オリギのプレースタイルについて ~ミランとの2試合を振り返る~
ミランへの加入が正式発表されたディヴォック・オリギ。
今回はそんなオリギのプレースタイルについて、昨季のCLで行われたミラン対リバプールの2試合を主な判断材料にして見ていこうかなと。それと同時に、ミランのチーム事情と絡めつつ、そのパフォーマンスを自分なりに評価したいと思います。
まずはチームのビルドアップ時におけるオリギの特徴的なプレーについてです。
ミランとの1戦目ではミランのハイプレスがあまり機能せず、リバプールはしっかりと後方からショートパスで陣形を押し上げることができるシーンが散見。それもあり前線のオリギが後方からボールを引き出す動きを見せるシーンというのは多くありませんでした。
その一方、2戦目ではミランのプレスが概ね機能したこと、またリバプールが中盤に主力を使わず臨んだことで、オリギは積極的に下がるなどして(ロング)パスを引き出す動きを多用しました。そこでポイントになったのが「ポストプレーの精度」です。

――例えばこの場面。ミランのハイプレスにより、リバプールCBは前線へのロングボールを選択。そこからオリギがプレッシャーを受けつつも、ワンバウンドしたボールをトラップする

――その後の場面。オリギはボールを左サイドに展開。速攻の起点となった
この点、オリギのフィジカルを活かしたボールキープは優れているように見受けられ、背後からのプレッシャーに対しても潰されたり弾かれたりすることなくボールに触れる場面というのがよく見られました。
その一方で、ボールキープ後のプレー精度という点は少々気になるところ。例えばオリギがボールを持った後、モタモタしている間に相手にプレッシャーを強められた結果、ボールをつつかれロストする場面がこの2試合でも一度ならず見られています。

――例えばこの場面。縦パスを受けるオリギ。トラップ際を狙われるが、しっかりと体でブロックしてボールを収める

――しかし、その後パスを出しあぐねている内に相手に距離を詰められボールロスト(赤)。ミランボールとなった
そのため相手にフィジカルで優位に立てるなら良いのですが、同等以上の身体能力を持った相手にマークされた場合は苦戦を強いられることになるかもしれません。
もう一つ、オリギの「ロングボールのターゲット」としての側面にも触れておきます。
彼は185cmと、FWとしては飛び抜けて長身というわけではありませんが、その身体能力と相まってロングボールのターゲットマンとして、ハイプレス回避時などにおいて積極的に使われ得るポテンシャルを秘めています。この2試合においても、サイドに流れたオリギにロングボールを送り、相手と競り合わせるといった形でその特長を活かす意図は見られました。

――試合開始直後、サイドに流れてロングボールのターゲットとなるオリギ(黄)
続いて、崩しの局面におけるオリギの特徴的なプレーについてです。
今回取り上げたミランとの2試合(とりわけ2戦目)において、リバプールがサイドからボールを前進させていく際、オリギもまた積極的にボールサイドに寄ってきてパス回しに絡もうとするシーンが散見されました。
ざっと調べたところ、こうしたプレー傾向はオリギの特徴だそうで、戦術的要請というよりも彼の好みに因る部分が大きいのかなと。
この点、当該プレーをチームとして活かすには、オリギの空けた中央のスペースを誰が使うかが鍵になってきます。例えば、ミラン戦(2試合目)では主に左ウイングのマネが中央に飛び込んだり、オリギとポジションを入れ替えたりなどしてチームの機能性を担保していました。

――例えばこの場面。オリギがミランCBを引き連れながら、ボールホルダーのサラーに近づく(赤)。その間にマネが前線中央のスペースに飛び出し、サラーから浮き球のスルーパスを引き出した
ただし、そもそもオリギのこうしたプレーの有効性というのには疑問の余地があります。実際、少なくともこのミラン戦において、サイドに流れてボールを受けたオリギからドリブル・パスなどで効果的に次の展開へと繋がったシーンはほとんど見られませんでした。
また、サイドに流れた後はゲーム展開に関わらずそのまま残るなどして、チームのチャンスシーンにおいてゴール前にいないという場面も見られます。

――例えばこの場面。リバプールのアーノルドが右サイドを突破してクロスを上げるが、そのとき右に流れてボールを受けようとしていたオリギがエリア内にいない
オリギの得点力を活かすといった点を重視するのであれば、彼をエリア近くでのプレーに集中させることが必要な気がしますね。
それでは肝心のゴール前でのプレーはどうか。

――例えばこの場面。リバプールが速攻を行い、左サイドにボールを展開。オリギはゴール前にスピーディーに侵入し、クロスに備える

――その後の場面。オリギが鋭いロークロスに合わせ、シュートを放った
この点、「裏のスペースへの飛び出し」というのはオリギに期待したいところであり、ミランにおいて違いを生み出し得る部分かなと。
オリギはトップスピードがありますし、また以下の動画(数年前ですが)を見るに、スルーパスによる抜け出しや背後からロングボールを受けてのゴールなど、裏抜けからシュートに持ち込むテクニックも高いように思われますしね。
加えて、ミランとの2戦目で決めたようにヘディングによるゴールも求めたいところです。
ただし、この点についても懸念材料はあり、「動き出しが単調」に見えるところは気になります。
少なくともこの試合において、相手DFとの駆け引きに特筆すべき点は見られず、スルーパスやクロスを呼び込むような巧みなポジション取りも少ないように感じました。
最後に守備の局面について軽く言及しておきます。
ミランとの1戦目、オリギはファーストディフェンダーとしてミランCB間のパスコースを切りながらプレッシャーをかける役割を主に担当し、相手のパスコースを誘導していきました。

――オリギの守備
リバプールに所属しているだけあり、パスコースを切る動きや自身の背後に位置する選手への意識などは問題なく行えているように思います。ただ、ここでも守備強度があまり高くないよう見受けられる点は気になるところです。
優秀な身体能力、シュートにまで持ち込むボールコントロール能力(得点力)、そして意外性などはオリギの強みとしてそのままミランでも活かされると予想されますが、一方でインテリジェンス面、とりわけ思考的なインテンシティという点は要改善ポイントとして挙げられると思います。
というのも、オリギのマイナス評価としてチラホラ目にする「もっさりとした動き」というのは判断スピードの遅さに起因するものだと個人的には考えていますし、パフォーマンスにムラがあるという短所もそうした判断面が少なからず影響しているように見受けられますしね。
もしもこういった点が改善されオフザボールの質を高められれば、ミランでレギュラーの座を掴むことは十分に可能ではないでしょうか。逆に、それを改善出来なければ遅かれ早かれミランでもサブに甘んじることになりそうですので、正直戦力的にはリスキーな補強ではないかと僕は思います。
その一方で、レギュラー待遇でミランに迎え入れられたオリギのモチベーションは非常に高いはずですし、インテリジェンス面はきっかけ次第で年齢にさほど関係なく伸びる部分ですから、ミラン移籍を機に覚醒するというシナリオも考えられるかなぁと。
心機一転、新天地ミランでの成長と活躍に期待したいですね。
それでは今回はこの辺で。
今回はそんなオリギのプレースタイルについて、昨季のCLで行われたミラン対リバプールの2試合を主な判断材料にして見ていこうかなと。それと同時に、ミランのチーム事情と絡めつつ、そのパフォーマンスを自分なりに評価したいと思います。
ビルドアップの局面
まずはチームのビルドアップ時におけるオリギの特徴的なプレーについてです。
1.フィジカルを活かしたボールキープ
ミランとの1戦目ではミランのハイプレスがあまり機能せず、リバプールはしっかりと後方からショートパスで陣形を押し上げることができるシーンが散見。それもあり前線のオリギが後方からボールを引き出す動きを見せるシーンというのは多くありませんでした。
その一方、2戦目ではミランのプレスが概ね機能したこと、またリバプールが中盤に主力を使わず臨んだことで、オリギは積極的に下がるなどして(ロング)パスを引き出す動きを多用しました。そこでポイントになったのが「ポストプレーの精度」です。

――例えばこの場面。ミランのハイプレスにより、リバプールCBは前線へのロングボールを選択。そこからオリギがプレッシャーを受けつつも、ワンバウンドしたボールをトラップする

――その後の場面。オリギはボールを左サイドに展開。速攻の起点となった
この点、オリギのフィジカルを活かしたボールキープは優れているように見受けられ、背後からのプレッシャーに対しても潰されたり弾かれたりすることなくボールに触れる場面というのがよく見られました。
その一方で、ボールキープ後のプレー精度という点は少々気になるところ。例えばオリギがボールを持った後、モタモタしている間に相手にプレッシャーを強められた結果、ボールをつつかれロストする場面がこの2試合でも一度ならず見られています。

――例えばこの場面。縦パスを受けるオリギ。トラップ際を狙われるが、しっかりと体でブロックしてボールを収める

――しかし、その後パスを出しあぐねている内に相手に距離を詰められボールロスト(赤)。ミランボールとなった
そのため相手にフィジカルで優位に立てるなら良いのですが、同等以上の身体能力を持った相手にマークされた場合は苦戦を強いられることになるかもしれません。
2.ロングボールのターゲット
もう一つ、オリギの「ロングボールのターゲット」としての側面にも触れておきます。
彼は185cmと、FWとしては飛び抜けて長身というわけではありませんが、その身体能力と相まってロングボールのターゲットマンとして、ハイプレス回避時などにおいて積極的に使われ得るポテンシャルを秘めています。この2試合においても、サイドに流れたオリギにロングボールを送り、相手と競り合わせるといった形でその特長を活かす意図は見られました。

――試合開始直後、サイドに流れてロングボールのターゲットとなるオリギ(黄)
崩しの局面
続いて、崩しの局面におけるオリギの特徴的なプレーについてです。
1.サイドに流れるプレー
今回取り上げたミランとの2試合(とりわけ2戦目)において、リバプールがサイドからボールを前進させていく際、オリギもまた積極的にボールサイドに寄ってきてパス回しに絡もうとするシーンが散見されました。
ざっと調べたところ、こうしたプレー傾向はオリギの特徴だそうで、戦術的要請というよりも彼の好みに因る部分が大きいのかなと。
この点、当該プレーをチームとして活かすには、オリギの空けた中央のスペースを誰が使うかが鍵になってきます。例えば、ミラン戦(2試合目)では主に左ウイングのマネが中央に飛び込んだり、オリギとポジションを入れ替えたりなどしてチームの機能性を担保していました。

――例えばこの場面。オリギがミランCBを引き連れながら、ボールホルダーのサラーに近づく(赤)。その間にマネが前線中央のスペースに飛び出し、サラーから浮き球のスルーパスを引き出した
ただし、そもそもオリギのこうしたプレーの有効性というのには疑問の余地があります。実際、少なくともこのミラン戦において、サイドに流れてボールを受けたオリギからドリブル・パスなどで効果的に次の展開へと繋がったシーンはほとんど見られませんでした。
また、サイドに流れた後はゲーム展開に関わらずそのまま残るなどして、チームのチャンスシーンにおいてゴール前にいないという場面も見られます。

――例えばこの場面。リバプールのアーノルドが右サイドを突破してクロスを上げるが、そのとき右に流れてボールを受けようとしていたオリギがエリア内にいない
オリギの得点力を活かすといった点を重視するのであれば、彼をエリア近くでのプレーに集中させることが必要な気がしますね。
2.裏への飛び出し
それでは肝心のゴール前でのプレーはどうか。

――例えばこの場面。リバプールが速攻を行い、左サイドにボールを展開。オリギはゴール前にスピーディーに侵入し、クロスに備える

――その後の場面。オリギが鋭いロークロスに合わせ、シュートを放った
この点、「裏のスペースへの飛び出し」というのはオリギに期待したいところであり、ミランにおいて違いを生み出し得る部分かなと。
オリギはトップスピードがありますし、また以下の動画(数年前ですが)を見るに、スルーパスによる抜け出しや背後からロングボールを受けてのゴールなど、裏抜けからシュートに持ち込むテクニックも高いように思われますしね。
加えて、ミランとの2戦目で決めたようにヘディングによるゴールも求めたいところです。
𝙎𝙖𝙩𝙪𝙧𝙙𝙖𝙮 𝙣𝙞𝙜𝙝𝙩 𝙖𝙣𝙙 𝙄 𝙡𝙞𝙠𝙚 𝙩𝙝𝙚 𝙬𝙖𝙮 𝙮𝙤𝙪 𝙢𝙤𝙫𝙚, 𝘿𝙄𝙑𝙊𝘾𝙆 𝙊𝙍𝙄𝙂𝙄! 🤩🔥 pic.twitter.com/4IvjTdZ45L
— Liverpool FC (@LFC) April 18, 2020
ただし、この点についても懸念材料はあり、「動き出しが単調」に見えるところは気になります。
少なくともこの試合において、相手DFとの駆け引きに特筆すべき点は見られず、スルーパスやクロスを呼び込むような巧みなポジション取りも少ないように感じました。
守備の局面
最後に守備の局面について軽く言及しておきます。
ミランとの1戦目、オリギはファーストディフェンダーとしてミランCB間のパスコースを切りながらプレッシャーをかける役割を主に担当し、相手のパスコースを誘導していきました。

――オリギの守備
リバプールに所属しているだけあり、パスコースを切る動きや自身の背後に位置する選手への意識などは問題なく行えているように思います。ただ、ここでも守備強度があまり高くないよう見受けられる点は気になるところです。
まとめ
優秀な身体能力、シュートにまで持ち込むボールコントロール能力(得点力)、そして意外性などはオリギの強みとしてそのままミランでも活かされると予想されますが、一方でインテリジェンス面、とりわけ思考的なインテンシティという点は要改善ポイントとして挙げられると思います。
というのも、オリギのマイナス評価としてチラホラ目にする「もっさりとした動き」というのは判断スピードの遅さに起因するものだと個人的には考えていますし、パフォーマンスにムラがあるという短所もそうした判断面が少なからず影響しているように見受けられますしね。
もしもこういった点が改善されオフザボールの質を高められれば、ミランでレギュラーの座を掴むことは十分に可能ではないでしょうか。逆に、それを改善出来なければ遅かれ早かれミランでもサブに甘んじることになりそうですので、正直戦力的にはリスキーな補強ではないかと僕は思います。
その一方で、レギュラー待遇でミランに迎え入れられたオリギのモチベーションは非常に高いはずですし、インテリジェンス面はきっかけ次第で年齢にさほど関係なく伸びる部分ですから、ミラン移籍を機に覚醒するというシナリオも考えられるかなぁと。
心機一転、新天地ミランでの成長と活躍に期待したいですね。
それでは今回はこの辺で。