【「流れ」を制した王者】ミラン対インテル【2022-23シーズン・セリエA第5節】
今回はセリエA第5節、ミラン対インテルのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、インテル「3-5-2」
今回は久しぶりに、試合の流れをそのままじっくりと振り返っていく形式にしたいと思います。
まずは序盤。優勢に試合を進めたのはどちらかというとインテルだったかと思われます。
開始から5-3-2のミドルブロックを基本にミランの前進を阻みつつ、攻撃面ではミランのハイプレスに対し後方から繋いでいく形を志向。
その攻撃面に関し、インテルは主にコレアへの楔のパスを起点にしていきました。

――シーン1:シュクリニアルから右サイドのダンフリースへ。ここで、バレッラは右サイド方向に走り抜けてトナーリを引き連れていく
ボールをサイドに展開した際、ボールサイドのインサイドハーフが縦に抜ける(もしくは後方に下がるなど、動きを付ける)ことで対面のミランボランチを引き付け、中盤中央にスペースを創出。一方、前線では2トップが縦関係を作り、主にコレアが下がって当該中央のスペースを積極的に使っていきます。

――その後の場面。ダンフリースから中盤に下がってきたコレアにパスが通る
ミランCBもボールを受けたコレアに対応していきますが、2トップの相方であるラウタロが前線に張ることでその動きを牽制。このようにしてコレアを起点にミランのプレスを回避し、ボールを前進させることを目論みます。
そしてミランを自陣に撤退させた後は、インテルの得意パターンの一つとも言える後方からの選手の飛び出しにより、ミランのゴールを脅かしていくと。

――その後の場面。ボールを受けたコレアはバレッラに落とす。それと同時にラウタロは背後のスペースを狙い、ブロゾビッチも後方から走り込む
この点に関し、苦戦を強いられたのがデ・ケテラーレです。自身が主にマークを担当するブロゾビッチは非常にインテリジェンスの高い選手であり、彼の動き(スペースメイクや前線への飛び出し)に翻弄されるシーンというのが終始散見されました。

――シーン2:インテルが左サイド深くでボールを回す間、ブロゾビッチは下がりながらデケテラーレ(CDK)を引き付け、後方のバストーニとポジションを入れ替える

――その後の場面。バストーニがミランの背後のスペースへ飛び出し、パスを要求。デケテラーレはブロゾビッチをマークし続けていたため反応が遅れた

――シーン3:同様に左サイドでボールを回すインテル。ここでデケテラーレが前方のチャルハノールに意識を向けたため、ブロゾビッチが死角から前方に飛び出す

――その後の場面。フリーでパスを引き出すブロゾビッチ。この後バイタルエリアに侵入し、シュートチャンスを演出した
このようにして惜しいシーンを作り出していったインテルは21分。上記の形の合わせ技で先制に成功します。

――シーン4:GKから縦パスを引き出すコレア。そこにはトモリが反応するも、コレアはフリックで背後のラウタロにボールを転がす

――その後の場面。ラウタロのキープから再度コレアにボールが渡り、その間に背後のスペースへ抜け出したブロゾビッチに決定的なスルーパスが通った
さて。一方のミランの攻撃(序盤)はどうか。
インテルが敷く5-3-2のコンパクトなミドルブロックに対し、ミランは主に左サイドからの前進を目論みます。その際、トナーリが序盤からサイドに流れたり前線に飛び出したりといった幅広い動きを見せ、インテル守備陣に揺さぶりをかけていきました。

――シーン5:テオとポジションを入れ替え、サイド方向に流れてボールを受けるトナーリ。ここではデケテラーレに縦パスを供給した
しかしインテルのブロックを崩すには至らず。この点に関し、インテルは同サイドのストロングポイントであるレオンとテオへの対策もしっかりとっていたように思われます。
レオンに対してはサイドのスペースを縮小する形で対応。例えばレオンが少し下がってインテルの中盤ライン横でボールを受けようとした際には、シュクリニアルが最終ラインを飛び出してドリブルのスペースを消すなどの動きを見せました。

――シーン6:ボールを持ったレオンに対応するシュクリニアル
テオに対しては、彼の得意とする中央への切り込みを徹底的に妨害。中盤ライン手前のスペースを2トップがしっかりと埋めることで、テオのドリブルを封じ込めていきます。

――シーン7:ここでボールを持ったテオは中央へとドリブルで切り込む。これにより相手中盤ラインを引き付けられれば、逆サイド側で待つデケテラーレに良い形でボールを供給し得る

――その後の場面。しかし、ここでラウタロがすかさずスライディングでテオを止めた
同じ「5-3-2」でも、2節前のボローニャ戦とは全く異なります。当時は相手アンカーが最終ラインに頻繁に下がり、2トップもミランCBへのマークを優先したことで、中盤にはスペースが空きがちでした。が、今回は上記のようにコンパクトなディフェンスを前に攻めあぐねるシーンが少なくなかった、と
しかしミランは、素早いトランジションによりインテルが守備組織を固める前に攻め切るという形に活路を見出します。
前述の通り、ミランのハイプレスに対してインテルがボールを前進させていくシーンは何度か見られましたが、ミランも負けじと継続的なプレッシングを続行。メリハリの利いたプレスによってインテルの選択肢とスペースを絶えず制限していきます。

――シーン8:前述の形でスペースメイクし、中盤でパスを要求するコレア。しかしここでカラブリアが鋭く寄せ、ダルミアンは前方へのロングパスを選択

――その後の場面。カラブリアがロングボールのこぼれ球を回収した
また、ポジショナルな攻撃においても崩し切るには至りませんが、サイドチェンジなどを駆使してインテルを徐々に押し込むようになります。そしてその後のネガティブトランジションに際してはベナセル、トナーリを始めとする鋭い反応で被カウンターを許さず、相手にストレスをかけ続けていきました。

――シーン9:自陣PA内でクロスボールを回収したデフライは前方のラウタロに縦パス。ロングカウンターを目論むが、そこにトナーリが素早く反応

――その後の場面。トナーリの寄せによりコースを制限し、囲い込んでボールを奪って再度ミランボールとした
すると時間の経過と共にインテル選手のプレー判断や精度が下がっていき、ミランのプレスが猛威を振るうようになります。28分、チャルハノールのパスミスを奪ったトナーリが素早くカウンターを開始し、エリア内でパスを受けたレオンがファーサイドにシュートを流し込み同点弾をゲットしました。

――シーン10:サイドに流れてパスを引き出すチャルハノール。ここで中央のスペースにはコレアの他に、CBデフライが侵入してパスを引き出す

――その後の場面。しかしボールは2人の間を流れ、トナーリがパスをインターセプト。そのまま手薄な相手最終ラインへ一気にドリブルで前進

――その後の場面。トナーリからパスを受けたレオンが冷静にシュートを流し込んだ
これにより完全に流れをモノにしたミランは、引き続きプレスからのボール奪取、そしてカウンターという形からチャンスを量産。前半終盤になってもプレスの勢いは衰えず、集中力を保った守備でインテルの前進を阻み続けました。
この点に関し、データを参照しておきましょう。

――参考1
上図は「先制点を挙げた後(23分)から前半終了までのインテルのボールタッチポジション(※左攻め)」ですが、このようにゴール前でほとんどボールを受けることができていません。シュート数も2本に止まっています。

――参考2
一方、同時間帯のミラン(※右攻め)はインテルよりもゴール前で多くのボールに触り、シュートの嵐を浴びせています。20分ちょっとで計12本のシュートを放ち、内1本はゴールに繋がりました。
続く後半。ミランは54分にジルーが、そして60分にレオンが立て続けにゴールを奪い、一気に3得点目を奪います。
先ほどの同点弾と合わせ、レオンが2ゴール・1アシストと大爆発しました。
この試合のレオンも先述の通り相手に警戒されていたものの、殊にトランジションの局面においては躍動。その要因の一つには、やはり「プレーエリアの限定」があったのではないでしょうか。
今季開幕からここまで、レオンは中央に侵入して裏に抜けたり、ライン間でパスを引き出したりといったプレーの比重が高く、その分サイド(相手守備ブロックの側面)から仕掛けるという得意の形は制限されていたように見受けられました。

――参考3:第3節ボローニャ戦におけるレオンのヒートマップ。

――参考4:第4節サッスオーロ戦におけるレオンのヒートマップ
一方、この試合ではアウトサイドレーンを起点とする動きが多かったため、プレーしやすかったんじゃないかなと。

――参考5:今節におけるレオンのヒートマップ。過去2試合に比べてプレーエリアは左アウトサイド、左側ニアゾーンに集中している

――シーン11:右サイドでボールを回収したミラン。ここで中央に絞っていたレオンは素早く左サイドに開き、パスを引き出す

――その後の場面。対面のシュクリニアルとマッチアップ。このあと彼を躱し、左サイド深くにボールを運んでクロス。チャンスを演出した
何にせよこの試合のレオンはエースと呼ぶに相応しい活躍ぶりでしたし、特に3点目は脱帽でしたね。
さて。このように3点目を獲得し、そのまま勢いに乗って試合をモノにするかに思えたミランでしたが、再び流れが変わります。そのキッカケは「選手交代」です
63分。ミランがデケテラーレに代えてブラヒムを投入した一方、64分にインテルがジェコ、ディマルコ、ムヒタリアンの3枚を一気に投入。
すると67分、ディマルコとムヒタリアンの2人のサポートを受けたダルミアンが左サイドを突破しクロス。そのクロスにジェコが合わせてインテルが1点差に詰め寄ります。
その後、前からの圧力を強めてきたインテルに対しミランは有効な打開策を見出せず、ロングボールを使っていきますが疲労の溜まった前線が収めるには厳しいものがありました。
また、交代直後でフレッシュな存在であったブラヒムはロングボール(やそのこぼれ球)の処理能力が高くなく、しばらくの間ボールにほとんど絡めず(攻撃で活き始めたのは終盤から)。
そうして良くない形でボールを失っていく内に前線のプレスがかからなくなり、インテルに流れを一気に持っていかれそうになります。

――シーン12:前線へのロングボールを敢え無くインテルに回収されたミランは、陣形を整えている間にディマルコをフリーにしてしまう。ここでディマルコは前方の様子を十分に確認してから、左サイド深くに飛び出したジェコに正確なロングパスを送る

――その後の場面。左サイド深くにパスを引き出したジェコ。同時にここでダルミアンがニアゾーンへと侵入し、左サイドのジェコからスルーパスを引き出して決定機を演出した
その後も短時間で多くのピンチを迎えたミランは、72分にサレマとオリギを投入して前線のインテンシティを高めますが、流れを引き戻すには至らず。オリギが何度か散発的にチャンスを作り出すも、シュートは尽く枠外へと飛んでいきました。
そこで84分、ミランはケアーとポベガを投入して逃げ切りの態勢を整えます。守備時に5バックを構成し、かつラインを下げて裏のスペースを消しつつ、バイタルやサイド深い位置へのパスは徹底的にチェックするといった形でゴール前を固めました。

――シーン13:自陣深くに構えるミラン

――その後の場面。サイドから中央へのパスにはタイトにチェック

――その後の場面。バイタル付近で一時的にフリーとなった選手に対し、ここではケアーが素早く最終ラインから飛び出して対応
このような形は結果的に上手くいき、終盤はインテルに攻め込まれるも決定機を作らせることはほとんど無く試合を終えることが出来ました。
ミラン3-2インテル
この試合を観ていてつくづく感じたのが、サッカーの試合における「流れ」という存在です。
ミランは先制点こそ与えてしまったものの、その後に訪れたカウンターの決定機をきっちりとモノにして同点に追いつくと共に一気に勢いづきました。そして、後半最初の15分で2点を追加。「流れの良さ」をそのまま3得点に結びつけることが出来たわけですね。
一方のインテルは、先述の通り交代選手を入れてからの15分間ほどは明らかに優勢であり、その間に多くのチャンスを作り出しました。そのためミランはこの時間帯に更なる失点を喫してもおかしくはなかったと思いますが、実際はカンピオーネであるメニャンのファインセーブ連発により1失点に抑えることが出来ました。インテルとしては「流れ」を完全にはモノにできなかった格好です。
最後まで油断ならない試合ではありましたが、真っ向勝負で勝利をもぎ取ったミランには改めて賛辞を送りたいですね。
さて。次はミッドウィークにCLの初戦が行われます。相手はザルツブルクです。
今回のダービーと同様に極めて重要な試合ですから、是非とも連勝して欲しいと思います。
Forza Milan!
非常に長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、インテル「3-5-2」
今回は久しぶりに、試合の流れをそのままじっくりと振り返っていく形式にしたいと思います。
優勢のインテル
まずは序盤。優勢に試合を進めたのはどちらかというとインテルだったかと思われます。
開始から5-3-2のミドルブロックを基本にミランの前進を阻みつつ、攻撃面ではミランのハイプレスに対し後方から繋いでいく形を志向。
その攻撃面に関し、インテルは主にコレアへの楔のパスを起点にしていきました。

――シーン1:シュクリニアルから右サイドのダンフリースへ。ここで、バレッラは右サイド方向に走り抜けてトナーリを引き連れていく
ボールをサイドに展開した際、ボールサイドのインサイドハーフが縦に抜ける(もしくは後方に下がるなど、動きを付ける)ことで対面のミランボランチを引き付け、中盤中央にスペースを創出。一方、前線では2トップが縦関係を作り、主にコレアが下がって当該中央のスペースを積極的に使っていきます。

――その後の場面。ダンフリースから中盤に下がってきたコレアにパスが通る
ミランCBもボールを受けたコレアに対応していきますが、2トップの相方であるラウタロが前線に張ることでその動きを牽制。このようにしてコレアを起点にミランのプレスを回避し、ボールを前進させることを目論みます。
そしてミランを自陣に撤退させた後は、インテルの得意パターンの一つとも言える後方からの選手の飛び出しにより、ミランのゴールを脅かしていくと。

――その後の場面。ボールを受けたコレアはバレッラに落とす。それと同時にラウタロは背後のスペースを狙い、ブロゾビッチも後方から走り込む
この点に関し、苦戦を強いられたのがデ・ケテラーレです。自身が主にマークを担当するブロゾビッチは非常にインテリジェンスの高い選手であり、彼の動き(スペースメイクや前線への飛び出し)に翻弄されるシーンというのが終始散見されました。

――シーン2:インテルが左サイド深くでボールを回す間、ブロゾビッチは下がりながらデケテラーレ(CDK)を引き付け、後方のバストーニとポジションを入れ替える

――その後の場面。バストーニがミランの背後のスペースへ飛び出し、パスを要求。デケテラーレはブロゾビッチをマークし続けていたため反応が遅れた

――シーン3:同様に左サイドでボールを回すインテル。ここでデケテラーレが前方のチャルハノールに意識を向けたため、ブロゾビッチが死角から前方に飛び出す

――その後の場面。フリーでパスを引き出すブロゾビッチ。この後バイタルエリアに侵入し、シュートチャンスを演出した
このようにして惜しいシーンを作り出していったインテルは21分。上記の形の合わせ技で先制に成功します。

――シーン4:GKから縦パスを引き出すコレア。そこにはトモリが反応するも、コレアはフリックで背後のラウタロにボールを転がす

――その後の場面。ラウタロのキープから再度コレアにボールが渡り、その間に背後のスペースへ抜け出したブロゾビッチに決定的なスルーパスが通った
ミランの苦戦
さて。一方のミランの攻撃(序盤)はどうか。
インテルが敷く5-3-2のコンパクトなミドルブロックに対し、ミランは主に左サイドからの前進を目論みます。その際、トナーリが序盤からサイドに流れたり前線に飛び出したりといった幅広い動きを見せ、インテル守備陣に揺さぶりをかけていきました。

――シーン5:テオとポジションを入れ替え、サイド方向に流れてボールを受けるトナーリ。ここではデケテラーレに縦パスを供給した
しかしインテルのブロックを崩すには至らず。この点に関し、インテルは同サイドのストロングポイントであるレオンとテオへの対策もしっかりとっていたように思われます。
レオンに対してはサイドのスペースを縮小する形で対応。例えばレオンが少し下がってインテルの中盤ライン横でボールを受けようとした際には、シュクリニアルが最終ラインを飛び出してドリブルのスペースを消すなどの動きを見せました。

――シーン6:ボールを持ったレオンに対応するシュクリニアル
テオに対しては、彼の得意とする中央への切り込みを徹底的に妨害。中盤ライン手前のスペースを2トップがしっかりと埋めることで、テオのドリブルを封じ込めていきます。

――シーン7:ここでボールを持ったテオは中央へとドリブルで切り込む。これにより相手中盤ラインを引き付けられれば、逆サイド側で待つデケテラーレに良い形でボールを供給し得る

――その後の場面。しかし、ここでラウタロがすかさずスライディングでテオを止めた
同じ「5-3-2」でも、2節前のボローニャ戦とは全く異なります。当時は相手アンカーが最終ラインに頻繁に下がり、2トップもミランCBへのマークを優先したことで、中盤にはスペースが空きがちでした。が、今回は上記のようにコンパクトなディフェンスを前に攻めあぐねるシーンが少なくなかった、と
反撃のミラン
しかしミランは、素早いトランジションによりインテルが守備組織を固める前に攻め切るという形に活路を見出します。
前述の通り、ミランのハイプレスに対してインテルがボールを前進させていくシーンは何度か見られましたが、ミランも負けじと継続的なプレッシングを続行。メリハリの利いたプレスによってインテルの選択肢とスペースを絶えず制限していきます。

――シーン8:前述の形でスペースメイクし、中盤でパスを要求するコレア。しかしここでカラブリアが鋭く寄せ、ダルミアンは前方へのロングパスを選択

――その後の場面。カラブリアがロングボールのこぼれ球を回収した
また、ポジショナルな攻撃においても崩し切るには至りませんが、サイドチェンジなどを駆使してインテルを徐々に押し込むようになります。そしてその後のネガティブトランジションに際してはベナセル、トナーリを始めとする鋭い反応で被カウンターを許さず、相手にストレスをかけ続けていきました。

――シーン9:自陣PA内でクロスボールを回収したデフライは前方のラウタロに縦パス。ロングカウンターを目論むが、そこにトナーリが素早く反応

――その後の場面。トナーリの寄せによりコースを制限し、囲い込んでボールを奪って再度ミランボールとした
すると時間の経過と共にインテル選手のプレー判断や精度が下がっていき、ミランのプレスが猛威を振るうようになります。28分、チャルハノールのパスミスを奪ったトナーリが素早くカウンターを開始し、エリア内でパスを受けたレオンがファーサイドにシュートを流し込み同点弾をゲットしました。

――シーン10:サイドに流れてパスを引き出すチャルハノール。ここで中央のスペースにはコレアの他に、CBデフライが侵入してパスを引き出す

――その後の場面。しかしボールは2人の間を流れ、トナーリがパスをインターセプト。そのまま手薄な相手最終ラインへ一気にドリブルで前進

――その後の場面。トナーリからパスを受けたレオンが冷静にシュートを流し込んだ
これにより完全に流れをモノにしたミランは、引き続きプレスからのボール奪取、そしてカウンターという形からチャンスを量産。前半終盤になってもプレスの勢いは衰えず、集中力を保った守備でインテルの前進を阻み続けました。
この点に関し、データを参照しておきましょう。

――参考1
上図は「先制点を挙げた後(23分)から前半終了までのインテルのボールタッチポジション(※左攻め)」ですが、このようにゴール前でほとんどボールを受けることができていません。シュート数も2本に止まっています。

――参考2
一方、同時間帯のミラン(※右攻め)はインテルよりもゴール前で多くのボールに触り、シュートの嵐を浴びせています。20分ちょっとで計12本のシュートを放ち、内1本はゴールに繋がりました。
レオンの躍動
続く後半。ミランは54分にジルーが、そして60分にレオンが立て続けにゴールを奪い、一気に3得点目を奪います。
先ほどの同点弾と合わせ、レオンが2ゴール・1アシストと大爆発しました。
この試合のレオンも先述の通り相手に警戒されていたものの、殊にトランジションの局面においては躍動。その要因の一つには、やはり「プレーエリアの限定」があったのではないでしょうか。
今季開幕からここまで、レオンは中央に侵入して裏に抜けたり、ライン間でパスを引き出したりといったプレーの比重が高く、その分サイド(相手守備ブロックの側面)から仕掛けるという得意の形は制限されていたように見受けられました。

――参考3:第3節ボローニャ戦におけるレオンのヒートマップ。

――参考4:第4節サッスオーロ戦におけるレオンのヒートマップ
一方、この試合ではアウトサイドレーンを起点とする動きが多かったため、プレーしやすかったんじゃないかなと。

――参考5:今節におけるレオンのヒートマップ。過去2試合に比べてプレーエリアは左アウトサイド、左側ニアゾーンに集中している

――シーン11:右サイドでボールを回収したミラン。ここで中央に絞っていたレオンは素早く左サイドに開き、パスを引き出す

――その後の場面。対面のシュクリニアルとマッチアップ。このあと彼を躱し、左サイド深くにボールを運んでクロス。チャンスを演出した
何にせよこの試合のレオンはエースと呼ぶに相応しい活躍ぶりでしたし、特に3点目は脱帽でしたね。
後半中盤・終盤の攻防
さて。このように3点目を獲得し、そのまま勢いに乗って試合をモノにするかに思えたミランでしたが、再び流れが変わります。そのキッカケは「選手交代」です
63分。ミランがデケテラーレに代えてブラヒムを投入した一方、64分にインテルがジェコ、ディマルコ、ムヒタリアンの3枚を一気に投入。
すると67分、ディマルコとムヒタリアンの2人のサポートを受けたダルミアンが左サイドを突破しクロス。そのクロスにジェコが合わせてインテルが1点差に詰め寄ります。
その後、前からの圧力を強めてきたインテルに対しミランは有効な打開策を見出せず、ロングボールを使っていきますが疲労の溜まった前線が収めるには厳しいものがありました。
また、交代直後でフレッシュな存在であったブラヒムはロングボール(やそのこぼれ球)の処理能力が高くなく、しばらくの間ボールにほとんど絡めず(攻撃で活き始めたのは終盤から)。
そうして良くない形でボールを失っていく内に前線のプレスがかからなくなり、インテルに流れを一気に持っていかれそうになります。

――シーン12:前線へのロングボールを敢え無くインテルに回収されたミランは、陣形を整えている間にディマルコをフリーにしてしまう。ここでディマルコは前方の様子を十分に確認してから、左サイド深くに飛び出したジェコに正確なロングパスを送る

――その後の場面。左サイド深くにパスを引き出したジェコ。同時にここでダルミアンがニアゾーンへと侵入し、左サイドのジェコからスルーパスを引き出して決定機を演出した
その後も短時間で多くのピンチを迎えたミランは、72分にサレマとオリギを投入して前線のインテンシティを高めますが、流れを引き戻すには至らず。オリギが何度か散発的にチャンスを作り出すも、シュートは尽く枠外へと飛んでいきました。
そこで84分、ミランはケアーとポベガを投入して逃げ切りの態勢を整えます。守備時に5バックを構成し、かつラインを下げて裏のスペースを消しつつ、バイタルやサイド深い位置へのパスは徹底的にチェックするといった形でゴール前を固めました。

――シーン13:自陣深くに構えるミラン

――その後の場面。サイドから中央へのパスにはタイトにチェック

――その後の場面。バイタル付近で一時的にフリーとなった選手に対し、ここではケアーが素早く最終ラインから飛び出して対応
このような形は結果的に上手くいき、終盤はインテルに攻め込まれるも決定機を作らせることはほとんど無く試合を終えることが出来ました。
ミラン3-2インテル
雑感
この試合を観ていてつくづく感じたのが、サッカーの試合における「流れ」という存在です。
ミランは先制点こそ与えてしまったものの、その後に訪れたカウンターの決定機をきっちりとモノにして同点に追いつくと共に一気に勢いづきました。そして、後半最初の15分で2点を追加。「流れの良さ」をそのまま3得点に結びつけることが出来たわけですね。
一方のインテルは、先述の通り交代選手を入れてからの15分間ほどは明らかに優勢であり、その間に多くのチャンスを作り出しました。そのためミランはこの時間帯に更なる失点を喫してもおかしくはなかったと思いますが、実際はカンピオーネであるメニャンのファインセーブ連発により1失点に抑えることが出来ました。インテルとしては「流れ」を完全にはモノにできなかった格好です。
最後まで油断ならない試合ではありましたが、真っ向勝負で勝利をもぎ取ったミランには改めて賛辞を送りたいですね。
さて。次はミッドウィークにCLの初戦が行われます。相手はザルツブルクです。
今回のダービーと同様に極めて重要な試合ですから、是非とも連勝して欲しいと思います。
Forza Milan!
非常に長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。