ステファノ・ピオリ、監督としての3つの成長

ステファノ・ピオリ
先日、ステファノ・ピオリ監督がインタビューに応じ、自身の成長についてコメントしました。

私はこれまで多くの面で進歩してきたと思うが、特にその中には自分の仕事において最も重要だと考える2~3の物事も含まれている。戦術的解決策選手たちとの関係、それから外部とのコミュニケーションもキャリアの初期より良くなっているかな

――Mediaset

戦術的解決策


まず1つ目の戦術的解決策についてですが、確かにこれまでの3年間でピオリ監督は様々な試みを行っています

1シーズン目はイブラの帰還と共にシステム・戦術を大きく変更し、彼を中心としたチームに作り替えました。また、それまでは持て余していたレビッチも上手く使いこなすようになります。

レビッチがミランで復活した理由 ~プレースタイルと戦術の合致~

レビッチがミランで復活した理由 ~プレースタイルと戦術の合致~

※関連記事



2シーズン目は、イブラ不在の際にレビッチを1トップに据えるシステムを形にし、イブラ負傷時の戦力的ダメージを軽減することに成功。

イブラヒモビッチ不在時における、ミランの戦術的特徴について

イブラヒモビッチ不在時における、ミランの戦術的特徴について

※関連記事



また、チームが息切れを始めたシーズン後半戦の一時期は全体のラインを下げて前線からのプレッシングの頻度を低くしたり、最終節のアタランタ戦では守備時に受動的な5バックを採用して成功を収めたりと、随所で戦術的柔軟性を発揮してチームを勝利に導きました。

ミランの守備戦術とメンバー構成の変化について

ミランの守備戦術とメンバー構成の変化について

※関連記事



続く3シーズン目(昨季)は、アグレッシブネスを高める方向性でチームを更に発展させていきます。

積極的かつ継続的なプレッシング戦術により相手の前進を防ぎ、攻撃ではレオンやテオを軸とするスピーディーな攻めをメインにして得点を奪取。また守備時のアグレッシブネスを高める手法として、クルニッチやケシエといった中盤色の濃い選手を時にトップ下に置いたり、カルルをCBに抜擢してハイラインでの守備を容易にしたりと、巧みな選手起用が光りました。

【勝利を呼び込んだゲームプラン】 ミラン対アタランタ 【2021-22シーズン・セリエA第37節】

【勝利を呼び込んだゲームプラン】 ミラン対アタランタ 【2021-22シーズン・セリエA第37節】

※関連記事



結果として、このシーズンはスクデットの獲得に成功しています。

戦術的な観点から大雑把に3シーズンを振り返りましたが、チーム躍進の背景にはピオリ監督の様々な戦術的解決策があったことは見逃せませんね。


選手たちとの関係


続いて、ピオリ監督の2つ目の進歩として「選手たちとの関係(構築)」が挙げられています。

対話によるコミュニケーションを重視する彼は、ミランでもイブラやケアーといったベテラン勢と早々に信頼関係を築くことに成功。また若手選手たちとも良好な関係を維持しており、例えば気分屋のレオンに対しては、積極的に言葉をかけモチベーションを持続させることでその成長を促しています。

思えば前任監督は求心力が低く、早々に選手やフロントといざこざを起こしていただけに、こうしたピオリ監督の能力が引き立ちますね。

外部とのコミュニケーション


最後に。3つ目の改善として彼は「外部とのコミュニケーション」を挙げています。

「外部」が指す対象というのは色々と考えられますが、おそらくメインの1つといえるのは「マスコミ対応」ではないでしょうか。

振り返れば就任1年目、シーズン中にも関わらずラングニックが次期後任監督として有力視されるなど、ピオリを取り巻く環境は決して愉快なものではありませんでした。
そんな状況下にあっても彼は自らの仕事に集中します。そして報道陣に対してもフロントに対する不満などを漏らすことはなく、殊勝な態度を貫きました。

また、それ以外にも彼はデリケートな話題(例えばスーパーリーグ構想など)について深く突っ込むようなことはしませんし、選手に対する物議をかもすような発言も目にすることはありません。

このように、彼はチームに波風を立てないよう意識して外部に発信しているように見受けられますし、このことがチームの団結力や安定性の維持・向上に寄与していると考えられます。長年の監督経験により身に付けた処世術なのでしょうね。


さて。現在ミランでの4シーズン目を迎えているピオリ監督ですが、これからもチームや選手と共に彼も成長していくのでしょう。

今シーズン後半戦以降も、引き続き彼のマネジメントに期待していきたいですね。

0Comments