【大勝劇を振り返る】ミラン対モンツァ【2022-23シーズン・セリエA第11節】
今回はセリエA第11節、ミラン対モンツァのマッチレビューを行います。
スタメン

ベースフォーメーション
ミラン「4-2-3-1」
モンツァ「3-4-2-1」
まずはミランの攻撃とモンツァの守備についてです。
モンツァはまずモタとカプラーリの2人で第一プレッシャーラインを形成し、中央へのパスコースを制限。一方ペッシーナは少し下がり、ダブルボランチと共にミランの中盤をマークしていく形が基本となります。

――シーン1:モンツァの前線の守備陣形
これに対し、ミランのボール運びの起点は主に右SBのデストになりました。
右サイドのメシアスが幅を取って対面の相手WB(アウグスト)を牽制することで、その手前のスペースは空き易い状況です。そこからデストが持ち運び、同サイドのメシアスや同サイドに頻繁に顔を出すブラヒム、そして前方のオリギ等と協同して崩しを図っていく、と。

――先ほどの続きの場面。トモリは右サイドでフリーのデストに展開した
この点に関し、崩しの際にポイントになったのが相手左CB「カルディローラ周辺のスペース」です。
デストの持ち運びには中盤のセンシがスライドして対応し、幅を取るメシアスをアウグストがマーク。そして、その周囲でボールを貰いに動くブラヒムにはカルディローラ前に出て付くというシーンが何度か見られましたが、これにより最終ラインに穴が生じやすくなります。
そうしたDFラインを的確に補修する組織力をモンツァは十分に備えていないように見受けられましたし、ミランとしてはそこが一つの狙い所になったかなと。

――シーン2:ここではブラヒムとデストがポジションを入れ替え、デストが前方に移動。そのデストを管理するためにカルディローラが前に出るが、その背後に生じたスペースへオリギとメシアスが侵入。ブラヒムから縦パスを引き出し、惜しいシーンを作り出した

――シーン3:ミランが右サイドでボール回しを行う際、ブラヒムに対してカルディローラが付き、ボールサイドのオリギにもマリが対応。一方、右CBのアントフ(画面外)は逆サイドのレビッチが気になって絞り切れず、中央にはスペースが空いている状態。そこへポベガが飛び込み、パスを引き出そうとした
さて。以上を踏まえた上で、ミランの得点シーンを3つ掘り下げていこうと思います。
まずは1点目のシーン。ここでは例によってデストがボールを持ち運んだ後、GKへのバックパスで作り直しを図ったことが鍵となりました。

――シーン4
バックパスに応じてモンツァが前への圧力を強め、ミランの後方の選手たちにそれぞれマークに付きます。しかし、ここでバルベリスとペッシーナがミランのダブルボランチの下がる動きに対応し、更には右サイドのデストに対してセンシが高い位置から捕まえにいったことで、中盤のスペースがぽっかりと空いてしまいました。
タタルシャヌはそこを見逃さず、当該スペースへ正確なロングボールを供給。そこでブラヒムがボールを受けてワンマンショーを披露し、独走ドリブルからミランが先制点をゲットします

――タタルシャヌのロングボールがブラヒムへ渡る
ブラヒムのドリブルと積極性は言わずもがな、ここではタタルシャヌの正確な判断とパスが先制点のきっかけになりました。
また、これはデストを起点とするボール運びに焦れたモンツァ側の対応の隙を突いたという事で、ある種狙い通りの形で奪えたゴールといえそうです。
続いて2点目のシーンについて。ここで鍵になったのはオリギとブラヒムです。

――シーン5
自陣からクリアされたボールを拾いに走るオリギ。ここでオリギにはカルディローラが事前マークしていたわけですが、そのマークを振り切ってボール回収。そのままカウンターを開始します。
オリギに関して特筆すべきは、スピードとフィジカルを兼ね備え、ある程度独力で仕掛けられる力があるという点です。
そのため、このようなアバウトなボールに対しても食らいつくことができ、上手くいけばそのままカウンターへ転じることが出来る、と。
この点、仮に前線に残っているのがジルーだとしたらこの手のプレーを行うのは難しいです。もちろんジルーにはジルーの良さがあるとはいえ、このようなトランジションの局面においてはオリギの方がプレーの幅が広く、効果的な印象が個人的には強いですね。

――先ほどの続きの場面
さて。ドリブルで前進したオリギはその後、エリア内に侵入したブラヒムにラストパス。ボールを受けたブラヒムは2タッチ目で対面のカルディローラを躱し、右足でシュートを突き刺しました。
カルディローラはあまり小回りの利く印象は無く、ブラヒムと1対1でマッチアップすれば劣勢は避けられません。この試合でブラヒムを頻繁に右サイドに流れさせた理由の一つとしては、このようにカルディローラとの質的優位を活かすことも想定していたのかもしれませんね。
最後に3点目について。これは65分に生まれたシーンでした。
後半になってミランはデスト(筋肉疲労)に代えてカルルを投入。これによりビルドアップ時の構造を少し変え、カルルもデストに比べて少し下がり目でのプレーとなったように見受けられましたが、基本的な役割(右サイドでのボール出しの起点)は変わりません。
それに対し、モンツァは2点ビハインドとなったこともあり、対面のWBがカルルに対して頻繁にプレッシャーをかけるようになります。前半はデストにボールを運ばれていただけに、ボール運びの起点を早めに潰して高い位置でボールを奪おうという狙いでしょうか。
しかし、これにより前半と比べてスペースを得たのがメシアスです。
相手WBが前に向かった際、左CBがスライドして対応してくるようになったため、もし相手CBを抜ければ一気にチャンスシーンを作り出せます。それが実現したのが3点目のシーンであり、カルボーネ(※カルディローラに代わって投入)を躱して突破に成功したメシアスがゴール前のオリギにパス。オリギが強烈なミドルシュートを突き刺し、決定的な3点目を獲得した、と。

――シーン6:カルルからパスを受け、カルボーネとマッチアップするメシアス

――カルボーネを躱してドリブルで前方に侵入。その後、オリギにパスを出しアシストを記録した
更に84分にはレオンがダメ押しの4点目をマーク(※これは相手のミスによる部分が大きいため割愛)。
結局のところミランは選手たちの個の力を有効に活かしながら、大量4得点を奪うことに成功しました。
続いてはミランの守備についてです。
いつも通り組織的プレッシングを軸に、相手のビルドアップ妨害からのボール奪取を目論むミラン。その際、特にミラン側右サイドをボールの獲り所として想定していたように思われます。

――シーン7:右サイドでのミランのハイプレス
例えば左CBカルディローラがボールを持つと、ミランはブラヒムがそこへアタックしに行きボールをサイドへと誘導。そしてサイドでボールを受けるWBアウグストに対してはメシアスがマークに付き、前方のカプラーリ、モタにはそれぞれデストとケアーが主に対応。このように右サイドでの対応関係を明確にすることでプレッシング精度の安定を図りました。

――先ほどの続きの場面。アウグストからモタへと楔のパスが入るが、ケアーがしっかりと対応する
また、ブラヒムがプレスのため前に出る際には中盤のセンシが一時的に浮き易くなりますが、センシへのパスコースや周辺のスペースはベナセルが監視。それに加え、レオンよりも守備意識の高い逆サイドのレビッチが中央に絞ることで、モンツァの使えるスペースを圧縮していきました。

――シーン8:下がるセンシに対してベナセルが粘り強く対応。他方、レビッチは中央に絞りつつ、相手のバックパスを警戒
一方、相手WBをメシアスが監視する動きは自陣でも継続して行われ、結果5バックの形を多く取るミラン。これにより最終ラインの幅を広くし、守備に懸念のあるデストや病み上がりのケアーの機動力をカバーする狙いがあったように個人的には思われました。

――参考1:この試合前半における守備時のミランの平均ポジション。メシアス(30)の位置に注目
しかし最終ラインを厚くする分、中盤の支配力は落ちてしまいます。そのためモンツァはセンシを中心とする流動的な動きを伴ったパスワークにより、前半中頃からミランを押し込む時間帯を増やしていきました。

――シーン9:流動的な動きを見せるモンツァ。カルディローラが上がると同時にセンシが下がり、サイドからはアウグストがライン間に侵入。センシから縦パスを引き出す

――その後の場面。アウグストに対しては後方からデストが対応するも、右サイドへと展開される

――その後の場面。エリア内に侵入したアウグスト(青)に誰も付けず、チューリアからのクロスをフリーで合わせられた
最終ライン手前のスペースはブラヒムやレビッチが戻って埋めたり、DFが縦スライドしたりして対応しましたが、後手に回りボールを奪い取れない状況も散見。
ただこの点については、ある程度は織り込み済みの展開だったのかなと。これまでの連戦による疲労や、来るミッドウィークのCLを考えると、出来るだけ消耗を抑えるためにプレス強度を敢えて落として受動的に構えたと見ることも可能です。
それに、DF陣+ボランチによるゴール前での粘り強い対応によって相手に決定機を作られるシーンも少なかったですしね(肝を冷やしたのは先のアウグストのヘディングシーンくらいか)。
しかしそのようなスタイルによって手堅く無失点で切り抜けるには、「ゴール前の堅さ」が今一歩足りない気がします。
69分、トモリが自陣で相手を倒してしまいFKを献上。そのFKをラノッキア(※途中投入)が直接決め、モンツァが1点を返しました。
タタルシャヌはこれで第9節エンポリ戦に次ぐFK被弾です。また2021年の国内カップ戦でエリクセンに決められたゴールを含めると、彼はミランでの少ない出場機会で3度直接FKを決められたことになります。
今回は相手のキックが良かったため致し方ない面もあれど、彼(というよりチーム)のセットプレー対応に全幅の信頼を置けないことは確かだと思います。そのため危険な被セットプレーの数自体を減らす必要がありますし、それにはやはりアグレッシブな組織的プレスによって相手を出来るだけゴールから遠ざけることが重要でしょうね。
試合展開に話を戻して…。その後も少なくないシュートを放ったモンツァでしたが、ミランも2失点目は許すことはありませんでした。そして逆にトドメの4点目を終盤に奪い、試合終了
ミラン4-1モンツァ
効率良く得点を重ね、開幕戦以来となる4得点大勝を収めたミラン。
(おそらく)この試合のキーマンとして想定されていたであろうブラヒムが期待に応え、また先発デビューのオリギも1ゴール・1アシストと結果を残し、更にはメシアス、ケアー、デ・ケテラーレも実戦復帰。
チームパフォーマンス(特に守備面)は先述の通り控えめだったように見受けられましたが、左記のポジティブな点を考慮すれば総合的に満足のいく試合だったかなと。
ただし懸念材料が2つあります。1つは「怪我による交代が多かったこと」で、デストとブラヒムがそれぞれ体の違和感を覚えて交代を余儀なくされました(オリギも交代前に少し怪しい素振りを見せる)。
不幸中の幸いにも怪我の程度は軽そうだと報じられていますが、ようやく何人かの選手が復帰し始めたこのタイミングで再び離脱者が続出するなんて事態は避けたいところです。
もう1つはデ・ケテラーレのメンタル面です。
チームが4得点を記録したものの、53分から途中出場したデ・ケテラーレは個人として結果を残すことは出来ず。
シュートチャンスをフイにしてしまった93分の場面が象徴的ですが、画面越しでも現在の彼がナーバスになっている様子が伝わってきました。
これまでが少々大人しすぎたようにも感じるだけに、感情を露にするのが悪いことばかりだとも思いません。が、このような焦燥感がパフォーマンスに良い影響を与えているとは到底思えないので、なるべく早く現状を打破できるキッカケ(=結果)を掴んで欲しいと強く願います。
さて。ミランの次戦はミッドウィーク開催のCL、ザグレブ戦です。
グループリーグ突破の可否に大きく関わる大一番であり、自力突破のためには勝つことが求められます。
この試合で得たであろう自信を手に、万全の準備で臨んでもらいたいですね。
Forza Milan!
長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
スタメン

ベースフォーメーション
ミラン「4-2-3-1」
モンツァ「3-4-2-1」
ミランの右サイド攻略
まずはミランの攻撃とモンツァの守備についてです。
モンツァはまずモタとカプラーリの2人で第一プレッシャーラインを形成し、中央へのパスコースを制限。一方ペッシーナは少し下がり、ダブルボランチと共にミランの中盤をマークしていく形が基本となります。

――シーン1:モンツァの前線の守備陣形
これに対し、ミランのボール運びの起点は主に右SBのデストになりました。
右サイドのメシアスが幅を取って対面の相手WB(アウグスト)を牽制することで、その手前のスペースは空き易い状況です。そこからデストが持ち運び、同サイドのメシアスや同サイドに頻繁に顔を出すブラヒム、そして前方のオリギ等と協同して崩しを図っていく、と。

――先ほどの続きの場面。トモリは右サイドでフリーのデストに展開した
この点に関し、崩しの際にポイントになったのが相手左CB「カルディローラ周辺のスペース」です。
デストの持ち運びには中盤のセンシがスライドして対応し、幅を取るメシアスをアウグストがマーク。そして、その周囲でボールを貰いに動くブラヒムにはカルディローラ前に出て付くというシーンが何度か見られましたが、これにより最終ラインに穴が生じやすくなります。
そうしたDFラインを的確に補修する組織力をモンツァは十分に備えていないように見受けられましたし、ミランとしてはそこが一つの狙い所になったかなと。

――シーン2:ここではブラヒムとデストがポジションを入れ替え、デストが前方に移動。そのデストを管理するためにカルディローラが前に出るが、その背後に生じたスペースへオリギとメシアスが侵入。ブラヒムから縦パスを引き出し、惜しいシーンを作り出した

――シーン3:ミランが右サイドでボール回しを行う際、ブラヒムに対してカルディローラが付き、ボールサイドのオリギにもマリが対応。一方、右CBのアントフ(画面外)は逆サイドのレビッチが気になって絞り切れず、中央にはスペースが空いている状態。そこへポベガが飛び込み、パスを引き出そうとした
さて。以上を踏まえた上で、ミランの得点シーンを3つ掘り下げていこうと思います。
1点目
まずは1点目のシーン。ここでは例によってデストがボールを持ち運んだ後、GKへのバックパスで作り直しを図ったことが鍵となりました。

――シーン4
バックパスに応じてモンツァが前への圧力を強め、ミランの後方の選手たちにそれぞれマークに付きます。しかし、ここでバルベリスとペッシーナがミランのダブルボランチの下がる動きに対応し、更には右サイドのデストに対してセンシが高い位置から捕まえにいったことで、中盤のスペースがぽっかりと空いてしまいました。
タタルシャヌはそこを見逃さず、当該スペースへ正確なロングボールを供給。そこでブラヒムがボールを受けてワンマンショーを披露し、独走ドリブルからミランが先制点をゲットします

――タタルシャヌのロングボールがブラヒムへ渡る
ブラヒムのドリブルと積極性は言わずもがな、ここではタタルシャヌの正確な判断とパスが先制点のきっかけになりました。
また、これはデストを起点とするボール運びに焦れたモンツァ側の対応の隙を突いたという事で、ある種狙い通りの形で奪えたゴールといえそうです。
2点目
続いて2点目のシーンについて。ここで鍵になったのはオリギとブラヒムです。

――シーン5
自陣からクリアされたボールを拾いに走るオリギ。ここでオリギにはカルディローラが事前マークしていたわけですが、そのマークを振り切ってボール回収。そのままカウンターを開始します。
オリギに関して特筆すべきは、スピードとフィジカルを兼ね備え、ある程度独力で仕掛けられる力があるという点です。
そのため、このようなアバウトなボールに対しても食らいつくことができ、上手くいけばそのままカウンターへ転じることが出来る、と。
この点、仮に前線に残っているのがジルーだとしたらこの手のプレーを行うのは難しいです。もちろんジルーにはジルーの良さがあるとはいえ、このようなトランジションの局面においてはオリギの方がプレーの幅が広く、効果的な印象が個人的には強いですね。

――先ほどの続きの場面
さて。ドリブルで前進したオリギはその後、エリア内に侵入したブラヒムにラストパス。ボールを受けたブラヒムは2タッチ目で対面のカルディローラを躱し、右足でシュートを突き刺しました。
カルディローラはあまり小回りの利く印象は無く、ブラヒムと1対1でマッチアップすれば劣勢は避けられません。この試合でブラヒムを頻繁に右サイドに流れさせた理由の一つとしては、このようにカルディローラとの質的優位を活かすことも想定していたのかもしれませんね。
3点目
最後に3点目について。これは65分に生まれたシーンでした。
後半になってミランはデスト(筋肉疲労)に代えてカルルを投入。これによりビルドアップ時の構造を少し変え、カルルもデストに比べて少し下がり目でのプレーとなったように見受けられましたが、基本的な役割(右サイドでのボール出しの起点)は変わりません。
それに対し、モンツァは2点ビハインドとなったこともあり、対面のWBがカルルに対して頻繁にプレッシャーをかけるようになります。前半はデストにボールを運ばれていただけに、ボール運びの起点を早めに潰して高い位置でボールを奪おうという狙いでしょうか。
しかし、これにより前半と比べてスペースを得たのがメシアスです。
相手WBが前に向かった際、左CBがスライドして対応してくるようになったため、もし相手CBを抜ければ一気にチャンスシーンを作り出せます。それが実現したのが3点目のシーンであり、カルボーネ(※カルディローラに代わって投入)を躱して突破に成功したメシアスがゴール前のオリギにパス。オリギが強烈なミドルシュートを突き刺し、決定的な3点目を獲得した、と。

――シーン6:カルルからパスを受け、カルボーネとマッチアップするメシアス

――カルボーネを躱してドリブルで前方に侵入。その後、オリギにパスを出しアシストを記録した
更に84分にはレオンがダメ押しの4点目をマーク(※これは相手のミスによる部分が大きいため割愛)。
結局のところミランは選手たちの個の力を有効に活かしながら、大量4得点を奪うことに成功しました。
ミランの守備
続いてはミランの守備についてです。
いつも通り組織的プレッシングを軸に、相手のビルドアップ妨害からのボール奪取を目論むミラン。その際、特にミラン側右サイドをボールの獲り所として想定していたように思われます。

――シーン7:右サイドでのミランのハイプレス
例えば左CBカルディローラがボールを持つと、ミランはブラヒムがそこへアタックしに行きボールをサイドへと誘導。そしてサイドでボールを受けるWBアウグストに対してはメシアスがマークに付き、前方のカプラーリ、モタにはそれぞれデストとケアーが主に対応。このように右サイドでの対応関係を明確にすることでプレッシング精度の安定を図りました。

――先ほどの続きの場面。アウグストからモタへと楔のパスが入るが、ケアーがしっかりと対応する
また、ブラヒムがプレスのため前に出る際には中盤のセンシが一時的に浮き易くなりますが、センシへのパスコースや周辺のスペースはベナセルが監視。それに加え、レオンよりも守備意識の高い逆サイドのレビッチが中央に絞ることで、モンツァの使えるスペースを圧縮していきました。

――シーン8:下がるセンシに対してベナセルが粘り強く対応。他方、レビッチは中央に絞りつつ、相手のバックパスを警戒
一方、相手WBをメシアスが監視する動きは自陣でも継続して行われ、結果5バックの形を多く取るミラン。これにより最終ラインの幅を広くし、守備に懸念のあるデストや病み上がりのケアーの機動力をカバーする狙いがあったように個人的には思われました。

――参考1:この試合前半における守備時のミランの平均ポジション。メシアス(30)の位置に注目
しかし最終ラインを厚くする分、中盤の支配力は落ちてしまいます。そのためモンツァはセンシを中心とする流動的な動きを伴ったパスワークにより、前半中頃からミランを押し込む時間帯を増やしていきました。

――シーン9:流動的な動きを見せるモンツァ。カルディローラが上がると同時にセンシが下がり、サイドからはアウグストがライン間に侵入。センシから縦パスを引き出す

――その後の場面。アウグストに対しては後方からデストが対応するも、右サイドへと展開される

――その後の場面。エリア内に侵入したアウグスト(青)に誰も付けず、チューリアからのクロスをフリーで合わせられた
最終ライン手前のスペースはブラヒムやレビッチが戻って埋めたり、DFが縦スライドしたりして対応しましたが、後手に回りボールを奪い取れない状況も散見。
ただこの点については、ある程度は織り込み済みの展開だったのかなと。これまでの連戦による疲労や、来るミッドウィークのCLを考えると、出来るだけ消耗を抑えるためにプレス強度を敢えて落として受動的に構えたと見ることも可能です。
それに、DF陣+ボランチによるゴール前での粘り強い対応によって相手に決定機を作られるシーンも少なかったですしね(肝を冷やしたのは先のアウグストのヘディングシーンくらいか)。
しかしそのようなスタイルによって手堅く無失点で切り抜けるには、「ゴール前の堅さ」が今一歩足りない気がします。
69分、トモリが自陣で相手を倒してしまいFKを献上。そのFKをラノッキア(※途中投入)が直接決め、モンツァが1点を返しました。
タタルシャヌはこれで第9節エンポリ戦に次ぐFK被弾です。また2021年の国内カップ戦でエリクセンに決められたゴールを含めると、彼はミランでの少ない出場機会で3度直接FKを決められたことになります。
今回は相手のキックが良かったため致し方ない面もあれど、彼(というよりチーム)のセットプレー対応に全幅の信頼を置けないことは確かだと思います。そのため危険な被セットプレーの数自体を減らす必要がありますし、それにはやはりアグレッシブな組織的プレスによって相手を出来るだけゴールから遠ざけることが重要でしょうね。
試合展開に話を戻して…。その後も少なくないシュートを放ったモンツァでしたが、ミランも2失点目は許すことはありませんでした。そして逆にトドメの4点目を終盤に奪い、試合終了
ミラン4-1モンツァ
雑感
効率良く得点を重ね、開幕戦以来となる4得点大勝を収めたミラン。
(おそらく)この試合のキーマンとして想定されていたであろうブラヒムが期待に応え、また先発デビューのオリギも1ゴール・1アシストと結果を残し、更にはメシアス、ケアー、デ・ケテラーレも実戦復帰。
チームパフォーマンス(特に守備面)は先述の通り控えめだったように見受けられましたが、左記のポジティブな点を考慮すれば総合的に満足のいく試合だったかなと。
ただし懸念材料が2つあります。1つは「怪我による交代が多かったこと」で、デストとブラヒムがそれぞれ体の違和感を覚えて交代を余儀なくされました(オリギも交代前に少し怪しい素振りを見せる)。
不幸中の幸いにも怪我の程度は軽そうだと報じられていますが、ようやく何人かの選手が復帰し始めたこのタイミングで再び離脱者が続出するなんて事態は避けたいところです。
もう1つはデ・ケテラーレのメンタル面です。
チームが4得点を記録したものの、53分から途中出場したデ・ケテラーレは個人として結果を残すことは出来ず。
シュートチャンスをフイにしてしまった93分の場面が象徴的ですが、画面越しでも現在の彼がナーバスになっている様子が伝わってきました。
これまでが少々大人しすぎたようにも感じるだけに、感情を露にするのが悪いことばかりだとも思いません。が、このような焦燥感がパフォーマンスに良い影響を与えているとは到底思えないので、なるべく早く現状を打破できるキッカケ(=結果)を掴んで欲しいと強く願います。
さて。ミランの次戦はミッドウィーク開催のCL、ザグレブ戦です。
グループリーグ突破の可否に大きく関わる大一番であり、自力突破のためには勝つことが求められます。
この試合で得たであろう自信を手に、万全の準備で臨んでもらいたいですね。
Forza Milan!
長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。