ラファエル・レオンの成長とプレースタイルの進化について
今回はラファエル・レオンの2021-22シーズンを振り返りながら、彼のプレースタイルの変化や進化について見ていきたいと思います。
○2021-22シーズンのレオン
まずはシーズン成績についてです。
今季のレオンは公式戦42試合(3201分)に出場して「14ゴール・12アシスト」を記録。昨季のレオンが40試合(2502分)に出場して「7ゴール・6アシスト」でしたので、奇しくも得点・アシストがそれぞれ2倍になっていますね。
これだけでも彼の成長が窺い知れるわけですが、せっかくなのでこの点をもう少し掘り下げていきましょう。
昨季のレオンはシーズン前半戦と後半戦とで明暗が分かれていました。前半戦は「6ゴール・4アシスト」と好発進を見せたものの、後半戦のみの記録は「1ゴール・2アシスト」と失速。イブラの頻繁な離脱や、それに伴う起用ポジション変更などの影響もありましたが、やはり当時の彼はシーズンを通してパフォーマンスを維持する継続性に欠けていたように思われます。
一方、今季は前半戦で「5ゴール・3アシスト」と昨季前半戦に比べ数字を少し落としたものの、逆に後半戦は「9ゴール・9アシスト」と大幅に記録更新。中でもラスト6試合は毎試合ゴールorアシストを記録する大活躍を見せ、チームのスクデット獲得に決定的な貢献を果たしてくれました。
こうした成長の要因として、「ポジション・役割の明確化」というのが1つ挙げられるでしょう。
昨季のレオンはチーム状況に応じて左ウイングと1トップを交互に務め、時にはトップ下をも任されるなどそのポジションや役割は流動的でした。そのため、器用なタイプとは言い難い彼にとって常に安定したパフォーマンスを発揮することが難しく、そのことが殻を破り切れない原因になっていたように思われます。

――参考1:昨季におけるレオンの出場ポジション、得点、アシスト(『transfermarkt』より)
その一方、今季は起用ポジションを「左ウイング」に固定。また、主な役割もアウトサイドレーンを起点とした「ボール運び」や「仕掛けによるチャンスメイク」、及び左ハーフスペースを起点とした「前線への飛び出し」といったような形でシンプルに整理されます。これによりレオンの得意とするドリブル能力が存分に発揮されるようになり、後述する「必殺パターン」の習熟に繋がったのだと思います。

――参考2:今季におけるレオンの出場ポジション、得点、アシスト
○レオンのプレースタイル
それでは本題へという事で、実際に今季のレオンのプレー・役割を振り返りながらその特長やプレースタイルの進化を見ていきましょう
(1)ボール運び
まずは「ボール運び」について。レオンの持つドリブル推進力はチームの前進を大いに助けることができ、今季のミランはその能力をチームとして存分に活かしました。

――参考3:今季のリーグ戦におけるレオンのドリブルに関するスタッツ、及び同リーグの攻撃的MF・ウインガーを対象としたパーセンタイル(『fbref』より)。ドリブルの試行数・成功数、及びドリブルによる前進回数やその距離といったスタッツにおいていずれもリーグトップクラスとなっている
こうした能力は殊にポジティブトランジションにおけるスピーディーなカウンターに際して絶大なインパクトを残しましたが、同様にボール保持時においても確かな効果を発揮しました。
例えば相手がミドルプレスやマンツーマン志向の強いディフェンス等でミランの前進を阻もうとした場合、レオンがボールを受けて相手マーカーを振り切り、ボールをゴール前まで前進させるという形で一気に速攻のチャンスを迎えるシーンというのは今シーズンに何度も見られたものです。

――例えばこの場面。マンツーマン志向の強いヴェローナの守備。そこで左SBのバロトゥーレが中央から前線に移動して対面の右WBを引き付け、空いたサイドのスペースへレオンがボールを受けに下がる

――その後の場面。レオンがボールを受け、ここから相手マーカーのプレッシャーを受けつつも前を向く

――その後の場面。レオン(赤)が相手マーカーを振り切り一気にドリブルで前進。チャンスを作り出した
(2)ニアゾーン侵入
そして、以上のプレーなどから続く「ファイナルサードでの仕掛け」において、レオンの持つ必殺パターンとも呼べるようになったプレーが「ニアゾーンへの侵入」です。

――ニアゾーン(ハーフスペースの中でゴールに近いエリア。ポケットとも呼ばれる)
(2-1)ドリブルによる侵入
例えばレオンが左サイド深くでボールを持った際、彼は自身のドリブルテクニック、スピード、フィジカルを存分に活かしながら斜め(ゴール方向)に積極的に仕掛けることでニアゾーンへの侵入を図ります。

――例えばこのヴェローナ戦の場面。左サイドでボールを持ったレオンは、相手DFと正対する(赤)

――その後の場面。右方向にボールを転がし相手の動きを牽制してから、一気に左方向に切り返してニアゾーンへの侵入を図る。

――エリア内に侵入するレオン。ここでマーカーも必死に喰らいつくが、レオンのフィジカルとスピードに対応し切れず

――その後の場面。レオンが中央にクロス。それをゴール前に詰めていたトナーリが押し込みゴールネットを揺らした
特に前方にスペースのある状況で、レオンが相手の背後にボールを持ち出せてしまえば大チャンスです。彼のスピードとフィジカルに相手マーカーが追いすがるのは極めて困難ですからね。

――例えばこのサッスオーロ戦の場面。トランジションからオープンスペースにボールを持ち運ぶレオンと、それに対応する相手DF。

――その後の場面。ゴール方向のスペースに切り込むレオン

――それに対し相手DFが阻止しにかかるが失敗し倒れる。ニアゾーンに悠々と侵入したレオンはその後、ジルーのゴールをアシストした
(2-2)裏への飛び出しによる侵入
また、頻度こそドリブルによる侵入に比べて少ないものの、当該エリア方向に直接飛び出して後方からパスを引き出し、そのままニアゾーン(もしくはエリア内中央)に侵入する形も見られました。先述の通りレオンに背後を取られれば相手DFが追いつくのは難しいですし、またレオンは後方からのロングパスの処理能力が非常に高いため、そのままボールを前方に持ち運びフィニッシュにまで繋げることが可能です。

――例えばこのラツィオ戦の場面。テオからロングボール(赤)を引き出すレオン

――その後の場面。レオンはワンタッチでボールを前方のスペースに転がし、そのままエリア内に侵入

――その後の場面。追いすがるDFを振り切ってラストパス。そこに飛び込んだジルーが押し込みゴールとなった
さて。プレースタイルの観点から今季のレオン覚醒の要因を考えたとき、個人的には先の(2-1)で見たような「ゴール方向への積極的な仕掛けが増えたこと」が特筆すべき点として第一に挙げられると思います。というのも以前のレオンであれば、左サイドからの仕掛けにおいてそのまま縦に抜いてクロスといった形が多かったものが、ゴール方向へ運んでいくことで積極的にニアゾーンに侵入できるようになったのではないかなと。ゴールに近づけばもちろんチャンスシーンとなる確率は高まるわけで、そこからシュートやラストパスといった形で決定機を作り出すことが容易になります。
この点に関するデータを見ていくと、何より注目したいのが「ドリブルによるペナルティーエリアへの侵入回数」です

――参考4
今季のレオンの「ドリブルによるペナルティーエリアへの侵入回数」は平均「2.42回」。また、同スタッツにおけるセリエAの攻撃的MF・ウインガーを対象としたパーセンタイルは「96」という事で、リーグトップクラスの侵入回数を誇っています。
更に、このスタッツの比較対象を「過去のレオン」とすると、その変化(進化)は顕著です。

――参考5
上図はドリブルに関するレオンの平均スタッツを時期毎に並べたものです。数字は左から「20-21シーズン全体のスタッツ」、「21-22シーズン前半戦まで(12節)のスタッツ」、「21-22シーズン全体のスタッツ」となっています。
昨シーズンと比べてほとんどの数字が大きく向上していますが、中でも特筆すべきは赤枠で囲った部分(ドリブルによるペナルティーエリアへの侵入回数)です。これは昨季と比較して伸びたのはもちろんですが、「今シーズン前半戦のみ」のデータと比較しても大きく向上していることがわかります(1.64回→2.42回)。
このことから、シーズンを通してレオンはドリブル能力に磨きをかけ、重要なエリアに侵入していけるより危険な選手へ成長を遂げたと解釈することができます。最初に述べたように今季のレオンはリーグ戦最後の6試合で「3ゴール・6アシスト」と爆発しましたが、こうしたプレースタイルの進化と無関係ではないでしょうね。
(3)フィニッシュ
最後にフィニッシュの局面について。これまで見てきた通りエリア内(ニアゾーン)へと積極的に侵入していけるようになったレオンは、それによりゴールに繋がる可能性の高いシュートやラストパスも継続的に選択できるようになりました。リーグ戦11ゴール・10アシストという結果を見てもその効果は明らかですね。
こちらはセリエA公式が挙げている、レオンの今季リーグ戦全ゴール&アシストです。
ここまで言及してきたような流れからエリア内に侵入し、多くのゴールやアシストを記録しています。

――サンプドリア戦の場面。サイドから独力でニアゾーンに侵入し、そのままゴール

――ヴェローナ戦の場面。カウンターの流れから独力でニアゾーンに侵入し、ファーサイドから飛び込んだトナーリにラストパスを送った
中でも最終節のサッスオーロ戦は3アシスト全てがニアゾーンからのラストパスという事で、レオンは今季を通して1つの得点&アシストパターンを確立したといって良いのではないでしょうか。
○おわりに
ミラン加入3年目にして自己の持つポテンシャルを大きく引き出し、スクデット獲得と共にセリエAのMVPにも輝いたレオン。
特に今季最終盤戦の彼はエースと呼ぶに相応しい活躍ぶりでしたし、来季は更なる活躍が期待されるところです。
最後に。来季という事でいうと、今シーズン既に必殺パターンを身に付けたレオンの一定のパフォーマンスは保証されたようなものですが、そのポテンシャルを考えればまだまだ成長の余地があるように思われます。
例えばオフザボール。先述の通り後方からのロングボールの処理能力(コントロール)に長けたレオンは、いったん裏でボールを受ければそのフィジカル・スピードと相まって一気に決定機を作り出せる存在です。しかし、その裏抜けの頻度やタイミングに関してはまだ向上の余地がありそうですし、特により裏のスペースが無い状況でパスを呼び込む動き出しの精度といった点は更なる成長のために求められるのではないかと思います。そして、そういった部分を改善できればシーズン20ゴールの達成は十分に射程圏内でしょう。
そして彼のパフォーマンスはミランのシーズン成績に間違いなく大きな影響を与えるはずですから、その意味でもレオンには目が離せませんね。来季も非常に楽しみです。
それでは今回はこの辺で。
○2021-22シーズンのレオン
まずはシーズン成績についてです。
今季のレオンは公式戦42試合(3201分)に出場して「14ゴール・12アシスト」を記録。昨季のレオンが40試合(2502分)に出場して「7ゴール・6アシスト」でしたので、奇しくも得点・アシストがそれぞれ2倍になっていますね。
これだけでも彼の成長が窺い知れるわけですが、せっかくなのでこの点をもう少し掘り下げていきましょう。
昨季のレオンはシーズン前半戦と後半戦とで明暗が分かれていました。前半戦は「6ゴール・4アシスト」と好発進を見せたものの、後半戦のみの記録は「1ゴール・2アシスト」と失速。イブラの頻繁な離脱や、それに伴う起用ポジション変更などの影響もありましたが、やはり当時の彼はシーズンを通してパフォーマンスを維持する継続性に欠けていたように思われます。
ラファエル・レオンの成績、プレーを振り返る【2020-21シーズン】
今回はラファエル・レオンの2020-21シーズンについて、その成績やプレー等を振り返っていきたいと思います。...
一方、今季は前半戦で「5ゴール・3アシスト」と昨季前半戦に比べ数字を少し落としたものの、逆に後半戦は「9ゴール・9アシスト」と大幅に記録更新。中でもラスト6試合は毎試合ゴールorアシストを記録する大活躍を見せ、チームのスクデット獲得に決定的な貢献を果たしてくれました。
こうした成長の要因として、「ポジション・役割の明確化」というのが1つ挙げられるでしょう。
昨季のレオンはチーム状況に応じて左ウイングと1トップを交互に務め、時にはトップ下をも任されるなどそのポジションや役割は流動的でした。そのため、器用なタイプとは言い難い彼にとって常に安定したパフォーマンスを発揮することが難しく、そのことが殻を破り切れない原因になっていたように思われます。

――参考1:昨季におけるレオンの出場ポジション、得点、アシスト(『transfermarkt』より)
その一方、今季は起用ポジションを「左ウイング」に固定。また、主な役割もアウトサイドレーンを起点とした「ボール運び」や「仕掛けによるチャンスメイク」、及び左ハーフスペースを起点とした「前線への飛び出し」といったような形でシンプルに整理されます。これによりレオンの得意とするドリブル能力が存分に発揮されるようになり、後述する「必殺パターン」の習熟に繋がったのだと思います。

――参考2:今季におけるレオンの出場ポジション、得点、アシスト
○レオンのプレースタイル
それでは本題へという事で、実際に今季のレオンのプレー・役割を振り返りながらその特長やプレースタイルの進化を見ていきましょう
(1)ボール運び
まずは「ボール運び」について。レオンの持つドリブル推進力はチームの前進を大いに助けることができ、今季のミランはその能力をチームとして存分に活かしました。

――参考3:今季のリーグ戦におけるレオンのドリブルに関するスタッツ、及び同リーグの攻撃的MF・ウインガーを対象としたパーセンタイル(『fbref』より)。ドリブルの試行数・成功数、及びドリブルによる前進回数やその距離といったスタッツにおいていずれもリーグトップクラスとなっている
こうした能力は殊にポジティブトランジションにおけるスピーディーなカウンターに際して絶大なインパクトを残しましたが、同様にボール保持時においても確かな効果を発揮しました。
例えば相手がミドルプレスやマンツーマン志向の強いディフェンス等でミランの前進を阻もうとした場合、レオンがボールを受けて相手マーカーを振り切り、ボールをゴール前まで前進させるという形で一気に速攻のチャンスを迎えるシーンというのは今シーズンに何度も見られたものです。

――例えばこの場面。マンツーマン志向の強いヴェローナの守備。そこで左SBのバロトゥーレが中央から前線に移動して対面の右WBを引き付け、空いたサイドのスペースへレオンがボールを受けに下がる

――その後の場面。レオンがボールを受け、ここから相手マーカーのプレッシャーを受けつつも前を向く

――その後の場面。レオン(赤)が相手マーカーを振り切り一気にドリブルで前進。チャンスを作り出した
(2)ニアゾーン侵入
そして、以上のプレーなどから続く「ファイナルサードでの仕掛け」において、レオンの持つ必殺パターンとも呼べるようになったプレーが「ニアゾーンへの侵入」です。

――ニアゾーン(ハーフスペースの中でゴールに近いエリア。ポケットとも呼ばれる)
(2-1)ドリブルによる侵入
例えばレオンが左サイド深くでボールを持った際、彼は自身のドリブルテクニック、スピード、フィジカルを存分に活かしながら斜め(ゴール方向)に積極的に仕掛けることでニアゾーンへの侵入を図ります。

――例えばこのヴェローナ戦の場面。左サイドでボールを持ったレオンは、相手DFと正対する(赤)

――その後の場面。右方向にボールを転がし相手の動きを牽制してから、一気に左方向に切り返してニアゾーンへの侵入を図る。

――エリア内に侵入するレオン。ここでマーカーも必死に喰らいつくが、レオンのフィジカルとスピードに対応し切れず

――その後の場面。レオンが中央にクロス。それをゴール前に詰めていたトナーリが押し込みゴールネットを揺らした
特に前方にスペースのある状況で、レオンが相手の背後にボールを持ち出せてしまえば大チャンスです。彼のスピードとフィジカルに相手マーカーが追いすがるのは極めて困難ですからね。

――例えばこのサッスオーロ戦の場面。トランジションからオープンスペースにボールを持ち運ぶレオンと、それに対応する相手DF。

――その後の場面。ゴール方向のスペースに切り込むレオン

――それに対し相手DFが阻止しにかかるが失敗し倒れる。ニアゾーンに悠々と侵入したレオンはその後、ジルーのゴールをアシストした
(2-2)裏への飛び出しによる侵入
また、頻度こそドリブルによる侵入に比べて少ないものの、当該エリア方向に直接飛び出して後方からパスを引き出し、そのままニアゾーン(もしくはエリア内中央)に侵入する形も見られました。先述の通りレオンに背後を取られれば相手DFが追いつくのは難しいですし、またレオンは後方からのロングパスの処理能力が非常に高いため、そのままボールを前方に持ち運びフィニッシュにまで繋げることが可能です。

――例えばこのラツィオ戦の場面。テオからロングボール(赤)を引き出すレオン

――その後の場面。レオンはワンタッチでボールを前方のスペースに転がし、そのままエリア内に侵入

――その後の場面。追いすがるDFを振り切ってラストパス。そこに飛び込んだジルーが押し込みゴールとなった
さて。プレースタイルの観点から今季のレオン覚醒の要因を考えたとき、個人的には先の(2-1)で見たような「ゴール方向への積極的な仕掛けが増えたこと」が特筆すべき点として第一に挙げられると思います。というのも以前のレオンであれば、左サイドからの仕掛けにおいてそのまま縦に抜いてクロスといった形が多かったものが、ゴール方向へ運んでいくことで積極的にニアゾーンに侵入できるようになったのではないかなと。ゴールに近づけばもちろんチャンスシーンとなる確率は高まるわけで、そこからシュートやラストパスといった形で決定機を作り出すことが容易になります。
この点に関するデータを見ていくと、何より注目したいのが「ドリブルによるペナルティーエリアへの侵入回数」です

――参考4
今季のレオンの「ドリブルによるペナルティーエリアへの侵入回数」は平均「2.42回」。また、同スタッツにおけるセリエAの攻撃的MF・ウインガーを対象としたパーセンタイルは「96」という事で、リーグトップクラスの侵入回数を誇っています。
更に、このスタッツの比較対象を「過去のレオン」とすると、その変化(進化)は顕著です。

――参考5
上図はドリブルに関するレオンの平均スタッツを時期毎に並べたものです。数字は左から「20-21シーズン全体のスタッツ」、「21-22シーズン前半戦まで(12節)のスタッツ」、「21-22シーズン全体のスタッツ」となっています。
昨シーズンと比べてほとんどの数字が大きく向上していますが、中でも特筆すべきは赤枠で囲った部分(ドリブルによるペナルティーエリアへの侵入回数)です。これは昨季と比較して伸びたのはもちろんですが、「今シーズン前半戦のみ」のデータと比較しても大きく向上していることがわかります(1.64回→2.42回)。
このことから、シーズンを通してレオンはドリブル能力に磨きをかけ、重要なエリアに侵入していけるより危険な選手へ成長を遂げたと解釈することができます。最初に述べたように今季のレオンはリーグ戦最後の6試合で「3ゴール・6アシスト」と爆発しましたが、こうしたプレースタイルの進化と無関係ではないでしょうね。
(3)フィニッシュ
最後にフィニッシュの局面について。これまで見てきた通りエリア内(ニアゾーン)へと積極的に侵入していけるようになったレオンは、それによりゴールに繋がる可能性の高いシュートやラストパスも継続的に選択できるようになりました。リーグ戦11ゴール・10アシストという結果を見てもその効果は明らかですね。
こちらはセリエA公式が挙げている、レオンの今季リーグ戦全ゴール&アシストです。
ここまで言及してきたような流れからエリア内に侵入し、多くのゴールやアシストを記録しています。

――サンプドリア戦の場面。サイドから独力でニアゾーンに侵入し、そのままゴール

――ヴェローナ戦の場面。カウンターの流れから独力でニアゾーンに侵入し、ファーサイドから飛び込んだトナーリにラストパスを送った
中でも最終節のサッスオーロ戦は3アシスト全てがニアゾーンからのラストパスという事で、レオンは今季を通して1つの得点&アシストパターンを確立したといって良いのではないでしょうか。
○おわりに
ミラン加入3年目にして自己の持つポテンシャルを大きく引き出し、スクデット獲得と共にセリエAのMVPにも輝いたレオン。
特に今季最終盤戦の彼はエースと呼ぶに相応しい活躍ぶりでしたし、来季は更なる活躍が期待されるところです。
最後に。来季という事でいうと、今シーズン既に必殺パターンを身に付けたレオンの一定のパフォーマンスは保証されたようなものですが、そのポテンシャルを考えればまだまだ成長の余地があるように思われます。
例えばオフザボール。先述の通り後方からのロングボールの処理能力(コントロール)に長けたレオンは、いったん裏でボールを受ければそのフィジカル・スピードと相まって一気に決定機を作り出せる存在です。しかし、その裏抜けの頻度やタイミングに関してはまだ向上の余地がありそうですし、特により裏のスペースが無い状況でパスを呼び込む動き出しの精度といった点は更なる成長のために求められるのではないかと思います。そして、そういった部分を改善できればシーズン20ゴールの達成は十分に射程圏内でしょう。
そして彼のパフォーマンスはミランのシーズン成績に間違いなく大きな影響を与えるはずですから、その意味でもレオンには目が離せませんね。来季も非常に楽しみです。
それでは今回はこの辺で。