ヤシン・アドリのプレースタイルについて~「タメ」と「飛び出し」~
加入前からそのポテンシャルを高く評価されていた彼ですが、ここまでのプレシーズンマッチ2試合ではいずれも期待に見合うパフォーマンスを見せることができています。
今回はそんなアドリについて、その印象的なプレースタイルのいくつかを見ていきましょう。
タメを作るプレー
ここまでのプレシーズンマッチ2戦において、アドリの見せた印象的なプレーの1つが「ボールキープ」です。
正確なトラップやターン、または上手く身体を使いながら相手のプレスをいなしてボールをキープするシーンというのを一度ならず披露している、と。
そして、そうしたボールキープによって「タメを作るプレー」は味方の後方からの攻め上がりを促進し、かつその動きを活用することで「相手DFライン裏への有効なボール供給」を可能とします。この点に関し、早くもアドリはテオと好連携を見せていますね。

――例えばこの場面。テオがアドリにパスを出し、やや前方に移動。一方のアドリはトラップの瞬間に相手に寄せられながらもボールをキープし、それと同時にターンして前を向く

――その後の場面。テオが前方に飛び出す動きを見せ、アドリは裏にスルーパスを供給

――その後の場面。カバーに入った相手DFがスライディングで前進の阻止を図るも、テオのスピードが上回り突破に成功。チャンスを作り出した
テオの持つ縦へのダイナミズムを活かす方法の1つとして、このような形で彼の前方への飛び出しを活かしてくれるパサーを起用することは重要になり得ます。これはレオンやブラヒムとの連携ではあまり期待できない類のプレーでありましたが、今シーズンはキープ力とパスセンスを兼ね備えたアドリがテオの魅力をより一層引き出してくれる期待感は大きいですね。
ゴール前への飛び出し
続いてのアドリの印象的なプレースタイルとして、「ゴール前のスペースへの飛び出し」を挙げたいと思います。
アドリはオフザボール時には精力的な動きでパスコースを創出しますが、それだけなく優れた「スペース認識力」を有している様子。そういった能力に加えて先のトピックでも言及したキープ力・パスセンス等を組み合わせ、ゴール前でも以下のように決定機を作り出すことができています。

――当該シーンについて。テオが相手のクリアボールを拾い、前方にドリブルで仕掛ける。その間にアドリは背後のスペースを認識し、相手DFラインの間に入り込みテオからパスを引き出す

――その後の場面。テオからのパスを受けボールを持つアドリ。ここでテオはゴール前に一気に飛び出す

――その後の場面。アドリは体の向きで対面の相手DFにパス方向を誤認させ(※点線矢印)、その裏に正確なスルーパスを供給。そこへテオが走り込む

――その後の場面。走り込んだテオがそのボールを中央に折り返す。ボールは惜しくも中央のDFにクリアされるが、非常に惜しい形を作り出した
ボルドー時代は決定力が課題と評されていたアドリ(昨季の得点数は1点)ですが、このようにゴール前での冷静さは持っていますし、成長と共にゴール前の狭いスペースにおいても決定的なプレーがどんどん出来るようになりそうな印象を受けますね。
実際、先日のZTE戦においてもアドリはエリア内のスペースへ鋭く侵入してパスを引き出し、チームの2点目をアシストすることに成功しています。

――当該シーンついて。サイド深くでボールを持ったアドリは近くのサレマにボールを預けると、エリア内のスペースに鋭く侵入。

――その後の場面。サレマから当該スペースのアドリへ正確なスルーパスが通る

――その後の場面。アドリから中央のクルニッチにパスが通り、最後はクルニッチが技ありシュートでネットを揺らした
まとめ
プレシーズンマッチが始まってまだ2試合、それも途中出場となっているアドリのパフォーマンスにはまだまだ確認すべき点がありますが、上述したように現時点でもチームの中心になり得るポテンシャルを見せられていると個人的に思います。
そろそろスタメンで試されてもおかしくないですし、その際にも好パフォーマンスを披露できれば更にチームの内の地位を高めることができるでしょうね。
この点、日本時間で今夜行われるヴォルフスベルガー戦や8月最初のマルセイユ戦はアドリにとって絶好の機会となり得ますし、是非ともそのチャンスをモノにして欲しいと思います。
それでは今回はこの辺で。