ヴランクスが示した可能性~ヴィオラ戦で披露したプレースタイルとは~
今夏、新たにミランへと加入したアステル・ヴランクス。
加入してから今季ここまでの出場数は4試合で、時間に換算してわずか45分間。自らを示す機会は極めて限定的ながら、先日のフィオレンティーナ戦でミランの決勝ゴールを演出しています。
そこで今回は、ヴィオラ戦での彼のプレーを振り返っていきましょう。
この試合のヴランクスは75分から途中出場。ベナセル、トナーリと共に中盤の一角を構成し、主に右サイド側を担当しました。
そして出場時のスコアは1-1という事で、求められたのは「中盤として後方での繋ぎ・守備に貢献しつつも、機を見た攻め上がりで得点に絡むこと」のはずです。
ビルドアップ
以上を踏まえた上で、まずはビルドアップの局面について見ていきます。
両チームともに疲れの色も見られ、コンパクトな陣形を保つのが難しくなっていた中、スペースを得たヴランクスは「冷静なプレー選択」でビルドアップに絡んでいきました。

――シーン1:チームの押し上げが足りず、ここでは中盤エリアをダンカン1枚で守るヴィオラ。そこでトモリからフリーのヴランクスへとパスが渡る

――その後の場面。ヴランクスにはダンカンが急いで寄せにくるも、それによりベナセルがフリーとなる。そこでヴランクスはターンしてボールをキープし、ベナセルにパスを送った
このように相手の出方を窺いつつ、生じ得る数的優位を活かしながらボールを前進させていきます。

――シーン2:この位置でボールを受けるヴランクス。ここから右サイドのデストに展開し、前方に動く

――その後の場面。ヴランクスがダンカンを引き付けてパスコースを作り、デストから中央でフリーのベナセルへとボールが渡った
85分にはトナーリに代えてレビッチが投入され、前線の枚数を増やしましたが、引き続きヴランクスは相方ベナセルとの関係を維持しながら積極的に前方へと動く意思を見せました。

――シーン3:ベナセルが後方で最終ラインをサポートし、ヴランクスがライン間に侵入。デストからパスを引き出した
崩し
その後の敵陣でのプレーにおいてもヴランクスは快活なプレーを披露。スペースを探し、積極的に動いてパスを引き出そうとします。

――シーン4:ライン間に侵入し、トナーリからパスを引き出そうとするヴランクス
この局面で好意的に感じられたのは、ヴランクスの「能動的なプレー選択」です。
この点について、同ポジションのライバルと比較して考えてみると…。例えばクルニッチは連動意識や献身性が高く、安定感がありバランスの取れる選手ですが打開力に欠けるところがあります。またポベガはオフザボール時のダイナミズムに特化した選手であり、少なくとも現時点で器用なタイプとは言い難いです。
一方でこの試合のヴランクスは、ボールを持った時に複数の見せ場を作り出すことに成功。
このことは彼らとは異なる特長を持ち、別の形で貢献できる選手である可能性を示していますね。
ちなみにヴランクス曰く、自身のプレースタイルについて「ムサ・デンベレ(元ベルギー代表)」を手本にしてその確立に向け取り組んでいるそうなので、やはり彼にも相応の打開力が期待されるところです。
実際、以下のようなターンを活かしてのボールキープ(からのスルーパス)や、ドリブルによる仕掛けといった能動的なプレーは今後に向けてかなりポジティブに感じる点でした。

――シーン5:右サイドでレビッチからパスを受けたヴランクスは、上手くターンして対面の相手をいなしながら中央方向へドリブル

――その後の場面。ヴランクスの仕掛けにより生じた同サイド前方のスペース(パスコース)、及びそこに走り込むレビッチに対しスルーパスが送られた

――シーン6:右サイド深い位置でボールを持ったヴランクス。相手選手2人の間をドリブルで縦に抜け出し、クロスにまで持ち込んだ
そして91分。デストとの連携でスペースを確保したヴランクスがクロスを送り込み、相手のオウンゴールを誘発。

――シーン7:当該シーン
15分という短い出場時間ながら結果をも残し、与えられた役割を遂行してチームの勝利に貢献しました。
息切れを起こしていたミランにとって、来るW杯によるシーズン中断はポジティブに働くでしょう。
一方、ようやくスタートラインに立てた感のあるヴランクス個人にとってこの中断は少々歯がゆいかもしれませんね。
とは言えシーズン後半戦に向けてアピールに成功したことは事実ですし、後半戦はもっと出番が増えるのではないかと期待されます。
そこで、今後は今回のようなプレーを「相手十分のシチュエーションでも出来るかどうか」が重要ポイントになるはずです。
具体的に言えば、「相手が十分な集中力とスタミナを有した状態でプレスを仕掛けてきた際にも問題なくプレーできるか」といったところで、例えばトリノ戦で左記の状況に苦しんだポベガはピオリ監督からの信用を少なからず落とした感があります(※リーグ戦の直近3試合で出番なし)
逆に考えると、もしヴランクスが同様の状況でも安定したプレーを行い、自らの持ち味を発揮できるほどの技術的・思考的な成熟を見せられれば一気に序列を高めることが可能ですし、先発ローテーションに組み込まれることも十分にあり得る話です。
最後に。現在のヴランクスはレンタル移籍という形でミランに加入しており、完全移籍には凡そ1300万ユーロの費用がかかると報じられています。
まだ20歳になったばかりとは言え、完全移籍を果たすには現時点のインパクトでは物足りないでしょう。
そこでシーズン後半戦には貴重な戦力と化し、ファン・サポーターから完全移籍を熱望されるような存在になってもらいたいと思います。
それでは今回はこの辺で。
加入してから今季ここまでの出場数は4試合で、時間に換算してわずか45分間。自らを示す機会は極めて限定的ながら、先日のフィオレンティーナ戦でミランの決勝ゴールを演出しています。
そこで今回は、ヴィオラ戦での彼のプレーを振り返っていきましょう。
この試合のヴランクスは75分から途中出場。ベナセル、トナーリと共に中盤の一角を構成し、主に右サイド側を担当しました。
そして出場時のスコアは1-1という事で、求められたのは「中盤として後方での繋ぎ・守備に貢献しつつも、機を見た攻め上がりで得点に絡むこと」のはずです。
ビルドアップ
~冷静なプレー選択~
以上を踏まえた上で、まずはビルドアップの局面について見ていきます。
両チームともに疲れの色も見られ、コンパクトな陣形を保つのが難しくなっていた中、スペースを得たヴランクスは「冷静なプレー選択」でビルドアップに絡んでいきました。

――シーン1:チームの押し上げが足りず、ここでは中盤エリアをダンカン1枚で守るヴィオラ。そこでトモリからフリーのヴランクスへとパスが渡る

――その後の場面。ヴランクスにはダンカンが急いで寄せにくるも、それによりベナセルがフリーとなる。そこでヴランクスはターンしてボールをキープし、ベナセルにパスを送った
このように相手の出方を窺いつつ、生じ得る数的優位を活かしながらボールを前進させていきます。

――シーン2:この位置でボールを受けるヴランクス。ここから右サイドのデストに展開し、前方に動く

――その後の場面。ヴランクスがダンカンを引き付けてパスコースを作り、デストから中央でフリーのベナセルへとボールが渡った
85分にはトナーリに代えてレビッチが投入され、前線の枚数を増やしましたが、引き続きヴランクスは相方ベナセルとの関係を維持しながら積極的に前方へと動く意思を見せました。

――シーン3:ベナセルが後方で最終ラインをサポートし、ヴランクスがライン間に侵入。デストからパスを引き出した
崩し
~能動的なプレー選択~
その後の敵陣でのプレーにおいてもヴランクスは快活なプレーを披露。スペースを探し、積極的に動いてパスを引き出そうとします。

――シーン4:ライン間に侵入し、トナーリからパスを引き出そうとするヴランクス
この局面で好意的に感じられたのは、ヴランクスの「能動的なプレー選択」です。
この点について、同ポジションのライバルと比較して考えてみると…。例えばクルニッチは連動意識や献身性が高く、安定感がありバランスの取れる選手ですが打開力に欠けるところがあります。またポベガはオフザボール時のダイナミズムに特化した選手であり、少なくとも現時点で器用なタイプとは言い難いです。
一方でこの試合のヴランクスは、ボールを持った時に複数の見せ場を作り出すことに成功。
このことは彼らとは異なる特長を持ち、別の形で貢献できる選手である可能性を示していますね。
ちなみにヴランクス曰く、自身のプレースタイルについて「ムサ・デンベレ(元ベルギー代表)」を手本にしてその確立に向け取り組んでいるそうなので、やはり彼にも相応の打開力が期待されるところです。
実際、以下のようなターンを活かしてのボールキープ(からのスルーパス)や、ドリブルによる仕掛けといった能動的なプレーは今後に向けてかなりポジティブに感じる点でした。

――シーン5:右サイドでレビッチからパスを受けたヴランクスは、上手くターンして対面の相手をいなしながら中央方向へドリブル

――その後の場面。ヴランクスの仕掛けにより生じた同サイド前方のスペース(パスコース)、及びそこに走り込むレビッチに対しスルーパスが送られた

――シーン6:右サイド深い位置でボールを持ったヴランクス。相手選手2人の間をドリブルで縦に抜け出し、クロスにまで持ち込んだ
そして91分。デストとの連携でスペースを確保したヴランクスがクロスを送り込み、相手のオウンゴールを誘発。

――シーン7:当該シーン
15分という短い出場時間ながら結果をも残し、与えられた役割を遂行してチームの勝利に貢献しました。
まとめ
息切れを起こしていたミランにとって、来るW杯によるシーズン中断はポジティブに働くでしょう。
一方、ようやくスタートラインに立てた感のあるヴランクス個人にとってこの中断は少々歯がゆいかもしれませんね。
とは言えシーズン後半戦に向けてアピールに成功したことは事実ですし、後半戦はもっと出番が増えるのではないかと期待されます。
そこで、今後は今回のようなプレーを「相手十分のシチュエーションでも出来るかどうか」が重要ポイントになるはずです。
具体的に言えば、「相手が十分な集中力とスタミナを有した状態でプレスを仕掛けてきた際にも問題なくプレーできるか」といったところで、例えばトリノ戦で左記の状況に苦しんだポベガはピオリ監督からの信用を少なからず落とした感があります(※リーグ戦の直近3試合で出番なし)
逆に考えると、もしヴランクスが同様の状況でも安定したプレーを行い、自らの持ち味を発揮できるほどの技術的・思考的な成熟を見せられれば一気に序列を高めることが可能ですし、先発ローテーションに組み込まれることも十分にあり得る話です。
最後に。現在のヴランクスはレンタル移籍という形でミランに加入しており、完全移籍には凡そ1300万ユーロの費用がかかると報じられています。
まだ20歳になったばかりとは言え、完全移籍を果たすには現時点のインパクトでは物足りないでしょう。
そこでシーズン後半戦には貴重な戦力と化し、ファン・サポーターから完全移籍を熱望されるような存在になってもらいたいと思います。
それでは今回はこの辺で。