【求められるターンオーバーの質向上】サッスオーロ対ミラン【2022-23シーズン・セリエA第4節】
スタメン

基本システム:サッスオーロ「4-3-3」、ミラン「4-2-3-1」
ゴール期待値
この試合のスコアは0-0。
ミランは全体として拙攻が続き、決定機を作り出すことに終始苦労していた印象です。

上図はこの試合における両者のゴール期待値(xG)ですが、ミランのxGは「0.91」と1を下回っており、同ソースによると今季最低の数値となっています(参考:ウディネーゼ戦xGは「2.68」、アタランタ戦xGは「1.54」、ボローニャ戦xGは「2.84」)
一方、サッスオーロのxGは「1.06」。ミランを上回ってはいるものの、これはxGの極めて高いPK(0.76)を含んだ数値であるため、それを除けばほとんど惜しいシュートチャンスを作れなかったと解釈できます。
実際に試合を観た上での個人的印象としても、「ミランが点を取れそうな感じはしなかったし、サッスオーロに(PKシーンを除き)点を取られる感じ時もしなかった」という事で、ミランとしては安定した守備に比して攻撃面がどうにも機能しなかったなぁと。
そんなわけで今回は、攻撃面に焦点を絞って振り返っていきたいと思います。
拙攻の原因
ボール保持時におけるミランの(前半の)基本陣形は「3-1-4-2」。3バックをトモリ、ケアー、フロレンツィで構成し、その手前のアンカーポジションにはベナセル。サイドの幅をテオとサレマが取り、ハーフスペースをブラヒムとポベガが埋め、2トップにジルー、レオンという構成が基本だったかと思います。

――この試合前半におけるミランの攻撃時の平均ポジション
一方、サッスオーロは「4-3-3」によるプレッシングと両ウイングが下がってスペースを埋める「4-5-1」の併用が基本。プレス時には中盤中央のロペスが一列上がってベナセルをマークし、後方からのビルドアップを阻止する狙いを見せます。

――ミランの後方vsサッスオーロの前線
これに対し、ミランは有効な打開策を見出せなかった印象です。
おそらくミランの狙いとしてはGK+3バック+ベナセルを中心にボールを回しながら相手の3トップ+中盤の最低1枚を手前に引きつけ、空いたライン間のスペースにいるブラヒムやポベガに差し込む形を一つ想定していたと思うのですが、彼らへのパスコースは両インサイドハーフの2人がしっかりと監視。加えてロペスがベナセルのマークに付くことで生じ得る中盤のスペースは、最終ラインがコンパクトな陣形を保ちスペースを圧縮することで対応していきます。

――ボールホルダーのフロレンツィにプレッシャーを強めるサッスオーロ。ブラヒムとポベガへのパスコースは両インサイドハーフが監視し、下がってきたジルーにはフェラーリが対応。この後、フロレンツィは前線へロングボールを選択
中盤に中々スペースを見出せないミランは積極的に前線(裏のスペース)へのロングパスを多用していきますが…。前線が良い形でボールを受けられるシーンは少なく、リズムを作り出せません。
この点に関し、ピオリ監督も試合後に言及していましたが、とかくこの試合のミランは縦に攻め急ぎ過ぎていた印象が強いです。
背後のスペースを攻撃しようとする場面が多すぎた。勝ちたいという気持ちが強すぎて、そのことが明瞭さを失わせてしまったのだろう。相手の出方や状況を窺い、それにより許されるプレーが何かを読み取る必要がある

――例えばこの場面。テオが内に絞り、ポベガと2人でフラッテージに対し数的優位を作ることにより中盤でフリーとなる。しかし、ここでもベナセルは前線へのロングボールを選択

――ボールは味方に通ることなく、そのまま敢え無く相手GKに回収された
徐々にサッスオーロがコンパクトさを維持しつつもラインを後退させていく中で、ミランは引き続きそのライン間やサイドのスペースを有効に使えずに攻めあぐねる展開が続きました。ゴール前にボールを運んでも、ブラヒムやサレマのプレー精度・判断の悪さでは中々決定的なシュートチャンスを作るには至らず。レオンも終始ピッチ上で迷子となり、ポジション取りの悪さを露呈します。
後半も時間が経つにつれてチームパフォーマンスは悪化の一途を辿り、最後は放り込みのような形でゴールをこじ開けようとしますが、奮闘虚しくネットを揺らすことなく終わりました。
雑感
前節から5人の選手を入れ替えて臨んだミランでしたが、結果としてこのターンオーバーは上手くいきませんでした。
上記の拙攻に加え、後半終盤にはフロレンツィが負傷退場するなど散々な結果に。
ただし、ケアーが復帰明けにしては安定したプレーを見せられていたのは数少ないポジティブ要素かもしれません。いくつか気になる点はあったものの、凡そ8カ月ぶりとなる公式戦を致命的なミスなく終えられたというのは本人にとってもチームにとっても今後に向けた好材料といえますね。
ポベガもまた、持ち味の縦のダイナミズムを活かしたチャンスメイクを序盤に披露するなど部分的には見せ場を作りました。ただレオンのような味方を活かす意識の低い選手と縦関係を構築するのではなく、レビッチやアドリのような選手と組ませると真価を発揮できるのではないかと思います。
レビッチが負傷さえしていなければレオンの代わりに先発し、ポベガと近い距離を保ってプレーしていたはずですから、返す返すも残念です。
さて。今回のターンオーバーがあまり上手くいかなかったのは事実ですが、それでも今シーズンの過密日程を乗り切るにためには今後もこうしたターンオーバーは必須となります。
引き分けという結果自体は及第点とも言えますが、今回はメニャンのPKストップに救われた部分も非常に大きく、内容的にはとてもじゃないですが褒められたものではありません。
主力選手不在の際にしっかりと勝ち点を積めるかどうかはシーズン成績に直結する重要な問題ですから、これからはターンオーバーをした際にも安定したパフォーマンスを見せられる組織作りが求められますね。
メンバーを考えるとかなり難しいミッションだと思いますが、ピオリ監督の手腕に期待したいです。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。