ミランの組織的プレッシングについて~VSディナモ・ザグレブ~
先日書いたザグレブ戦のマッチレビューにて触れられなかった守備の局面について、今回は言及していこうと思います。

――スタメン(再掲)

――スタメン(再掲)
ザグレブがガッツリと引いて守り、ミランが攻め込むという構図が基本となった試合において、ボール奪取位置が低く前線の人数も少ないザブレグのカウンターはほとんど有効に機能しませんでした。そこで、守備時のミランにとってポイントになったのが相手の「ボール保持の局面」、すなわち組織的プレッシングにより相手のビルドアップを妨害することです。
この試合のザグレブは組み立て時に左サイドを起点にすることが多かったわけですが、同様の傾向はチェルシー戦でも見られたようです。そのため、ミランとしては事前に想定し、準備した通りの形で相手のビルドアップを阻止できたのではないかと思われます。

――参考1:CLにおけるザグレブの攻撃サイドの比率
具体的に見ていきましょう。まずミランはザグレブの3バックに対し、ジルーとレオンが2トップで対応。
この点に関し、今季のミランは前線からのプレッシング時、3バックの相手にはそのまま3トップ(CFと両ウイング)を当てる形を多用していましたが、この試合では2枚で対応していく、と。左CBがボールを持つと同時にジルーがプレッッシングのスイッチを入れ、中央から寄せに行き左サイドへとコースを限定していきます。

――例えばこの場面。ボールを受けた左CBペリッチ(白55)に寄せに行くジルー(黒9)。同時に、左WBリュビチッチ(白14)をサレマ(黒56)がマーク
その後、ザグレブは前線のオルシッチ(もしくは彼とポジションを入れ替えたペトコヴィッチ)がサイドに流れてパスを受けようとする傾向が強かったわけですが、おそらくココがポイントだったのでしょう。その彼の動きはカラブリアが徹底マークし、同サイドに顔を出すCFのペトコヴィッチにはカルルが付く形を基本とすることで、前線のパスコースをチェックしていきました。

――ボールはペリッチからリュビチッチへ。同時にここでは流動的なポジションチェンジから、前線ではペトコヴィッチ(白9)サイドに流れてパスを受けようとし、オルシッチ(白99)が中央へ。それに対しミランはカラブリア(黒2)、カルル(黒20)がそれぞれマンツーマンで対応
普段の形(右ウイングのサレマが相手左CBにプレス、相手左WBには順次カラブリアが前に出て対応)にするとカラブリアの背後のスペースが空きがちとなり、この試合のように当該スペースにCFが流れて起点を作られるようなことも起こり得ますから、ミランとしてはそれを防ぎたかったのかもしれません。何にせよこの形は機能し、後方で相手CFにほとんど自由を許しませんでした。
そして中盤も基本的に数的優位で対応します。同サイドを主戦場とするMF、アデミに対しては主にベナセルがマーク。また、ブラヒムは中央方向へのパスコース・スペースを埋めると同時に、バックパスに対応するポジション取り。トナーリも同様にスペースを圧縮しながら、対面のイヴァンシッツを監視。イヴァンシッツは前線に上がるなどの幅広い動きを見せたため、シンプルにマークを受け渡すなどケースバイケースで対応していきます。

――リュビチッチからアデミ(白5)へのパスコースはブラヒム(黒10)とベナセル(黒4)が管理。一方、前線への飛び出しを窺わせるイヴァンシッツ(白7)はトナーリ(黒8)が味方DF陣と共に監視
このようにして、ザグレブは非常に狭いスペースからのボール出しを余儀なくされました。前線への楔はミランのCB+カラブリアにタイトにマークされ、中央へのコースはミランの3MFが中心となって管理。そこへと安易にボールを出せば囲まれて奪われたり、インターセプトされたりというリスクを負うことになります。
そこで、バックパスによる作り直しも何度か図ったザグレブですが、ミランはその動きにもシームレスに対応していきます。ジルーとレオンの2枚でバックパスの選択肢を制限しつつ、残りの選択肢はバックパスが出ると同時にブラヒムが対応。それに合わせて後方の味方が押し上げ、プレッシングをかけ続けるという形を基本にザグレブを追い詰めていきました。

――前方にパスを出しあぐねたリュビチッチは中央CBのシュタロ(白37)にバックパス。そこでブラヒムが一気にそこへプレスをかけ、それに連動してベナセル、トナーリが中盤の手近な相手選手をマーク。それと同時にレオン(黒17)は相手右CB(白13)のパスコースを潰し、GK(白40)への更なるバックパスも牽制。最終ライン経由のサイドチェンジを妨害する

――その後の場面。シュタロから中盤のミシッチ(白27)へとパスが送られるも、トナーリのマークにより逆サイドへの展開(例えば白7、イヴァンシッツへのパス)は行えず。スペースの狭い同サイドでの攻めを余儀なくされ、ペトコヴィッチにパスを送るも最終的にミランがボールを回収した
こうして、ザグレブはほとんど有効な形でボールを前進することが出来ず。何度かロングボールのこぼれ球やトランジションからボールを前進させ、57分には数少ないチャンスをモノにして1点を返したものの、望み通りの攻撃が展開できなかったことは相手指揮官のカチッチ監督も認めています。
ここ最近ミランは失点こそ続いてしまっているものの、ベースとしては組織的なプレッシングによる堅守を維持できていると思います。後はゴール前に押し込まれた際の集中力、具体的には相手ボールホルダーや周囲の動きに対する反応速度といった部分をもう少し高められると、数少ないチャンスをモノにされることも減り結果的にクリーンシートが増えていくのではないでしょうか。
更なる守備力の向上に期待していきたいですね。
それでは今回はこの辺で。
この試合のザグレブは組み立て時に左サイドを起点にすることが多かったわけですが、同様の傾向はチェルシー戦でも見られたようです。そのため、ミランとしては事前に想定し、準備した通りの形で相手のビルドアップを阻止できたのではないかと思われます。

――参考1:CLにおけるザグレブの攻撃サイドの比率
具体的に見ていきましょう。まずミランはザグレブの3バックに対し、ジルーとレオンが2トップで対応。
この点に関し、今季のミランは前線からのプレッシング時、3バックの相手にはそのまま3トップ(CFと両ウイング)を当てる形を多用していましたが、この試合では2枚で対応していく、と。左CBがボールを持つと同時にジルーがプレッッシングのスイッチを入れ、中央から寄せに行き左サイドへとコースを限定していきます。

――例えばこの場面。ボールを受けた左CBペリッチ(白55)に寄せに行くジルー(黒9)。同時に、左WBリュビチッチ(白14)をサレマ(黒56)がマーク
その後、ザグレブは前線のオルシッチ(もしくは彼とポジションを入れ替えたペトコヴィッチ)がサイドに流れてパスを受けようとする傾向が強かったわけですが、おそらくココがポイントだったのでしょう。その彼の動きはカラブリアが徹底マークし、同サイドに顔を出すCFのペトコヴィッチにはカルルが付く形を基本とすることで、前線のパスコースをチェックしていきました。

――ボールはペリッチからリュビチッチへ。同時にここでは流動的なポジションチェンジから、前線ではペトコヴィッチ(白9)サイドに流れてパスを受けようとし、オルシッチ(白99)が中央へ。それに対しミランはカラブリア(黒2)、カルル(黒20)がそれぞれマンツーマンで対応
普段の形(右ウイングのサレマが相手左CBにプレス、相手左WBには順次カラブリアが前に出て対応)にするとカラブリアの背後のスペースが空きがちとなり、この試合のように当該スペースにCFが流れて起点を作られるようなことも起こり得ますから、ミランとしてはそれを防ぎたかったのかもしれません。何にせよこの形は機能し、後方で相手CFにほとんど自由を許しませんでした。
そして中盤も基本的に数的優位で対応します。同サイドを主戦場とするMF、アデミに対しては主にベナセルがマーク。また、ブラヒムは中央方向へのパスコース・スペースを埋めると同時に、バックパスに対応するポジション取り。トナーリも同様にスペースを圧縮しながら、対面のイヴァンシッツを監視。イヴァンシッツは前線に上がるなどの幅広い動きを見せたため、シンプルにマークを受け渡すなどケースバイケースで対応していきます。

――リュビチッチからアデミ(白5)へのパスコースはブラヒム(黒10)とベナセル(黒4)が管理。一方、前線への飛び出しを窺わせるイヴァンシッツ(白7)はトナーリ(黒8)が味方DF陣と共に監視
このようにして、ザグレブは非常に狭いスペースからのボール出しを余儀なくされました。前線への楔はミランのCB+カラブリアにタイトにマークされ、中央へのコースはミランの3MFが中心となって管理。そこへと安易にボールを出せば囲まれて奪われたり、インターセプトされたりというリスクを負うことになります。
そこで、バックパスによる作り直しも何度か図ったザグレブですが、ミランはその動きにもシームレスに対応していきます。ジルーとレオンの2枚でバックパスの選択肢を制限しつつ、残りの選択肢はバックパスが出ると同時にブラヒムが対応。それに合わせて後方の味方が押し上げ、プレッシングをかけ続けるという形を基本にザグレブを追い詰めていきました。

――前方にパスを出しあぐねたリュビチッチは中央CBのシュタロ(白37)にバックパス。そこでブラヒムが一気にそこへプレスをかけ、それに連動してベナセル、トナーリが中盤の手近な相手選手をマーク。それと同時にレオン(黒17)は相手右CB(白13)のパスコースを潰し、GK(白40)への更なるバックパスも牽制。最終ライン経由のサイドチェンジを妨害する

――その後の場面。シュタロから中盤のミシッチ(白27)へとパスが送られるも、トナーリのマークにより逆サイドへの展開(例えば白7、イヴァンシッツへのパス)は行えず。スペースの狭い同サイドでの攻めを余儀なくされ、ペトコヴィッチにパスを送るも最終的にミランがボールを回収した
こうして、ザグレブはほとんど有効な形でボールを前進することが出来ず。何度かロングボールのこぼれ球やトランジションからボールを前進させ、57分には数少ないチャンスをモノにして1点を返したものの、望み通りの攻撃が展開できなかったことは相手指揮官のカチッチ監督も認めています。
本当はもっと攻撃的にプレーしたかったのだが、ミランがそれを許してくれなかった。彼らはスピードがありコンパクトで、細部にまでクオリティの高さが見られるチームだ――
ここ最近ミランは失点こそ続いてしまっているものの、ベースとしては組織的なプレッシングによる堅守を維持できていると思います。後はゴール前に押し込まれた際の集中力、具体的には相手ボールホルダーや周囲の動きに対する反応速度といった部分をもう少し高められると、数少ないチャンスをモノにされることも減り結果的にクリーンシートが増えていくのではないでしょうか。
更なる守備力の向上に期待していきたいですね。
それでは今回はこの辺で。