ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴 【前編】


 今回は、どの試合でもおおむね当てはまったミランの攻撃・守備におけるプレー原則(戦術上の指針のようなもの)を見ていきたいと思います。

 続き物ですので、前回の記事をまだ読んでいないという方はコチラからどうぞ。


攻撃におけるプレー原則

 ガットゥーゾ・ミランに当てはまる主な特徴の1つは、「後方から徹底的にショートパスで繋いでいく」というものです。

 仮に相手が前から激しいプレスをかけてこようがお構いなく、GK、4バック、アンカーの計6人を中心にショートパスを繋ごうとします。

ガットゥーゾ・ミラン4

 そして相手のプレスを上手くかわせた後は、チームの持ち味である走力を活かして一気に前線にボールを運んでチャンスを作ろうというのがおおまかなプレー原則でした。

 しかし残念ながら、このメカニズムはそう上手く機能していないのが現状です。

 実際のところ、相手が激しいプレスをかけてきた場合はほとんど思い通りにボールを回せず、大抵はサイドにボールを誘導され手詰まり状態となり、そこから精度の低いロングボールを蹴らざるを得ないという状況に追い込まれてしまっていました。

 しかも最悪の場合は自陣ゴール前でミスパスをしてしまい、その結果、相手に決定機はおろか得点を許してしまうということも1度や2度じゃありませんでした…(特にシーズン序盤はそうでした)。

ミラン インテル2


 例えば上図のように、相手に1対1で前からマンマーク気味に付かれた場合に特に苦戦していましたね。
 
 これははダービー戦における一幕です。ドンナルンマ→ムサッキオ→カラブリアと繋ぐも相手がマンマーク気味にハイプレス。下がってきたスソにもアサモアが付いてきてパスコースを封じられました。

 こういった際、ボナベントゥーラないしチャルハノールが下りてきてビルドアップに加わる形が時折見られましたが即興的で、意図した形ではないように見受けられました。



 とはいえ最近の試合では改善の兆しが見られます。というのも、予めバカヨコもしくはケシエといったフィジカルの強い選手をやや高めの位置にポジショニングさせてロングボールのターゲットとすることで、後ろで詰まった(詰まりそうな)時は彼らを起点にボールを前進させるといったビルドアップの方法を身につけつつある印象です。

 根本的な解決ではないかもしれませんが、以前よりは相手に好き放題やられることはなくなったと思います。


守備におけるプレー原則

 ミランの守備におけるプレー原則として、まず第一に「ミドルゾーン(ピッチを横に3等分したときの真ん中のスペース)に素早く守備ブロックを形成する」というのが挙げられるでしょう。
 これはシステムが4-3-3でも4-4-2でも3バックでも変わりません。


 例えば攻撃的なチームであれば、ボールを失ったら即時奪還を目指してその場でハイプレスをしかけるといった場合もあると思いますが、ミランはそうではなく基本的に守備ブロックの形成を重視している印象です。

 そして、相手が一定のラインを越えてボールを運んで来たら素早くプレスを仕掛けてサイドに誘導し、そこでボール奪取を狙います。
 また、相手がバックラインでパスを回している場合やパスを後ろへ戻したりした後はそのままボールに食いつき、ハイプレスに移行する場面も見られますね。


 陣形を整えた後、プレスをかけに行く場合は(自分・味方のシステムにもよりますが)インサイドハーフの両方が相手CBにプレスを仕掛け、トップのイグアインは相手アンカーを見るという形が多く見られました。

ガットゥーゾ・ミラン5


ガットゥーゾミラン6


ガットゥーゾミラン7



 以上のようにして、(特にシーズン序盤は)アグレッシブな守備を行って相手をなかなか自由にさせず、プレスを外されてボールを運ばれた際にも素早い帰陣(リトリート)を見せたミラン。

 運動量と献身性は近年のミランでも最高クラスだと思います。ガットゥーゾ監督の指導の賜物でしょうね。
 

 しかし、開幕から10試合連続失点という不名誉な記録を残したことからも分かる通り、守備面に関しては多くの問題を抱えていたのも事実。
 
 その点に関しては次々回の【後編】にて分析していきたいと思います。





 …以上が、僕が考えるミランの攻守における基本的なプレー原則でした。



 次回は攻撃の局面を詳しく見ていく予定です。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。



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[ 2018/11/17 20:10 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴 【導入】



はじめに

 数カ月前に18-19シーズンがスタートし、ここまで12試合が行われたセリエA。
 シーズンの約3分の1を経て、各チームの長所も短所も浮き彫りになってきたかと思われます。

 そこでちょうど代表ウィークということもありますし、今回から4回に分けて、これまでのガットゥーゾ・ミランの戦術的評価を僕なりにしてみようかなと思います。

 【導入】と題した今回は、チームのこれまでの成績と採用したシステムを概観していこうと思います。

 次回はチームの攻撃・守備における基本的なプレー原則を振り返り【前編】、それ以降は攻撃・守備それぞれの局面について、実際に試合中にあった場面に触れながら具体的に分析していけたらと考えています【中編・後編】。



暫定成績(12節終了時点)

順位;5位(4位ラツィオとは勝ち点1差)
勝ち点;21(6勝3分3敗)
得点;21(リーグ6位)
失点;16(リーグ11位)




 個人的に、順位に関しては文句ありません。
 序盤に3試合連続の引き分けをやってしまったときはどうなるかと思いましたが、現時点では目標の4位との勝ち点差は1です。

 得点数に関しても、スソにあまりに依存している(4ゴール8アシスト)点は気になりますがまずまずの出来かなと。

 失点数に関しては改善の必要性が特大です。開幕から10試合連続失点といった事態は今後絶対に繰り返してはいけません。



採用システム

4-3-3

ガットゥーゾミラン1


 昨季に引き続き、開幕から9節のインテル戦までは常にこのシステムで試合をスタートさせていました。
 メンバーについても、怪我等で試合に出られない状況を除けばほぼこの11人で固定されていましたね。

 このシステムの右サイド(カラブリア、ケシエ、スソ)のトリオは昨季からやっていることもあり、時には非常に連動した動きを見せていました。

 一方で、「アンカーの両脇のポジションを相手に利用される」という構造的な弱点に対する解決策は未だ明示されていません。
 今後このシステムに戻すのであれば、この点の修正が求められますね。


4-4-2

ガットゥーゾミラン2


 10節のサンプドリア戦からスタートシステムとして採用。その後も断続的に使用されました。
 このシステムの特長は、何といってもクトローネとイグアインを同時にピッチに送り出せるという点にありましたね。

 メンバーについてはこの時期から負傷者が続出したこともあり、これまでとは違い試合毎に変わっていきました。


3-5-2(3-4-3)

ガットゥーゾミラン3


 ジェノア戦から採用されたシステムですが、この試合では厳密にいうとケシエがWB、スソがウィングに位置する3-4-3の形に近かったです。

 しかし、正直に言うとこのシステムはあまり機能していませんでした…。
 というのも、スソがあまり守備に戻らない(作戦?怠慢?)ため守備時には5-2-3といった形に頻繁になってしまい、中盤に広大なスペースが生じていましたね。



 以上の3つ(3-4-3を含めれば4つ)が、ミランがスタートから採用したシステムでした。



 次回から本題に入っていきたいと思います。

 
 最後まで読んでいただきありがとうございました。



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[ 2018/11/16 19:28 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

ミラン、サンプドリア戦は2トップでスタートか


『スカイ・スポーツ』によりますと、ガットゥーゾは次節のサンプドリア戦で2トップの採用を検討しているそうです。
当然のことながら、その狙いはイグアインとクトローネを同時起用することにあります。
全体のフォーメーションとしては4-4-2か3-5-2のどちらかになるとのこと。

4-4-2はアリだと思います。
メリットとしては孤立しがちなイグアインの近くに人を置けるという点、それに付随して中央のエリアでマークを分散できる点、(全員が献身的に守れれば)守備に穴ができにくいといったところでしょうか。


逆に問題は、献身的な守備と豊富な運動量が求められるサイドハーフをスソが務められるかという点です。
スソを外すという選択肢はあり得ず、また2トップは決まっている以上右サイドハーフでの起用は間違いないでしょう。

スソは守備時に担当するスペースへの戻りがやや遅く、また守備もそれほど上手くないため、この部分をどう対処するかが重要でしょうね。


続いて3-5-2について。仮にこのフォーメーションを採用するとしたら、おそらく守備を考えてのことだと思います。
サンプドリアは4-3-1-2で来るでしょうから、システム上は当然中央に人が多く位置することになります。

そこで3枚のCBとアンカーを恒常的に配置することで、数的優位を保とうという狙い(理論上は3人のアタッカーに対してこちらには4人のディフェンダー)があるのではないかと。



と、まぁここまでグダグダと書いてきましたが、なんだかんだでガットゥーゾ監督はいつも通りの4-3-3で挑むだろうというのが僕の予想です。


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[ 2018/10/27 10:59 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

ミハイロビッチ・ミランの瓦解~失速の原因とは~

「4-4-2」システムを採用し、手堅いサッカーで勝ち点を取っていたミハイロビッチ率いるミラン。

しかし、終盤戦に急速に失速。それによりミハイロビッチは解任の憂き目に遭い、後任のブロッキもミランを浮上させるには至らずセリエA7位、コパ・イタリア決勝でもユヴェントスに敗れ準優勝でシーズン終了。

結局3シーズン連続でヨーロッパへの切符を手にすることはできませんでした。

今回は、なぜミハイロビッチ・ミランが失速したのか、その原因を考察していきたいと思います(今更とか言わないで!笑)

[ 2016/07/07 19:38 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

アッレグリ・ミランの「4-3-1-2」 ~11-12シーズン~

今回は前回の番外編のようなもので、これまでに成功したミランの4-3-1-2システムを紹介しようと思います。

私がミランのサッカーを見始めるようになってから、アンチェロッティ、レオナルド、アッレグリ、(暫定監督として一試合だけ)タソッティ、セードルフ、インザーギ、ミハイロビッチと6(7)人の監督がミランの指揮官を務めました。


この中で、4-3-1-2を主軸にしてシーズンを戦い、素晴らしい成績を収めたのがアンチェロッティ(以下カルロ)とアッレグリです。

カルロ・ミランに関しては、一言でいえば「ピルロ・システム」。あまりに有名なものですのでさほど解説の必要はないでしょう。



それでは、アッレグリ・ミランはどのようなシステムだったのでしょうか。見ていきましょう。


[ 2016/03/06 12:28 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

今季前半戦 4-3-1-2はなぜ失敗したのか② ~センターラインの不調和と連動性の乏しさ~

前回の記事では、4-3-1-2システムを機能させる上で必要不可欠な選手と戦術的要素を取り上げました。

今回は、今季前半戦のミランの4-3-1-2がなぜ機能しなかったのかを書いていきます。


[ 2016/03/05 12:13 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

今季前半戦 4-3-1-2はなぜ失敗したのか① ~4-3-1-2システムを機能させるには~

ベルルスコーニ会長が何より好む「4-3-1-2」システム。

今季のミランはこのフォーメーションで開幕戦を迎えヴィオラに0-2の完敗。その後も4-3-1-2システムで勝ったり負けたりと安定感のない試合を続けていましたが、ナポリに0-4の大敗を喫したことでついにシステムを変更。

最終的には中盤フラットの4-4-2システムに落ち着き、安定感を取り戻したミラン。後半戦ではヴィオラに2-0の完勝。さらに敵地ナポリ戦で1-1の引き分けに持ち込むなど、内容・結果ともに前半戦とは大きく変わりました。。


ところで、なぜ4-3-1-2システムは失敗に終わったのでしょうか?


今回と次回の2回に渡ってその理由に迫っていきたいと思います。


[ 2016/03/05 08:42 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)