戦術Gの功罪


はじめに;失点減の要因

 リーグ後半戦が始まり、早くも4試合が消化されました。

 そんな中、ミランが喫した失点はわずか「1」。この4試合の中にナポリ戦とローマ戦が含まれていることを考えれば非常に素晴らしい結果であると言えるでしょう。


 では、かつては毎試合のように失点していたミランがなぜ好守を見せるようになったのでしょうか。様々な原因が考えられますが、自チームに関連するものとしては

守備戦術の変更
②ドンナルンマが凄い

の2つが主に挙げられるかと思います。

 ②について詳しい説明はいらないでしょう。単純にドンナルンマが凄すぎます。彼がいなければ何失点喫していくつの勝ち点を失っていたかわかりません。


 そこで、今回は①について詳しく述べていきたいと思います。



戦術Gについて

 ここ最近のミランの守備戦術(便宜上これを「戦術G」とこの記事では呼称します。Gは「Gattuso」のGです。安直です。笑)はピョンテクを除く8.5人(スソが忠実に守備タスクをこなしていないことが多々あるため0.5人分として計算)がミドル~ローラインで一端ブロックを作り、それからプレスをかけるというもの。
 もちろんトランジション時などにボールの即時奪回を目指してハイプレスをかける場面もありますが、基本はミドルプレスです。

 そしてそのプレスもそこまで激しくなく、直接ボールを奪いにいくというよりは相手のパスミスやロングボールを誘う形が多めの印象です。ですから割とあっさり自陣ペナルティエリア付近までリトリートすることも多いです。



戦術Gのメリット

 戦術Gのメリットは大きく分けて2つ。1つはほとんど機能していなかった継続的なハイプレスをやめたことで前線と中盤の選手が無駄な体力を使わずに済むようになったこと。


 そしてもう1つは、戦術Gが今のメンバーの個性におおむね合っていることです。

 例えばケシエ。最近の彼のパフォーマンスは素晴らしく、フースコの採点によれば先日のカリアリ戦のMOTMは得点を決めたピョンテクやパケタではなくケシエとのことです。

 戦術Gでは引いて守ることの裏返しとして、必然的にロングカウンターの局面が増えることになります。スプリントと運動量とスピードが要求される戦術Gとケシエの能力との親和性が高いことは言うまでもありませんね。

 他にも1トップに位置するピョンテクの裏抜けやスピード、チームのほぼ全員に見られる惜しみない献身性など、戦術Gを機能させる上で必要な要素はかなり揃っています。



戦術Gのデメリット①


 戦術Gのデメリットについても大きく2つに分けます。1つは守備にかなりの比重を置いているため、相手によっては攻撃がかなり機能しにくくなる点です。

 例えば、前回のローマ戦では守備の後のロングカウンターが上手くいきませんでした。スソがちゃんと守備に参加している場合、ミランは9人が引いて守っていますから前線にはピョンテクしかいません。

 つまりローマのように同格以上の相手や、トランジションやハイプレスに優れたチームを相手にする場合ですと、孤立したピョンテクへのロングパスやショートパスでの平面突破がかなり難しくなるので上手く守備から攻撃に転じることが出来ず、結果として押し込まれる展開になる恐れが現状かなり存在します。

 僕がローマ戦のマッチレポート記事でこの戦術を酷評した理由の1つがこれでした。引き分け狙いならともかく、勝利を目指していたなら適切な戦術(とスタメン選考)ではなかったなと。


 こういった問題を解決するためには、前線にもう1人残す、カウンターの練度を上げることなどが要求されますね。



戦術Gのデメリット②


 先ほどメリットについて言及した中で、「戦術がメンバーにおおむね合っている」と書きましたが、残念ながら全く合っていない選手が存在します。

 何を隠そう、チームのエースであるスソです。

 今シーズン前半戦のスソは紛れもなくチームのMVPだと思いますし、ファイナルサードで得意の形を作れたときの破壊力は相変わらず他の追随を許しません。

 しかし彼の抱える弱点として、運動量が少なく、守備に関してかなり緩慢です。またスピードがなくスプリントも得意ではない。つまり下がって守備ブロックに参加し、攻撃時にはスピードとスプリントが求められる今の役割には全く適していないわけです。

 この点に関しては本人も自覚があるのでしょう。先日、ガットゥーゾ監督が以下のように語ったそうです。




 確かにスソからしてみれば、自分の適正とは程遠い役割を課されるのは納得がいかないかもしれません。

 しかし、監督が指示している以上はそれに従ってもらう他ないですし、実際に彼の怠慢守備が原因で毎試合のように相手に決定機を作られている事実は決して見過ごせません(ドンナルンマがそれを尽く防いでくれているので現状そこまで問題視されてはいませんが)。


 ガットゥーゾ監督には今の曖昧な状況をすぐにでも何とかしてもらいたいですし、この露骨なまでの弱所を放置するのであれば遅かれ早かれ痛い目に遭う可能性は十分に考えられます。
 早ければ次節のアタランタ戦にも…。


 具体的な改善策としては、スソが下がらずに済むよう可変システムを採用する、説得して精力的に守備に参加させる、はたまた思い切ってスタメンから外すなどなど…。

 どれも一長一短ですが、とにかく何かしらの対応はして欲しいですね。



まとめ


 現在の戦術Gには上記に挙げたような明確な弱点が存在し、それゆえに手放しで褒められるものではないと個人的には思います。

 しかし、チームとして目指すべき方向性自体は間違っていないとも思いますし、ガットゥーゾ監督及びメンバーの能力を考慮すればこの戦術を突き詰めていくべきだと考えています。

 当面は上記2つのデメリットの改善に期待したいですね。


 最後まで読んでいただきありがとうございました。

[ 2019/02/12 13:00 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(2)

インザーギ・ミハイロビッチ・モンテッラ時代を振り返る

はじめに

 先日、面白いデータを見つけました。



 『Opta』によれば、14-15シーズン以降のミランの監督の中で、平均獲得勝ち点数が最も多い人物は現在のガットゥーゾ(1.74点)らしいです。

 また、他の監督についてはモンテッラ(1.60点)、ミハイロビッチ(1.53点)、インザーギ(1.37点)、そしてブロッキ(1.33点)だそうです。


 これを見た時にそれぞれのミラン時代を思い返したこともあり、今回はせっかくなのでこの4人(ブロッキ時代は短く、語ることも少ないため実質3人)が監督を務めていた頃のミランを振り返っていこうかなと。

 基本的に主観バリバリですのでご容赦ください(笑)




インザーギ時代



 スピードスターのエル・シャーラウィとメネズを中心としたハイプレス&速攻カウンターを見せた14-15シーズン序盤戦は素晴らしいものがありました。
 縦に速く、手数をかけない攻めは当時の戦力の質に合っていましたし、1トップのメネズ(トーレスの場合もあり)が空けたスペースにシャーラウィや本田が入ってきてフィニッシュに絡むという形は非常に組織的なものでしたね。

 しかし、徐々に失速。一番の原因は、戦術的に重要な役割を果たしていたシャーラウィが怪我で離脱したことでしょうね。

 それに加えてトーレスがイマイチ適応しきれなかったこともあり、メネズへの依存が非常に高まってしまいました。


 こういった状況に対しピッポは頻繁にフォーメーションやメンバーを変えるなど、何とか改善しようとする努力は見られましたがほとんど機能せず。
 このままシーズン最後まで状況を変えることはできず、最終的に10位フィニッシュで解任されました。

 結局のところ、失敗の理由はピッポの戦術的引き出しが少なかったことに尽きるかなという印象です。当時はトップチームの監督としてのデビュー年でしたから当然と言えば当然なのですが。



ミハイロビッチ時代



 15-16シーズン序盤、ベルルスコーニ会長に強制された4-3-1-2システムでのプレー内容は非常に悪く、早くも解任の噂がちらほらされていました。

 しかし、吹っ切れたミハイロビッチ監督はシステムを変更。4-3-3を経て4-4-2になってからのチームは非常に組織的で、意外性がなくとも堅実な、まさにミハイロビッチのチームと呼ぶに相応しいものでした。

 2トップのバッカとニアンは守備時にボールをサイドへと誘導するプレスを忠実にこなし、両サイドハーフの本田とボナベントゥーラは誘導後の相手サイド選手へのプレスと躱された後のリトリート+4-4ブロックの形成のために奔走。

 ボール奪取後はニアンがキープ、スピード、ドリブルといった自身の能力を存分に発揮してチームを押し上げカウンター攻撃を機能させ、本田・アバーテのクロス、クツカの後方からの飛び出し、ボナベンのドリブルやバッカのボックス内での駆け引きなどでフィニッシュに繋げました。

 システムを4-4-2に変更した12月(実際は多少時期が前後していたかもしれません)からの13戦で6勝6分1敗という成績からも分かる通り、引き分けも多いが何より負けない堅実なチームでしたね。


 失速の原因は間違いなくニアンの交通事故による長期離脱ですね。このチームのこの戦術において欠かせない戦力だったニアン、バッカ、本田、ボナベントゥーラの4人の中でも極めて重要な存在でしたから、彼の欠場はそのままチームの成績に直結し、延いてはミハイロビッチ監督の解任へと繋がりました。



 当時のミランは、アッレグリ4年目の末期――セードルフ――序盤戦以降のインザーギ――序盤戦のミハイロビッチ―と連続で個人技に頼り切りの組織力の低いサッカーを披露していました。

 それだけに、例え守備的でビッグクラブに相応しくないサッカーと言われようとも、ミハイロビッチ監督のこのサッカーは非常に魅力的に感じましたね。

 
 そもそもミハイロビッチがミラン就任以前に高く評価されていたのはこの組織的な堅守速攻でしたから、ミランでポゼッションサッカーをさせようというのであれば完全に人選ミスでしたね。


 前半戦の4-3-1-2縛りとニアンの長期離脱がなく、始めからフロントの理解とバックアップが万全であれば……と今なお思ってしまいます。



ブロッキ時代




 ミハイロビッチ監督の後任として残りの15-16シーズンを務めました。

 会長の息のかかった人物のため、「当然ながら」4-3-1-2システムで臨みましたが機能するはずもなく勝ち点をこぼし続け、最終的に7位フィニッシュとなりました。

 失礼ながらブロッキが優秀な指揮官だとは思えませんでしたが、あのチーム状況を途中就任で何とかするのはどれほど優秀な指揮官でも極めて難しいでしょう。

 非常に気の毒でしたね…。



モンテッラ時代



 16-17シーズン、就任1年目のモンテッラはシステムを4-3-3に回帰し、ジェノアから大きく成長して帰ってきたスソを軸にした(今のミランに繋がる)チームを構築しました。

 ビルドアップ時に相手のシステムに応じてサイドバック(デ・シリオなど)を中盤に組みこみ(俗にいう偽サイドバック)、円滑なパス回しを実現させるなど、戦術的柔軟性のある戦術家らしいアイディアを披露。

 攻撃時の前線では両WGが内に絞ってCFとの距離を近くすることで1トップの孤立化を防ぎ、空いたサイドのスペースはSBが使用して幅を確保。
 明確な狙いを感じる、攻撃的かつ組織的なチームでしたね。
 

 ただし、中盤以下のポジションに彼好みの選手が少なかった(おそらくトップもでしょうが)ということもあり、ヴィオラ時代のようなポゼッションサッカーではありませんでした。

それでもロカテッリを台頭させるなどして上手く凌いだことで6位フィニッシュ。久しぶりにヨーロッパカップ戦出場権を獲得しました。



 就任2年目となった17-18シーズン。フロントの刷新と共に大型補強を敢行し、いざCLへ…!と思いきや、チームが機能せず12月を待たずして敢え無く解任。

 ターニングポイントを挙げるとすれば、やはりラツィオ戦後から始めた3バックシステムへの変更でしょうか。

 ボヌッチが来たときからある程度3バックの構想はあったとは思いますが、スタメンの半分以上が新加入選手であったため当初は連携がチグハグでしたし、そういった状況下でシステムを変えたのは悪手でしたね。

 試合中でも守備時には3バックから4バックに変更するといったように、かなりの組織力が要求される戦術を試した試合もありましたし、スソをWBで起用するかなり不可解な采配もありました。


 解任後、当時スタッフを務めていたアッビアーティが「モンテッラは誰も信用していなかった」と批判していたことからして、チームの雰囲気も相当悪かったのでしょう…。


 戦術的引き出しの多さは近年のミラン監督の中でも1番だと思いますが、残念ながらそれを遂行する選手たちの心を掌握しきれなかったみたいですね。
 この点は今の監督であるガットゥーゾとは正反対と言えそうです。



おわりに


 以上、ここまで4人(実質3人)の監督時代におけるミランをそれぞれ僕なりに振り返ってみました。

 やはり個人的には後半のミハイロビッチ・ミランが好きでしたねー。次点で一年目前半のモンテッラ・ミランでしょうか。

 彼ら3人はミランでは成功とまではいきませんでしたが、こうして振り返ると凄く楽しかった思い出(試合)もいくつかありますし、ミランを指揮してくれたことに感謝したいですね。


 最後まで読んでいただきありがとうございました。

[ 2019/01/11 19:09 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(2)

チャルハノール・システム(仮)、遂に誕生か?


はじめに


 SPAL戦に2-1で勝利したミラン。

 『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によるこの試合の採点によると、4-3-3の左インサイドハーフで先発出場したハカン・チャルハノールは「6」点だそうです。

 おそらくこの試合の彼については賛否分かれると思うんですよね。「シュートを何度も外しやがって!」とフィニッシュの局面を重要視するか、「ボールに良く絡んでいたしアシストも決めた!」と組み立て~崩しの局面を重要視するかで大きく評価が変動するかなと。

 ちなみに僕は後者派です。むしろこの試合のチャルハノールが前半に見せたパフォーマンスには絶賛したいくらいです。

 それはなぜか。理由は、この試合の前半で見せたチャルハノールの戦術的役割が、今のミランが抱える「崩しの局面のアイディア不足」という問題をある程度解決し得るものだからです。


 というわけで今回は、チャルハノールのこの試合での実際のプレーを振り返っていくことで、如何にして彼がミランの勝利に貢献したか、延いては今後もミランに貢献し得るかを見ていこうと思います。


プレーポジションについて


 まず始めに、この試合のチャルハノールはピッチ上のどの場所でボールに触れたのかを見ていきます。


0チャルハノール タッチ

 こちらがWhoScoredの計測した彼の前半のボールタッチポジションです。



チャルハノールフロジノーネ前半タッチ

 そしてこちらが前節のフロジノーネ戦における前半のボールタッチポジション。


 2つを見比べると、SPAL戦のチャルハノールはセンターサークル付近で頻繁にボールを受けていることがわかります。


 以上のデータと、実際に試合を観た僕の見解を合わせるとこうなります。
この試合のチャルハノールは「央の低い位置でボールを受けて配給し、まるで司令塔のようにもプレーした」ということです。


 「ようにも」と表現をぼかしたのは、まさに司令塔(ピルロやシャビ)のようにゲームをコントロールした(できた)わけではなかったことと、チャルハノールの役割が多岐にわたったことの2つが理由です。


 なお、今回の「チャルハノールが司令塔のようにプレーした」このシステムを、当ブログでは「チャルハノール・システム(仮)」と名付けました。名前が安直過ぎるというツッコミには対応しかねますのでご了承ください(笑)

それと「(仮)」と付けた理由についてはこの記事の最後に説明します。




実際のプレー ①組み立て時に下がって2ボランチを形成


 それでは実際に、チャルハノールがこの試合でどのような戦術的役割を持ってプレーをしていたのか映像付きで説明していきます(映像の引用元はいずれもDAZN『ミラン vs SPAL』より)。。

チャルハノール2ボランチ



 こちらは4分の場面。まずここで注目していただきたいのが、チャルハノール(左インサイドハーフ起用、赤線で図示)とバカヨコ(アンカー起用、青線で図示)の距離が近いこと、そして2ボランチのようになっていることです。

 ただ実際に2ボランチだったわけではなく、ビルドアップ~組み立ての段階でチャルハノールが下がってきてボールを受ける。その結果として2ボランチのようになっているということです。

 通常の2ボランチとの違いは、前線から下がってくるため相手のマーカーが付いて行き辛く、結果的にフリーになりやすいという点ですね。

 この試合のSPALは中盤で5-3-2のミドルブロックかつ純粋なゾーンディフェンスだったため、中盤がチャルハノールの下がる動きにマンマーク気味にして付いていくことはほとんどありませんでした。そのため上記のシーンのようにフリーでボールを受けることが出来ていましたね。


 こういった動きの最大のメリットは、やはりビルドアップ~組み立てのフェーズが安定するという点でしょうかね。特に相手がハイプレスをかけてくるチームの場合、この下がってボールを引き出す動きは非常に重要になってくるでしょうね。

 ちなみにこのシーンでは、図示しているように前線に張るケシエへとハイスピードの縦パスを通し、相手の中盤のブロックを完全に無力化しています。




実際のプレー ②右サイドへのロングフィード


 この試合、少なくとも2回は観られたスソ(黄線で図示)への正確無比なロングフィード。組み立て~崩しの局面を一気にすっ飛ばす素晴らしいプレーです。

チャルハノールロングフィード


 相手が守備ラインを整える前に素早く縦に展開することにより、相手は後手に回らざるを得ず、こちらとしては決定機に繋げやすくなります。

 これこそが最初に述べた「ミランの崩しの局面におけるアイディア不足をある程度解決し得る」チャルハノールの非常に重要な戦術的役割の1つです。

 要は「引いて守りを固める相手を崩せないなら、相手が守りを固める前に崩せば良いじゃない」ということですね。

 このプレーが平然とできるのはミランではチャルハノールだけですからね。昨季のガットゥーゾ・ミランはこういった形がメイン攻撃の1つとしてあったのですが、なぜか今季はポゼッションサッカーに傾倒してこういった縦に速い展開は中々見られませんでした。

 今後も継続的にやってくれると嬉しいのですが…。



実際のプレー ③前線への飛び出し

 上記に挙げた、この試合におけるチャルハノールのプレーポジションをもう一度参照します。

0チャルハノール タッチ

 このデータを見ると、彼は組み立てに参加した後は積極的に前線に上がってボールを受け、フィニッシュに絡もうとしていることがわかります。

 実際、この試合のチャルハノールのシュート数は「6」。チームトップの数字ですからね。後はシュート精度が上がれば(もとい戻れば)申し分ないのですが…。
 
 

実際のプレー ④バカヨコとのポジションチェンジ

 前半の終盤からちょくちょく見られたのが、バカヨコとポジションチェンジしてアンカーポジションに移るというプレー。

チャルハノールアンカー1


 相手がほとんどプレスをかけてこない場合に有効な手段ですね。純粋な展開力という面ではチャルハノールはバカヨコより遥かに上ですからね(一方、プレス耐性が低いので、ハイプレスをかけてくる相手にはかなり危険だと思いますが。)。

 ちなみに、これにより前線に上がりバイタルエリアに侵入したバカヨコが、ケシエからのクロスを受けてフリーでシュートを打ったシーンも印象的でした。
 


…以上が、チャルハノールのこの試合(の前半)における具体的プレーと戦術的役割でした。



チャルハノール・システム(仮)を支える名脇役

 この試合でチャルハノールと中盤を形成したバカヨコとケシエですが、2人の役割もチャルハノールのパス精度を活かすために非常に重要なものでした。
 特にバカヨコ。彼の存在はチャルハノール・システム(仮)の存続延いては発展に必要不可欠なものです。



バカヨコの役割

 彼がこのシステムにおいて務める(今後務め得る)役割は大きく分けて2つ。1つはチャルハノールの守備力を補うことです。

 チャルハノールは運動量もあり守備にも献身的な選手ではあるのですが、フィジカルが比較的弱いのでタックルやボール奪取が上手くない。その上空中戦も弱い。
 そのため(実質)ボランチなどで起用すると守備時に相手に押し込まれてしまうリスクが極めて高くなります。

 事実、試合途中からカラブリアと一緒に2ボランチで起用されたフィオレンティーナ戦は完全に押し込まれましたからね。そして失点。


 一方のバカヨコは、もはやセリエA屈指といっても過言ではないボール奪取能力、及び無敵の空中戦を誇ります。
 
 ですので、仮にこの2人による2ボランチ形成中に嫌な形でボールを失いカウンターを食らっても、ある程度なら彼が何とかしてくれるでしょうね。


 もう1つの主な役割は、チャルハノールへといい形でボールを供給すること。
 様々な方法(敵マーカーを引き連れてフリーランすることでスペースを作るなど)が考えられますが、バカヨコだからこそできるプレーとして「強引な縦へのドリブルで相手を引き付けてからのパス」が考えられます。

バカヨコドリブル


 例えばこのシーンではバカヨコがフィジカルを活かしたドリブルで強引に縦へ持ち出し、敵を3人引き付けたところで脇にいるチャルハノールへとパスを出そうとしました。

 惜しくもここでは相手に当たってパスカットされてしまいましたが、仮にパスが通っていればチャルハノールが中央でかつフリーで前を向くことが出来ていましたし、かなり効果的なプレー選択だったと思いますね。

 余談ですが、この試合のバカヨコのドリブル成功数はチームトップの「6」回でした。



ケシエの役割

 ケシエに期待される役割は、前線へと果敢に攻め上がってチャルハノールからのパスコースを作り出すことです。

 これまでの画像からも明らかですが、この試合のケシエ(緑線で示していた選手)は非常に高い位置を取っていました。システム表記でいえばイグアインと並んで4-2-4と言っても過言ではないかもしれません。

チャルハノールサイドチェンジ

 そんなケシエに対し、相手の3バックの一角である左CBはかなり警戒していたと思います。そして彼に対するマークを優先したがゆえに左WBの裏のスペースをカバーしきれず、結果チャルハノールからスソへのロングフィードを何度も許してしまいました


 つまり今回は、直接的なパスコースを何度も作り出したわけではありませんでしたが、ケシエは自身の動きでチャルハノールからスソへのパスコースを間接的に作り出していたということですね。



 おそらく、もう少しレベルが上の相手と対戦する際はよりバランスを重視したポジショニングを取るでしょうが、その時も持ち前の運動量を活かしたフリーランでチャルハノールのパスコースを積極的に作って欲しいと思います。




終わりに


 以上、ここまでSPAL戦前半に見られたチャルハノールの戦術的役割や彼中心の攻撃(「チャルハノール・システム(仮)」)の具体的内容、及び彼を支えた中盤の役割をそれぞれ説明してきました。


 さて、ここで棚上げにしていた「(仮)」と付けた理由についてですが、それは今後もこのシステムが使われていくかわからないからです。

 というのも、このチャルハノール中心のシステムが見られたのは前半のみで、相手のシステム修正もあった後半開始からはほとんど見られなくなりました。
 加えてミランがクトローネを投入してシステムを4-4-2に変えてからはチャルハノールがサイドに追いやられたため、完全になくなりました。

チャルハノールSPAL戦後半

後半からのチャルハノールのボールタッチポジションを見れば一目瞭然ですね…。


 ひょっとすると、前半のプレーも個々人が独自の判断で勝手にやっていて、それを勝手に僕がシステムとして拡大解釈しているという可能性もゼロではありません…(ケシエの高い位置取りは間違いなく指示でしょうし、チャルハノールからスソへのロングフィードを活かす戦術は間違いなく意図していたでしょうが。)


 さらに言うと、このシステムが同格ないし格上相手にも通用するのかといった疑問もありますし…とにかくまだサンプル数が少ないため何とも言えないんですよね。



 しかし、そういった事情があるにも関わらずこうして時間をかけてじっくり書いたのは、この3MF(特にチャルハノールとバカヨコの関係性)にとてつもない可能性を感じたからです。


 チャルハノールの局面打開力の凄さはこの試合の前半だけではっきりと見て取れましたし、バカヨコの恐ろしいまでのボール回収能力やキープ力も健在でした。つまり、お互いがお互いの長所を活かし・短所を補える関係にあります。

 後はチームの組織力を高めてチャルハノールの短・中距離のパス能力も存分に活かせるようになれば、今のミランの抱えるビルドアップの脆さや崩しのアイディア不足はかなり改善されると確信しています。


 要はチャルハノール中心のシステムを作って欲しいということですね。彼はそれだけのポテンシャルを持っていると思いますし、それによるデメリットを補える男(バカヨコ)も幸い今のミランには存在しますから。


 数週間後にはリーグ後半戦が始まります。おそらく開始からしばらくはこの3MFが見られるはず。
 今後どのような展開を見せるのか……通常の逆3角形型でいくのか、はたまたチャルハノール・システム(仮)の継続、、果ては発展して(仮)が取れるほど組織としての完成度を高めていくか…。


 注目していきたいですね。



長くなりましたが、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました!

[ 2018/12/31 13:02 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

フランチェスコ・グイドリンとは何者か ~偉大な実績とその戦術的特徴~


はじめに

 ガットゥーゾ監督の去就が騒がれ始めてしばらく経ちましたが、メディアはその後任候補として様々な名を挙げています。

 ユヴェントス、チェルシー、イタリア代表などを率いた経験を持つコンテや、元アーセナルのベンゲル、ミランOBにしてかつては日本行きも噂されたドナドーニなどなど…。


 その中でも、個人的に最も注目しているのがフランチェスコ・グイドリンです。



 最近セリエAを見始めた方や、セリエA自体にあまり興味のない方からすれば「グイドリンって誰?」「プレミアのスウォンジーですぐに解任された人」などといったポジティブではない印象を持たれているかもしれません。

 しかし、戦術家としての能力と育成の手腕に関しては紛れもなく本物です。断言します。


 今回は、そんなグイドリンの指揮していた当時のウディネーゼの成績・試合などを分析することを通じて、彼の凄さや戦術的特徴について明らかにしていきたいと思います。最後に、ミラン監督就任の是非について自身の見解を表明します。


 ちなみに記事の執筆に至った理由は主に以下の3点です。

 

 ・ミランの監督に就任する可能性があるから
 ・その偉大な実績や実力に比べて知名度が低いと思ったから
 ・個人的に大好きな監督だから(これが最も重要です!笑)





ウディネーゼでの偉大な実績①CL権獲得


 彼という人物を語るにはあまりに不十分ながら、彼の凄さを明らかにする上では十分なデータがあります。

 それが、ウディネーゼの過去のリーグ戦成績です。

09-10 15位
10-11 4位グイドリン就任
11-12 3位
12-13 5位
13-14 13位
14-15 16位↓グイドリン退任
15-16 17位
16-17 13位
17-18 14位




 グイドリンが監督を務めた4シーズン(10~14)とその前後であまりに大きな差があることがわかります。
 確かに、最終シーズンこそチームの核であるディ・ナターレの衰えや移籍した主力の穴埋めに苦戦したため好成績を残すことが出来ませんでしたが、それまでの3シーズンはクラブ規模や戦力を考慮すれば望外の結果と言えるでしょう。

 特に最初の2シーズンはCL権まで獲得していますからね(予選プレーオフで敗退したため、惜しくもCL本戦に進むことはできませんでしたが)。
 
 21世紀に突入してからはユヴェントス、インテル、ミラン、ローマ、ラツィオ、ナポリに独占されていた(もとい現在もされている)トップ3の座を唯一奪ったのがこのグイドリン・ウディネーゼです。
 

ウディネーゼでの偉大な実績②選手育成


 選手育成が非常に上手であるというのもグイドリンの特徴であり、彼の本当に凄いところです。
 
グイドリン1


 これは10-11シーズンのウディネーゼの主なスタメンとそのシステム(※あくまで1例)ですが、もうこれを見ただけでお気づきの方もおられるかと思います。

 そう、メンバーが凄いんです。詳細は省きますが、彼らの多くが数年後に上位クラブへステップアップを果たしています。

 もちろん彼らはウディネーゼに来た当初から凄かったわけではなく、ウディネーゼ(グイドリンの下)で成長を遂げた選手がほとんどです。というか加入当時はほとんどが無名選手でした。

 ちなみにこのシーズンの終わりにはサパタ、インレル、サンチェスという主力3人が抜けましたが、実力未知数であった新加入選手(ダニーロなど)が穴を埋めた翌シーズンは更に順位を1つ上げる(3位)サプライズを演出。

 グイドリンの育成能力(及び組織構築能力)、そしてウディネーゼの才能発掘能力にはただただ驚かされましたね…。



グイドリンの戦術について


 いよいよ、本題であるグイドリンの戦術の話題に移ります。

 まずはグイドリン・ウディネーゼにおいておおむね見られたプレー原則(※攻守におけるチームの指針・超基本的な約束事)について説明します。
 攻撃のプレー原則は「縦に速く、素早くフィニッシュに繋げること」、そして守備のプレー原則は「中央エリア、特にバイタルエリアでは絶対に相手を自由にさせないこと」であると言えるでしょうね。

 
 続いて、こういったプレー原則を実現するための手法すなわち戦術について解説…といきたいところですが、最初に断っておきますとグイドリンが固執している戦術はありません。

 「どういうこと?」と思うかもしれませんが、これがグイドリンのグイドリンたる所以です。

 すなわちグイドリンの戦術の最大の特徴は、ほぼ常に「対戦相手に応じて攻撃・守備の戦術が明確に変わる」ことです。
 試合前に対戦チームの長所・短所を徹底的に分析し、相手の「長所を潰す」守備と「短所を突く」攻撃を練り上げて試合に臨みます。

 ですから相手の特徴に応じてシステムも頻繁に変わりますし、試合へのアプローチも様々です。

・自陣深くに引いて守ることもあれば、ハイプレスを仕掛けたりすることもある(ハイプレスはかなり稀でしたが)。

・純粋なゾーンディフェンスで守ることもあれば、相手キープレーヤーをマンマークで徹底的に封じるなどして守ることもある(WBを相手SBにマンツーマンで張り付け、ビルドアップに参加させないなど)。

・サイドから執拗にクロスを上げることもあれば、素早く相手DFラインの裏へとロングボールを蹴り込むこともある(蹴り込む位置も試合毎に変わる)。



 
 以上のように、試合毎に(場合によっては1試合の中でも)様々な戦術を「明確に」使い分け、必要とあらば試合中にシステムをも変える。そしてその複雑な指示に忠実に応えるチームの組織力の高さと、それを作り上げたグイドリンの手腕

 これこそがグイドリンと彼のウディネーゼの最大の魅力であり、純粋な戦力から予想される成績を大幅に超えた結果を残した1番の理由でしょうね。

 



具体例 ~VSミランの場合~


 以上の説明だけではピンと来ない人も多いと思うので、実際に当時(10-11シーズン)のスクデット覇者ミランに対し、グイドリンがどのような戦術を用いて臨んだのかを具体的に見ていきたいと思います。

 当時のミランのシステムは4-3-1-2。さらに当時のミランにはイブラヒモビッチを筆頭に世界最高の選手たちがいましたので戦力差は明白でした(この試合ではネスタやピルロなど欠場者も多数いましたが。)

 そんな彼らに対し、グイドリン率いるウディネーゼはどう対抗したのか。箇条書きにすると

・システムは3-5-2

・中央突破を図る傾向の強いミランに対し、まず中央をガッチガチに固めて中央エリアで出来る限りプレーさせず、サイドへボールと人を誘導。

・ミランのシステム上、サイドの幅を使うのは主にSBの役割。ゆえにサイドを「わざと」使わせることでミランのSB(主に左SBのアントニーニ)のオーバーラップを誘発する。

・ボールを奪ったら即座にカウンターへと移行。ミランはSBが上がってしまっているためもろに鋭いカウンターを浴びる場面が頻発。

・攻撃ではクロスを中心に攻めることで、相手CBのボネーラの抱える1対1と空中戦の弱さを突く。

・これに対しミランがサイドをケアすれば、今度は空きがちとなったバイタルエリアからインレルが強烈なミドルシュートで襲い掛かる。




…といった感じですね。


 結局、この試合のスコアは4-4。スコアだけ見ると攻撃は良くても本当に守備が機能していたのか怪しいと感じるかもしれませんが、ミランのゴールはほとんどがイブラヒモビッチの破壊力、パトの決定力、カッサーノの創造力といういずれもトップクラスの個の力に大きく依存したものと言えました。

 イブラとカッサーノの相性の良さは少なくとも僕の知る限り歴代最高レベルのものですし、ウディネーゼ(もといプロヴィンチャクラブ)がどれだけ見事な守備を披露してもゴリ押されてしまうレベルの個の力だったと思います。それに疲労もあったでしょう。

 実際、カッサーノが投入されたのは69分で、その後78分から92分という終盤の時間帯に3ゴールが生まれましたしね。それまでのウディネーゼは攻守ともに本当に素晴らしい組織的なサッカーでした。


 このトピックの最後に、上記の試合のデータを参照します(以下の画像はいずれもWhoScoredより引用。)

bandicam 2018-12-28 18-07-04-605

ミランの平均ポジションを見ますと、やはり左SBのアントニーニ(77)が高い位置を取っていることがわかります。


bandicam 2018-12-28 18-07-15-011


 一方のウディネーゼですが、こちらはミランに比べ縦にも横にもコンパクトですし、しっかりと組織的に守っていた1つの証拠と言えるでしょうね。
 またこの画像だと26番のパスクアーレがやや浮いていますが、おそらくウディネーゼ側右サイドにミランを誘い込んだ際に反対側でカウンターに備えていたことが原因だと思われます。




グイドリンの欠点

 最後に。ここまで彼の素晴らしい部分のみに焦点を当てて紹介してきたわけですが、もちろん彼にも欠点は存在します。箇条書きにしますと

①組織の構築にかなりの時間がかかること
②相手にボールを持たされた時の打開力にやや欠けること
③上層部と何度か対立を起こしていること
④ ビッグクラブでの指揮経験がないこと




…といったところでしょうか。

 それぞれについて解説もとい弁解をします(笑)


 ①について。最終的に4位に食い込んだ10-11シーズンですが、実は開幕から4連敗スタートだったんですよね。
 もしビッグクラブでそんなことをすればメディアとサポーターからの大バッシングは間違いなく、最悪の場合は開幕早々の解任すら起こりえます。

 途中就任から何度かチームを立て直している実績があることからも、時間がなければどうしようもないというわけではないと思います。
 しかし彼の本領は時間がたっぷりあってこそ発揮されるでしょうし、十分な猶予を保証するべきでしょう。
 その分、組織が完成した際の威力は凄まじいですからね。


 ②について。ビッグクラブではボールを持たされる試合が多いですから、この欠点はビッグクラブを指揮する上では見過ごせません。
まぁしかしプロヴィンチャクラブとは戦力の質も量も違いますし、戦力さえあれば改善する可能性はあると個人的には思います。


 ③について。何度か上層部との確執により退任ないし解任されたことがあるのですが、これは主にパレルモの名物会長であるザンパリーニ氏との間で起こったことというのは考慮すべきでしょうね(笑)


 ④について。かつてのインタビューで語っていましたが、年齢の問題もありビッグクラブでの指揮にあまり関心がないそうですね。
 確かにプレッシャーやしがらみの少ないプロヴィンチャクラブで自身の辣腕を振るうのが性に合っているのかもしれませんが…。
 彼の実力であれば、もう少し上のクラブでも十分に通用すると思うんですけどね。





終わりに

 以上、ここまで当時のウディネーゼの成績・試合の分析を通じてグイドリンの凄さや戦術的特徴、及びちょっとした欠点を見てきました。

 これでも精選したつもりなのですが…とんでもない文量になってしまいました(笑)
 それだけ僕という男がグイドリンを崇拝しているのだと好意的(?)に受け取っていただけたら幸いです。



 正直のところミランに来る可能性は低そうですし、仮に来てくれたとしても上記に挙げた欠点を考えると成功することはかなり難しいとは思います。

 ですが大好きなクラブで大好きな監督が指揮を執ることを想像したらやはりとてつもなく嬉しくなりますし、もし実現したら狂喜乱舞するでしょうね(笑)




 ものすごーーーーく長くなってしまいましたが(間違いなく当ブログ史上最長記事)、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました!

 ちなみにもしも、「自分もグイドリン大好き!」「グイドリン良い監督っぽいじゃん」などという好意的な感想をお持ちになっている方がいましたら、コメントないし↓の「拍手」で意思表示していただけると大のグイドリンファンとして非常に嬉しいです。

 押しつけがましいお願いですみませんが、よろしければご協力をお願い致します!


[ 2018/12/28 18:43 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(2)

拙攻・得点力不足の最大の原因と監督の責任



はじめに;リーグ戦3試合連続無得点


 開幕から10試合連続失点などという不名誉な記録を残したことからも明らかなように、開幕序盤は守備に大きな問題を抱えていたミラン。
 しかし一方で攻撃は比較的機能していました(10試合中9試合で得点)。

 シーズンも中盤に突入した現在。相手の拙攻やバカヨコの覚醒、ドンナルンマの復調などによってクリーンシートを達成する試合もちょくちょく出てきた一方で、攻撃においてはリーグ戦3試合連続無得点(暫定)という不振に陥ってしまいました。


 では、序盤戦は比較的機能していた攻撃が上手くいかなくなったのは何故なのでしょうか…?



拙攻の最大の原因


 様々な要因はありますが、中でも最近の得点力不足の最大の原因を僕なりに説明してみると、「ビリア、ボナベントゥーラといった中盤やエリア付近で違いを作れる選手が長期離脱してしまったことで、攻撃の単調さに拍車がかかってしまった」ということに尽きるかなと。

 以下、もう少し具体的に説明します。


 ボナベントゥーラはイグアインともピッチ上で良い関係を築けていましたし、何よりここぞという場面での決定力の高さがありました。
 また、スソ以外で崩しの局面に大きく貢献できていた数少ない選手でしたね。


 ビリアのゲームメイク能力とミドルシュートがなくなったのも痛かったと思います。現在はバカヨコがビリアの不在を補って余りある守備力を見せてくれていますし、あの屈強なフィジカルを活かした強引な縦への持ち出しはビリアにはできない芸当でしょう。

 しかし、こと攻撃面における貢献度(ロングパスや縦パスの精度・頻度・タイミングなど)はまだまだビリアの方が上だと感じますし、最近のミランの攻撃(特に4-4-2システムの際)に単調な攻撃が続くのはビリア不在の影響が大きいでしょう。



 続いて「攻撃の単調さに拍車がかかってしまった」という表現について。
 点の取れていた当時もスソの個の力に依存していた試合は多かったわけですが、それでもイグアインのボールを受けに下がりに来るプレーとボナベントゥーラの前線への飛び出しといったそれぞれのプレースタイルの特徴を噛み合わせた戦術的な攻撃の形が確かにありました(この点については、ガットゥーゾ・ミランの戦術的特徴について語ったこの記事で詳述しているため、未読の方はもしよろしければご覧ください)。

 しかしボナベントゥーラの離脱に伴いそういった攻撃の形が1つ減ったため、スソに依存する割合が更に増えた(≒攻撃の単調さに拍車がかかった)ということです。




長期離脱の理由


 そもそもなぜ、彼ら2人は長期離脱を余儀なくされたのかと言われれば、それはガットゥーゾ監督による酷使の影響が大きいでしょう。

 ここでいう酷使とは、もちろんほとんど休ませず先発起用したという意味合いも含まれていますが、ここで強調しておきたいのはピッチ上における酷使です。


 ビリア、ボナベンが健在だったころのミランが固定的に採用していた4-3-3システムでは、両インサイドハーフが積極的にCBにプレスをかけにいく関係上アンカーポジションの両脇に広大なスペースを空けてしまい、そこを相手に使われるという試合が何度もありました(こちらの記事にて詳述しています。よろしければご覧ください)。

 広大なスペースの担当を背負わされたビリアはそのカバーに走り回り、両インサイドハーフも前線へのプレス→プレスバックに奔走するという形が非常に目立ちました。

 こういった形は最後まで改善されず、その上ほとんどの試合で(特にビリアは)先発起用・フル出場していたものですから、疲労が溜まりに溜まっていつか爆発するというのは明らかでしたね。

 彼らと一緒に酷使されていた(もとい現在も酷使されている)ケシエが健在なのは、ひとえに彼自身の抜きんでた「怪我耐性の強さ」によるものでしょう。

 はっきり言って彼の頑丈さは異常なレベルです。チームにとってとても有り難い存在ではありますが、彼の健在を根拠にガットゥーゾ監督のこの采配を擁護することはできないでしょう


 ビリア、ボナベンの代役が実質的に不在だったという汲むべき事情はあり、その点についてはチーム編成の問題もありますが、彼らに過剰な負担をかけていた上記の戦術的問題の解決が見られなかったのはガットゥーゾ監督の責任だと思います。




終わりに;運命の懸かった2戦と解任の是非


 ここ最近のチームの内容・結果の不振に伴い、再び解任報道が浮上しているガットゥーゾ監督。

 『Sky』によれば、次のフロジノーネ、SPALとの2試合が彼の運命を決めるものになると報じています。


 …残念ながら、この状況では解任も致し方無いですね。


 ここまで述べてきたように、攻撃の不振は結局のところ彼の采配ひいては戦術的引き出しの少なさによるところが大きく、この点以外にも戦術家としての彼には疑問を呈すべき点がいくつもあります。


 まぁフロジノーネ、SPALとの戦力差は明白ですから、ひょっとしたら個人技のゴリ押しで勝つなんてことも充分に考えられます。

 しかし…それでガットゥーゾ・ミランが続くことで、中・長期的に見てプラスとなるか(もっと言えばCL権を獲得できるか)は…チームの現状を踏まえるとかなり厳しいといえるのではないでしょうか。
 もし解任するとすれば、ウィンターブレイク前のこの辺りの時期がベターだと思いますしね。


 ただし個人的に気にかかるのが、監督の後任有力候補がドナドーニとベンゲルという点です。
 ビッグクラブでの指揮経験が皆無の前者と、セリエAでの指揮経験が皆無の後者……どちらもガットゥーゾ監督より遥かに経験豊かな指導者ではあるのですが、どうも上手くいくとはあまり思えないんですよね…。

 まぁ実際のところやってみるまでは分かりませんし、今の閉塞感を打開する監督交代自体には賛成です。



 いずれにせよ僕の主張は、もしガットゥーゾ監督が解任されるとしても、残念ながらそれは納得できてしまう判断だということですね。



非常に長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。





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[ 2018/12/24 07:00 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(2)

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴 【後編】

 このシリーズも最終回です。ラストの今回は予告通り、ミランの守備における問題点を列挙していきたいと思います。

 前回までの記事を未読の方は、以下のリンク先より閲覧していただけると幸いです。

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴【導入】

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴【前編】

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴【中編】



 まずガットゥーゾ・ミランの守備を端的に評価すると「献身的でアグレッシブ。しかし時に無秩序」と言えるかと思います。

 チーム全体がコンパクトかつ集中している場合は持ち前のインテンシティの高さを活かして相手から自由を奪う一方で、組織的に守れていないシーンも散見され、その場合は相手に好き放題ボールを回されてしまいました。

 開幕から10試合連続失点(昨シーズンからの分を含めると16試合)という記録からも分かる通り、守備に関しては上手く機能していなかったというのがここまでの実情だと思います。

 では、具体的にどこが悪かったのか。これから見ていきましょう。


アンカーの両脇のスペースの管理不足

【前編】でも語りましたが、ミランの守備戦術の1つに「両インサイドハーフがプレスに飛び出す」というものがあります。

これにより、トップのイグアインが積極的に動いて体力を消耗することなく相手のビルドアップを妨害できるというメリットがある一方、インサイドハーフが飛び出すことでアンカーの両脇のスペースが大きく空いてしまうというデメリットがありました。

ガットゥーゾミラン守備2


 残念ながら、このデメリットに対する明確な対応策をミランは持っていなかったように思われます。

 片側のインサイドハーフだけが飛び出してもう一方はアンカーと横並びの関係になる4-4-2の形も時に見られましたが場当たり的で、明確な戦術として採用されたものではなかったかなと。

 実際のところ、このアンカーの両脇のスペースを使われてチャンスを作り出されるというシーンが多くの試合で目立ちました。

 中でもサッスオーロ、インテル、ベティスといった相手はこのスペースを徹底的に狙い、ゲームを完全に支配していましたね。

ベティス ミラン2

 上図はベティス戦のマッチレポートで使用したのと同じものです。
 ベティスの場合はこのようにしてインサイドハーフを釣り出し、それにより空いたスペースを使ってボールを前進させていました。



2ラインの連携不足

 サンプドリア戦からミランは4-4-2をスタートシステムに採用し始めましたが、このシステムでは2ボランチが基本的にDFライン前で横並びに位置するため先述のような構造的な弱点は無くなりました。

 一方で、付け焼刃なシステムだということもあってか、DFとMFの8人で構成される2ラインの連携不足が目立ちました。

ウディネーゼ ミラン2
これはウディネーゼ戦のマッチレポートにて使用した図です。ウディネーゼ戦は疲労からか、このようなシーンが特に見られました。 


 中でもこの2ライン間の連係不足が致命的となってしまったのが、サンプドリア戦における2失点目に至るシーンです。

ガットゥーゾミラン守備1


 このシーンではハーフウェイライン付近でボールを持っている相手に対し、中盤は前に出てボールを奪いに行く意思表示を見せる一方で、DFラインはかなり下がってしまっています。
 その結果として2ライン間に広大なスペースが生じてしまい、そのスペースでボールを受けた選手(サポナーラ)のアシストにより2失点目を喫してしまいました。

 さらに言うと、この場面では中盤の選手のポジショニングも悪い気がします。2ボランチのビリアとケシエの距離が近すぎるかと。

 これほどの悪いシーンはそう何度も頻発したわけではありませんでしたが、2ライン間のスペースを不必要に利用されてしまうという場面は多くの試合で見られましたね。



クロス対応とパスミス


 クロス対応の悪さ不用意なパスミスにより決定機を作られる場面というのもありました。
 インテル戦やキエーボ戦における失点がその典型ですね。

 しかしこれらは戦術上の問題というよりは、個人の判断・技術ミスによるものだと言って差し支えないと思います。

 そういうわけですので詳細は省きます。ただこの点に関する戦術上の課題を強いて挙げるとすれば、クロスを簡単に上げさせてしまうシーンが散見されることでしょうか。
 特にスソがウイングバックやサイドハーフとして起用された場合にこの傾向が顕著になるので、そこは修正して欲しいですかね。



…以上が、僕の考えるミランの守備における戦術上の問題点でした。



おわりに

 これまで4回に分けて、ここまでのミランの戦術的特徴を振り返ってきました。

 最後にミランの攻守に関する僕の見解と今後の展望をまとめます。

 まず攻撃に関しては、ファイナルサードでの相手DFを崩す局面における戦術は比較的機能していると思います。
 スソに多くを依存してはいるものの、彼とイグアイン、そしてインサイドハーフが絡む攻撃にはかなりの破壊力がありますね。
 その証拠に、今シーズンのミランはインテル戦、ユヴェントス戦を除く公式戦の全てで得点を挙げています。
 今後チャルハノールが復調を果たせば更に攻撃力が高まるでしょう。楽しみですね。

 攻撃に関する課題としては、やはりビルドアップの局面における安定感の欠如が挙げられます。
 ここを修正できれば攻撃だけではなく守備面においてもプラスになりますから、今後の改善に期待したいです。



 守備に関しては、今回詳述した通りまだまだ多くの課題が残されています。
 セリエAで安定して勝利を積み重ねるには堅守が必要不可欠です。出来る限り早く修正してほしいところです。


 しかし今のミランは異常ともいえる怪我人の多さに苦しんでおり、これによりシステムすら自由に決められない位に悲惨な状況となっています。

 この状況で内容まで求めるのは流石に酷ですから、まずはどんな酷い内容でも良いので結果だけは残してもらいたいです。

 そして、冬の新加入選手や怪我人が復帰する頃には上記の課題をクリアしてもらい、盤石で安定感抜群なミランを見せてほしいと思います。

 リーグ中盤戦以降のミランにも注目していきましょう!


 随分と長くなりましたが、このシリーズを最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。



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[ 2018/11/22 23:22 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴 【中編】


 今回は予告通り、攻撃の局面において見られたミランの攻撃パターンについて語っていきたいと思います。

 続き物ですので、前回までの記事を未読だという方は以下の記事を先に閲覧していただけると幸いです。

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴【導入】

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴【前編】



イグアインのスペースメイクとインサイドハーフの飛び出し

 ローマ戦を中心に見られた攻撃の組み立て~崩しの局面における形としては、トップのイグアインが(時には相手マーカーを引き連れながら)積極的に下がってきてボールを引き出し、崩しの起点として機能するというものがあります。

ガットゥーゾミラン 攻撃1


ガットゥーゾミラン攻撃2


 また、その派生形として、そのイグアインが空けたスペースにインサイドハーフのボナベントゥーラないしケシエが飛び出していくというのもありました。

ガットゥーゾミラン攻撃3


ガットゥーゾミラン攻撃4


 このメカニズムの採用には、上記3選手のプレースタイルに依るところが大きいでしょう。


 イグアインはDFライン上での駆け引きを特長とする典型的なストライカーというよりは、積極的に下がってきてボールに触ることを好む選手です。
 また、ゴール前ではヘディングに飛び込むことには消極的で、むしろ一歩下がって(それこそエリア外で)ボールを受けようとするシーンも多々見られます。

 一方インサイドハーフのボナベンとケシエですが、両者ともにビルドアップに積極的に関与するタイプというよりは、前線への飛び出しに特長のある選手です。
 特に前者はエリア付近でのチャンスメイクやエリア内に飛び込んでのシュート、後者はエリア近くまでを短時間で走り切る圧倒的なスプリントを持ち味としています。



 つまり、先に挙げた崩しのメカニズムは上述の3者の特徴(特長)を上手く噛み合わせ、組織の中で機能させようとして出来たものだといっても良いと思います。


 こういったトップと中盤の関係性は上述のローマ戦の他に、相手のプレスが緩かったジェノア、ウディネーゼ戦などでもよく見られました(後者の2つの時は4-3-3ではありませんでしたし、メンバーもこの3人ではありませんでしたが)。



ウイングのハーフスペース活用

 近年のサッカー界では「ハーフスペース」という概念が広く浸透し、重要視されるようになっています。
 念のため説明しますと、ハーフスペースとは「ピッチを縦に5分割した際のインサイドレーン」を指す戦術用語です。

ガットゥーゾミラン攻撃5


 そして最近は多くのチームがこのスペースの活用を目論んでいます。


 もちろんミランもその1チームです。
 崩しの局面においてはリカロド、カラブリアといったSBがサイドを攻め上がり、スソ、チャルハノールの両ウイングがハーフスペースへと移動。1トップのイグアインやインサイドハーフとの距離を近くし、ワンツーパスなどによるコンビネーションを活かして突破を図ります。

 しかし、このスペースを活かせない時のミランはかなり単調なサイド攻撃に終始してしまっていましたし、その際にはイグアインが中央で孤立するといった事態に陥りがちでした。そして残念ながらそういう場面は多かったと記憶しています。

 また、左サイドのチャルハノールがローマ戦を除くほぼすべての試合で本調子でなかったこともあり、ファイナルサードの局面においてはスソの個の力に多くを依存していた試合もかなり多かったですね。

 
スソを活かす2つの方法

 となれば、チームとしてはスソがファイナルサードの局面において存分に力を発揮できるようにする必要があります。

 その点については、ミランは守備免除とSBの動きにより実現させていたかと思います。

 前者については文字通り、守備にはあまり積極的には参加せず、攻撃のための体力を温存すると共にカウンターに備えるというものです。
 これは過密日程に突入してから特に顕著になっていたかと思います。


 そしてより重要なのが後者の「SBの動き」です。具体的な動きとして、SBがスソの前に飛び出していくことで対面のスソのマーカー(主に相手SB)を引き付けるというオーソドックスな動きがまず挙げられます。


 また下図のように、SBが高い位置を取ることで相手のSBを予め前に飛び出させない(飛び出した場合はカラブリアがフリーになるため)ようにすることで、スソが後方からフリーでボールを受けられるようにするというメカニズムも見られました(アバーテがSBを務めるときにも良く見られたコンビネーションだったかと思います)。

ガットゥーゾミラン攻撃6


以上のような形でスソを比較的自由にさせ、彼のキレキレのドリブル突破からの高精度シュート・クロスで得点を量産しました。
リーグ戦におけるここまでのミランの総得点が21。そしてスソの成績が4ゴール8アシストであることを考えると、彼がどれほどチームの得点に絡んでいるかが良く分かりますね。




…以上が、僕の考えるミランの攻撃の局面における具体的な攻撃戦術でした。

 ラストとなる次回は守備の局面における戦術、もとい問題点について分析していきたいと思います。


最後まで読んでいただきありがとうございました。



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[ 2018/11/20 00:31 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴 【前編】

 今回は、どの試合でもおおむね当てはまったミランの攻撃・守備におけるプレー原則(戦術上の指針のようなもの)を見ていきたいと思います。

 続き物ですので、前回の記事をまだ読んでいないという方はコチラからどうぞ。


攻撃におけるプレー原則

 ガットゥーゾ・ミランに当てはまる主な特徴の1つは、「後方から徹底的にショートパスで繋いでいく」というものです。

 仮に相手が前から激しいプレスをかけてこようがお構いなく、GK、4バック、アンカーの計6人を中心にショートパスを繋ごうとします。

ガットゥーゾ・ミラン4

 そして相手のプレスを上手くかわせた後は、チームの持ち味である走力を活かして一気に前線にボールを運んでチャンスを作ろうというのがおおまかなプレー原則でした。

 しかし残念ながら、このメカニズムはそう上手く機能していないのが現状です。

 実際のところ、相手が激しいプレスをかけてきた場合はほとんど思い通りにボールを回せず、大抵はサイドにボールを誘導され手詰まり状態となり、そこから精度の低いロングボールを蹴らざるを得ないという状況に追い込まれてしまっていました。

 しかも最悪の場合は自陣ゴール前でミスパスをしてしまい、その結果、相手に決定機はおろか得点を許してしまうということも1度や2度じゃありませんでした…(特にシーズン序盤はそうでした)。

ミラン インテル2


 例えば上図のように、相手に1対1で前からマンマーク気味に付かれた場合に特に苦戦していましたね。
 
 これははダービー戦における一幕です。ドンナルンマ→ムサッキオ→カラブリアと繋ぐも相手がマンマーク気味にハイプレス。下がってきたスソにもアサモアが付いてきてパスコースを封じられました。

 こういった際、ボナベントゥーラないしチャルハノールが下りてきてビルドアップに加わる形が時折見られましたが即興的で、意図した形ではないように見受けられました。



 とはいえ最近の試合では改善の兆しが見られます。というのも、予めバカヨコもしくはケシエといったフィジカルの強い選手をやや高めの位置にポジショニングさせてロングボールのターゲットとすることで、後ろで詰まった(詰まりそうな)時は彼らを起点にボールを前進させるといったビルドアップの方法を身につけつつある印象です。

 根本的な解決ではないかもしれませんが、以前よりは相手に好き放題やられることはなくなったと思います。


守備におけるプレー原則

 ミランの守備におけるプレー原則として、まず第一に「ミドルゾーン(ピッチを横に3等分したときの真ん中のスペース)に素早く守備ブロックを形成する」というのが挙げられるでしょう。
 これはシステムが4-3-3でも4-4-2でも3バックでも変わりません。


 例えば攻撃的なチームであれば、ボールを失ったら即時奪還を目指してその場でハイプレスをしかけるといった場合もあると思いますが、ミランはそうではなく基本的に守備ブロックの形成を重視している印象です。

 そして、相手が一定のラインを越えてボールを運んで来たら素早くプレスを仕掛けてサイドに誘導し、そこでボール奪取を狙います。
 また、相手がバックラインでパスを回している場合やパスを後ろへ戻したりした後はそのままボールに食いつき、ハイプレスに移行する場面も見られますね。


 陣形を整えた後、プレスをかけに行く場合は(自分・味方のシステムにもよりますが)インサイドハーフの両方が相手CBにプレスを仕掛け、トップのイグアインは相手アンカーを見るという形が多く見られました。

ガットゥーゾ・ミラン5


ガットゥーゾミラン6


ガットゥーゾミラン7



 以上のようにして、(シーズン序盤は)アグレッシブな守備を行って相手をなかなか自由にさせず、プレスを外されてボールを運ばれた際にも素早い帰陣(リトリート)を見せたミラン。

 運動量と献身性は近年のミランでも最高クラスだと思います。ガットゥーゾ監督の指導の賜物でしょうね。
 

 しかし、開幕から10試合連続失点という不名誉な記録を残したことからも分かる通り、守備面に関しては多くの問題を抱えていたのも事実。
 
 その点に関しては次々回の【後編】にて分析していきたいと思います。





 …以上が、僕が考えるミランの攻守における基本的なプレー原則でした。



 次回は攻撃の局面を詳しく見ていく予定です。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。



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[ 2018/11/17 20:10 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴 【導入】


はじめに

 数カ月前に18-19シーズンがスタートし、ここまで12試合が行われたセリエA。
 シーズンの約3分の1を経て、各チームの長所も短所も浮き彫りになってきたかと思われます。

 そこでちょうど代表ウィークということもありますし、今回から4回に分けて、これまでのガットゥーゾ・ミランの戦術的評価を僕なりにしてみようかなと思います。

 【導入】と題した今回は、チームのこれまでの成績と採用したシステムを概観していこうと思います。

 次回はチームの攻撃・守備における基本的なプレー原則を振り返り【前編】、それ以降は攻撃・守備それぞれの局面について、実際に試合中にあった場面に触れながら具体的に分析していけたらと考えています【中編・後編】。



暫定成績(12節終了時点)

順位;5位(4位ラツィオとは勝ち点1差)
勝ち点;21(6勝3分3敗)
得点;21(リーグ6位)
失点;16(リーグ11位)




 個人的に、順位(対戦成績)に関してはさほど文句ありません。
 序盤に3試合連続の引き分けをやってしまったときはどうなるかと思いましたが、現時点では目標の4位との勝ち点差は1です。
 ナポリ、ローマ、インテルといった強豪との試合も既に消化していますしね。

 得点数に関しても、スソにあまりに依存している(4ゴール8アシスト)点は気になりますがまずまずの出来かなと(あくまで得点「数」に関しての感想です。攻撃の内容については今後話すようにあまり納得していません)。

 失点数に関しては改善の必要性が特大です。開幕から10試合連続失点といった事態は今後絶対に繰り返してはいけません。




採用システム

4-3-3

ガットゥーゾミラン1


 昨季に引き続き、開幕から9節のインテル戦までは常にこのシステムで試合をスタートさせていました。
 メンバーについても、怪我等で試合に出られない状況を除けばほぼこの11人で固定されていましたね。

 このシステムの右サイド(カラブリア、ケシエ、スソ)のトリオは昨季からやっていることもあり、時には非常に連動した動きを見せていました。

 一方で、「アンカーの両脇のポジションを相手に利用される」という構造的な弱点に対する解決策は未だ明示されていません。
 今後このシステムに戻すのであれば、この点の修正が求められますね。


4-4-2

ガットゥーゾミラン2


 10節のサンプドリア戦からスタートシステムとして採用。その後も断続的に使用されました。
 このシステムの特長は、何といってもクトローネとイグアインを同時にピッチに送り出せるという点にありましたね。

 メンバーについてはこの時期から負傷者が続出したこともあり、これまでとは違い試合毎に変わっていきました。


3-5-2(3-4-3)

ガットゥーゾミラン3


 ジェノア戦から採用されたシステムですが、この試合では厳密にいうとケシエがWB、スソがウィングに位置する3-4-3の形に近かったです。

 しかし、正直に言うとこのシステムはあまり機能していませんでした…。
 というのも、スソがあまり守備に戻らない(作戦?怠慢?)ため守備時には5-2-3といった形に頻繁になってしまい、中盤に広大なスペースが生じていましたね。



 以上の3つ(3-4-3を含めれば4つ)が、ミランがスタートから採用したシステムでした。



 次回から本題に入っていきたいと思います。


 最後まで読んでいただきありがとうございました。 



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[ 2018/11/16 19:28 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

ミラン、サンプドリア戦は2トップでスタートか


『スカイ・スポーツ』によりますと、ガットゥーゾは次節のサンプドリア戦で2トップの採用を検討しているそうです。
当然のことながら、その狙いはイグアインとクトローネを同時起用することにあります。
全体のフォーメーションとしては4-4-2か3-5-2のどちらかになるとのこと。

4-4-2はアリだと思います。
メリットとしては孤立しがちなイグアインの近くに人を置けるという点、それに付随して中央のエリアでマークを分散できる点、(全員が献身的に守れれば)守備に穴ができにくいといったところでしょうか。


逆に問題は、献身的な守備と豊富な運動量が求められるサイドハーフをスソが務められるかという点です。
スソを外すという選択肢はあり得ず、また2トップは決まっている以上右サイドハーフでの起用は間違いないでしょう。

スソは守備時に担当するスペースへの戻りがやや遅く、また守備もそれほど上手くないため、この部分をどう対処するかが重要でしょうね。


続いて3-5-2について。仮にこのフォーメーションを採用するとしたら、おそらく守備を考えてのことだと思います。
サンプドリアは4-3-1-2で来るでしょうから、システム上は当然中央に人が多く位置することになります。

そこで3枚のCBとアンカーを恒常的に配置することで、数的優位を保とうという狙い(理論上は3人のアタッカーに対してこちらには4人のディフェンダー)があるのではないかと。



と、まぁここまでグダグダと書いてきましたが、なんだかんだでガットゥーゾ監督はいつも通りの4-3-3で挑むだろうというのが僕の予想です。


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[ 2018/10/27 10:59 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)