を強めてきたことにより、ミランは速攻やカウンターを軸にチャンスを作り出していく、と。

――シーン9:マンツーマンでのプレッシングを仕掛けるサレルニターナ。ここでボールサイドに寄ってきたトナーリは、このプレッシングにより生じる右サイド前方のスペースへと飛び出す

――その後の場面。前方スペースに飛び出したトナーリにパスは出なかったものの、ヴィリェナを引き付けた事で中盤にスペースを生じさせることに成功。そこへサレマがドリブルで持ち運び、速攻を開始した
57分には上記の流れから敵陣にてFKを獲得し、セットプレーからネットを揺らすことに成功しますが惜しくもオフサイドで取り消されます。
また、先のサレルニターナの交代(ボナッツォーリ投入)を受けて72分。ミランはカラブリアに代えてガッビアを投入し、サレマをWBに下げて5バックに変更。
これにより後方の枚数を増やしつつ、相手FWの動きに適宜縦スライドで応じる形で守備の安定を図りました。

――シーン10:ライン間でパスを受けるボナッツォーリに対し、中央CBのガッビアが反応

――その後の場面。鋭い対応でボナッツォーリからボールを奪い(赤)、カウンターの場面へと繋げた
このように両チームとも修正を加えながらゲームを進めていくと、遂にスコアに動きが。
83分、ファーサイドでクロスに合わせたボナッツォーリがゴールを奪い、サレルニターナが1点差に詰め寄ります。

――シーン11:中盤で数的有利となっているサレルニターナ。ピョンテクからパスを受けたクリバリがボールを前進させる

――その後の場面。クリバリのクロスにファーサイドでボナッツォーリが合わせ、ネットを揺らした
ここでミランとしてはCBが縦スライドを行えず中盤にスペースを許してしまい、しかも重視してケアしていたはずのDFラインの大外を使われての失点という事で、この場面においては狙い通りの守備が機能しなかったと考えられます。
これが相手にとっての初めての枠内シュートであり、それまでは粘り強く対応できていただけに、実に悔しい失点でした。
失点直後にはヴランクスを投入して中盤の枚数を増やすと共に、フレッシュなデストを右サイドに入れて攻守に活性化を図ります。守備の安定を念頭に置きつつも、隙あらばカウンターで仕留めようという考えでしょう。
実際、得点は奪えずともチャンスは作れていましたし、人数をかけた相手の攻撃に対しても守り切ることに成功。そのままスコア2-1で試合終了となりました。
サレルニターナ1-2ミラン
2023年の初戦、まず勝利という「結果」を得られたことは何よりです。
昨年末のプレシーズンマッチでは敗北が続き、かつ怪我人続出という事態にも見舞われるなどややネガティブな形で新年を迎えただけに、自信を深める上でも重要な1勝だったと思われます。
一方で、この試合の「内容」がポジティブなものだっただけに、やはり「3点以上欲しかった」というのは多くのミラニスタが観ていて感じたのではないでしょうか。

――参考1
この点に関し、『understat』が計測したゴール期待値(xG)を見てみると、サレルニターナの「0.68」xGに対してミランは「3.81」xGです。これは今シーズンのチーム最高記録となっています。
もちろん、ミランがxG通りの得点を挙げられなかった原因としては相手GKオチョアによるファインセーブ連発(※実に9セーブを記録)に因る部分も大きかったわけですが、それでももう少し精度があれば3点目を決め、試合を決定づけることもできたんじゃないかなぁと。
こういう試合展開のときは出来るだけ早く大量点を奪い、残り時間は身体的・精神的に余裕を持ってプレーするといった盤石の試合運びができるようになると尚良ですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
スタメン

ベースフォーメーション:
サレルニターナ「3-5-2」
ミラン「4-2-3-1」
ミランの攻撃
まずはミランの攻撃(ボール保持)とサレルニターナの守備について。
開始からしばらくのサレルニターナは前線からのプレッシングを控え、ミドルゾーンにコンパクトな5-3-2の陣形を敷くのが基本。それに対し、ミランは主にDFラインとアンカーポジションに入ったベナセルの5枚が後方に構えてビルドアップを開始します・

――シーン1:ミラン、ビルドアップ時の基本陣形
その際にポイントの1つになったのが「中盤のスペース」です。
というのも、頻繁に高い位置を取るトナーリに対して対面のクリバリはマンツーマンの意識が高く、トナーリの動きに付いていくことで中盤にスペースが生じやすくなります。そこで、ミランとしてはアンカーに入っているベナセル、もしくは当該スペースを利用しにブラヒムやテオ、カラブリアが下がって(上がって)パスを引き出し、ボールを前進させていく、と。

――シーン2:ここでは最前線に位置するトナーリに対し、クリバリが最終ラインに入って対応。それにより中盤にスペースが生じる。そこで、ブラヒムは当該スペースを利用して右サイドのカラブリアからパスを引き出し、ボールを前進させた
もう1つのポイントは「裏のスペース」です。
先述の通りサレルニターナはミドルゾーンでコンパクトな守備陣形の形成を図ったため、DFラインは高めの位置をキープしようとします。しかしながらボールホルダーに対する寄せが甘いことが多く、ミランからすれば相手DFラインの裏を良い形で取りやすくなる結果となりました。

――シーン3:中盤でフリーのブラヒムがパスを受けると、前線の選手たちは裏のスペースを狙う。ここで、ジルーの引っ張る動きによって生じた中央のスペースへレオンが飛び出し、ブラヒムからパスを引き出した
すると10分、レオンがトナーリのスルーパスに反応して抜け出し、飛び出してきたGKを躱して無人のゴールへとシュート。ミランが幸先良く先制点を獲得します。

――シーン4:サイドに開くトナーリにクリバリが付いていく事で、中盤にスペースが生じる。そこでベナセルはテオから縦パスを引き出し、当該スペースを利用して前進を図る

――その後の場面。ベナセルからトナーリへとパボールが渡り、トナーリがワンタッチでサレルニターナのハイラインを突く。そのパスにレオンが抜け出し、先制点に繋がった
続く15分には、レオンの仕掛けをキッカケに相手を押し込み、生じたバイタルエリアのスペースに入り込んだトナーリがクリアボールを拾いシュートを連発。2発目をネットに突き刺し、追加点をゲットしました。
ミランにとって、この試合の主演は何といってもレオンとトナーリの2人だったのではないかと感じます。
レオンは得意とするドリブル突破は言わずもがな、この試合では積極的に裏抜けを行うなどして相手DFを恐怖に陥れました。
トナーリも同様に積極的な飛び出しでチャンスシーンに絡む一方、先の通りクリバリを動かすことでスペースを作り出すといった戦術的な役割も遂行。結果的にも1ゴール・1アシストという事で、申し分のない働きだったと思います。
さて。このようにして開始15分間で2-0としたミランはその後も攻勢をかけ、次々とチャンスを作り出していきました。しかし自らの決定力不足や相手GKオチョアの好セーブに遭い、3点目の獲得には至りません
ミランの守備
続いてはミランの守備と、サレルニターナの攻撃についてです。
サレルニターナはセーフティーなビルドアップを重視。前線へのロングボールを多用し、そのこぼれ球を拾うといった形でボール前進を行っていきます。そこから主に右サイドに人数をかけて突破を図る、と。
そのため、ミランとしては持ち味である前線からのプレッシングを活かし辛い展開となりましたが、自陣ゴール前にてDF陣を中心に粘り強い対応を披露。中でもトモリは機敏な反応により、危険なシュートチャンスを防ぐ動きを一度ならず見せています。

――シーン5:WBを起点とする連係プレーからディアがゴール前に侵入。そこへトモリが素早く対応

――トモリの迅速なスライディングにより、危険なシュートを防いだ
後半の攻防
後半、2点ビハインドとなって迎えたサレルニターナは前線からのプレッシングを強く志向するようになります。
その一環として守備時の中盤の陣形を少し変え、ヴィリェナが一列上がることでアンカーのベナセルに付き、ボヒネンとクリバリが対面のブラヒムとトナーリに対応。このように対応関係を明確にすることでプレッシャーをかけやすくします。

――シーン6:中盤の陣形を噛み合わせるサレルニターナ

――その後の場面。カラブリからブラヒムへのパスをボヒネンがカットした
更に63分にはボナッツォーリを投入し、ピョンテク、ディアに彼を加え、前線の圧力を高めました。

――シーン7:ここではボナッツォーリとピョンテクが前線に構え、ディアがライン間でパスを引き出した
対するミランは、引き続き裏のスペースを狙い所の1つとします。

――シーン8:前からの圧力を強めるサレルニターナに対し、ミランは裏のスペースを狙う。前線のジルーが引いて相手CBを引き付け、その背後に走り込んだレオンがカルルからロングボールを引き出した
また、サレルニターナが攻勢を強めてきたことにより、ミランは速攻やカウンターを軸にチャンスを作り出していく、と。

――シーン9:マンツーマンでのプレッシングを仕掛けるサレルニターナ。ここでボールサイドに寄ってきたトナーリは、このプレッシングにより生じる右サイド前方のスペースへと飛び出す

――その後の場面。前方スペースに飛び出したトナーリにパスは出なかったものの、ヴィリェナを引き付けた事で中盤にスペースを生じさせることに成功。そこへサレマがドリブルで持ち運び、速攻を開始した
57分には上記の流れから敵陣にてFKを獲得し、セットプレーからネットを揺らすことに成功しますが惜しくもオフサイドで取り消されます。
また、先のサレルニターナの交代(ボナッツォーリ投入)を受けて72分。ミランはカラブリアに代えてガッビアを投入し、サレマをWBに下げて5バックに変更。
これにより後方の枚数を増やしつつ、相手FWの動きに適宜縦スライドで応じる形で守備の安定を図りました。

――シーン10:ライン間でパスを受けるボナッツォーリに対し、中央CBのガッビアが反応

――その後の場面。鋭い対応でボナッツォーリからボールを奪い(赤)、カウンターの場面へと繋げた
このように両チームとも修正を加えながらゲームを進めていくと、遂にスコアに動きが。
83分、ファーサイドでクロスに合わせたボナッツォーリがゴールを奪い、サレルニターナが1点差に詰め寄ります。

――シーン11:中盤で数的有利となっているサレルニターナ。ピョンテクからパスを受けたクリバリがボールを前進させる

――その後の場面。クリバリのクロスにファーサイドでボナッツォーリが合わせ、ネットを揺らした
ここでミランとしてはCBが縦スライドを行えず中盤にスペースを許してしまい、しかも重視してケアしていたはずのDFラインの大外を使われての失点という事で、この場面においては狙い通りの守備が機能しなかったと考えられます。
これが相手にとっての初めての枠内シュートであり、それまでは粘り強く対応できていただけに、実に悔しい失点でした。
失点直後にはヴランクスを投入して中盤の枚数を増やすと共に、フレッシュなデストを右サイドに入れて攻守に活性化を図ります。守備の安定を念頭に置きつつも、隙あらばカウンターで仕留めようという考えでしょう。
実際、得点は奪えずともチャンスは作れていましたし、人数をかけた相手の攻撃に対しても守り切ることに成功。そのままスコア2-1で試合終了となりました。
サレルニターナ1-2ミラン
雑感
2023年の初戦、まず勝利という「結果」を得られたことは何よりです。
昨年末のプレシーズンマッチでは敗北が続き、かつ怪我人続出という事態にも見舞われるなどややネガティブな形で新年を迎えただけに、自信を深める上でも重要な1勝だったと思われます。
一方で、この試合の「内容」がポジティブなものだっただけに、やはり「3点以上欲しかった」というのは多くのミラニスタが観ていて感じたのではないでしょうか。

――参考1
この点に関し、『understat』が計測したゴール期待値(xG)を見てみると、サレルニターナの「0.68」xGに対してミランは「3.81」xGです。これは今シーズンのチーム最高記録となっています。
もちろん、ミランがxG通りの得点を挙げられなかった原因としては相手GKオチョアによるファインセーブ連発(※実に9セーブを記録)に因る部分も大きかったわけですが、それでももう少し精度があれば3点目を決め、試合を決定づけることもできたんじゃないかなぁと。
こういう試合展開のときは出来るだけ早く大量点を奪い、残り時間は身体的・精神的に余裕を持ってプレーするといった盤石の試合運びができるようになると尚良ですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。