ミラン、セルジーニョ・デストを獲得!~プレースタイルや期待される役割について~
Sergiño Dest is flying to Milano right now, he’ll be in Italy in one hour with his agent — medical tests and then contract signing around 4pm as new AC Milan player. 🚨🔴⚫️ #ACMilan
— Fabrizio Romano (@FabrizioRomano) September 1, 2022
▫️ Loan with €20m buy option;
▫️ One year deal plus potential 2027.
100% done. #DeadlineDay pic.twitter.com/xJmsIlJapS
前日まで獲得候補として(おそらく)一切主要ソースから名前の出ていなかった選手であり、今回の「第一報」から「獲得が決定的とされる」までの期間の短さは近年のミランからすれば異例と呼べるものでした。
今回はそんなデストについてです。
電撃加入の背景
こうしたデストのスピード獲得の背景に、「フロレンツィの怪我」があるのは明白です。
フロレンツィは先日のサッスオーロ戦終盤に負傷退場し、ピオリ監督がこの件について試合後に「かなり深刻」と認めた事で長期離脱が濃厚に。そして『Sky』によると、その離脱期間は「短くとも2カ月」とされており、W杯が挟まるこの変則シーズンにおいてこれからの年内公式戦を全休することが有力視されています。
そこで、彼に代わる存在としてデストの獲得が決まったと。
以下のソースによると移籍形式は「買取OP付きのレンタル」であり、買取額は2000万ユーロ。そして現在彼の受け取っている年俸380万ユーロをミランが全額負担するらしいです。
🚨 L’option d’achat pour Dest est de 20M. Son salaire sera entièrement pris en charge par le club et sera de 3,8M net par an.
— AC Milan - FR 🏆 (@AC_MilanFR) August 31, 2022
Probable fin du salary cap avec RedBird ?
[@gerardromero] pic.twitter.com/nwmUoHx6sW
380万ユーロというのはミランにおいてはチームトップクラスの年俸であり、年俸バランスの観点から正直この額については疑問符が付きます。おそらく残りの交渉期間があまりに少なく、お得意の時間をかけた値切り交渉を行えなかった事が影響したのでしょうが…。
さて。前置きが非常に長くなりましたが、ここからはそんなデストの来歴やプレースタイル等について見ていきましょう。
来歴・ポジション
デストは21歳のアメリカ代表選手です。本職はSB。
育成に長けた名門アヤックスから台頭し、そこでの活躍が認められて2シーズン前にバルセロナに移籍しました。
そして過去2シーズン、バルセロナでは公式戦72試合に出場。またスタメンとして56試合に出場するなど、当初は順調に出場機会を積み重ねていたようです。
しかし昨季後半戦は継続的な負傷離脱に苦しんだこともあり、出場機会が激減。すると今シーズンはチームの構想外となり、移籍先を探していたところにミランが急接近して手早く取引をまとめたという流れですね。
続いて出場ポジションについてですが、過去2シーズンのデストは右SBを主戦場しつつも様々なポジションでプレーしていたようです。

――参考1:2020-21シーズン、デストの主な起用ポジション
『transfermarkt』によると、バルサでの初シーズンは右SBの次にRM(WB)としても15試合に出場。また、左SBでも7試合に出場するなどユーティリティー性を披露しています。

――参考2:2021-22シーズン、デストの主な起用ポジション
また昨シーズンも同じく右SBをメインポジションとしながら、状況に応じて様々なポジションでプレーしていたことが窺えます。攻撃性能を評価され、ウインガーとしても起用されていたようです。
プレースタイル・特徴
続いてはデストのプレースタイルや特徴について、データも参照しつつ軽く見ていきましょう、
まず大まかな特徴として、デストは「攻撃的なタイプ」だと言うことが出来ます。チームスタイルの影響もあって多くのボールに触っており、また「エリア別のタッチ数」を見ても後方ではなく敵陣深くで積極的にボールを受けていることが分かります。

――参考3:2021-22シーズンにおけるデストのボールタッチに関するスタッツ、及び同リーグのSBを対象としたパーセンタイル
この数値はウインガーとして何試合か起用されていたことも影響しているでしょうが、いずれにせよこうしたプレー傾向はミランでの役割を考える上で重要な情報だと感じますね。
また、デストは上記に関連してドリブルやボール運びのスタッツでも高い数値を記録。アジリティ、テクニック、スピードに長けており、単純に前方のスペースに持ち出すだけでなく、時に中央方向にボールを動かすなどして相手を躱し、突破を図るといったテクニカルな動きが出来るのは良さそうですね、

――参考4:ドリブルに関するスタッツ

――参考5:ボール運びに関するスタッツ
こうしたプレースタイルを見るに、フロレンツィの代役でありながら彼とは持ち味が大きく異なるタイプであるといえそうです。
一方、守備面については関連スタッツを見るに、タックル数・インターセプト数といった技術的な項目はリーグ内SBとの比較で「平均~やや低め」です。また、より肝心といえる判断面(ライン取り・サイド対応・自陣ゴール前の対応etc…)についても個人的には現時点で断定しかねますが、調べる限りだとそこまで良い評判は見られません。ある意味「典型的な攻撃型SB」と評することが出来そうですね。
ただし、プレッシングに関する項目は比較的高めです。おそらくチームスタイルも関係しているのでしょうが、彼のアグレッシブな部分を上手く組織的プレッシングの中で活かせれば、ミランのスタイルとの親和性という点で期待できそうですね。
ミランで期待される役割
最後に、ミランにおけるデストの位置付けを考えていきましょう。
この点、獲得の趣旨からして第一に右SBとしての起用を想定されているのは間違いないはずです。そこでまずは現レギュラーであるカラブリアの控えとして、途中出場やターンオーバー要員になることが出来れば及第点でしょう。
また、デストを起用する場合にカラブリア(やフロレンツィ)と異なる役割を託せそうな可能性は注目すべき点かもしれません。
先述の通り攻撃性能の高さを感じさせるデストには、サイドの幅を上下に広く担当させ、その打開力やスピードを存分に活かしてもらう等といったより攻撃的な役割を任せる可能性が考えられます。その点で、必ずしもSBで起用する必要は無く、現システムにおいては右ウイングですとか、もしくはシステムを変更して右WBで起用するなんてことも可能ではないでしょうか。
そして、もしこのようにしてデストのポテンシャルを上手く引き出せた場合、フロレンツィ復帰後もデストを持て余す心配はありません。右ウイングとしてメシアス、サレマの序列に割って入ることや、ともすればテオの欠場時に左SBで使う選択肢もあり得ますしね。
もちろん、以上のことはデストがミランのチーム戦術(主に守備面)にしっかりと適応し、チームの一員として機能することが前提となります。ましてSB起用の場合は一定水準の守備的機能を果たすことは必須ですから、ますはそのハードルをクリアすることが彼には求められますね。
さて。最初に述べた通り、やはり年俸バランスの観点からするとお高い印象は拭えません。ただ、21歳という年齢もとい今後の伸びしろを考えると戦力的には非常に面白い補強だなぁとも感じます。
これからの過密日程において彼の出番はすぐ訪れるでしょう。それまでに出来る限りの準備を整えてもらい、願わくは早々に活躍して欲しいですね。
それでは今回はこの辺で。