セリエAの選手登録枠とミランの編成について考える

今回は、以前いただいた「話題リクエスト」内にもいくつかありましたセリエAの「選手登録枠」について、ミランの事情と絡めながら言及していきたいと思います。
登録枠の基本情報

まずはセリエAの登録メンバーに関する基本的な情報から触れていきます。

・セリエAのメンバーの登録数は最大25人

・その25名の内、4名は「クラブ内育成選手」、4名は「国内育成選手」という制限が設けられている。この計8枠を埋められない場合、その分だけ登録可能数は減少する

・「クラブ内育成選手」とは「15歳から21歳までの間に、自クラブに3シーズンもしくは36カ月在籍している選手」、「国内育成選手」は「他のイタリアクラブで先の条件を満たしている選手」とそれぞれ定義される。なお選手の国籍は問わない。

・例外として、21歳以下の選手は先の登録メンバー数には含まれず、無制限に登録可能



こんな感じでまとめることができるかと思います。後は「EU外国籍選手を国外から獲得する場合~」といった細かい登録ルールもありますが、今回の趣旨とは外れるルールですので割愛します(上記ルールについては注意して書いたつもりですが、ミスや更なる制限などがあればソース付きでご指摘くださると助かります)



来季のミランのスカッド

以上のルールを踏まえた上で、この観点からミランの来季の登録メンバーについて考えていきたいと思います。

まずは「クラブ内育成枠」ですが、この枠が適用され得る現有戦力は「カラブリアガッビアポベガ(トリノから帰還)、プリッツァーリ(レッチェから帰還)」となっています。
今シーズン、当該枠を埋めていたのはカラブリア(と多分ガッビア?)でしたが、それに加えて来季はレンタル復帰するポベガが主力としてこの枠を埋めることが期待されますね。

その一方、ガッビアやプリッツァーリの去就は少し注意が必要かもしれません。ガッビアはピオリ監督が最低限求める能力の水準をクリアしていますし、戦力となるクラブ内育成選手は貴重なため第4・第5CBとして残留する可能性が高そうです。ただし、出場機会の確保および成長という点でいうと、レンタル移籍して経験を積んだ方がベターなのは間違いありません。

プリッツァーリについては後述するミランテの去就にもよるでしょうが、仮に残留しても第3GKとして出番が非常に少なくなることが予想されるため、(レンタル)移籍という選択も考えられます。また、彼の成長を考えるとそろそろ一つのクラブに腰を落ち着けて取り組んだ方が良い気もするのですが…。これは本人の意思やクラブの思惑、そして今話題としているルール上の制約もあり、難しい問題です。



続いて「国内育成枠」ですが、こちらはより重要度の高い論点となります。
今シーズン当初、当該枠を埋めていたのがロマニョーリコンティフロレンツィケシエの4名。このうちコンティが冬のメルカートで退団し、今夏にケシエが退団、またロマニョーリも退団濃厚という状況です。
そのため、レンタル移籍中のフロレンツィを完全移籍で獲得しようとしているのは、当該枠を埋められる選手だからという「戦略的な理由」もあるとされています。

残る3枠のうち、1枠はトナーリでほぼ確定です。今季までは21歳以下の恩恵を受けられたトナーリですが、来季は当該枠にスライドされるとのこと。
後の2人は現有戦力の中から考えると「カルダーラ(ヴェネツィアから復帰)、ミランテ」といますが、前者は放出が決定的とされ、後者も現時点で去就がはっきりしていません。おそらく前述のプリッツァーリと二者択一の関係にあり、もしプリッツァーリが残るならミランテは退団するのだと予想されます。

いずれにせよ少なくとも枠の1つは空くことが予想され、それはほぼ間違いなく補強によって埋めることになるでしょう。


続いては、登録制限の無い21歳以下の選手達についてです。こちらは現時点でラゼティッチダニエル・マルディーニコロンボ(SPALから復帰)の3選手が考えられます。

しかし、彼らはいずれもレンタル移籍して経験を積み、成長することが望まれる選手たちです。トナーリやカルルのようにチームの戦力だから残すというのであれば何の問題もありませんが、ただスカッドの量を担保するためだけに残すのは本末転倒でしょう。

中でもダニエルはその特殊性から残留の可能性も考えられますが、今季の起用状況を踏まえれば個人的に支持はできません。もちろん、今夏のプレシーズンで大きな結果を残し、来季は確かな戦力として計算されるのであれば良いのですが、そうでない限りレンタル移籍の可能性は真剣に考慮されるべきだと思います。


最後に、上記の育成枠や年齢に当てはまらない「その他多くの選手たち」についてです。現時点での現有戦力を列挙していくと以下のメンバーとなります。

メニャン
タタルシャヌ
テオ
バロトゥーレ
ケアー
トモリ
カルル
バカヨコ(※レンタル打ち切りが無い場合)
ベナセル
クルニッチ
ブラヒム(※レンタル打ち切りが無い場合)
アドリ(※ボルドーから復帰)
サレマ
カスティジェホ
メシアス(※クロトーネから買い取った場合)
レビッチ
レオン
ジルー
イブラ(※現役続行&ミラン残留の場合)

(以上はガゼッタの記事を参照したものですが、おそらくドゥアルテの存在が忘れられており、彼がトルコから戻ってきた場合はこの枠に入るものと思われます)



このように現時点では19名(20名)が考えられますが、もちろんこの移籍市場期間で大きな変動があるでしょう。そもそも登録枠の関係で全員残留はあり得ず、オリギやサンチェスの加入が決定的となった今、少なくともここから5~6選手の退団は決定的です。

その観点から見ていくと、まず構想外のカスティジェホドゥアルテ(レンタルバックしてきた場合)の放出はほぼ確定。仮に移籍を拒んだ場合、ともすれば登録メンバー外になる恐れすら考えられます。
そしてバカヨコ。レンタル契約が1年残っているためすんなり退団とはいかないでしょうが、戦力外選手を残すほど来季のミランの登録枠に余裕はないんじゃないかというのが正直な印象です。

後は去就不透明な選手が何人かいるため、彼らから少なくとも2~3人放出することになるかなと。具体的にはメシアスサレマバロトゥーレレビッチブラヒム辺りが現時点だ候補として噂されています(ただ、ブラヒムは残留が濃厚)。

一方の加入については、オリギサンチェスが当該枠を使って加入することが濃厚。残るメイン補強ポイントはCBと2列目アタッカーの計2・3人いますが、枠の関係上、先述した「国内育成選手」や「21歳以下の選手」を誰かしら獲ることになるでしょう。
そしてこの点からも、噂されるザニオーロデ・ケテラーレの存在は大きいように思われます。ザニオーロは国内育成枠で登録可能でしょうし、おそらくですが現在21歳のデ・ケテラーレ(2001年3月生まれ)は登録枠を考慮せず獲れる選手のはずですからね(違ったらすみません)。


ミランの補強の噂を調べる上で、今後はこうした観点も念頭に置いて見ていきたいと思います。

それでは今回はこの辺で。

8Comments

マツモト

えー

育成枠どちらもイタリア人という括りが無いのなら何の為にあるのかよくわからない、若手にレンタルで経験を積ませるのを阻害する目的❓
FW取らなそうならコロンボ半年残してもいいかも。

  • 2022/06/15 (Wed) 03:58
  • REPLY

Aki

本当に難しい問題ですね…ミランにとってもイタリアにとっても育成はこの上なく重要ですが、チームの勝利と並行させるのは本当に難しいです。
浅い理解で考えるイメージは、ラゼティッチ、コロンボ、ダニエル(ガッビアも?)はローンで、
クラブ内育成枠は、幸い数多くいるプリマの有望株をトップとプリマの二足の草鞋で枠埋めと経験積みを両立できればと思います。
その負担や代償があるのでしょうからわからないですが。

ケテラーレが登録枠外というのは盲点でした。育成枠が埋められなくて25人以下になっても登録できるということですね。こりゃますます来てもらうしかない!!

  • 2022/06/15 (Wed) 10:07
  • REPLY

名無しのミラニスタ

ケテラエーレはセリエAでは登録外だけど CLでは登録が必要だったりするので面倒ですよね。

  • 2022/06/15 (Wed) 12:14
  • REPLY

tonimi

 早速の更新お疲れ様です。ありがとうございます!
 この問題はどのクラブも頭を悩ませている問題ですよね。特に【 クラブ内育成枠 】を戦力で埋める場合は本当に苦労しますよね。その観点からも個人的にポベガ売却は断固反対派ですね。元々がプリマ大好き人間なので、【 国内育成枠 】をそれで埋めたい位ですからねー。
今シーズンのローマとかそういった中で、イタリア人枠を意識的に確保してきた所にモウの徹底した戦力外の選手を起用しない姿勢がプリマからザレフスキー、フェリックスの台頭させ、その中でUEL出場権とタイトル確保なので就任1年目ながら上手くやったなーっと想います。
 そう考えるとカルルは一年足りなかったのが地味に悔やまれますね。そういった点でラゼテッィチは未だ18歳なので。ここからの育成方針次第ではどちらにも対応出来るので。最低でも国内はクリアさせつつ、理想はクラブ内育成で戦力として育成出来れば良いですね。その為、これからもプリマは青田買いに近く海外から有望株をモンカダスカウトしてくると考えたら、本当にマツモトさんが仰る通りイタリア国籍の枠数をその中で更に確保しないと意味を成さなくなりそうですよね。実際、上記のローマのプリマ2人はポーランドとガーナ国籍ですから。

 そういった訳で少ないパイを奪い合い形になるので、活躍したイタリア人選手が高騰するのは必然な気がしますので、プリマの段階で確保だけではなく、ユーべが多用している買い戻しOPやアドリ方式を駆使するしか無いですね。結局、自クラブのトップ内で育成はほぼほぼ厳しい訳なので。母数を増やす為に上手く交渉して、他のセリエAや昇格を狙えるBチームで出場して今後もポベガに続く成功例を輩出したい限りです。
一応、来シーズンのセリエAに限定した場合の自分の把握しているクラブ育成枠該当選手を記載しておきます。トランスファーマーケットとかで調べた方が確実なので、ご参考程度に。

GK:該当者無し
DF:デシリオ(ユヴェントス・29)サンピリーシ(モンツァ・29)フィアモッツィ(エンポリ・29)ダルミアン(インテル・32)S・ロマニョーリ(エンポリ・32)
MF:ロカテッリ(ユヴェントス・24)クリスタンテ(ローマ・27)ヴェルディ(サレルニターナ・29)
FW:クトローネ(エンポリ・24)ぺターニャ(ナポリ・26)マンクーゾ(モンツァ・30)

降格チーム:DF:べッラノーヴァ(カリアリ・22)アルターレ(カリアリ・23)
在籍歴はあるも対象外:ギリオーネ(ジェノア・25)…15歳以前までの在籍
           ペッシーナ(アタランタ・25)…18歳で加入もローン移籍を繰り返し満たせず
           ヴァローティ(モンツァ・28)…      同上

 リストで考えたら、弟のバーター取引で年俸が破格の印象が強いドンナ兄こと、アントニオは枠・控えの面では非常に有効でしたね。なので、本当が移籍希望だったのか知らないですが年俸下げて残留でも良かったかも。
後は、個人的に全く把握しておらず、今シーズンのWSDの選手名鑑で認識し後半から主力CBとして試合に出場し始めたアルターレには密かに期待していたので延長勝ち取った後の降格で残念ですね。
 そして現在のイタリア代表にもミラン関係者も含めると多数いるのに、現状のミランは実質戦力として機能しているプリマッ子はカラブリアのみ。活躍している選手が居る中で考えたら、残念でならないですね。なので、このリストからの復帰組や新たな至宝がトップやローン先にて活躍等で出てきて欲しいので、そういう意味でもポベガには非常に期待したいシーズンになりそうです!

  • 2022/06/15 (Wed) 19:34
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To マツモトさん

コメントありがとうございます。

コロンボの残留はシーズン後半戦のイブラ復帰までの繋ぎで、ということですよね。新加入のオリギがどれだけ早くフィットするか未知数で、レビッチの去就も不透明という現状ですと、FWの陣容は色々な可能性が考えられそうです。

  • 2022/06/16 (Thu) 20:54
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To Akiさん

コメントありがとうございます。

育成枠の設定には「若手の起用を促進する」目的があるのでしょうが、殊にビッグクラブにおいて出場機会は二の次で、とりあえず枠を確保するために若手を残留させることになってしまいがちなのが気がかりですね。来季のミランはどうなるか…。

デ・ケテラーレは欲しいですよね~。能力的にはもちろんですが、今回の観点からも獲得は支持できますね。

  • 2022/06/16 (Thu) 20:55
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To 名無しのミラニスタさん

コメントありがとうございます。

在籍年数の問題でBリストには含められない、ということですよね。その分CLでは誰かを外すことになる可能性が高りますし、それによって外された選手とクラブに軋轢が生じるケースもありますから、そこは繊細なマネージメントが求められますね。

  • 2022/06/16 (Thu) 20:55
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To tonimiさん

コメントありがとうございます。

ポベガの存在はルール上の観点からも有り難いですよね。個人的にはまだポベガがトレード要員にされる可能性もあるんじゃないかと一部報道を見てヒヤヒヤしていますが、無事に残って欲しいと強く思います。
それと、エンポリの数選手について「アドリ方式」で獲るかも見たいな報道はこれまでもチラホラ見ましたし、出場機会を損ねず、かつ将来的な育成枠を埋める存在として確保するといった戦略的な補強が今夏見られるかもしれませんね。

クラブ内育成枠を使える選手一覧という事で、列挙いただき大変ありがとうございます。グーグルフォームでの継続的なお題の提供といい、何から何まで感謝です。
この中ですと、ベッラノーヴァはミラニスタの方から何度か獲得希望の話を聞きますね。左SBにコンバートしてテオの控えとして扱えれば…。といった趣旨で、確かにテオの控えをもし国内育成枠で補えるならベストかなぁと思います。
今後この中から獲得の噂が浮上してもおかしなくいですし、注目していきたいですね。

  • 2022/06/16 (Thu) 20:56
  • REPLY