デ・ケテラーレのプレースタイルについて ~次世代のカンピオーネ候補~

デ・ケテラーレ
ミランの長きに渡る交渉が遂に実を結び、クラブ・ブルッヘに所属するシャルル・デ・ケテラーレ(デ・ケテラエル)の獲得が決定的となりました。



さて。ミランにとっては紛れもなく、今夏メルカートにおけるトップターゲットであった彼ですが、そのプレースタイルについてはまだ広く知られていないように見受けられます。

そこで今回は、デ・ケテラーレの特徴を挙げていきながら、それらの特徴を基にした彼のプレースタイルについて概観していきましょう。



フィジカル



1.ボールキープ


今季は1トップでの起用が多かったデケテラーレにとって、相手DFのプレッシャーを背中で受けながらも後方からのパスを収め、次の展開に繋げるプレー(ポストプレー)というのはビルドアップ時・カウンター時を始め強く求められたようです。
この点、彼は身長192cm大柄な体格を有しており、またフィジカルコンタクトを厭わずにプレーするメンタリティも持ち合わせているように見受けられますね。


デ・ケテラーレ_戦術分析1
――例1:PSG戦の一場面。自陣ゴール前でボールを奪い返したクラブ・ブルッヘは前線のデケテラーレ(※画像では「CDK」表記)にボールを預ける。ここで、パリはCBキンペンベがマークに付く


デ・ケテラーレ_戦術分析2
――その後の場面。キンペンベはデケテラーレのトラップ際を狙いタイトにマークに付くが、デケテラーレは身体を入れてしっかりとキープ(赤)。この後も厳しいマークを受けながらもボールをキープし続け、強引に前を向いて抜こうとしたところでファールを貰った

純粋な肉体の強さという点でまだまだ成長しそうですし、現時点でもフィジカルに加えて持ち前のテクニック判断力(後述)を活かしつつ、強豪クラブのDF相手にもポストプレーを成功させる場面は一度ならず見られています。


デ・ケテラーレ_戦術分析3
――例2:PSG戦の一場面。後方からのボールをトラップするデケテラーレ


デ・ケテラーレ_戦術分析4
――その後の場面。浮き球に対し相手DFがクリアを図るも、デケテラーレは身体をDFとボールの間に入れながらキープ


デ・ケテラーレ_戦術分析5
――その後の場面。サイドでフリーのノアラングにワンタッチで展開し、速攻のチャンスを演出した

2.ヘディング


また、シンプルに「高さ」を活かした空中戦にも注目したいところ。デケテラーレは長身ゆえ、積極的にハイボールのターゲットにもなり得ます。

この点に関し、今季のデケテラーレのリーグ戦ゴール総数「14点」の内、ヘディングによる得点は「3点」となっています。こういった高さという武器はもっとフィニッシュに活かせるような気がしますが、何にせよ素質は十分ですね。





スピード・運動量



3.スペースへの侵入


先述の通り大柄な体格でありながらも、十分なスピード運動量機動力)も有しているのがデケテラーレの特徴です。
そうした特徴は主に「スペースへの侵入」というプレーにおいて活かされます。


デ・ケテラーレ_戦術分析6
――例3:マンチェスター・シティ戦の一場面。相手DF2人が前方のノアラングに注意が向いている隙を突き、デケテラーレが素早く裏のスペースを突いてロングパスを引き出す


デ・ケテラーレ_戦術分析7
――その後の場面。ボールは惜しくも足元に届かなかったが、非常に惜しいシーンを作り出した


デ・ケテラーレ_戦術分析8
――例4:PSG戦の一場面。ブルッヘが連携で左サイドを突破する(1)。それに合わせ、中央にいるデケテラーレはゴール前へと鋭く侵入していく


デ・ケテラーレ_戦術分析9
――その後の場面。デケテラーレのランニングに相手DFが引っ張られ、それにより生じた手前のスペースにクロスが入る。そこに後方から味方(2)が飛び込んでシュートを放ち、ゴールネットを揺らした

彼は2ライン間でパスを引き出すプレーだけでなく、このように裏(スペース)に走ってパスを呼び込むプレーも積極的に行えます。また、上記のようにシンプルにゴール前に飛び込む形もあれば、中央からサイドに流れてサイドの深い位置でボールを引き出す形など、その動き方は様々です。


デ・ケテラーレ_戦術分析10
――例5:PSG戦の一場面。左サイドでボールを持つノアラング。ここでデケテラーレは左斜め方向に抜け出し、ノアラングからスルーパスを引き出す


デ・ケテラーレ_戦術分析11
――その後の場面。サイドに流れたデケテラーレと入れ替わるようにしてノアラングが中央ゴール前に侵入。ここでデケテラーレがタイミング良く中央に正確なパスを供給し、パスを受けたノアラングがそのままシュート。2人だけで速攻を完結させた

ちなみに、ここでいう「スピード」というのは物理的なものだけでなく「判断スピード」といった部分も含まれます。そのためプレーの選択やトランジションが速く、そうした特徴が以下のトピックで述べる「テクニック」の効果的な活用にも繋がっていきますね。


テクニック



4.正確なボールコントロール


それでは次にテクニックという観点から見ていくと、まずは「ボールコントロール」の精度の高さという点に言及したいところです。
自分の思い通りのプレーを行うためには、ボールを受ける際のファーストタッチの精度というのが非常に重要になります。その点デケテラーレはしっかりと次のプレーを考えたファーストタッチを行っており、またそれを行える技術があるように見受けられます。そうして「正確なパスやドリブル」といったプレーに繋げていく、と。


デ・ケテラーレ_戦術分析12
――例6:ライプツィヒ戦の一場面。相手DFラインの間に位置するデケテラーレは、左サイドから斜めのパスを引き出す


デ・ケテラーレ_戦術分析13
――その後の場面。ここで、デケテラーレは逆足の右で正確なトラップ。縦に抜け出すことを想定し、ワンタッチ目で前方にボールを転がして突破を図る


デ・ケテラーレ_戦術分析14
――その後の場面。トラップに続くドリブルで相手のマークを外し、狙い通りにクロスまで持っていった


5.効果的なターン


また、「ターン技術」という点にも注目すべきものがあります。
大柄でありながら身のこなしに柔らかさのあるデ・ケテラーレは、ライン間でパスを引き出した際にはトラップと同時に前を向き、素早く次のプレーに移行することが可能です。

また、こうした能力は最初のトピックで言及したようなボールキープ時にも活かされます。例えば縦パスを受けたときに相手DFがプレッシャーをかけてきた際、身体でボールを隠しつつも隙あらばターンして前を向くことで、相手を躱したりタメを作って味方の上がりを待ったりという形で状況を打開することができますね。


デ・ケテラーレ_戦術分析15
――例7:PSG戦の一場面。自陣でボールを奪ったブルッヘは、前方のデケテラーレにボールを預ける。この時点でデケテラーレは孤立無援の状況であり、パリは彼に対してマルキーニョスが対応


デ・ケテラーレ_戦術分析16
――その後の場面。デケテラーレはボールをキープし、周囲の状況を確認しながらボールを少し中央方向に動かすそぶりを見せる


デ・ケテラーレ_戦術分析17
――その後の場面。デケテラーレは素早く左足アウトサイドでターンしてマルキーニョスの逆を突き、サイド方向にドリブル。その間に後方の味方(ここではラング)の上がりを持つ


デ・ケテラーレ_戦術分析18
――その後の場面。裏に走り込んだラングにデケテラーレがスルーパスを供給し、チャンスシーンを演出した

インテリジェンス(判断力)


ここまではデケテラーレの身体面技術面にフォーカスを当ててきました。
続いては攻撃時のプレースタイルのまとめとして、それらの能力を存分に発揮するために必須となるインテリジェンス判断能力について、とりわけゴール前ラスト20~30メートルでのプレーに注目して見ていきましょう。

6.連携プレーによる崩し


この点に関するデケテラーレの特徴としてはまず「周囲の状況認識力」が挙げられ、殊にそれはゴール前において真価を発揮するように思われます。
周囲の状況をスキャンして味方と敵の位置を確認し、チャンスを作り出せそうな位置にポジショニング。そこから上記の身体的・技術的特長を活かしながら周囲の味方と連動して決定機を作り出す、といった流れですね。

一例として、以下のような3人目の動きによる崩しが挙げられます。


デ・ケテラーレ_戦術分析19
――例8:PSG戦の一場面。デケテラーレは左サイドでボールを持つ味方(1)にパスを要求しつつ、自身の背後にいる味方(2)を認識。そこで1から送られたパスをあえて流して2にボールを受けさせる


デ・ケテラーレ_戦術分析20
――その後の場面。ボールを受けた2に相手DF陣の注意が集まる中、デケテラーレは死角から裏のスペースに侵入しスルーパスを引き出す


デ・ケテラーレ_戦術分析21
――その後の場面。ゴール前でボールを受けたデケテラーレは、抜かりなくワンタッチで正確なロークロスを中央の味方(3)に送り、決定機を演出した

ポジショナルな崩しの局面においては、こうしたスピーディーかつ相手DFの裏をかく連携プレーというのが重要なポイントの一つになりますが、この点デケテラーレはそれを実現するための素晴らしい「プレービジョン」を持っていると考えられますね。

7.狭いスペースでのプレー


また、上記シーンにおいても窺えるように、ゴール前の狭い空間においてもスペースを見出し、そこにポジションを取ってパスを引き出すといったデケテラーレの「ポジショニングセンス」の高さというのも見逃せない長所です。

デ・ケテラーレ_戦術分析22
――例10:PSG戦の一場面。右サイドでボールを持つ味方(1)に対し、相手CB-SB間でパスを要求するデケテラーレ


デ・ケテラーレ_戦術分析23
――その後の場面。実際のパスは1から別の味方(2)に送られるも、デケテラーレはすぐに意識を切り替えて裏のスペースにパスを呼び込もうと動き出した

このように、彼は味方ボールホルダーの動きに合わせて相手のDFライン間などに位置してパスを引き出し、そこからテクニックや視野を活かしてチャンスを作り出していく能力があります。


デ・ケテラーレ_戦術分析24
――例11:シティ戦の一場面。右サイドでラングがドリブルで持ち運ぶと同時に、デケテラーレは位置を微調整しながら相手DFライン間に潜り、ラングからパスを引き出す


デ・ケテラーレ_戦術分析25
――その後の場面。ラングのバイタルエリアへの侵入に合わせ、手前のスペースにボールを落としてチャンスを演出しようとした

「周囲の状況を認識し(状況認識能力)、最適なポジションを取り(ポジショニングセンス)、味方と連携をとってフィニッシュに絡む(プレービジョン)。」
こうした一連の動きでもってチームの攻撃のクオリティを高めてくれるのがデケテラーレの大きな魅力の一つであると思いますし、正に今のミランが求めている選手ではないでしょうか。


守備能力


それではプレースタイル紹介の最後として、守備の局面におけるデケテラーレについて軽く触れておきたいと思います。

8.ファーストディフェンス


僕が観たデケテラーレの試合は相手が強豪という事もあり、彼の守備時のタスクはどちらかというと受動的なものでした。具体的には相手CB(もしくは最終ラインに下りたアンカー)がボールを持ち前進を図ろうとする際、片側CBへのパスコースを切りながら寄せに行ってビルドアップの方向を制限しようというものですね。


デ・ケテラーレ_戦術分析26
――例11:PSG戦の一場面。デケテラーレは相手左CBへのパスコースを切りながら、ボールホルダーのアンカーに寄せる

その後、自陣での組織的守備においてはボールサイドに寄りながらポジティブトランジションに備えつつ、もし近くの相手CB(ないしアンカー)にバックパスでボールが渡ればプレッシャーをかけて後方の味方を助けます。


デ・ケテラーレ_戦術分析27
――その後の場面。バックパスによりボールは再びアンカーへ。そこへデケテラーレが寄せに行く


デ・ケテラーレ_戦術分析28
――その後の場面。デケテラーレが相手アンカーのトラップミスを機に距離を詰めてボール奪取。その直後にファールを受け相手のイエローカードを誘発した、


9.カウンタープレス


また、ボールロスト後のカウンタープレスという点についても期待できそうです。
というのも先述の通りデケテラーレは(判断)スピードを有しており、それが守備(ネガティブトランジション)時にも活用される場面というのが一度ならず見られます。


デ・ケテラーレ_戦術分析29
――例12:PSG戦の一場面。左サイドの自陣深くでボールを回収したパリは、いったんCBにボールを戻す。その側にはデケテラーレがいる


デ・ケテラーレ_戦術分析30
――その後の場面。ボールを受けたCBに素早く寄せに行くデケテラーレ。そのプレッシャーを受けた相手CBは急いでパスを出す


デ・ケテラーレ_戦術分析31
――その後の場面。プレッシャーにより精度を欠いたパスはブルッヘの選手(1)に回収された


10.献身的なカバー


最後に。そもそも上記のような守備を行える理由として、彼に十分な「献身性」が備わっていることが挙げられるのではないかなと。
その一例として、デケテラーレはチームが危険な状況に陥りそうな場面では精力的に戻り、以下のようにスペースを埋めることで味方の守備を助けることができています。


デ・ケテラーレ_戦術分析32
――例13:PSG戦の一場面。ブルッヘのネガティブトランジション時、パリに密集地帯を抜け出されてボールはサイドの相手選手に渡る(1)。前方にスペースがあり危険なカウンターを食らうリスクが生じたため、デケテラーレは急いでボールホルダーに寄せに行く


デ・ケテラーレ_戦術分析33
――その後の場面。前方の進路を塞ぎ、相手のドリブルを停止させるデケテラーレ。この後、1は左アウトサイドの相手(2)にパスを出そうとするが精度を欠いてラインを割り、ブルッヘのスローインとなった

さて。守備能力についてまとめると、献身性と判断力を有するデケテラーレは守備の局面においても組織の一員として機能しており、メリハリの効いたプレスもかけられるという事で、守備面でも十分な貢献が期待されますね。


まとめ


デ・ケテラーレはまだ21歳と若手ながら、個人的見解としては現時点でもセリエAで十分に通用するクオリティを持っていると思います。技術、身体能力、インテリジェンスの3拍子揃っている選手は希少ですしね。

後は「新しいチーム・リーグへの理解」や「メンタル面の適応」などをどれだけ早く行えるかが鍵になるかなと。もし加入初年度のトナーリのようにビッグクラブ特有のプレッシャーに戸惑えば、実力を発揮するのに時間がかかる可能性は考えられます。

とは言え、トナーリが2年目に真価を発揮したように、こうした点は文字通り「時間の問題」であるともいえます。報道により伝えられる素行や向上心なども考慮するに、デケテラーレであれば遅かれ早かれ成功するだろうと僕は確信していますし、新加入選手への期待度としては僕の中では歴代トップクラスです。

本当に楽しみな選手ですし、「ミランの選手」としてのデ・ケテラーレ誕生の瞬間を心待ちにしたいと思います。


長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

6Comments

CL8

No title

ついに決まりましたね!今夏最も期待している選手であり、ボトマンを獲得できなかった無念さを晴らしてくれました。
ハイライトを見た感じ的確な判断力と身長を活かしたフィジカルの強さや周りを活かすプレーが非常に優れている印象でした。カカニスタさんが仰る通りの印象です。
昨シーズンのミランに欠けていた引いて守られた時にファイナルサードで相手を崩すことができる選手なのかなと思いました。この点はアドリにも共通した印象があり、この2人が同時出場した時が今から楽しみで仕方ありません。
現時点では前述のようにアドリにも期待しているため個人的に右サイドで起用して欲しいと思うのですがカカニスタさんはどうお考えでしょうか?状況次第ではCFやトップ下でも起用出来そうなので楽しみですね。

  • 2022/07/31 (Sun) 06:50
  • REPLY

洋平

特徴を見る限り、イブラと似た選手なのかなって感じました。
ファイナルサードのオーガナイザー的な。

ピオリがどのポジションで起用するのか楽しみです。
ワントップにジルー
2列目にレオン、CDK、ディアス

もしくは
ワントップにCDK
2列目にレオン、アドリ、ディアス

やっぱり右にベラルディ級が欲しい…

  • 2022/07/31 (Sun) 09:22
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To CL8さん

コメントありがとうございます。

デケテラーレ、アドリの2人を共存させる方法は注目ポイントの一つですよね。メディア等では両者をそれぞれトップ下と右サイドに割り振る形が有力視されている印象ですし、個人的にはCDKをトップ下、アドリをボランチ(攻撃的なタスクを任せる)で使うという形や、アドリをトップ下にCDKをトップで起用する形もあり得ると思います。後は少し基本システムを弄って2シャドーにし、そこに両者を起用する形などでしょうか。

いずれにせよ両者のプレービジョンは同様に優れたモノですし、連携を成熟させミランで破壊力のある名コンビを結成して欲しいですね。

  • 2022/07/31 (Sun) 12:54
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To 洋平さん

コメントありがとうございます。

右サイドはどうなりますかね~。当初は誰かしら獲りそうな雰囲気でしたが、予算的にベラルディクラスの補強は難しい印象です。
ただ、もしここから現有戦力の放出があった場合には何かが起こる可能性はありますし、引き続き注目していきたいですね。

  • 2022/07/31 (Sun) 12:55
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マツモト

最近

ミランの試合を見ていてイライラした部分はパスミス、プレイ選択ミス、クロスミスなど個人のクオリティ不足由来のミスが多すぎることでした、正確なサイドチェンジ、スルーパスも少なかった、ケテラーレ、アドリにはプレイ精度向上が期待出来そうですが。

アドリが長谷部やれそうなのでケテラーレトップ下アドリボランチが無難そうですが4−1−4−1のフォメで横並び起用とかも良いかも動きが被らないと良いが頭良さそなので大丈夫でしょう。

テアテ移籍してたんですね

  • 2022/07/31 (Sun) 21:11
  • REPLY

Aki

ついに、(ほぼ)決まりましたね!
カカニスタさんをして歴代最高の期待と言わせるCDK、本当に楽しみです。

僕もそういう印象を持っていたつもりですが…最高じゃないですか!?待ちきれないです!!アドリ、ジルー、メシアス、レオンあたりとは相互に活きそうな能力とプレーエリアだと思っています。期待できるところを上げるとキリないので、ただただ楽しみと、アホみたいに書かせてください。

  • 2022/08/01 (Mon) 10:49
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