ミランの開幕戦スタメンとイタリア人選手の激減について

2022-23シーズンのセリエA開幕戦が終了しました。
試合結果に関しては昨季の上位クラブが軒並み勝利するという特に驚きのないものでしたが、その一方で開幕戦のとあるデータが注目を集めています。

セリエAの開幕戦に先発出場した220選手の内、イタリア人選手はわずか68人31%)となった。ミラン対ウディネーゼに至っては各チームにイタリア人選手が1人ずつとなり、ミランはカラブリア、ウディネーゼはシルヴェストリのみである。一方、最も多くのイタリア人選手を先発でピッチに送り出したのはモンツァの8人だった――milannews

今夏のメルカートでは若手イタリア人選手の国外流出が少し話題となりましたが、それも影響してかリーグ開幕戦に先発したイタリア人選手が少なかったとのことです
開幕戦以降も同様の傾向が続くようですと、強く問題視されるようになるかもしれませんね。


これまでの開幕スタメン


さて。ミランも今季の開幕戦で先発したイタリア人がカラブリア1人のみという事ですが、これまでの開幕スタメンはどうだったのかというのは気になるところです。

そこで、今季を含む10年分のミランのリーグ開幕戦スタメンを調べてみました。先発したイタリア人選手の人数および名前は以下の通りです。

2022年:1人(カラブリア)

2021年:2人(カラブリア、トナーリ)

2020年:3人(ドンナルンマ、カラブリア、ガッビア)

2019年:4人(ドンナルンマ、カラブリア、ロマニョーリ、ボリーニ)

2018年:5人(ドンナルンマ、カラブリア、ロマニョーリ、ボナベントゥーラ、ボリーニ)

2017年:6人(ドンナルンマ、コンティ、ボヌッチ、ロカテッリ、ボリーニ、クトローネ)

2016年:7人(ドンナルンマ、アバーテ、パレッタ、ロマニョーリ、アントネッリ、モントリーボ、ボナベントゥーラ)

2015年:5人(デ・シリオ、ロマニョーリ、アントネッリ、ボナベントゥーラ、ベルトラッチ)

2014年:4人(アバーテ、ボネーラ、ポーリ、エルシャーラウィ)

2013年:7人(アッビアーティ、アバーテ、モントリーボ、ノチェリーノ、ポーリ、エルシャーラウィ、バロテッリ)



こうして振り返ると、興味深いことにリーグ開幕戦に先発したイタリア人選手が2016年の「7人」をピークに毎年1人ずつ減っていることが分かります。
もちろん、今季に関していえばトナーリが開幕前のアクシデントにより欠場を余儀なくされており、それが無ければ十中八九先発していたと考えると昨年と同じ「2人」でありますが、何にせよミランにおけるイタリア人選手の支配力が落ちてきていることは確かです。

こうした傾向を悲観的に捉えることもできますが、殊に戦力的な観点から見れば決して悪い話でもありません。
イタリア人選手が多く先発していた2013~2018年頃と近年のスタメンを比較した時、どちらの方が強いチームか訊かれればほとんどの方は後者と回答すると思います。また、当時のイタリア人選手が今のミランにいたと仮定しても、同じように開幕スタメン出場できる数はかなり限られているのではないでしょうか。

もちろん、主力にイタリア人選手が多いことで様々なメリットを得られることは事実で、例えば「ファン(特に自国サポーター)へのアピール」といった商業的な側面や「選手登録枠の問題に悩まされにくくなる」といったルール上の利点は見逃せません。特に今のミランは後者に関して十分な対応がとられているとは言えず、登録できる選手が少なくなれば戦力的にも影響を及ぼします。
ですので、やはり主力級のイタリア人選手がいるのに越したことはないですね。


今後の対応案


この点、今のミランはリーグアン(フランス)を始めとする国外から有望な選手を獲るという明確な基本方針の下で補強を行っており、これにより成長令(特定の条件を満たす国外から来た選手が、減税対象となる制度)を積極的に活用。その結果チームの戦力強化と同時に財政面の改善にも成功しています。
このようにして上手くいっている現在の基本方針を崩すことは考えられず、それゆえ国内から高年俸のビッグネーム(イタリア人)を獲得する可能性というのは現状ですと低いままでしょう。

そうなると現時点では、「育成」という手段を用いてイタリア人選手をチームの主力メンバーに組み込むというのが最も現実的ではないかなと思います。
比較的無名ながらポテンシャルのある若手イタリア人選手を確保し、自クラブ(もしくはレンタル先)で成長させる、もしくはプリマヴェーラで育ててからトップチームに引きあげてチームの主力にするといった2パターンが考えられますが、いずれも今のミランであれば十分にあり得る話です。

今シーズンにしても、ミランプリマ出身のポベガが過去3~4シーズンで様々なクラブをレンタルで渡り歩いて成長し、今夏ミランに復帰しました。今季の彼にはミランで更なる成長を遂げて立場を確立し、カラブリア、トナーリに次ぐ主力級のイタリア人選手となることが期待されます。

来季のミランの開幕戦スタメンにイタリア人は何人いるのか…。今シーズンが始まったばかりなのに何とも気の早い話ですが、ポベガがそこに入っていてもおかしくない位の成長・活躍を今季に見せてくれると良いですね。


それでは今回はこの辺で。

1Comments

CL8

イタリア人が多く在籍し、暗黒期だったミランをよく知っているので難しい問題ですね。00年代の黄金期はマルディーニ 、ネスタ 、ピルロ、ガットゥーゾ、ピッポのようにアッズーリでも主力級でありW杯も制覇できるほどのタレントが揃っていましたね。2022年現在のアッズーリは残念ながらワールドクラスと呼べるレベルの選手がほぼいないと思います。それでいてイタリア人を獲得しようとすると高額な移籍金を要求されるわけですから、ユーベ以外のチームはなかなか獲得できませんね。トンマーゾ・マンチーニはポベガのようなパターンになれるかもと思いきや金銭面の問題でユーベに行くようで残念です。

  • 2022/08/18 (Thu) 22:33
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