「ケシエの代役は誰になる?」その2~トナーリ、ベナセル等に期待される役割~

サンドロ・トナーリイスマエル・ベナセルレナト・サンチェストンマーゾ・ポベガ
はじめに

「ケシエの代役は誰になる?」と題しまして、今回はケシエがいなくなる来季のミランの中盤について、自分なりの考えを書いていきます。

なお、ここからの内容は以下の記事を踏まえたものとなっていますので、未読の方はそちらを先にご覧下さい。

トナーリに期待される役割

まずはケシエの特長の1つであった「プレーエリアの広さ及び安定感」という部分について。
試合毎あるいは試合状況に応じてボール保持時に立ち位置を変えるなどして、チームの攻守の安定を維持する機能を担う際に強い安定感と柔軟性を発揮したケシエ。

この点、ミランではダブルボランチ(トナーリ、ケシエ、ベナセル)が当該役割を分担する形が多かったわけですが、状況によってはそうした機能を1人が集中的に担う試合も結構ありました。
その場合は1人がアンカーポジションに入り、DFラインの前でボールを引き出してビルドアップをサポートしたり、ネガティブトランジションに備えてスペース・選択肢を注意深く監視したりする形で機能。こういった役割をケシエは十分なレベルでこなしましたが、試合によってはトナーリも同様の役割をこなしていました。

そしてトナーリがこうした役割を十分に遂行し、チームの勝利に大きく貢献した例として以下のローマ戦を挙げることができます。





離脱者続出により、CBにカルル&ガッビアという急造コンビで挑まざるを得なかったこの試合。当時はカルルもCB起用が本格化する前という事でやや不安定なプレーも見られました。
そういった彼らの前にポジションを取り、広いエリアをカバーしたのがトナーリだったのではないか、と。

【21-22】ミラン対ローマ_戦術分析16
――ローマ戦(前半)におけるトナーリのポジション取り

また、ケシエの守備面における大きな貢献の1つに「オープンスペースでの対応力(もしくは相手に仕掛けさせない抑止力)」という点を前回の記事で挙げましたが、この点はトナーリも素晴らしいものを持っています。

強靭なフィジカルと速いトップスピード、そして献身性を持っているため、相手の仕掛けに対しても臆することなく対応し、ピンチを未然に防ぐことが可能です。

【21-22】トナーリ_ローマ戦1
――例えばこのローマ戦の場面。ザニオーロがCBガッビアとのマッチアップ(赤)を制し一気にゴール前へと前進を図るが、そこへトナーリがカバーに入る


【21-22】トナーリ_ローマ戦2
――エリア内に侵入するザニオーロにトナーリが献身的に対応


【21-22】トナーリ_ローマ戦3
――ここでトナーリがザニオーロとの競り合いを何とか制し、事なきを得た

更に、プレッシングの際に寄せにいった相手ボールホルダーに対し、積極的にボールを奪いにかかるよりも自由なプレー(前進)の阻止に重きを置くプレースタイルという点で、トナーリはベナセルよりもケシエに近いところがあります(ベナセルは隙あらばボールを奪いにかかるタイプ)。データ上もベナセルに比べてドリブルで抜かれる回数が少なく、セリエAでも上位の成績を記録していますしね。

【21-22】トナーリ_ドリブルで抜かれた回数&ドリブルに対するタックル成功
参考1:今シーズンにおけるトナーリの「ドリブルで抜かれた回数」と「相手のドリブルに対するタックル成功率」の平均、及びセリエAの中盤の選手を対象としたパーセンタイル

このように見ていくと、僕の考えではケシエが担った主要な役割の多くはトナーリで十分にカバー可能ではないかなと。状況に応じて様々なタスクを担い得るトナーリですから、来季はより攻守のバランスを司る機能を担う比重を高めれば良い、と。
確かにケシエと比べ多少フィジカル性能やタフネスさという面で見劣りはするかもしれませんが、それはトナーリの他の長所で補いつつ、トータルでチーム力を向上させられれば良いわけですからね。

例えば、前に上がったSBの背後に回らせビルドアップに深く関与させるタスクを任せる場合、トナーリならば安定したパスだけでなくよりクリエイティブなパスを定期的に出していくことが期待されます。


【21-22】トナーリ_左CB1
――例えばこのサッスオーロ戦の場面。一時的にケシエと役割を交換し、外に開いてボールを受けるトナーリ。そしてフリーでボールを持ちながら、前方の状況を確認していく


【21-22】トナーリ_左CB2
――その後の場面。裏に抜けだしたサレマにトナーリがロングパスを出す


【21-22】トナーリ_左CB3
――パスは抜け出したサレマの足元にピタリと収まり、そこから一気に決定機に繋がった

この点、中盤(中央)ですと相手のプレッシャーがキツく、現時点でプレス耐性が高いとは言えないトナーリがビルドアップに十分に絡めないシーンというのも見られます。しかしこのように下がり目の位置でボールを持てば相対的にプレッシャーが弱くなりやすいため、彼のパスセンスがより活かされ易くなる可能性も多分に考えられますね。

ケシエがこなすことの多かった外に開く動きをトナーリに頻繁に任せるようになった場合、最初は若干手こずるかもしれませんが、プレービジョンのあるトナーリなら直に問題なく行えるようになるはずです。



ベナセル、レナト、ポベガに期待される役割

ベナセルやレナト・サンチェス(加入濃厚)もまた、自らの強みでケシエの穴を十分以上に埋めることが期待されます。

先に少し言及したように、アグレッシブなプレースタイルが魅力なベナセルはボール奪取能力+回収能力という点でチームトップクラスですし、データ上もセリエAで上位の数値を記録しています。

【21-22】ベナセルボール奪取&回収スタッツ
参考2:今シーズンにおけるベナセルの「タックル数」、「タックル成功数」、「ボール回収数」、「インターセプト数」の平均、及びセリエAの中盤の選手を対象としたパーセンタイル

確かにフィジカル(体格)面でどうしても限界はあり、その点でケシエと比べると安定性は落ちてしまいます。しかし、体格的な差が少なければトップクラス相手(バレッラ等)でも十分に勝負できることは証明済みですから、対戦相手に応じて役割を微調整してあげれば大した問題にはなりません。殊に中下位クラブ相手だとベナセルにとって苦手なタイプが少ないこともあり、ケシエに全く引けを取らない安定した守備パフォーマンスを見せられますから、そういった場合に彼の不在は感じさせないでしょう。



そして攻撃面は言わずもがな、クリエイティブな能力の発揮(ドリブルや縦パスにより積極的に相手のプレスを突破するなど)とその更なる成長が期待されるところです。


続いてレナト・サンチェスについては、攻撃的な役割を任された時のケシエの「代役」として、必要十分なパフォーマンスを見せてくれるでしょう。
ドリブルやキープ、パス、後方からの飛び出し・侵入などあらゆる形でチャンスメイクを行うことが期待されますし、こうした攻撃性能はケシエよりだいぶ上のはずですから、彼を獲得しようとするのも個人的に頷けるところです(詳しくは獲得が決まってから書かせてもらいます)。

最後にポベガですが、彼もまたケシエの退団と関連付けたときに考慮すべき選手でしょう。ダイナミズムを武器とするポベガは前方のスペースを突く動きで崩しに積極的に絡んでいくことが期待され、試合によってはケシエのようにトップ下で起用され攻守にその武器を活かす可能性が考えられます。

また、トリノにてマーキング能力を高めた彼は守備面においても期待できそうですし、ともすればミランでは守備においてより重要な役割を果たすようになるかもしれません。ケシエも元々はもっと攻撃的なマインドを持っていたわけで、それがバランスの取れた選手へと変化したわけですから、ポベガが同じような成長路線を辿る可能性は考えられるかなと。
彼についてもサンチェスと同様、実際にチームに加入してから色々と見ていきたいと思います。


おわりに

ケシエの安定感は特筆すべきものがありました。とりわけ、全くといってもいいほど怪我をせずコンディションを維持し続ける頑丈さ・タフネスさは素晴らしかったですし、長丁場のシーズンにおいてこれほど重要な能力もないでしょう。
とは言え、今のミランにおいて技術的・ピッチ上でのパフォーマンス的にケシエが不可欠な存在かというと、個人的にそうは思いません。

今チームにいるトナーリ、ベナセル、そして今夏から加入する(予定の)サンチェス、ポベガがそれぞれの強みを発揮し、先述のような期待通りの活躍を見せられればその穴は十分以上に補えると思います。また、緊急事態においては今季のようにクルニッチも対応してくれるはずですしね。
そして現在の安定度からは少し落ちるかもしれませんが、その分よりアグレッシブかつ攻撃力のあるチームへ変化することも十分に可能でしょう。

このように僕としてはポジティブなイメージを持っていますし、それが実現してくれることを願うばかりです。


それでは今回はこの辺で。

2Comments

マツモト

そういうこと

おっしゃる通り中盤これだけ面白そうな選手が揃うとなるとケシエの代役は必要ないですね、特徴を生かしみんなで新しく最適解を作って行くのが見たい。
そうなるとラデの出番が少なくなりそうで。

  • 2022/06/11 (Sat) 05:52
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カカニスタ22

カカニスタ22

To マツモトさん

コメントありがとうございます。

クルニッチは今季もバックアッパーとしての側面が強かったので、もし新加入選手たちがすんなりと適応した場合、彼の出場機会が減る可能性は高いですね。
ただ、僕も好きな選手ですし、来季も少なからず出番はあると思うので無事に残留してくれるとチームとして非常に助かるのですが…。

  • 2022/06/11 (Sat) 09:05
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