ベナセルの躍動と懸念
美しいゴールで締めくくられたベナセルの圧倒的なパフォーマンスは、クオリティとワークレート両方の観点から、彼のオールラウンドなプレーを完璧に表現していた――GdS
好調ベナセルの素晴らしいパフォーマンス
この試合でベナセルはハーフウェイライン付近を主戦場にして多くのボールに触り、積極的にチームのビルドアップに関与。また、時には前線に飛び出すことでアタランタ守備陣に揺さぶりをかけるなど、幅広い動きを見せました。
特に後半はピッチ中央での支配力を高めて左右にボールを散らし、相手を押し込んだ際にはファイナルサードに侵入してチャンスメイク。右ハーフスペースからのクロスで何度も惜しい形を作りつつ、自らもシュートを撃つなどしてゴールを強襲すると、68分には見事なカットインシュートをネットに突き刺し貴重な同点弾を挙げました。
他方、守備に関しても出足の鋭さを活かしたインターセプトやボール回収で何度となく相手の円滑な攻撃を阻止。このように攻守においてチームに多大な貢献を果たしてくれました。
データを見ても、この試合の彼が様々なスタッツでトップの数値を記録していることが分かります。
以下はこの試合におけるベナセルが1位を記録したスタッツ、及び2位との比較です(※『fbref』より。カッコ内がチーム2位の選手の記録)
ボールタッチ:98回(81回)
ドリブル成功数:6回(3回)
前進パス数:12回(7回)
ファイナルサードへのパス数:8回(5回)
キーパス数:8回(2回)
インターセプト数:7回(2回)
ボールリカバリー数:11回(10回)
この中でもキーパス数(※味方のシュートに繋がったパスの数)とインターセプト数は突出しており、積極的かつ俊敏に広範囲を動けていることが分かります。フィジカル・メンタル両面のコンディションの良さが窺えますね。
2つの懸念
こうしたベナセルの好調ぶりを非常に喜ばしく思う反面、やはりそれでも拭えない不安はあります。
まずはベナセル個人との「契約問題」です。
以前に以下の記事で取り上げた通り、ベナセルとミランの契約は2024年6月までとなっているものの、現在行われている契約延長交渉はやや停滞している模様です。新契約に伴う年俸の上昇額はいくらか、及び現在の契約の内容に含まれた「バイアウト条項」を新契約ではどうするかといった点で早急に合意を見出すことが求められますが、いずれも一筋縄ではいかなさそうな印象を受けますね。
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また、ベナセルの調子がどれほど良くても「選手層の問題」は解決されません。
トナーリ、ベナセルというレギュラーコンビは頼もしい一方、彼らに続く控えメンバーが現時点で明確になっていない点は非常に気がかりです。。
この点、新加入のポベガは元々フィットに時間がかかりそうな印象であったにも関わらず、プレシーズン中の負傷により満足なチーム練習が行えなかったため、十分な適応にはこれから相当時間が必要とされるリスクがあります。また、同じく新加入のアドリもベストポジションの見極めに時間がかかっているようで、ボランチ起用の可能性は今のところ不透明です。
そこに追い打ちをかけるかのように、昨季から頼れるバックアッパーとしてボランチ計算もされていたクルニッチがここにきて約1カ月の戦線離脱。したがって現状、トナーリかベナセルのどちらか一方でも離脱したら相当不味いことになり得ますね。
確かに今から補強したとして、その選手がすぐさまフィットするかというと怪しいところではあります。しかし少なくとも起用可能な選手を増やせれば、レギュラーコンビを試合途中からでも休ませるといった選択を採り易くなりますから、補強候補が定まったなら可能な限り早く確保に動いて欲しいと思います。
(現在のミランの中盤にはサイズとフィジカル的特徴を持った選手が足りないのではないか?)多分そうだね。ミッドフィルダーが足りない。もし獲得のチャンスがあるなら獲りにいくべきだろう――アンブロジーニ
この点に関し、数日前までミランはミッティランに所属するオニェディカの名前がかなりホットでしたが、ミッティランの要求額が高いため獲得を断念した可能性があるとか。そこで、代替候補としては引き続きジャン・オナナの名前が挙がっている他、最近だとヴォルフスブルクに所属するヴランクスの名前も浮上してきています。
いくらベナセルの調子が良くとも、だからといって彼を酷使して負傷リスクを高めることは絶対に避けなければなりません。ましてクルニッチの負傷により中盤補強の必要性はかなり高まっていますから、何とか早く適役者の獲得を決めてもらいたいですね。
それでは今回はこの辺で。