ミランの新エース、ピョンテクの得点力を支える能力について



ミラン移籍後5試合連続ゴール中のピョンテク。

もはやその勢いは止まる所を知らず、更なる記録更新に期待がかかります。


決して多くの得点チャンスを与えられているわけではない現状において、なぜこれほど多くの得点を彼は挙げることができるのでしょうか?


今回は彼のゴールシーンから、その理由を探っていきたいと思います(※今回引用する画像元は、いずれもYoutube『SerieA』の提供するダイジェスト映像より)



VSローマ


最初は、ローマ戦で決めたゴールについて。


ピョンテク1

サイドでパケタ(黄)がボールを奪いにかかる一方で、エリア内にいるピョンテク(赤)は自身のマーカーの位置を確認(白矢印)しつつ、エリア中央へと移動します。



ピョンテク2

パケタがボール奪取に成功。その際にピョンテクはマーカーのファシオ(20番)の真横にポジショニング。

ファシオはこの状況でボール(パケタ)とピョンテクを同時に視野に収めることができません。



ピョンテク3

パケタからのクロスに対し、ファシオの前へと飛び込むピョンテク。

ファシオの意識はボールに向いているため、横(背後)から来たピョンテクの動き出しに対処し切れず。



ピョンテク4

ファシオに競り勝ち、クロスボールをダイレクトで合わせてゴールネットを揺らしました。



上記の一連の場面の映像はコチラになります。







VSアタランタ


ピョンテク5

リカロド(緑)がアーリークロスを放つ場面。この時点でピョンテクは対面のDFの背後に位置しています。



ピョンテク6

クロス直後にピョンテクは相手の前へと入り込み、完璧なダイレクトシュートでネットを揺らしました。



上記の一連の場面の映像はコチラです。




これを見ると、実は中央へと飛び込む前に一端ファーサイドに流れるフリをしてマーカーを外に引っ張っているんですよね。

ずば抜けたシュートテクニックの高さばかりに注目が集まりますが、彼のDFとの駆け引きの巧みさも知れる素晴らしい得点でした。





VSエンポリ


ピョンテク7

敵陣でボールを奪ったカスティジェホがサイドのケシエに展開した場面。

この時点ではピョンテクはマーカーの前方(つまりマーカーにとってボールとピョンテクを同時に視野に収められる場所)に位置しています。



ピョンテク8

ケシエが裏に抜け出したチャルハノール(黄)へとパス。

ここでピョンテクはマーカーの背後へと移動を開始します。
マーカーも振り切られまいと牽制しますが彼のフィジカルを前に止めきれません。



ピョンテク9

チャルハノールが中央へグラウンダーのクロスを上げる場面ですが、この時点でピョンテクはマーカーの背後への移動を完了。



ピョンテク10

こうしてクロスボールを冷静にゴールへと流し込みました。



上記の一連の場面の映像がコチラ。







まとめ


以上3つのゴールシーンを振り返りました。


マークを外すための積極的な動き出し、それを可能にするポジショニングセンススピードフィジカル、そしてシュートのテクニック精度の高さ…。


ストライカーとして必要なあらゆる能力を高水準で備えているからこそ、彼はどんな状況でもゴールを決め続けることができるのでしょうね。


現在のミランは(ロング)カウンターの精度に課題を抱えており、また戦術の関係上ピョンテクを前線に1人孤立させている状況も少なくありません。

これらの点が改善され、ピョンテクにより多くの得点チャンスを提供できるようになれば更なる活躍を見せてくれることは必定ですし、チームとしてまた1つ上のレベルへと到達できると思います。


そして彼ならば、歴代最高クラスのストライカーであるクリスティアーノ・ロナウドをも上回って得点王を獲ることも決して不可能ではないはずです。

ミランの選手としてはイブラヒモビッチ以来となるこの個人タイトルを是非とも目指してほしいと思います。



今季はリーグ4位以上、コッパ・イタリア優勝、ピョンテク得点王の3冠を獲りましょう!(笑)


最後まで読んでいただきありがとうございました。


[ 2019/02/24 15:06 ] 考察 選手 | TB(-) | CM(1)

ルーカス・パケタがミランにもたらした2つの変化



はじめに;チームにもたらした2つの変化


 今冬の移籍市場にて、ブラジルのフラメンゴから推定3500万ユーロで移籍したルーカス・パケタ。

 当初、この報道及び移籍金を知った時は「将来有望な若手選手らしいしこんなもんか~」などと思っていたわけですが…


 今思うと、あまりにも格安でしたね。移籍金3500万ユーロ(出来高付きらしいので実際はもう少し高くなるかもしれませんが)は将来性を考慮してのものだったと当時は考えていたわけですが、現段階の実力でも十分にその額に値することは間違いないでしょう。

 チームに加入後、瞬く間に即戦力としてフィット。もはや欠かせない選手となっていますからね。


 というわけで今回は彼がチームに対し、具体的に何をもたらしてくれたのか、またどのようにしてチームに貢献してくれているのかについて個人的な見解を書いていこうかなと。



ボールの運び役

 まず一つは、ボールの運び役としての多大なる貢献ですね。
 とはいってもドリブルでゴリゴリと運ぶわけではなく、ポジショニングとパスで運びます。

 彼はボールの引き出し方と、ボールを貰った後のパスの判断と精度が非常に素晴らしいのでボールを前進させられるんですよね。
 そしてキープ力もあるので、有効なパスコースが見つからない時は溜めを作ることが出来ます。


 「Nextカカ」と呼ばれることもあるパケタですが、かつてのミランの選手で言えばセードルフに近いプレースタイルではないかと。

 カカはどちらかと言うとドリブルで運ぶタイプ(積極的に動いてパスを引き出すこともしましたが)でしたし、それ故にカカとは結構違いますね(カカのようにミランのレジェンドになれるという意味での「Nextカカ」なら正しいかもしれません。笑)



 閑話休題。それで何故これが重要かと言うと、当時のミランの中盤にこれが継続的にできる選手がいなかったからです。


 例えばケシエはロングカウンター時などのスペースが空きまくっているときはドリブルでゴリゴリ運べますが、ポゼッション(この記事でいうポゼッションは「相手の守備陣形が整っている状態での攻撃」程度に捉えてください)時はドリブルでもパスでも有効に運べません。

 バカヨコも同じ。圧倒的なフィジカルを活かしたドリブルでマーカーを剥がすことはできますが、その後のパスの判断が良くないため有効にボールを運べない。


 チャルハノールは唯一それが継続的に出来得る選手ですが、パケタほどのキープ力がないため上手く溜めが作れず、ドリブルでの運びも上手くはないためそこまで適任ではない(良い形でボールを受けられ、かつ常時パスコースが作られているような組織的なチームであれば出来るでしょうが)。


 つまりこの3人の中盤でポゼッションサッカーをやっていた頃のミランの試合内容が酷く、4試合連続無得点などという記録を残したのもある種必然であったということがわかっていただけると思います(この頃の僕がくどい程に速攻サッカーを要求していたのはこのため)。



 パケタとピョンテクの加入に伴い、基本戦術がポゼッションからロングカウンターにシフトしたため当時と今を単純比較することは確かに難しいです。

 しかし当然ながらポゼッションする時間帯というのは今でも試合中に必ずあるわけで、その際にはパケタの上記の能力が存分に発揮されていますね。



チャルハノール復活


 パケタがチームにもたらしたものの2つ目はチャルハノールの復活です。

 チャルハノールのシーズン前半戦は惨憺たる結果に終わり、そのため冬の移籍市場期間では放出の噂が絶えることはありませんでした。


 しかし後半戦になり復調。先日のアタランタ戦では今シーズンのリーグ戦初ゴールを含む1ゴール1アシストでチームの勝利に大きく貢献しました。


 彼の前半戦の不調の原因についての僕の見解は、めちゃくちゃ大雑把に言うと「サイドで孤立する時間帯が長かった」というものでした(こちらの記事「ハカン・チャルハノールの苦境 ~不調の原因とその解決法~ 【本編】」で詳述していますので、未読の方は読んでいただけると幸いです)。


 つまり前半戦とは打って変わった後半戦の好調の理由を大雑把に言うと「孤立することなく中央付近でボールを触れるようになったから」だということが出来ます。


 ではなぜその変化が生じたかと言われれば、それはほぼ間違いなくルーカス・パケタのおかげではないかと。


 パケタは前述したように動きの質が高く、パスの精度と判断も素晴らしい。流動的に動いてサイドにも流れられるため、チャルハノールに良質なボールを送ると同時に自身へのパスコースと中央付近のスペースを提供することが出来るわけです。


 こうしてチャルハノールは中央に流れて比較的フリーでボールを受けられる頻度が増え、しかもパケタというパスの受け手としても優秀な存在が近くにいることで得意のパスもより活きるようになったというのが好調の原因だと考えています。


 ちなみにこれはパケタの方にも言えることでして、パスの出し手としても受け手としても優れている上に積極的なフリーランもしてくれるチャルハノールがいることで、パケタが流動的に動きやすいという側面は間違いなくあるでしょうね。



 最後に、実際のデータを見てみましょう。

チャルハノール トリノ戦 チャートボード タッチ2

 上図は先に挙げたリンク先記事でも引用した、トリノ戦(機械採点で最も悪かった試合の1つ)におけるチャルハノールのボールタッチポジションです(右攻め。WhoScoredより)。

 中央エリアもといバイタルエリア付近でのタッチ数は少ないことがわかります。



チャルハノール カリアリ

 一方こちらは2節前のカリアリ戦におけるチャルハノールのボールタッチポジションです。

 はい、一目瞭然ですね(笑)



おわりに;CL権獲得のために


 以上、パケタがミランにもたらした大きな変化や貢献について僕なりの見解を述べさせていただきました。

 まとめると僕の主張は「パケタは持ち前のスキルと流動的な動き、そしてチャルハノールとの相性の良さを活かすことでミランのポゼッション精度を向上させ、その上チャルハノールの復活にも貢献した」と言ったところでしょうか。


 今回は特にポゼッション時における彼のパフォーマンスに注目しましたが、他にも守備時の献身性やカウンター時の鋭い縦パスなど褒めたい点はまだまだあります。

 既に十分に素晴らしいというのに、これでまだ21歳の成長株ですからね。本当に末恐ろしい選手です。



 ミランのCL権獲得のためには、もはや彼は無くてはならない存在となりました。

 何としても今季はCL権を獲ってもらい、来シーズンからは世界最高峰の舞台でも躍動するパケタの姿を見たいですね!


最後まで読んでいただきありがとうございました。


[ 2019/02/19 17:00 ] 考察 選手 | TB(-) | CM(0)

ボナベントゥーラ復帰後のシステムについて~4-3-1-2の可能性~


はじめに

 数日後にアタランタとの1戦を控えるミラン。

 アタランタと言えば、ケシエ、コンティを始め今のミランには元アタランタの選手が多数在籍しています。


 その中の1人がジャコモ・ボナヴェントゥーラです。

 現在膝の負傷で長期離脱中。今シーズン中の復帰はおろか来シーズンの開幕にも間に合わない可能性が噂される彼ですが、復帰を果たせばチームの大きな戦力になることは間違いないでしょう。

 
 今回は、ボナベンが復帰し、今のチームに組み込む場合のミランの最適と思われるシステムについて考えていきたいと思います。


 なお、考える上での前提として…

・特に言及のない限りは、前線と最終ラインはいつもの(スソ、ピョンテク、チャルハノール、カラブリア、ムサッキオ、ロマニョーリ、リカロド)メンバー

・ボナベントゥーラのコンディションが戻っている

・復帰は来シーズン以降のため補強・放出でメンバーはほぼ間違いなく入れ替わっているでしょうが、今季のメンバーを基準に考えます



ボナベントゥーラ、ビリア、ケシエ(4-3-3)

ボナベントゥーラ1


 今季序盤、彼とビリアが離脱するまでは不動であった構成。
 8試合で3ゴール1アシストという数字からも分かる通り、このシステムでのボナベンはかなり活き活きとしていました。

 1トップのため飛び出すスペースがありますし、しかも当時は下がってくるプレーを好みペナルティエリア内への侵入が消極的だったイグアインがそこを務めていたこともあり、ボナベンが積極的に前線・ペナルティエリア内へと飛び出すことができましたね。


 ポゼッションサッカーに極度に拘っていた当時ですら比較的機能していましたから、この構成で裏抜け主体の縦に速いサッカーをすればかなり強力でしょうね。



ボナベントゥーラ、バカヨコ、ビリア(4-3-3)

ボナベントゥーラ

 そして、今ならばビリアを一列上げてバカヨコアンカーでも十分に機能すると思います(志向する戦術はもちろん①と同じ)。

 今の1トップはエリア内での積極的な駆け引きに特長のあるピョンテクですし、ボナベン・ピョンテクの2人と片方のウィンガーがエリア内でクロスのターゲットとなり、ビリアがそのこぼれ球対策も兼ねてバイタルエリアに構えるという形は中々良いのではないでしょうか(ビリアは強烈なミドルを持っていますし)。



バカヨコ、ビリア、ボナベントゥーラ、チャルハノール(4-3-1-2)

ボナベントゥーラ3


 4-3-1-2をこよなく愛する僕が個人的に1番見てみたいシステムがコチラです。

 ポゼッション時は主に左サイドでボナベン、チャルハノール、パケタが流動的に動いて相手守備陣を打ち崩します。
 
 チャルハノールはライン間でボールを引き出すのが上手く、前線には原則2つのパスコース(パケタ、ピョンテク)があるため得意のパスも活きるでしょう。

 ボナベンはドリブルでボールを運べますし、サイドに流れてクロスを上げることも(彼は地味にクロスも上手い)パケタが空けたエリア内に飛び出すこともできるのでかなり適任。

 パケタはサイドにも流れられるし下がってボールを受けることもでき、かつフリーランの質も高そうなので上記2人のポジションを見た上で気の利いた動きをすることができるでしょう。もちろんFWとしてアシストや得点も期待できます(ただし2トップの1角としてのプレーを未だ見ていないのでやや未知数ですが)。

 ピョンテクはスピードを活かした裏抜けと、フィニッシャーとしての仕事がメイン。


 そもそも4-3-1-2が機能しないチームの大半は攻撃に流動性が全くなく、中央から無理やり攻めてボールを奪われ、挙句に手薄なサイドをカウンターで破られて決定機を作られて……といったパターンに大いに苦しみます(バッカ・ルイスアドリアーノコンビ、バッカ・バロテッリコンビ時代のミランがその典型)。

 その点、上記の中盤と前線の組み合わせなら流動性という面に関しては何の問題もありませんし、ビリアとバカヨコがバランスを取ってくれるのでカウンターケアという側面もクリアできるはずです。



 守備に関しては、相手が戦力的に格下であればローラインで4-3ブロックを作り、ボール奪取からの素早いロングカウンターで粉砕できるはずです(守備と守→攻の切り替えがしっかりと組織されていれば)。
前線にテクニックと走力のあるパケタとチャルハノール、スピードと決定力のあるピョンテクがいますからね。

 ただし相手が同格以上であれば、トップ下のチャルハノールが中盤に下がって4-4の守備ラインを作るなどの工夫が必要になりそうです(それでもピョンテク、パケタがいるのでカウンターはある程度機能するでしょう)。



 さて。ここまで願望と想像を垂れ流してきましたが(笑)最後にこのシステムの問題点について考えます。

 1つはチャルハノールです。ご存知の通り、今の彼はファイナルサードでのプレーにとてつもない課題を抱えており、今よりも更に決定的なプレーが求められるトップ下のポジションで機能するかという問題があります。

 本来であれば十分機能すると思うんですけどね。この点に関しては本人のコンディション次第だと思います。


 もう1つはパケタですね。先述したように2トップの一角としてのプレーを僕は観たことがないので、実際にどうなるかは未知数です。あのワンタッチパスのスキルやテクニック、運動量なら能力的に十分に可能だと思っているんですけどね。
 パケタに代わるFWがいればトップ下で起用するのも面白いですね。


 3つ目の問題として、このシステムだとスソの起用が不可能だという点です。
 おそらくこれが最大の問題ですし、それゆえにこのシステムが実現することはないでしょうね…。



まとめ


 以上、3つの構成を見てきましたが、一番実現可能性の低いシステムについての説明が記事の大半を占めてしまいました(笑)

 まぁ最初の2つは無難なシステム(それ故に実現可能性も高い)ですからね。一見、突飛に思える3つ目のシステムについて僕の考える事を詳述させていただきました。

 3バック時の構成も考えたりしたのですが流石に冗長かなと思ったので割愛します。



 中盤の選択肢が増えてきた現状においても、ボナベントゥーラが今なお重要な戦力であることは変わらないでしょう。
 1日でも早く怪我を治して欲しいですね。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

[ 2019/02/15 19:00 ] 考察 選手 | TB(-) | CM(6)

戦術Gの功罪


はじめに;失点減の要因

 リーグ後半戦が始まり、早くも4試合が消化されました。

 そんな中、ミランが喫した失点はわずか「1」。この4試合の中にナポリ戦とローマ戦が含まれていることを考えれば非常に素晴らしい結果であると言えるでしょう。


 では、かつては毎試合のように失点していたミランがなぜ好守を見せるようになったのでしょうか。様々な原因が考えられますが、自チームに関連するものとしては

守備戦術の変更
②ドンナルンマが凄い

の2つが主に挙げられるかと思います。

 ②について詳しい説明はいらないでしょう。単純にドンナルンマが凄すぎます。彼がいなければ何失点喫していくつの勝ち点を失っていたかわかりません。


 そこで、今回は①について詳しく述べていきたいと思います。



戦術Gについて

 ここ最近のミランの守備戦術(便宜上これを「戦術G」とこの記事では呼称します。Gは「Gattuso」のGです。安直です。笑)はピョンテクを除く8.5人(スソが忠実に守備タスクをこなしていないことが多々あるため0.5人分として計算)がミドル~ローラインで一端ブロックを作り、それからプレスをかけるというもの。
 もちろんトランジション時などにボールの即時奪回を目指してハイプレスをかける場面もありますが、基本はミドルプレスです。

 そしてそのプレスもそこまで激しくなく、直接ボールを奪いにいくというよりは相手のパスミスやロングボールを誘う形が多めの印象です。ですから割とあっさり自陣ペナルティエリア付近までリトリートすることも多いです。



戦術Gのメリット

 戦術Gのメリットは大きく分けて2つ。1つはほとんど機能していなかった継続的なハイプレスをやめたことで前線と中盤の選手が無駄な体力を使わずに済むようになったこと。


 そしてもう1つは、戦術Gが今のメンバーの個性におおむね合っていることです。

 例えばケシエ。最近の彼のパフォーマンスは素晴らしく、フースコの採点によれば先日のカリアリ戦のMOTMは得点を決めたピョンテクやパケタではなくケシエとのことです。

 戦術Gでは引いて守ることの裏返しとして、必然的にロングカウンターの局面が増えることになります。スプリントと運動量とスピードが要求される戦術Gとケシエの能力との親和性が高いことは言うまでもありませんね。

 他にも1トップに位置するピョンテクの裏抜けやスピード、チームのほぼ全員に見られる惜しみない献身性など、戦術Gを機能させる上で必要な要素はかなり揃っています。



戦術Gのデメリット①


 戦術Gのデメリットについても大きく2つに分けます。1つは守備にかなりの比重を置いているため、相手によっては攻撃がかなり機能しにくくなる点です。

 例えば、前回のローマ戦では守備の後のロングカウンターが上手くいきませんでした。スソがちゃんと守備に参加している場合、ミランは9人が引いて守っていますから前線にはピョンテクしかいません。

 つまりローマのように同格以上の相手や、トランジションやハイプレスに優れたチームを相手にする場合ですと、孤立したピョンテクへのロングパスやショートパスでの平面突破がかなり難しくなるので上手く守備から攻撃に転じることが出来ず、結果として押し込まれる展開になる恐れが現状かなり存在します。

 僕がローマ戦のマッチレポート記事でこの戦術を酷評した理由の1つがこれでした。引き分け狙いならともかく、勝利を目指していたなら適切な戦術(とスタメン選考)ではなかったなと。


 こういった問題を解決するためには、前線にもう1人残す、カウンターの練度を上げることなどが要求されますね。



戦術Gのデメリット②


 先ほどメリットについて言及した中で、「戦術がメンバーにおおむね合っている」と書きましたが、残念ながら全く合っていない選手が存在します。

 何を隠そう、チームのエースであるスソです。

 今シーズン前半戦のスソは紛れもなくチームのMVPだと思いますし、ファイナルサードで得意の形を作れたときの破壊力は相変わらず他の追随を許しません。

 しかし彼の抱える弱点として、運動量が少なく、守備に関してかなり緩慢です。またスピードがなくスプリントも得意ではない。つまり下がって守備ブロックに参加し、攻撃時にはスピードとスプリントが求められる今の役割には全く適していないわけです。

 この点に関しては本人も自覚があるのでしょう。先日、ガットゥーゾ監督が以下のように語ったそうです。




 確かにスソからしてみれば、自分の適正とは程遠い役割を課されるのは納得がいかないかもしれません。

 しかし、監督が指示している以上はそれに従ってもらう他ないですし、実際に彼の怠慢守備が原因で毎試合のように相手に決定機を作られている事実は決して見過ごせません(ドンナルンマがそれを尽く防いでくれているので現状そこまで問題視されてはいませんが)。


 ガットゥーゾ監督には今の曖昧な状況をすぐにでも何とかしてもらいたいですし、この露骨なまでの弱所を放置するのであれば遅かれ早かれ痛い目に遭う可能性は十分に考えられます。
 早ければ次節のアタランタ戦にも…。


 具体的な改善策としては、スソが下がらずに済むよう可変システムを採用する、説得して精力的に守備に参加させる、はたまた思い切ってスタメンから外すなどなど…。

 どれも一長一短ですが、とにかく何かしらの対応はして欲しいですね。



まとめ


 現在の戦術Gには上記に挙げたような明確な弱点が存在し、それゆえに手放しで褒められるものではないと個人的には思います。

 しかし、チームとして目指すべき方向性自体は間違っていないとも思いますし、ガットゥーゾ監督及びメンバーの能力を考慮すればこの戦術を突き詰めていくべきだと考えています。

 当面は上記2つのデメリットの改善に期待したいですね。


 最後まで読んでいただきありがとうございました。

[ 2019/02/12 13:00 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(2)

ビリア復帰後の中盤の構成について考える


 数カ月間の離脱を経て、ビリアが遂に実戦復帰間近とのことです。
カリアリ戦で実戦復帰するかどうかは未定ですが、いずれにせよ中盤にクオリティをもたらしてくれる選手が帰ってきてくれたのは非常に大きいですね。

 今回は、そんな彼を中盤に組み込む場合のベストと思われる構成を考えていきたいと思います。


 考えていく上での前提として、特に言及のない限りは前線と最終ラインはいつもの(スソ、ピョンテク、チャルハノール、カラブリア、ムサッキオ、ロマニョーリ、リカロド)メンバーを想定しています。また、ビリアのコンディションが戻っていることも前提とします。



パケタ ビリア バカヨコ(4-3-3)

ビリア1

 現状の基本フォーメーションである4-3-3を崩さないならば、おそらくこれが最も無難な構成になるかと思われます。

 問題としては、バカヨコのインサイドハーフが機能するかという点と、あのガットゥーゾ監督がケシエを戦術・技術的理由でベンチに座らせるかという点ですね。



バカヨコ、ビリア、ケシエ(4-3-3)

ビリア2

 パケタが疲労等でスタメンから外れた場合に十中八九採用するであろう構成。

し かしポゼッション時にあまり機能するとは思えませんから(両インサイドハーフに展開力がないため)、ロングカウンター狙いや試合途中からなど、状況に応じて部分的に採用するのが良いかなという印象です。



パケタ、バカヨコ、ビリア(4-3-3)

ビリア3

 ①からバカヨコとビリアの位置を変えた構成。
 個人的にはこれが1番見てみたいですし、機能した場合の破壊力も凄いかなと。

 バカヨコを従来のアンカーの位置において守備力を担保し、1列前のビリアが組み立て→崩しを担う形。10-11シーズンに見られたアンブロジーニ(アンカー)とピルロ(インサイドハーフ)の関係に若干近いと言えそうです。

 問題は、ビリアがインサイドハーフで機能するかという点ですね。特に今のミランのインサイドハーフは運動量と機動力が要求されますから、これらの点をビリアが満たせるかどうか…。攻撃性能自体はインサイドハーフでも十分に通用するレベルだと思うのですが、ケシエの機動力・運動量には間違いなく劣る(この点に関してケシエに優るのは世界的にも稀でしょうが)ので、このギャップをチームとして受け入れられるかも未知数です。



パケタ、ビリア、ケシエ(4-3-3)

ビリア4

 バカヨコが欠場する場合に十中八九採用するであろう構成。

 これならかつてのボナベン、ビリア、ケシエの3MFとほぼ同じ構成ですし、攻撃面においては申し分ないのではないかと。

 問題は守備面ですね。バカヨコのボール回収能力に大きく依存している現状、彼を失えばただでさえ堅守とは言い難い(失点こそ少ないですが)今の守備が更に危うくなることは想像に難くありません。
人数をかけ、引いて守っている現状であれば当時ほどズタズタにやられる心配はないでしょうが…。



ビリア、パケタ、バカヨコ(4-2-3-1)

ビリア5

 パケタをトップ下に配置し、ビリアとバカヨコでダブルボランチを組む3角形の構成。
 必ず一度は観たい構成ですし、理論上は間違いなく機能すると思います。

 バカヨコとケシエのダブルボランチの場合、ボールを有効に運べず結局パケタがサポートに下りて実質4-3-3のようになる展開が容易に想像できますが、ビリアとバカヨコならばビリアがボールを運べるので機能するでしょう(つまりビリアとケシエのダブルボランチも良)。

 また、パケタをピョンテクの近くでプレーさせられればチャンスも今以上に作れるでしょうしね。

 問題は、エースであるスソの起用法ですね。一応このフォーメーションでも右サイドハーフで起用可能ですが、あの守備力での起用はかなり心許ないですね…。おそらく4-2-3-1ならカスティジェホの方が適正だと思います。

 しかし、かといって実際にベンチに座らせるわけにもいかないでしょう。ですので、このシステムは攻撃的にいく際のオプションの1つというのが現実的なところでしょうか。

 仮にこれまでと違ってハイプレスを導入してショートカウンターを志向し、スソも守備タスクを忠実にこなしてくれるなら非常に強力なフォーメーションになると個人的には思っていますが…。



まとめ


 理論上はまだまだ多くの組み合わせが考えられますが、実現可能性や機能性を踏まえるとこの辺りが妥当かなという気がします。
個人的なお薦めはやはり③、⑤、①でしょうか。

書き忘れましたが、②の派生形であるバカヨコアンカー、ケシエとビリアの両インサイドハーフとかも(ビリアのパフォーマンスによっては)中々良さそうです。



 ビリアの存在が如何に重要かは、彼が離脱する前後でチームのパフォーマンスが大きく変化したことを見れば明らかです(同時期に離脱したボナベントゥーラの存在も大きかったでしょうが)。

 彼の復帰はCL権を目指すチームにとって間違いなく追い風ですし、念願の内容面の向上にも期待がかかります。今後が楽しみですね。


[ 2019/02/09 14:30 ] 考察 選手 | TB(-) | CM(0)

ルーカス・パケタvsユヴェントス ~好プレーの数々を振り返る~

 今冬にミランに加入したルーカス・パケタ。

 早くも2試合に先発出場し、サンプドリア、ユヴェントスという強力なチームを相手に印象的なプレーを見せてくれています。

 もちろんたった2試合で断定できることは少ないわけですが、とりあえずここまでの感想として、ミランは素晴らしい選手を獲得したのではないかという気がします。

 ドリブルでもパスでもボールを運べ、隙あらば縦へのスルーパスでチャンスを演出。守備もサボりませんし、時折遊び心のあるトリッキーなプレーも披露。はっきり言って滅茶苦茶好感度が上がっています(笑)



 そんなわけで今回は、個人的に印象に残った彼のプレーを先日のユヴェントス戦を振り返りながら具体的に見ていこうかなと(※映像引用元;Dazn)。



 まず一つ目はこちらの、パケタ(赤)が裏に抜け出そうとするクトローネ(桃)へとスルーパスを通したシーン。

ユヴェントスパケタ10


 これまで当ブログでくどい位に主張している「縦に速いサッカー」を実現するには、スペースへと走る選手だけでなくスペースへと高精度でパスを送り込める選手も必要不可欠です。

 これまでのミランの選手の中で後者のプレーができるのはチャルハノールのみ(ビリアは負傷中のため)でしたが、パケタもこれができる選手のようですね。サンプドリア戦でもイグアインへ素晴らしいスルーパスを通していましたしね。

 彼らのような裏に送り込める選手がいることで、クトローネのような選手は十分にその持ち味を発揮できます。
 
 今後、このようなシーンは何度も見られるでしょう。非常に楽しみですね。



 続いてはこちらの、ボールを前進させた一連のシーン。


ユヴェントスパケタ2

 ↑まず、ロマニョーリ(青)からボールを受けたパケタは、ワンタッチでサイドのリカロド(黄)へとシンプルにボールをはたきます。


ユヴェントスパケタ3

 ↑その後、自身は空いているサイドのスペースへと走ってリカロドからの縦パスを引き出すパケタ。


ユヴェントスパケタ4

 ↑このようにしてマーカーを引き連れながらもリカロドからのパスを受け、ボールを前進させました。


 ちなみにこのシーンでは、チャルハノール(紫)がパケタ(とマーカー)が移動したことで空いたスペースに移動してしっかりパスコースを作っています(2枚目、3枚目の画像を参照)。


 結局この局面ではオーバーラップしてきたリカロドへのパスを選択したパケタですが、シンプルにチャルハノールに渡しても面白かったでしょうね(おそらく得意のサイドチェンジが炸裂したはず)。


 サイドに流れてもプレーできるテクニックを持つパケタは、流動性のある攻撃を得意とするチャルハノールと相性が良いですし、この2人+リカロドの3人ならばポゼッションで崩していくことも十分可能になっていくでしょうね。



 3つ目となるこちらは、パケタがサイドのリカロドへと送り、中央のスペースへと走り出したところへリカロドが完璧な縦パスを通したシーン。


ユヴェントスパケタ8


ユヴェントスパケタ9


 シンプルではありますが、パスの受け手としても優れていることがわかります。狭い場所に通したリカロドもお見事。



最後はこちらの一連のシーン。


ユヴェントスパケタ5

 ロングカウンターの流れから中央のバカヨコ(緑)へとボールが渡ったところですが、ここでパケタは下がってボールを受けようとマーカーを引き連れながら動き出します。


ユヴェントスパケタ6

 マーカーの意識がパケタに向いたところで、今度はチャルハノールが背後の2ライン間へと入り込み、パスを引き出します。


ユヴェントスパケタ7

 こうしてバカヨコから見事な縦パスが入り、チャルハノールが2ライン間でボールを受けました。


 ちなみにこれ、この試合のミランにとって最大の決定機であったあのクトローネのバー直撃シュートに繋がる1つ手前のシーンです。


 直接的なオンザボールによる関与ではありませんが、チャンスに絡んだプレーの1つということでお許しください(笑)




 以上、4つのシーンを見てきました。正直まだまだ言及したいプレーがたくさんあるのですが、キリがないのでこの辺にしておきます。


 こうして振り返ると、ミランの作ったチャンスシーンの多くにパケタが絡んでいることがわかりますね。

 これでチームに合流してまだ1週間ちょっとですからね。凄すぎる(笑)



 そしてパケタの存在により、チャルハノールをウイング起用しても機能するのが大きいですよね。

 当ブログでも再三再四主張していますが、チャルハノールは本来中央付近でこそ真価を発揮する選手ですし、サイドに固定されて活きる選手ではありません(4-4-2の左サイドハーフでのプレーが酷かったのが証拠の1つ)。

 頭が良くテクニックがあり、サイドにも流れられるパケタが左インサイドハーフならば、チャルハノールも機を見て中央に流れられますからね。

 逆にパケタにとっても、純粋なウィンガーとのプレーよりも自由に動きやすいメリットがありますし、試合を観ていてもこの2人の相性はかなり良さそうです。

 
 チャルハノールの移籍話が再燃していますが以上のことから僕は相変わらず反対ですし、財政的な理由での放出は止むを得ないとしても、戦力的にはできる限り残すべき選手だと思います。

 チャルハノールのファイナルサードでの精度さえ戻れば超強力コンビになれると思いますしね。



…少し話が逸れてしまいましたが、とにかくパケタは現時点でも主力クラスと言えそうですし、少なくとも当分の間はスタメンで起用されるべき選手でしょうね。

 相手にプレースタイルを研究されてからどうなるかは未知数ですが、今のパケタであればリーグ戦でも十分に活躍できるでしょうからね。


 本当に今後が楽しみな選手ですし、怪我だけはせずにリーグ後半戦を主戦力として戦い抜いて欲しいです!



おまけ


動画で観るスーパープレー

 

ユヴェントス戦で魅せたスーパープレーの1つ。



パケタ、チャルハノール、バカヨコの3ショット




 ピッチ内外で相性の良さそうなパケタとチャルハノール。
 バカヨコ(買取不透明)もチャルハノールも残って欲しいー!!笑

[ 2019/01/19 13:00 ] 考察 選手 | TB(-) | CM(0)

インザーギ・ミハイロビッチ・モンテッラ時代を振り返る

はじめに

 先日、面白いデータを見つけました。



 『Opta』によれば、14-15シーズン以降のミランの監督の中で、平均獲得勝ち点数が最も多い人物は現在のガットゥーゾ(1.74点)らしいです。

 また、他の監督についてはモンテッラ(1.60点)、ミハイロビッチ(1.53点)、インザーギ(1.37点)、そしてブロッキ(1.33点)だそうです。


 これを見た時にそれぞれのミラン時代を思い返したこともあり、今回はせっかくなのでこの4人(ブロッキ時代は短く、語ることも少ないため実質3人)が監督を務めていた頃のミランを振り返っていこうかなと。

 基本的に主観バリバリですのでご容赦ください(笑)




インザーギ時代



 スピードスターのエル・シャーラウィとメネズを中心としたハイプレス&速攻カウンターを見せた14-15シーズン序盤戦は素晴らしいものがありました。
 縦に速く、手数をかけない攻めは当時の戦力の質に合っていましたし、1トップのメネズ(トーレスの場合もあり)が空けたスペースにシャーラウィや本田が入ってきてフィニッシュに絡むという形は非常に組織的なものでしたね。

 しかし、徐々に失速。一番の原因は、戦術的に重要な役割を果たしていたシャーラウィが怪我で離脱したことでしょうね。

 それに加えてトーレスがイマイチ適応しきれなかったこともあり、メネズへの依存が非常に高まってしまいました。


 こういった状況に対しピッポは頻繁にフォーメーションやメンバーを変えるなど、何とか改善しようとする努力は見られましたがほとんど機能せず。
 このままシーズン最後まで状況を変えることはできず、最終的に10位フィニッシュで解任されました。

 結局のところ、失敗の理由はピッポの戦術的引き出しが少なかったことに尽きるかなという印象です。当時はトップチームの監督としてのデビュー年でしたから当然と言えば当然なのですが。



ミハイロビッチ時代



 15-16シーズン序盤、ベルルスコーニ会長に強制された4-3-1-2システムでのプレー内容は非常に悪く、早くも解任の噂がちらほらされていました。

 しかし、吹っ切れたミハイロビッチ監督はシステムを変更。4-3-3を経て4-4-2になってからのチームは非常に組織的で、意外性がなくとも堅実な、まさにミハイロビッチのチームと呼ぶに相応しいものでした。

 2トップのバッカとニアンは守備時にボールをサイドへと誘導するプレスを忠実にこなし、両サイドハーフの本田とボナベントゥーラは誘導後の相手サイド選手へのプレスと躱された後のリトリート+4-4ブロックの形成のために奔走。

 ボール奪取後はニアンがキープ、スピード、ドリブルといった自身の能力を存分に発揮してチームを押し上げカウンター攻撃を機能させ、本田・アバーテのクロス、クツカの後方からの飛び出し、ボナベンのドリブルやバッカのボックス内での駆け引きなどでフィニッシュに繋げました。

 システムを4-4-2に変更した12月(実際は多少時期が前後していたかもしれません)からの13戦で6勝6分1敗という成績からも分かる通り、引き分けも多いが何より負けない堅実なチームでしたね。


 失速の原因は間違いなくニアンの交通事故による長期離脱ですね。このチームのこの戦術において欠かせない戦力だったニアン、バッカ、本田、ボナベントゥーラの4人の中でも極めて重要な存在でしたから、彼の欠場はそのままチームの成績に直結し、延いてはミハイロビッチ監督の解任へと繋がりました。



 当時のミランは、アッレグリ4年目の末期――セードルフ――序盤戦以降のインザーギ――序盤戦のミハイロビッチ―と連続で個人技に頼り切りの組織力の低いサッカーを披露していました。

 それだけに、例え守備的でビッグクラブに相応しくないサッカーと言われようとも、ミハイロビッチ監督のこのサッカーは非常に魅力的に感じましたね。

 
 そもそもミハイロビッチがミラン就任以前に高く評価されていたのはこの組織的な堅守速攻でしたから、ミランでポゼッションサッカーをさせようというのであれば完全に人選ミスでしたね。


 前半戦の4-3-1-2縛りとニアンの長期離脱がなく、始めからフロントの理解とバックアップが万全であれば……と今なお思ってしまいます。



ブロッキ時代




 ミハイロビッチ監督の後任として残りの15-16シーズンを務めました。

 会長の息のかかった人物のため、「当然ながら」4-3-1-2システムで臨みましたが機能するはずもなく勝ち点をこぼし続け、最終的に7位フィニッシュとなりました。

 失礼ながらブロッキが優秀な指揮官だとは思えませんでしたが、あのチーム状況を途中就任で何とかするのはどれほど優秀な指揮官でも極めて難しいでしょう。

 非常に気の毒でしたね…。



モンテッラ時代



 16-17シーズン、就任1年目のモンテッラはシステムを4-3-3に回帰し、ジェノアから大きく成長して帰ってきたスソを軸にした(今のミランに繋がる)チームを構築しました。

 ビルドアップ時に相手のシステムに応じてサイドバック(デ・シリオなど)を中盤に組みこみ(俗にいう偽サイドバック)、円滑なパス回しを実現させるなど、戦術的柔軟性のある戦術家らしいアイディアを披露。

 攻撃時の前線では両WGが内に絞ってCFとの距離を近くすることで1トップの孤立化を防ぎ、空いたサイドのスペースはSBが使用して幅を確保。
 明確な狙いを感じる、攻撃的かつ組織的なチームでしたね。
 

 ただし、中盤以下のポジションに彼好みの選手が少なかった(おそらくトップもでしょうが)ということもあり、ヴィオラ時代のようなポゼッションサッカーではありませんでした。

それでもロカテッリを台頭させるなどして上手く凌いだことで6位フィニッシュ。久しぶりにヨーロッパカップ戦出場権を獲得しました。



 就任2年目となった17-18シーズン。フロントの刷新と共に大型補強を敢行し、いざCLへ…!と思いきや、チームが機能せず12月を待たずして敢え無く解任。

 ターニングポイントを挙げるとすれば、やはりラツィオ戦後から始めた3バックシステムへの変更でしょうか。

 ボヌッチが来たときからある程度3バックの構想はあったとは思いますが、スタメンの半分以上が新加入選手であったため当初は連携がチグハグでしたし、そういった状況下でシステムを変えたのは悪手でしたね。

 試合中でも守備時には3バックから4バックに変更するといったように、かなりの組織力が要求される戦術を試した試合もありましたし、スソをWBで起用するかなり不可解な采配もありました。


 解任後、当時スタッフを務めていたアッビアーティが「モンテッラは誰も信用していなかった」と批判していたことからして、チームの雰囲気も相当悪かったのでしょう…。


 戦術的引き出しの多さは近年のミラン監督の中でも1番だと思いますが、残念ながらそれを遂行する選手たちの心を掌握しきれなかったみたいですね。
 この点は今の監督であるガットゥーゾとは正反対と言えそうです。



おわりに


 以上、ここまで4人(実質3人)の監督時代におけるミランをそれぞれ僕なりに振り返ってみました。

 やはり個人的には後半のミハイロビッチ・ミランが好きでしたねー。次点で一年目前半のモンテッラ・ミランでしょうか。

 彼ら3人はミランでは成功とまではいきませんでしたが、こうして振り返ると凄く楽しかった思い出(試合)もいくつかありますし、ミランを指揮してくれたことに感謝したいですね。


 最後まで読んでいただきありがとうございました。

[ 2019/01/11 19:09 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(2)

チャルハノール・システム(仮)、遂に誕生か?


はじめに


 SPAL戦に2-1で勝利したミラン。

 『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によるこの試合の採点によると、4-3-3の左インサイドハーフで先発出場したハカン・チャルハノールは「6」点だそうです。

 おそらくこの試合の彼については賛否分かれると思うんですよね。「シュートを何度も外しやがって!」とフィニッシュの局面を重要視するか、「ボールに良く絡んでいたしアシストも決めた!」と組み立て~崩しの局面を重要視するかで大きく評価が変動するかなと。

 ちなみに僕は後者派です。むしろこの試合のチャルハノールが前半に見せたパフォーマンスには絶賛したいくらいです。

 それはなぜか。理由は、この試合の前半で見せたチャルハノールの戦術的役割が、今のミランが抱える「崩しの局面のアイディア不足」という問題をある程度解決し得るものだからです。


 というわけで今回は、チャルハノールのこの試合での実際のプレーを振り返っていくことで、如何にして彼がミランの勝利に貢献したか、延いては今後もミランに貢献し得るかを見ていこうと思います。


プレーポジションについて


 まず始めに、この試合のチャルハノールはピッチ上のどの場所でボールに触れたのかを見ていきます。


0チャルハノール タッチ

 こちらがWhoScoredの計測した彼の前半のボールタッチポジションです。



チャルハノールフロジノーネ前半タッチ

 そしてこちらが前節のフロジノーネ戦における前半のボールタッチポジション。


 2つを見比べると、SPAL戦のチャルハノールはセンターサークル付近で頻繁にボールを受けていることがわかります。


 以上のデータと、実際に試合を観た僕の見解を合わせるとこうなります。
この試合のチャルハノールは「央の低い位置でボールを受けて配給し、まるで司令塔のようにもプレーした」ということです。


 「ようにも」と表現をぼかしたのは、まさに司令塔(ピルロやシャビ)のようにゲームをコントロールした(できた)わけではなかったことと、チャルハノールの役割が多岐にわたったことの2つが理由です。


 なお、今回の「チャルハノールが司令塔のようにプレーした」このシステムを、当ブログでは「チャルハノール・システム(仮)」と名付けました。名前が安直過ぎるというツッコミには対応しかねますのでご了承ください(笑)

それと「(仮)」と付けた理由についてはこの記事の最後に説明します。




実際のプレー ①組み立て時に下がって2ボランチを形成


 それでは実際に、チャルハノールがこの試合でどのような戦術的役割を持ってプレーをしていたのか映像付きで説明していきます(映像の引用元はいずれもDAZN『ミラン vs SPAL』より)。。

チャルハノール2ボランチ



 こちらは4分の場面。まずここで注目していただきたいのが、チャルハノール(左インサイドハーフ起用、赤線で図示)とバカヨコ(アンカー起用、青線で図示)の距離が近いこと、そして2ボランチのようになっていることです。

 ただ実際に2ボランチだったわけではなく、ビルドアップ~組み立ての段階でチャルハノールが下がってきてボールを受ける。その結果として2ボランチのようになっているということです。

 通常の2ボランチとの違いは、前線から下がってくるため相手のマーカーが付いて行き辛く、結果的にフリーになりやすいという点ですね。

 この試合のSPALは中盤で5-3-2のミドルブロックかつ純粋なゾーンディフェンスだったため、中盤がチャルハノールの下がる動きにマンマーク気味にして付いていくことはほとんどありませんでした。そのため上記のシーンのようにフリーでボールを受けることが出来ていましたね。


 こういった動きの最大のメリットは、やはりビルドアップ~組み立てのフェーズが安定するという点でしょうかね。特に相手がハイプレスをかけてくるチームの場合、この下がってボールを引き出す動きは非常に重要になってくるでしょうね。

 ちなみにこのシーンでは、図示しているように前線に張るケシエへとハイスピードの縦パスを通し、相手の中盤のブロックを完全に無力化しています。




実際のプレー ②右サイドへのロングフィード


 この試合、少なくとも2回は観られたスソ(黄線で図示)への正確無比なロングフィード。組み立て~崩しの局面を一気にすっ飛ばす素晴らしいプレーです。

チャルハノールロングフィード


 相手が守備ラインを整える前に素早く縦に展開することにより、相手は後手に回らざるを得ず、こちらとしては決定機に繋げやすくなります。

 これこそが最初に述べた「ミランの崩しの局面におけるアイディア不足をある程度解決し得る」チャルハノールの非常に重要な戦術的役割の1つです。

 要は「引いて守りを固める相手を崩せないなら、相手が守りを固める前に崩せば良いじゃない」ということですね。

 このプレーが平然とできるのはミランではチャルハノールだけですからね。昨季のガットゥーゾ・ミランはこういった形がメイン攻撃の1つとしてあったのですが、なぜか今季はポゼッションサッカーに傾倒してこういった縦に速い展開は中々見られませんでした。

 今後も継続的にやってくれると嬉しいのですが…。



実際のプレー ③前線への飛び出し

 上記に挙げた、この試合におけるチャルハノールのプレーポジションをもう一度参照します。

0チャルハノール タッチ

 このデータを見ると、彼は組み立てに参加した後は積極的に前線に上がってボールを受け、フィニッシュに絡もうとしていることがわかります。

 実際、この試合のチャルハノールのシュート数は「6」。チームトップの数字ですからね。後はシュート精度が上がれば(もとい戻れば)申し分ないのですが…。
 
 

実際のプレー ④バカヨコとのポジションチェンジ

 前半の終盤からちょくちょく見られたのが、バカヨコとポジションチェンジしてアンカーポジションに移るというプレー。

チャルハノールアンカー1


 相手がほとんどプレスをかけてこない場合に有効な手段ですね。純粋な展開力という面ではチャルハノールはバカヨコより遥かに上ですからね(一方、プレス耐性が低いので、ハイプレスをかけてくる相手にはかなり危険だと思いますが。)。

 ちなみに、これにより前線に上がりバイタルエリアに侵入したバカヨコが、ケシエからのクロスを受けてフリーでシュートを打ったシーンも印象的でした。
 


…以上が、チャルハノールのこの試合(の前半)における具体的プレーと戦術的役割でした。



チャルハノール・システム(仮)を支える名脇役

 この試合でチャルハノールと中盤を形成したバカヨコとケシエですが、2人の役割もチャルハノールのパス精度を活かすために非常に重要なものでした。
 特にバカヨコ。彼の存在はチャルハノール・システム(仮)の存続延いては発展に必要不可欠なものです。



バカヨコの役割

 彼がこのシステムにおいて務める(今後務め得る)役割は大きく分けて2つ。1つはチャルハノールの守備力を補うことです。

 チャルハノールは運動量もあり守備にも献身的な選手ではあるのですが、フィジカルが比較的弱いのでタックルやボール奪取が上手くない。その上空中戦も弱い。
 そのため(実質)ボランチなどで起用すると守備時に相手に押し込まれてしまうリスクが極めて高くなります。

 事実、試合途中からカラブリアと一緒に2ボランチで起用されたフィオレンティーナ戦は完全に押し込まれましたからね。そして失点。


 一方のバカヨコは、もはやセリエA屈指といっても過言ではないボール奪取能力、及び無敵の空中戦を誇ります。
 
 ですので、仮にこの2人による2ボランチ形成中に嫌な形でボールを失いカウンターを食らっても、ある程度なら彼が何とかしてくれるでしょうね。


 もう1つの主な役割は、チャルハノールへといい形でボールを供給すること。
 様々な方法(敵マーカーを引き連れてフリーランすることでスペースを作るなど)が考えられますが、バカヨコだからこそできるプレーとして「強引な縦へのドリブルで相手を引き付けてからのパス」が考えられます。

バカヨコドリブル


 例えばこのシーンではバカヨコがフィジカルを活かしたドリブルで強引に縦へ持ち出し、敵を3人引き付けたところで脇にいるチャルハノールへとパスを出そうとしました。

 惜しくもここでは相手に当たってパスカットされてしまいましたが、仮にパスが通っていればチャルハノールが中央でかつフリーで前を向くことが出来ていましたし、かなり効果的なプレー選択だったと思いますね。

 余談ですが、この試合のバカヨコのドリブル成功数はチームトップの「6」回でした。



ケシエの役割

 ケシエに期待される役割は、前線へと果敢に攻め上がってチャルハノールからのパスコースを作り出すことです。

 これまでの画像からも明らかですが、この試合のケシエ(緑線で示していた選手)は非常に高い位置を取っていました。システム表記でいえばイグアインと並んで4-2-4と言っても過言ではないかもしれません。

チャルハノールサイドチェンジ

 そんなケシエに対し、相手の3バックの一角である左CBはかなり警戒していたと思います。そして彼に対するマークを優先したがゆえに左WBの裏のスペースをカバーしきれず、結果チャルハノールからスソへのロングフィードを何度も許してしまいました


 つまり今回は、直接的なパスコースを何度も作り出したわけではありませんでしたが、ケシエは自身の動きでチャルハノールからスソへのパスコースを間接的に作り出していたということですね。



 おそらく、もう少しレベルが上の相手と対戦する際はよりバランスを重視したポジショニングを取るでしょうが、その時も持ち前の運動量を活かしたフリーランでチャルハノールのパスコースを積極的に作って欲しいと思います。




終わりに


 以上、ここまでSPAL戦前半に見られたチャルハノールの戦術的役割や彼中心の攻撃(「チャルハノール・システム(仮)」)の具体的内容、及び彼を支えた中盤の役割をそれぞれ説明してきました。


 さて、ここで棚上げにしていた「(仮)」と付けた理由についてですが、それは今後もこのシステムが使われていくかわからないからです。

 というのも、このチャルハノール中心のシステムが見られたのは前半のみで、相手のシステム修正もあった後半開始からはほとんど見られなくなりました。
 加えてミランがクトローネを投入してシステムを4-4-2に変えてからはチャルハノールがサイドに追いやられたため、完全になくなりました。

チャルハノールSPAL戦後半

後半からのチャルハノールのボールタッチポジションを見れば一目瞭然ですね…。


 ひょっとすると、前半のプレーも個々人が独自の判断で勝手にやっていて、それを勝手に僕がシステムとして拡大解釈しているという可能性もゼロではありません…(ケシエの高い位置取りは間違いなく指示でしょうし、チャルハノールからスソへのロングフィードを活かす戦術は間違いなく意図していたでしょうが。)


 さらに言うと、このシステムが同格ないし格上相手にも通用するのかといった疑問もありますし…とにかくまだサンプル数が少ないため何とも言えないんですよね。



 しかし、そういった事情があるにも関わらずこうして時間をかけてじっくり書いたのは、この3MF(特にチャルハノールとバカヨコの関係性)にとてつもない可能性を感じたからです。


 チャルハノールの局面打開力の凄さはこの試合の前半だけではっきりと見て取れましたし、バカヨコの恐ろしいまでのボール回収能力やキープ力も健在でした。つまり、お互いがお互いの長所を活かし・短所を補える関係にあります。

 後はチームの組織力を高めてチャルハノールの短・中距離のパス能力も存分に活かせるようになれば、今のミランの抱えるビルドアップの脆さや崩しのアイディア不足はかなり改善されると確信しています。


 要はチャルハノール中心のシステムを作って欲しいということですね。彼はそれだけのポテンシャルを持っていると思いますし、それによるデメリットを補える男(バカヨコ)も幸い今のミランには存在しますから。


 数週間後にはリーグ後半戦が始まります。おそらく開始からしばらくはこの3MFが見られるはず。
 今後どのような展開を見せるのか……通常の逆3角形型でいくのか、はたまたチャルハノール・システム(仮)の継続、、果ては発展して(仮)が取れるほど組織としての完成度を高めていくか…。


 注目していきたいですね。



長くなりましたが、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました!

[ 2018/12/31 13:02 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

フランチェスコ・グイドリンとは何者か ~偉大な実績とその戦術的特徴~


はじめに

 ガットゥーゾ監督の去就が騒がれ始めてしばらく経ちましたが、メディアはその後任候補として様々な名を挙げています。

 ユヴェントス、チェルシー、イタリア代表などを率いた経験を持つコンテや、元アーセナルのベンゲル、ミランOBにしてかつては日本行きも噂されたドナドーニなどなど…。


 その中でも、個人的に最も注目しているのがフランチェスコ・グイドリンです。



 最近セリエAを見始めた方や、セリエA自体にあまり興味のない方からすれば「グイドリンって誰?」「プレミアのスウォンジーですぐに解任された人」などといったポジティブではない印象を持たれているかもしれません。

 しかし、戦術家としての能力と育成の手腕に関しては紛れもなく本物です。断言します。


 今回は、そんなグイドリンの指揮していた当時のウディネーゼの成績・試合などを分析することを通じて、彼の凄さや戦術的特徴について明らかにしていきたいと思います。最後に、ミラン監督就任の是非について自身の見解を表明します。


 ちなみに記事の執筆に至った理由は主に以下の3点です。

 

 ・ミランの監督に就任する可能性があるから
 ・その偉大な実績や実力に比べて知名度が低いと思ったから
 ・個人的に大好きな監督だから(これが最も重要です!笑)





ウディネーゼでの偉大な実績①CL権獲得


 彼という人物を語るにはあまりに不十分ながら、彼の凄さを明らかにする上では十分なデータがあります。

 それが、ウディネーゼの過去のリーグ戦成績です。

09-10 15位
10-11 4位グイドリン就任
11-12 3位
12-13 5位
13-14 13位
14-15 16位↓グイドリン退任
15-16 17位
16-17 13位
17-18 14位




 グイドリンが監督を務めた4シーズン(10~14)とその前後であまりに大きな差があることがわかります。
 確かに、最終シーズンこそチームの核であるディ・ナターレの衰えや移籍した主力の穴埋めに苦戦したため好成績を残すことが出来ませんでしたが、それまでの3シーズンはクラブ規模や戦力を考慮すれば望外の結果と言えるでしょう。

 特に最初の2シーズンはCL権まで獲得していますからね(予選プレーオフで敗退したため、惜しくもCL本戦に進むことはできませんでしたが)。
 
 21世紀に突入してからはユヴェントス、インテル、ミラン、ローマ、ラツィオ、ナポリに独占されていた(もとい現在もされている)トップ3の座を唯一奪ったのがこのグイドリン・ウディネーゼです。
 

ウディネーゼでの偉大な実績②選手育成


 選手育成が非常に上手であるというのもグイドリンの特徴であり、彼の本当に凄いところです。
 
グイドリン1


 これは10-11シーズンのウディネーゼの主なスタメンとそのシステム(※あくまで1例)ですが、もうこれを見ただけでお気づきの方もおられるかと思います。

 そう、メンバーが凄いんです。詳細は省きますが、彼らの多くが数年後に上位クラブへステップアップを果たしています。

 もちろん彼らはウディネーゼに来た当初から凄かったわけではなく、ウディネーゼ(グイドリンの下)で成長を遂げた選手がほとんどです。というか加入当時はほとんどが無名選手でした。

 ちなみにこのシーズンの終わりにはサパタ、インレル、サンチェスという主力3人が抜けましたが、実力未知数であった新加入選手(ダニーロなど)が穴を埋めた翌シーズンは更に順位を1つ上げる(3位)サプライズを演出。

 グイドリンの育成能力(及び組織構築能力)、そしてウディネーゼの才能発掘能力にはただただ驚かされましたね…。



グイドリンの戦術について


 いよいよ、本題であるグイドリンの戦術の話題に移ります。

 まずはグイドリン・ウディネーゼにおいておおむね見られたプレー原則(※攻守におけるチームの指針・超基本的な約束事)について説明します。
 攻撃のプレー原則は「縦に速く、素早くフィニッシュに繋げること」、そして守備のプレー原則は「中央エリア、特にバイタルエリアでは絶対に相手を自由にさせないこと」であると言えるでしょうね。

 
 続いて、こういったプレー原則を実現するための手法すなわち戦術について解説…といきたいところですが、最初に断っておきますとグイドリンが固執している戦術はありません。

 「どういうこと?」と思うかもしれませんが、これがグイドリンのグイドリンたる所以です。

 すなわちグイドリンの戦術の最大の特徴は、ほぼ常に「対戦相手に応じて攻撃・守備の戦術が明確に変わる」ことです。
 試合前に対戦チームの長所・短所を徹底的に分析し、相手の「長所を潰す」守備と「短所を突く」攻撃を練り上げて試合に臨みます。

 ですから相手の特徴に応じてシステムも頻繁に変わりますし、試合へのアプローチも様々です。

・自陣深くに引いて守ることもあれば、ハイプレスを仕掛けたりすることもある(ハイプレスはかなり稀でしたが)。

・純粋なゾーンディフェンスで守ることもあれば、相手キープレーヤーをマンマークで徹底的に封じるなどして守ることもある(WBを相手SBにマンツーマンで張り付け、ビルドアップに参加させないなど)。

・サイドから執拗にクロスを上げることもあれば、素早く相手DFラインの裏へとロングボールを蹴り込むこともある(蹴り込む位置も試合毎に変わる)。



 
 以上のように、試合毎に(場合によっては1試合の中でも)様々な戦術を「明確に」使い分け、必要とあらば試合中にシステムをも変える。そしてその複雑な指示に忠実に応えるチームの組織力の高さと、それを作り上げたグイドリンの手腕

 これこそがグイドリンと彼のウディネーゼの最大の魅力であり、純粋な戦力から予想される成績を大幅に超えた結果を残した1番の理由でしょうね。

 



具体例 ~VSミランの場合~


 以上の説明だけではピンと来ない人も多いと思うので、実際に当時(10-11シーズン)のスクデット覇者ミランに対し、グイドリンがどのような戦術を用いて臨んだのかを具体的に見ていきたいと思います。

 当時のミランのシステムは4-3-1-2。さらに当時のミランにはイブラヒモビッチを筆頭に世界最高の選手たちがいましたので戦力差は明白でした(この試合ではネスタやピルロなど欠場者も多数いましたが。)

 そんな彼らに対し、グイドリン率いるウディネーゼはどう対抗したのか。箇条書きにすると

・システムは3-5-2

・中央突破を図る傾向の強いミランに対し、まず中央をガッチガチに固めて中央エリアで出来る限りプレーさせず、サイドへボールと人を誘導。

・ミランのシステム上、サイドの幅を使うのは主にSBの役割。ゆえにサイドを「わざと」使わせることでミランのSB(主に左SBのアントニーニ)のオーバーラップを誘発する。

・ボールを奪ったら即座にカウンターへと移行。ミランはSBが上がってしまっているためもろに鋭いカウンターを浴びる場面が頻発。

・攻撃ではクロスを中心に攻めることで、相手CBのボネーラの抱える1対1と空中戦の弱さを突く。

・これに対しミランがサイドをケアすれば、今度は空きがちとなったバイタルエリアからインレルが強烈なミドルシュートで襲い掛かる。




…といった感じですね。


 結局、この試合のスコアは4-4。スコアだけ見ると攻撃は良くても本当に守備が機能していたのか怪しいと感じるかもしれませんが、ミランのゴールはほとんどがイブラヒモビッチの破壊力、パトの決定力、カッサーノの創造力といういずれもトップクラスの個の力に大きく依存したものと言えました。

 イブラとカッサーノの相性の良さは少なくとも僕の知る限り歴代最高レベルのものですし、ウディネーゼ(もといプロヴィンチャクラブ)がどれだけ見事な守備を披露してもゴリ押されてしまうレベルの個の力だったと思います。それに疲労もあったでしょう。

 実際、カッサーノが投入されたのは69分で、その後78分から92分という終盤の時間帯に3ゴールが生まれましたしね。それまでのウディネーゼは攻守ともに本当に素晴らしい組織的なサッカーでした。


 このトピックの最後に、上記の試合のデータを参照します(以下の画像はいずれもWhoScoredより引用。)

bandicam 2018-12-28 18-07-04-605

ミランの平均ポジションを見ますと、やはり左SBのアントニーニ(77)が高い位置を取っていることがわかります。


bandicam 2018-12-28 18-07-15-011


 一方のウディネーゼですが、こちらはミランに比べ縦にも横にもコンパクトですし、しっかりと組織的に守っていた1つの証拠と言えるでしょうね。
 またこの画像だと26番のパスクアーレがやや浮いていますが、おそらくウディネーゼ側右サイドにミランを誘い込んだ際に反対側でカウンターに備えていたことが原因だと思われます。




グイドリンの欠点

 最後に。ここまで彼の素晴らしい部分のみに焦点を当てて紹介してきたわけですが、もちろん彼にも欠点は存在します。箇条書きにしますと

①組織の構築にかなりの時間がかかること
②相手にボールを持たされた時の打開力にやや欠けること
③上層部と何度か対立を起こしていること
④ ビッグクラブでの指揮経験がないこと




…といったところでしょうか。

 それぞれについて解説もとい弁解をします(笑)


 ①について。最終的に4位に食い込んだ10-11シーズンですが、実は開幕から4連敗スタートだったんですよね。
 もしビッグクラブでそんなことをすればメディアとサポーターからの大バッシングは間違いなく、最悪の場合は開幕早々の解任すら起こりえます。

 途中就任から何度かチームを立て直している実績があることからも、時間がなければどうしようもないというわけではないと思います。
 しかし彼の本領は時間がたっぷりあってこそ発揮されるでしょうし、十分な猶予を保証するべきでしょう。
 その分、組織が完成した際の威力は凄まじいですからね。


 ②について。ビッグクラブではボールを持たされる試合が多いですから、この欠点はビッグクラブを指揮する上では見過ごせません。
まぁしかしプロヴィンチャクラブとは戦力の質も量も違いますし、戦力さえあれば改善する可能性はあると個人的には思います。


 ③について。何度か上層部との確執により退任ないし解任されたことがあるのですが、これは主にパレルモの名物会長であるザンパリーニ氏との間で起こったことというのは考慮すべきでしょうね(笑)


 ④について。かつてのインタビューで語っていましたが、年齢の問題もありビッグクラブでの指揮にあまり関心がないそうですね。
 確かにプレッシャーやしがらみの少ないプロヴィンチャクラブで自身の辣腕を振るうのが性に合っているのかもしれませんが…。
 彼の実力であれば、もう少し上のクラブでも十分に通用すると思うんですけどね。





終わりに

 以上、ここまで当時のウディネーゼの成績・試合の分析を通じてグイドリンの凄さや戦術的特徴、及びちょっとした欠点を見てきました。

 これでも精選したつもりなのですが…とんでもない文量になってしまいました(笑)
 それだけ僕という男がグイドリンを崇拝しているのだと好意的(?)に受け取っていただけたら幸いです。



 正直のところミランに来る可能性は低そうですし、仮に来てくれたとしても上記に挙げた欠点を考えると成功することはかなり難しいとは思います。

 ですが大好きなクラブで大好きな監督が指揮を執ることを想像したらやはりとてつもなく嬉しくなりますし、もし実現したら狂喜乱舞するでしょうね(笑)




 ものすごーーーーく長くなってしまいましたが(間違いなく当ブログ史上最長記事)、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました!

 ちなみにもしも、「自分もグイドリン大好き!」「グイドリン良い監督っぽいじゃん」などという好意的な感想をお持ちになっている方がいましたら、コメントないし↓の「拍手」で意思表示していただけると大のグイドリンファンとして非常に嬉しいです。

 押しつけがましいお願いですみませんが、よろしければご協力をお願い致します!


[ 2018/12/28 18:43 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(2)

拙攻・得点力不足の最大の原因と監督の責任



はじめに;リーグ戦3試合連続無得点


 開幕から10試合連続失点などという不名誉な記録を残したことからも明らかなように、開幕序盤は守備に大きな問題を抱えていたミラン。
 しかし一方で攻撃は比較的機能していました(10試合中9試合で得点)。

 シーズンも中盤に突入した現在。相手の拙攻やバカヨコの覚醒、ドンナルンマの復調などによってクリーンシートを達成する試合もちょくちょく出てきた一方で、攻撃においてはリーグ戦3試合連続無得点(暫定)という不振に陥ってしまいました。


 では、序盤戦は比較的機能していた攻撃が上手くいかなくなったのは何故なのでしょうか…?



拙攻の最大の原因


 様々な要因はありますが、中でも最近の得点力不足の最大の原因を僕なりに説明してみると、「ビリア、ボナベントゥーラといった中盤やエリア付近で違いを作れる選手が長期離脱してしまったことで、攻撃の単調さに拍車がかかってしまった」ということに尽きるかなと。

 以下、もう少し具体的に説明します。


 ボナベントゥーラはイグアインともピッチ上で良い関係を築けていましたし、何よりここぞという場面での決定力の高さがありました。
 また、スソ以外で崩しの局面に大きく貢献できていた数少ない選手でしたね。


 ビリアのゲームメイク能力とミドルシュートがなくなったのも痛かったと思います。現在はバカヨコがビリアの不在を補って余りある守備力を見せてくれていますし、あの屈強なフィジカルを活かした強引な縦への持ち出しはビリアにはできない芸当でしょう。

 しかし、こと攻撃面における貢献度(ロングパスや縦パスの精度・頻度・タイミングなど)はまだまだビリアの方が上だと感じますし、最近のミランの攻撃(特に4-4-2システムの際)に単調な攻撃が続くのはビリア不在の影響が大きいでしょう。



 続いて「攻撃の単調さに拍車がかかってしまった」という表現について。
 点の取れていた当時もスソの個の力に依存していた試合は多かったわけですが、それでもイグアインのボールを受けに下がりに来るプレーとボナベントゥーラの前線への飛び出しといったそれぞれのプレースタイルの特徴を噛み合わせた戦術的な攻撃の形が確かにありました(この点については、ガットゥーゾ・ミランの戦術的特徴について語ったこの記事で詳述しているため、未読の方はもしよろしければご覧ください)。

 しかしボナベントゥーラの離脱に伴いそういった攻撃の形が1つ減ったため、スソに依存する割合が更に増えた(≒攻撃の単調さに拍車がかかった)ということです。




長期離脱の理由


 そもそもなぜ、彼ら2人は長期離脱を余儀なくされたのかと言われれば、それはガットゥーゾ監督による酷使の影響が大きいでしょう。

 ここでいう酷使とは、もちろんほとんど休ませず先発起用したという意味合いも含まれていますが、ここで強調しておきたいのはピッチ上における酷使です。


 ビリア、ボナベンが健在だったころのミランが固定的に採用していた4-3-3システムでは、両インサイドハーフが積極的にCBにプレスをかけにいく関係上アンカーポジションの両脇に広大なスペースを空けてしまい、そこを相手に使われるという試合が何度もありました(こちらの記事にて詳述しています。よろしければご覧ください)。

 広大なスペースの担当を背負わされたビリアはそのカバーに走り回り、両インサイドハーフも前線へのプレス→プレスバックに奔走するという形が非常に目立ちました。

 こういった形は最後まで改善されず、その上ほとんどの試合で(特にビリアは)先発起用・フル出場していたものですから、疲労が溜まりに溜まっていつか爆発するというのは明らかでしたね。

 彼らと一緒に酷使されていた(もとい現在も酷使されている)ケシエが健在なのは、ひとえに彼自身の抜きんでた「怪我耐性の強さ」によるものでしょう。

 はっきり言って彼の頑丈さは異常なレベルです。チームにとってとても有り難い存在ではありますが、彼の健在を根拠にガットゥーゾ監督のこの采配を擁護することはできないでしょう


 ビリア、ボナベンの代役が実質的に不在だったという汲むべき事情はあり、その点についてはチーム編成の問題もありますが、彼らに過剰な負担をかけていた上記の戦術的問題の解決が見られなかったのはガットゥーゾ監督の責任だと思います。




終わりに;運命の懸かった2戦と解任の是非


 ここ最近のチームの内容・結果の不振に伴い、再び解任報道が浮上しているガットゥーゾ監督。

 『Sky』によれば、次のフロジノーネ、SPALとの2試合が彼の運命を決めるものになると報じています。


 …残念ながら、この状況では解任も致し方無いですね。


 ここまで述べてきたように、攻撃の不振は結局のところ彼の采配ひいては戦術的引き出しの少なさによるところが大きく、この点以外にも戦術家としての彼には疑問を呈すべき点がいくつもあります。


 まぁフロジノーネ、SPALとの戦力差は明白ですから、ひょっとしたら個人技のゴリ押しで勝つなんてことも充分に考えられます。

 しかし…それでガットゥーゾ・ミランが続くことで、中・長期的に見てプラスとなるか(もっと言えばCL権を獲得できるか)は…チームの現状を踏まえるとかなり厳しいといえるのではないでしょうか。
 もし解任するとすれば、ウィンターブレイク前のこの辺りの時期がベターだと思いますしね。


 ただし個人的に気にかかるのが、監督の後任有力候補がドナドーニとベンゲルという点です。
 ビッグクラブでの指揮経験が皆無の前者と、セリエAでの指揮経験が皆無の後者……どちらもガットゥーゾ監督より遥かに経験豊かな指導者ではあるのですが、どうも上手くいくとはあまり思えないんですよね…。

 まぁ実際のところやってみるまでは分かりませんし、今の閉塞感を打開する監督交代自体には賛成です。



 いずれにせよ僕の主張は、もしガットゥーゾ監督が解任されるとしても、残念ながらそれは納得できてしまう判断だということですね。



非常に長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。





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[ 2018/12/24 07:00 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(2)