【大勝スタート!】ミラン対ウディネーゼ【2022-23シーズン・セリエA第1節】
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、ウディネーゼ「3-5-2」
大まかな試合展開
試合内容の本格的なレビューに移る前に、まずは試合展開について大まかな流れを振り返っておきたいと思います。
開始2分、ミランはセットプレーからベカンに頭で合わせられて早々に失点。しかしその後は冷静にゲームに入り直し、11分にはテオが、15分にはレビッチが立て続けにネットを揺らして勝ち越しに成功します。すると今度は前半アディショナルタイムにマジーナに決められウディネーゼが同点に追いつくというシーソーゲームに。
続く後半開始早々の46分、ミランはブラヒムが相手のミスを突いて再び勝ち越しとなる3点目を挙げると、68分にはレビッチが勝利を決定づけるチームの4点目をゲット。その後はウディネーゼの反撃を許さず、試合は4-2で終了しました。
右サイドからの攻撃
さて。それでは試合内容について詳しく見ていきましょう。
まずはミランの攻撃(ボールポゼッション)について。
開始早々にスコアが動いたことも影響してか、ミランがボールを持ちウディネーゼが低めの位置に5-3-2で構えるという構図が序盤からハッキリとしました。
これに対しミランは、主に右サイド起点の攻撃からチャンスを作り出していきます。

――この試合におけるミランの攻撃ルート
「相手の守備ブロックから中盤の1人もしくはWBを誘引する」、「ライン間に侵入してパスを引き出す」、「前線で相手のCB、WBを牽制しつつ裏のスペースを狙う」といった各役割を主にカラブリア、ブラヒム、メシアス、レビッチが分担しながら入れ替わりにこなし、相手の守備組織を崩していく、と

――例えばこの場面。ここではブラヒムが相手ブロック前まで下がってボールを受け、相手WBを引き付ける。他方、カラブリアがサイド高い位置を取り、メシアスはその背後でブラヒムからパスを引き出す。相手の左CBはカラブリアへのパスコースが気になり、メシアスにマークに付き切ることができない

――その後の場面。メシアスがボールを受け、そこに前線のレビッチがサポートに入りワンツーで相手のアンカーを躱す

――その後の場面。メシアスから手薄な逆サイド側へと展開。チャンスシーンを作り出した
これは今PSMでも良く見られた形であり、特にマルセイユ戦では同様にカラブリア、ブラヒム、メシアスが中心となって次々と決定機を作り出していましたね。
この点、今回の試合と当時とで異なるのは「レビッチの存在」です(マルセイユ戦はレビッチの代わりにジルーが先発)。
機動力に優れるレビッチは中央からサイド方向に流れてパスを引き出すといった動きも積極的に行え、その動きによりチームとして流動的なポジションチェンジを起こすことで相手の守備組織に綻びを生じさせ易くなると。
例えばオフザボール(裏抜け)の意識・精度を高めている右サイドのメシアス、もしくは前線への積極的な侵入を求められているダブルボランチの一角(この試合ではクルニッチ)が、こうしたレビッチの動きに応じて代わりに中央に侵入していく形は既に確立されつつありますね

――例えばこの場面。カルルが前方にボールを運び、サイドのカラブリアへとボールを繋ぐ間、前方ではレビッチとメシアスがポジションを入れ替える

――その後の場面。レビッチがカラブリアからスルーパスを引き出した
さて。そんなわけミランは7分。右サイドからの攻め込みでゴール前にボールを運び、最終的にカラブリアが倒されPKを獲得。そして11分にテオがそのPKをモノにして先制。
続く15分にも同サイドから最後はレビッチが決め、すぐさま逆転することに成功しました。

――2点目のシーンについて。メシアスの下がる動きで相手のWBを引き付け、その背後ではレビッチがサイドに流れてカラブリアから長いパスを引き出す

――その後の場面。いったんボールを失うも、すぐさま回収して再びミランボールに。ブラヒムがサイドのカラブリアにスルーパスを出し、一方のメシアスとクルニッチはクロスに備えてエリア内に侵入。彼らに続き、レビッチも持ち前の走力を活かしてエリア内へ

――その後の場面。カラブリアのクロスはレビッチに届き、ボレーでゴールに流し込んだ
左サイドからの攻撃
続いて、ミランの左サイドからの攻撃について。
先述の通り右サイドからの崩しが目立った一方で、左サイドからの機能的な攻撃は限定されていた印象です。

――この試合におけるミランのヒートマップ。右サイドに比べ、左サイドは敵陣深くでのボールタッチが少ない
序盤こそレオンが左アウトサイドに張り、テオが後方から前線へと侵入していくという関係性でもって惜しいシーンが作り出されることもありました。

――例えばこの場面。テオがボールを持ちながら敵陣に侵入。前方ではレオンがサイドに張って相手のWBを牽制し、クルニッチがライン間にポジションを取り相手の右CBを牽制。そこでテオはベナセルにボールを預け、相手のWB-CB間へ飛び出す

――その後の場面。ボールを受けたベナセルはレオンに展開し、そのレオンはテオにスルーパス。抜けだしたテオがチャンスを作り出した
しかし、チームとして右サイドを重視する攻撃が続く中、レオンが徐々に中央寄りにポジションを取る時間帯が長くなり、左サイドのポジションバランスがやや崩れた印象です。
そこでミランは後半に入り、基本となる陣形を修正したように見受けられました。
前半は高い位置を取っていたクルニッチが、下がってベナセルと近い位置でプレーするようになり、その代わりにレオンが左ハーフスペースを主戦場に。そして左アウトサイドをテオが使うという形が基本ですね。

――後半における後方の陣形、及びテオ、レオンの位置
こうして整理した陣形は後半開始早々に奏功しました。クルニッチが左サイドへロングパスを送ると、そのパスに追いついたテオがクロス。その流れから3点目が生まれました。

――当該シーンについて。クルニッチから左サイド前方のスペースにロングパス。そこにテオが走り込む

――その後の場面。ここからテオがクロス。このクロスを相手が処理し損ね、3点目に繋がった
とは言え、このような変更も根本的な解決には至らなかった印象です。この点については何より、同サイドのキーマンであるレオンのパフォーマンスが悪かったことがチームにとっては痛手だったように思われますので、今後の彼の復調に期待したいところです
守備の局面
最後に守備の局面について、軽く言及しておこうと思います。
最初のトピックにて言及した通り、開始2分とアディショナルタイムにミランは被弾。最初はCKから、2つ目は右サイドからいずれもクロスを入れられ失点を喫してしまった、と。
この点、ミランはPSMでも同様のパターンで失点しています。ZTE戦とヴィチェンツァ戦にて、それぞれ「開始直後の時間帯」で「CKの流れ(もしくはクロス)」からやられてしまっており、同様の形での失点が続いているというのは反省すべき点でしょうね。
一方、失点シーン以外の場面では相手の攻撃に無理なく対応できていた印象です。特にウディネーゼの場合はカウンターが武器のためトランジションの局面では特に注意が求められましたが、手堅い最終ラインのメンバーを軸に概ねしっかりと守れていたんじゃないかなと。一度デウロフェウに裏を取られてピンチを迎えましたが、その際にはカルルが見事なカバーリングで凌ぎました。
また、ウディネーゼの後方からの組み立てに対してミランはプレッシングによる妨害という得意の形で対応。
ウディネーゼは積極的にインサイドハーフが前に飛び出したり、それに応じて2トップが下がってボールを引き出したりといった流れにより前方でボールを収め、速攻を図る形が見られました。が、ミランがそうした縦への楔をしっかりとケアしたことで速攻を許さず、大体においてウディネーゼの攻撃を遅らせることに成功。そして時には良い形でボールを奪ってカウンターへと転じていきました。
後半終盤にはウディネーゼも攻勢を仕掛けてきましたが凌ぎ切り、後半だけでいえば無事に無失点で試合を終えることができましたね。
雑感
PSMで見られたミランの良いところ(右サイド起点の崩し、レビッチの好調など)、そして悪いところ(立ち上がりの失点、クロス対応など)の両方がこの試合でも引き続き見られたというのは興味深いところです。
良いところはもちろん維持してもらいたいですし、逆に悪い部分は改善が必要となります。特にクロス対応に関しては「集中したマーキングの維持」、「クロッサーに対してしっかりとプレッシャーをかけ、そもそも相手に(十分な)クロスを入れさせない」などといった形で改善が可能だと思いますので、その点は速やかな修正に期待したいです。
一方、全体的にはポジティブな部分が多く見られた試合だったと感じますし、何より開幕節にしっかりと勝利という結果を出せたという事で、今シーズンのミランにも大いに楽しませてもらえそうですね。
次節のアタランタ戦にも勝利し、連勝スタートといきたいところです。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今シーズンもよろしくお願い致します!