ポルトガル代表監督、レオンを先発起用しない理由を語る

ラファエル・レオン
先日、カタールW杯での戦いを終えたポルトガル代表のラファエル・レオン。
彼にとって、今大会の結果は決して納得のいくものではなかったように思われます。
まず、チームは早々に2連勝してグループリーグ突破を決め、その後の決勝トーナメントではベスト16でスイスに6-1と大勝。勢いに乗って次の試合を迎えましたが、そこで今大会のダークホースであるモロッコに0-1で敗北。チーム成績はベスト8となりました。

その一方でレオン個人としては、全5試合に出場し2得点を記録。持ち前のスピードやシュートテクニックを活かしてネットを揺らすことに成功しました。
しかしながら、その5試合には全て途中からの出場となっており、総出場時間はわずか83分です。


このように、今大会のポルトガル代表におけるレオンの立場はあくまで「サブ」であり、ミランにおいて彼が担う責任の大きさとは雲泥の差でしたね。


この点、ポルトガル代表のフェルナンド・サントス監督がレオンについて言及したことがありました。
スイス戦前に開かれた記者会見にて、レオンを先発起用しないことを訊かれた監督は以下のようにコメントしています。

レオンはとてつもないポテンシャルを秘めており、これから素晴らしいキャリアを送るだろう。だが彼はクラブチームだと一定の自由を享受しており、試合でバランスを取ることを求められていない選手だ。そのようなタイプが輝くチームもあれば、そうでないチームもある。彼が苦戦中なのはそれ故だ。もちろん、これは彼の資質や信頼の高さを損なうものではないけどね。



個人的に、この発言はかなり芯を食っていると感じています。

確かに、ミランにおいてレオンが重要な役割を担い、その個人技で以てチームに多くの得点延いては勝ち点をもたらしてきたことは事実です。

ただし、ミランがレオンを活かすために多くの工夫を凝らしている点も見逃せません。
例えば彼の守備意識の低さをカバーし、かつカウンター時に威力を発揮できるようピオリ監督は守備組織を構築しています。また、自己犠牲精神の塊であるジルーはレオンの守備負担軽減のため守備に精力的に走り、攻撃ではレオンの仕掛けのタイミングに合わせるようにゴール前でパスの受け手として構えてくれる、と。
更に同サイドでレオンとコンビを組むテオもまた、レオンを活かすためにプレーの幅を広げて彼を攻守にサポートしています。

つまり、ミランでのレオンはチームの中心に据えられ、快適にプレーできるような環境が与えられているという事ですね(もちろん、前提条件として彼のハイレベルな個人技があるのは間違いありませんが)

その一方でポルトガル代表は、今大会の開幕時点だとロナウドをチームの中心に据えていました。
そして彼のようなタイプを中心にした場合、その周囲に求められるのはロナウドのオフザボールに合わせられる器用な(インテリジェンスの高い)選手や、守備時に精力的に走れる選手になるはずです。
しかしレオンはそのどちらでもないですし、ロナウドと併用した場合にチームバランスが崩れるリスクが上がります。

それにサントス監督からすれば、能力を引き出すのに工夫が必要なレオンを始めからレギュラーとして想定していなかったのでしょう。したがって、大会を通してレオンが先発機会を得ることは叶わなかった、と。



しかしながら、レオンにとって今大会は選手として一皮剥ける為の極めて貴重な経験になったのではないかとも思います。
W杯という大舞台でプレーできたことはもちろんですが、スタメンとして出られなかったことで「今の自分に足りない能力は何か」という点に目が向いたはずです。

もしもその部分の改善に真摯に取り組み、改善が実現すればより魅力的な選手になれますし、これからの新生ポルトガル代表でレギュラーの座を掴むことだって十分に可能でしょう。

此度のW杯を更なる飛躍のきっかけにして欲しいですね。

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