【報われたトナーリの献身】ヴェローナ対ミラン【2022-23シーズン・セリエA第10節】

2022-23シーズン・試合ヴェローナ戦
今回はセリエA第10節、エラス・ヴェローナ対ミランのマッチレビューを行いたいと思います。

スタメン

【22-23】ヴェローナ対ミラン_スタメン

ベースフォーメーション:
ヴェローナ「3-4-2-1」、
ミラン「4-2-3-1」


試合のポイント


この試合のポイントは「トランジションの局面」だったかと思います。
ミランのボール保持に対してヴェローナはマンツーマン志向のかなり強い守備で対抗。前線からアグレッシブに選択肢を制限しにかかることで、ミランにロングボールを蹴らせていきます。


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析1
――シーン1:後方でのミランのパス回しと、それに対するヴェローナ。テオの絞る動きに対しても、ファラオーニがマンツーマンで対応

そしてジルーを始めとする、ミランの前線のアタッカーに対してはマニャーニを中心にDF陣がタイトにマークし、そのこぼれ球に対してもヴェローナの選手たちは素早い対応を披露。

一方のミランも守備時には普段のように継続的にプレッシングを仕掛け、ヴェローナのビルドアップを妨害していきます。そのため、アグレッシブにボールを奪い合う激しい展開となりました。

ただし、試合序盤はミランが優勢に試合を進めます。
前半8分、フルスティッチの不用意なバックパスを拾ったミランはカウンターを発動。レオンがエリア内深くに持ち込み得意のエリアからクロスを送ると、ボールは相手に当たってゴールへと吸い込まれていきました。
再開直後の11分。今度はブラヒムが相手のパスをカットして再びカウンターを発動。しかしジルーが決定機を迎えますが外してしまいます

一気に2点を奪えれば相手の戦意を大きく削ぐことができただけに、この決定機を逃したのは痛手でした。この後、ミランはヴェローナから追い上げを食らうことになります。


ミランのミスとヴェローナの反撃


先制後も引き続き、トランジションの局面を活かしてボールを前進させていくミラン。
後方からの持ち上がりの際には主にテオが、前方での仕掛けにおいては主にレオンがそれぞれ持ち味を発揮してチャンス創出を目論みますが、ミランはファイナルサードで不用意なミスを連発します。


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析2
――シーン2:ブラヒムが右サイドから中央方向へとドリブルで持ち込み、レオンにパス。それと同時に後方からテオ(画面外)がオーバーラップ。手薄となっている左サイドを突き、レオンからパスを受けて一気にゴール前へと侵入しようと目論む


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析3
――しかしその後の場面。レオンがパスを受ける直前にファラオーニがカット。一転してヴェローナのカウンターとなった

このようにフィニッシュワークに至る直前で奪われるシーンというのが散見され、ミランとしては良い形を作りながらもそれを決定機に結びつけることが中々できませんでした。

また、このような奪われ方は陣形の間延び、延いては被カウンターのリスクをも増大させる結果に繋がります。
ヴェローナはボール奪取後、前方の2枚(ヘンリー、ヴェルディ)を活かした(ロング)カウンターを志向し、惜しいチャンスを作り出していきました。


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析4
――シーン3:テオがレオンとのワンツーでサイド突破を目論む。それぞれの相手マーカーは既に対応し切れておらず、レオンがテオの前方にスルーパスを送れれば決定機が生み出せるであろう状況。しかしレオンはもたつき、最終的に相手のタメゼにパスを送ってしまう


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析5
――その後の場面。カウンターを始めるヴェローナ。ここで前方のヴェルディが中盤に生じたスペースに下がってパスを引き出す


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析6
――ヴェルディが素早く逆サイドへと展開し、惜しい形を作り出した

更に、この点に関してはジルーの低パフォーマンスも問題でした。
ジルーは制空権を対面のマニャーニに握られ、かつ得意のワンタッチパスによるポストプレーもヴェローナの鋭い反応によってカットされるシーンが散見されます。すると19分、ジルーのフリックパスをカットしたヴェローナがカウンターを発動。ミランを押し込み、最後は後方から上がってきたギュンターに決められ同点に追いつかれてしまった、と。(※実質ガッビアのオウンゴール)

独力での打開力に欠けるジルーですと、正直このような展開では攻撃を停滞させてしまう存在となり得ます。
彼は後半開始と共にベンチに下がりましたが、それは体力的な理由だけでなく戦術的・技術的な事情によるものだったとしても不思議ではありません。

そんなわけでミランは自らのミスと、ヴェローナの攻守に快活なパフォーマンスを前に苦戦を強いられました。前半終了間際にはCKから危険な形を作られるなど、嫌な流れのまま試合を折り返します。


後半の修正


上記の流れを受けて迎えた後半。まずミランはジルーとブラヒムに代えてオリギ、レビッチを投入。
ジルーと比べてオリギにはスピードがあり、ある程度は自らドリブルで仕掛けることもできるという事で、これにより先述の問題点の解消を図ります。


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析7
――シーン4:後半早々、ロングボールのこぼれ球をマニャーニと競り合うオリギ


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析8
――その後の場面。オリギがマニャーニとのぶつかり合いを制してボールを確保。このあと前方のスペースへと持ち運び、クロスを供給した

また、アタッカー色の濃いレビッチを投入してゴール前のターゲットを増やし、積極的に勝ち越し点を狙いにいく意図を明確にすると。


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析9
――シーン5:相手最終ラインの穴を見つけ、テオからスルーパスを呼び込むレビッチ。この後シュートを放ち、相手ゴールを脅かした

そしてこの交代により、カウンターの切れ味が増しました。機動力のある2人の投入で前線の流動性が高まり、スペースを突く攻撃がやり易くなった、と。


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析10
――シーン6:ここではレビッチが中央へと動いて対面のギュンターを釣り出し、それにより生じた右サイド側のスペースへとオリギが動いてスルーパスを引き出す。この後、オリギのドリブルでの仕掛けに対しマニャーニがイエローで止めた

一方、前線に攻撃的な3人を並べたことでリトリート時の後方の負担は比較的高まり、56分にはヴェローナに右サイドを崩されてバー直撃のシュートを撃たれるなど危険なシーンを作られます。

そこで60分、ミランはアドリとクルニッチに代えてポベガとベナセルを投入。陣形を4―3―3に変更しつつ、中盤の強度を高めました。


報われたトナーリの献身


両チーム共に交代枠を使いながらアグレッシブな戦いを継続し、互いに勝ち越し点を狙いにいった後半。均衡を破ったのはミランでした。

81分、カウンターの場面でトナーリが相手PA内へと一気に飛び出し、右サイドのレビッチから供給された絶妙なパスをダイレクトでゴールに流し込みます。

このゴールを生み出したのは、何といってもトナーリの「走力・持久力・献身性」にあるはずです。
この試合でも前半から積極的に高い位置を取り、前線へと飛び出す動きを見せていたトナーリ。その動きが直接的にチャンスへと繋がるシーンこそ少なかったものの、その際に自身を徹底マークしてきたミゲル・ヴェローゾに体力的な負担を大きく与えていたはずです。

そして先述の得点シーン。対面のヴェローゾを振り切ってのゴールは試合を通じてトナーリが行ってきたプレーが報われた瞬間でしたし、連戦中であるにも関わらず攻守に走り回れる彼の運動量には脱帽ですね。


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析11
――シーン8:自陣からのクリアボールをレオンに預け、一気に前線へと駆け上がるトナーリ。


【22-23】ヴェローナ対ミラン_戦術分析12
――その後の場面。ヴェローゾを振り切り前に出たトナーリ。この後レビッチからパスを受け、決勝弾を決めた

さて。重要な勝ち越し点を奪ったミランは、その直後に守備固めとしてティアウを投入。ジュリッチを入れてゴール前での支配力を高めてきたヴェローナに対抗します。

すると後半終了間際、ティアウが2つの危険なシーンに介入し、見事なブロックを披露。初出場でありながらチームを救う活躍を見せてくれました。

このようにして、ミランは2失点目を許すことなく試合終了。


ヴェローナ1-2ミラン


雑感


ユーベ、チェルシーとの2戦を含む4連戦を終えてクタクタのミランに対し、ヴェローナは新監督のボッケッティの下、ホームでの再起を図りモチベーションMAXで挑んできました。

ヴェローナもここまで不調なだけに最後の精度こそ欠きましたが、疲労困憊のミランも不用意なパスミスを連発。そうしてトランジション重視の展開となれば体力面に分があるヴェローナが優勢になるのは自然といえましたね。

しかし、後半にはミランもレビッチ、オリギ等のフレッシュな選手を投入して部分的に改善を果たし、結果としてレビッチのアシストからトナーリの決勝ゴールが生まれた、と。

最後まで全く油断ならない展開でしたが、それだけに貴重な一勝だったと思います。

長丁場のシーズンにおいて、チームパフォーマンスが振るわない試合というのはどうしても生まれてしまいますが…。そんな時でも勝ち切れるかどうかが最終順位に大きく影響を与えるわけで、その観点からミランは王者として然るべき結果を手にできたのではないかなと。

ただしこうした試合内容が続くと結果は不安定なものになり得ますし、次戦に向けて改善は必要でしょう。
幸いにも次節のモンツァ戦は1週間後となり、久々にミッドウィークに試合がありませんから、この期間に今一度コンディションを整えてもらいたいと思います。

Forza Milan!


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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