【勝てばよかろうもん?】ミラン対フィオレンティーナ【2022-23シーズン・セリエA第15節】

2022-23シーズン・試合フィオレンティーナ戦
今回はセリエA第15節、ミラン対フィオレンティーナのマッチレビューを行います。

スタメン

【22-23】ミラン対フィオレンティーナ_スタメン

ベースフォーメーション:
ミラン「4-4-2」
フィオレンティーナ「4-2-3-1」


この試合、ミランの基本となるフォーメーションは「4-4-2」と定義しました。

他のデータサイトとかだと普段通り「4-2-3-1」と表記されていますし、僕も特にフォーメーション表記について拘りはないタイプなのですが、今回に限っては「4-4-2」とした方が問題点を振り返りやすいので強調させてもらいます。

ミランの守備


まずはヴィオラの攻撃とミランの守備についてです。

前半の2分に立ち上がりの隙を突いてミランが先制に成功したものの、その後はヴィオラに押し込まれる時間帯が続きました。
その原因の一つと考えられるのが、相手中盤のアムラバトを比較的自由にさせてしまったことです。

普段のミランであれば、トップ下に相手のアンカー(もしくはボールサイドのボランチ)をマークさせることで中盤のパス回しを積極的に妨害するわけですが、この試合でトップ下に入った(と他では表記されている)クルニッチはミドルサードにおいては中盤のラインに入り、横幅のケアを優先します。


【22-23】ミラン対フィオレンティーナ_守備時平均ポジション
――参考1:この試合前半におけるミランの守備時の平均ポジション

そこで、ボールを受けた(受けようとする)アムラバトには順次中盤のラインから誰か(主にトナーリ)が対応したり、散発的に前線2枚がプレスバックしたりするわけですが、一手遅れがちになってしまう分だけスペースを与えてしまうと。


【22-23】ミラン対フィオレンティーナ_戦術分析1
――シーン1:中盤で一時的にフリーとなっているアムラバトにパスが通る


【22-23】ミラン対フィオレンティーナ_戦術分析2
――その後の場面。アムラバトから右サイドに張るイコネ(画面外)に展開された

ましてアムラバトはテクニックがあるため、上手くミランのプレスをいなしながらボールを配給していきました。
例えば8分。アムラバト起点の攻撃からパスを受けたバラークが上手くターンして前を向き、得点チャンスを演出。最後はビラーギがポスト直撃の強烈なシュートを放ち、ミランゴールを脅かします。


【22-23】ミラン対フィオレンティーナ_戦術分析3
――シーン2:前向きでボールを受けたアムラバトは中央方向へとドリブルで持ち運ぶ


【22-23】ミラン対フィオレンティーナ_戦術分析4
――その後の場面。アムラバトからライン間のバラークへとパス。この後バラークはワンタッチでトモリを躱し、ゴール前へと侵入していった


優勢に試合を進めたヴィオラは27分。右サイド深くから放たれたクロスを機にエリア内で混戦となり、最後はバラークが流し込んで同点弾を獲得。

ミランとしては前半終盤になり、ようやくアムラバトから2度ボールを奪って決定機に繋げるなどして対抗していきましたが、全体的に守備が上手く機能している印象はありませんでした。


ミランの攻撃


続いてはミランの攻撃(ボール保持)とヴィオラの守備について。
ミランのビルドアップに対してヴィオラは主にハイプレスで対抗します。

この点について、ヴィオラはミランの攻撃対策として、サポナーラが対面のカルルをマンツーマンで抑え込みました。
というのもカルルは右サイドにおけるボール運びの起点として機能する選手であり、こうしたヴィオラの対応は合理的といえます。

サポナーラのタイトなマークを受け、カルルは積極的に前方に移動して揺さぶる動きも見せましたが、そうした動きに対してもサポナーラが付いていって自由を許しません。


【22-23】ミラン対フィオレンティーナ_戦術分析5
――シーン3:ここでは最前線にまで飛び出しロングボールのターゲットになったカルルだが、そこにもサポナーラは付いてくる(赤)

他方、サポナーラの献身的な守備により左SBのビラーギは対面のブラヒム封じに集中できます。ブラヒムは中央に入り込みながらパスを要求するもののビラーギのマークに苦しみ、ほとんど見せ場を作れませんでした。


【22-23】ミラン対フィオレンティーナ_戦術分析6
――シーン4:カルルからパスを引き出そうと動いたブラヒムに対し、パビラーギがタイトにマーク。

このようにミランは右サイドを封じ込まれ、かつ中央へのルートもマンツーマン志向の強い守備でパスコースを抑えられているためほとんど有効にボールを繋ぐことが出来ず。
それと左サイドも、中盤に積極的に入り込むクルニッチと、前線でジルーとのユニットを重視するレオンがそれぞれ中央に位置することが多く、サイドを全くといっていいほど活用できず。


したがって、必然的にプレー選択は前線中央への(特段、工夫の無い)ロングボールが多数を占めることになり、前半の多くの時間帯はこぼれ球を拾って散発的にボールを運んでいくといった形に止まりました。



後半の修正


後半に入り10分後。ミランはブラヒムに代えてオリギ、ティアウに代えてデストを投入。
オリギはジルーと2トップを形成し、デストは右SBに。かつティアウのポジションにはカルルが、ブラヒムのポジションにクルニッチがそれぞれ回り、左サイドにレオンが入るという形に変更します。
そしてこれにより、ようやく攻めの形を見出すようになりました。

ポイントになったのはデストの存在です。
カルルと比べて打開力のある彼は、ドリブルやパスで積極的に仕掛けることでマークを外し、ボールを運んでいきます。


【22-23】ミラン対フィオレンティーナ_戦術分析7
――シーン5:デストが中央のスペースとボールを持ち運ぶ


そして左サイドに回ったレオンへとボールを預け、フィニッシュワークへという流れですね。


【22-23】ミラン対フィオレンティーナ_戦術分析8
――シーン6:ここでデストはトナーリとの連携で中央へ持ち運び、左サイドで待ち構えるレオンにパス。チャンスを演出した

レオンの動きがいまいちピリッとしないため決定機にまでは中々至らないものの、このようにデストの投入を機に惜しい形を作り出していきました。

一方、試合が進むにつれて両チームともに集中力や強度が低下していき、お互いにトランジション等からチャンスが訪れていきます。
好機を逃すまいとしたミランは、75分にクルニッチに代えてヴランクス、85分にはトナーリに代えてレビッチを投入。4トップのファイヤーフォーメーションで強引に点を奪いに行きます。

その間、ヴィオラに何度も危険な形を作られながらも守備陣(特にトモリ)の頑張りで凌いでいると、遂に91分。ヴランクスのクロスがミレンコビッチのオウンゴールを誘発し、ミランが勝敗を分ける値千金の勝ち越し点を獲得。

このようにして紙一重の勝負を制しました。

ミラン2-1フィオレンティーナ


雑感


アディショナルタイムでの劇的決勝点。
ミランはホームでの勝負強さを今回も発揮し、年内最後のリーグ戦で重要な勝ち点3を獲得することが出来ました。


しかしながら…。ハッキリ言ってこの試合、チームパフォーマンスとしては今季ワーストクラスだったと思います。

戦術的にポジティブな点はほぼ皆無といえ、最後はヴィオラとのノーガードの殴り合いの末に運良く辛勝。どちらが勝ってもおかしくない試合展開でした。

最早チームとして息切れを起こしているのは明白ですし、ここでW杯開催によるシーズン中断(休息)が挟まるのはミランにとって間違いなくメリットでしょうね。

幸か不幸か、ミランからW杯に参加する選手は多くないですし、残留メンバーはこの時期にしっかりと再充電してシーズン後半戦に臨んでもらいたいと思います。


Forza Milan!


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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