ルーカス・パケタvsユヴェントス ~好プレーの数々を振り返る~

 今冬にミランに加入したルーカス・パケタ。

 早くも2試合に先発出場し、サンプドリア、ユヴェントスという強力なチームを相手に印象的なプレーを見せてくれています。

 もちろんたった2試合で断定できることは少ないわけですが、とりあえずここまでの感想として、ミランは素晴らしい選手を獲得したのではないかという気がします。

 ドリブルでもパスでもボールを運べ、隙あらば縦へのスルーパスでチャンスを演出。守備もサボりませんし、時折遊び心のあるトリッキーなプレーも披露。はっきり言って滅茶苦茶好感度が上がっています(笑)



 そんなわけで今回は、個人的に印象に残った彼のプレーを先日のユヴェントス戦を振り返りながら具体的に見ていこうかなと(※映像引用元;Dazn)。



 まず一つ目はこちらの、パケタ(赤)が裏に抜け出そうとするクトローネ(桃)へとスルーパスを通したシーン。

ユヴェントスパケタ10


 これまで当ブログでくどい位に主張している「縦に速いサッカー」を実現するには、スペースへと走る選手だけでなくスペースへと高精度でパスを送り込める選手も必要不可欠です。

 これまでのミランの選手の中で後者のプレーができるのはチャルハノールのみ(ビリアは負傷中のため)でしたが、パケタもこれができる選手のようですね。サンプドリア戦でもイグアインへ素晴らしいスルーパスを通していましたしね。

 彼らのような裏に送り込める選手がいることで、クトローネのような選手は十分にその持ち味を発揮できます。
 
 今後、このようなシーンは何度も見られるでしょう。非常に楽しみですね。



 続いてはこちらの、ボールを前進させた一連のシーン。


ユヴェントスパケタ2

 ↑まず、ロマニョーリ(青)からボールを受けたパケタは、ワンタッチでサイドのリカロド(黄)へとシンプルにボールをはたきます。


ユヴェントスパケタ3

 ↑その後、自身は空いているサイドのスペースへと走ってリカロドからの縦パスを引き出すパケタ。


ユヴェントスパケタ4

 ↑このようにしてマーカーを引き連れながらもリカロドからのパスを受け、ボールを前進させました。


 ちなみにこのシーンでは、チャルハノール(紫)がパケタ(とマーカー)が移動したことで空いたスペースに移動してしっかりパスコースを作っています(2枚目、3枚目の画像を参照)。


 結局この局面ではオーバーラップしてきたリカロドへのパスを選択したパケタですが、シンプルにチャルハノールに渡しても面白かったでしょうね(おそらく得意のサイドチェンジが炸裂したはず)。


 サイドに流れてもプレーできるテクニックを持つパケタは、流動性のある攻撃を得意とするチャルハノールと相性が良いですし、この2人+リカロドの3人ならばポゼッションで崩していくことも十分可能になっていくでしょうね。



 3つ目となるこちらは、パケタがサイドのリカロドへと送り、中央のスペースへと走り出したところへリカロドが完璧な縦パスを通したシーン。


ユヴェントスパケタ8


ユヴェントスパケタ9


 シンプルではありますが、パスの受け手としても優れていることがわかります。狭い場所に通したリカロドもお見事。



最後はこちらの一連のシーン。


ユヴェントスパケタ5

 ロングカウンターの流れから中央のバカヨコ(緑)へとボールが渡ったところですが、ここでパケタは下がってボールを受けようとマーカーを引き連れながら動き出します。


ユヴェントスパケタ6

 マーカーの意識がパケタに向いたところで、今度はチャルハノールが背後の2ライン間へと入り込み、パスを引き出します。


ユヴェントスパケタ7

 こうしてバカヨコから見事な縦パスが入り、チャルハノールが2ライン間でボールを受けました。


 ちなみにこれ、この試合のミランにとって最大の決定機であったあのクトローネのバー直撃シュートに繋がる1つ手前のシーンです。


 直接的なオンザボールによる関与ではありませんが、チャンスに絡んだプレーの1つということでお許しください(笑)




 以上、4つのシーンを見てきました。正直まだまだ言及したいプレーがたくさんあるのですが、キリがないのでこの辺にしておきます。


 こうして振り返ると、ミランの作ったチャンスシーンの多くにパケタが絡んでいることがわかりますね。

 これでチームに合流してまだ1週間ちょっとですからね。凄すぎる(笑)



 そしてパケタの存在により、チャルハノールをウイング起用しても機能するのが大きいですよね。

 当ブログでも再三再四主張していますが、チャルハノールは本来中央付近でこそ真価を発揮する選手ですし、サイドに固定されて活きる選手ではありません(4-4-2の左サイドハーフでのプレーが酷かったのが証拠の1つ)。

 頭が良くテクニックがあり、サイドにも流れられるパケタが左インサイドハーフならば、チャルハノールも機を見て中央に流れられますからね。

 逆にパケタにとっても、純粋なウィンガーとのプレーよりも自由に動きやすいメリットがありますし、試合を観ていてもこの2人の相性はかなり良さそうです。

 
 チャルハノールの移籍話が再燃していますが以上のことから僕は相変わらず反対ですし、財政的な理由での放出は止むを得ないとしても、戦力的にはできる限り残すべき選手だと思います。

 チャルハノールのファイナルサードでの精度さえ戻れば超強力コンビになれると思いますしね。



…少し話が逸れてしまいましたが、とにかくパケタは現時点でも主力クラスと言えそうですし、少なくとも当分の間はスタメンで起用されるべき選手でしょうね。

 相手にプレースタイルを研究されてからどうなるかは未知数ですが、今のパケタであればリーグ戦でも十分に活躍できるでしょうからね。


 本当に今後が楽しみな選手ですし、怪我だけはせずにリーグ後半戦を主戦力として戦い抜いて欲しいです!



おまけ


動画で観るスーパープレー

 

ユヴェントス戦で魅せたスーパープレーの1つ。



パケタ、チャルハノール、バカヨコの3ショット




 ピッチ内外で相性の良さそうなパケタとチャルハノール。
 バカヨコ(買取不透明)もチャルハノールも残って欲しいー!!笑

[ 2019/01/19 13:00 ] 考察 選手 | TB(-) | CM(0)

インザーギ・ミハイロビッチ・モンテッラ時代を振り返る

はじめに

 先日、面白いデータを見つけました。



 『Opta』によれば、14-15シーズン以降のミランの監督の中で、平均獲得勝ち点数が最も多い人物は現在のガットゥーゾ(1.74点)らしいです。

 また、他の監督についてはモンテッラ(1.60点)、ミハイロビッチ(1.53点)、インザーギ(1.37点)、そしてブロッキ(1.33点)だそうです。


 これを見た時にそれぞれのミラン時代を思い返したこともあり、今回はせっかくなのでこの4人(ブロッキ時代は短く、語ることも少ないため実質3人)が監督を務めていた頃のミランを振り返っていこうかなと。

 基本的に主観バリバリですのでご容赦ください(笑)




インザーギ時代



 スピードスターのエル・シャーラウィとメネズを中心としたハイプレス&速攻カウンターを見せた14-15シーズン序盤戦は素晴らしいものがありました。
 縦に速く、手数をかけない攻めは当時の戦力の質に合っていましたし、1トップのメネズ(トーレスの場合もあり)が空けたスペースにシャーラウィや本田が入ってきてフィニッシュに絡むという形は非常に組織的なものでしたね。

 しかし、徐々に失速。一番の原因は、戦術的に重要な役割を果たしていたシャーラウィが怪我で離脱したことでしょうね。

 それに加えてトーレスがイマイチ適応しきれなかったこともあり、メネズへの依存が非常に高まってしまいました。


 こういった状況に対しピッポは頻繁にフォーメーションやメンバーを変えるなど、何とか改善しようとする努力は見られましたがほとんど機能せず。
 このままシーズン最後まで状況を変えることはできず、最終的に10位フィニッシュで解任されました。

 結局のところ、失敗の理由はピッポの戦術的引き出しが少なかったことに尽きるかなという印象です。当時はトップチームの監督としてのデビュー年でしたから当然と言えば当然なのですが。



ミハイロビッチ時代



 15-16シーズン序盤、ベルルスコーニ会長に強制された4-3-1-2システムでのプレー内容は非常に悪く、早くも解任の噂がちらほらされていました。

 しかし、吹っ切れたミハイロビッチ監督はシステムを変更。4-3-3を経て4-4-2になってからのチームは非常に組織的で、意外性がなくとも堅実な、まさにミハイロビッチのチームと呼ぶに相応しいものでした。

 2トップのバッカとニアンは守備時にボールをサイドへと誘導するプレスを忠実にこなし、両サイドハーフの本田とボナベントゥーラは誘導後の相手サイド選手へのプレスと躱された後のリトリート+4-4ブロックの形成のために奔走。

 ボール奪取後はニアンがキープ、スピード、ドリブルといった自身の能力を存分に発揮してチームを押し上げカウンター攻撃を機能させ、本田・アバーテのクロス、クツカの後方からの飛び出し、ボナベンのドリブルやバッカのボックス内での駆け引きなどでフィニッシュに繋げました。

 システムを4-4-2に変更した12月(実際は多少時期が前後していたかもしれません)からの13戦で6勝6分1敗という成績からも分かる通り、引き分けも多いが何より負けない堅実なチームでしたね。


 失速の原因は間違いなくニアンの交通事故による長期離脱ですね。このチームのこの戦術において欠かせない戦力だったニアン、バッカ、本田、ボナベントゥーラの4人の中でも極めて重要な存在でしたから、彼の欠場はそのままチームの成績に直結し、延いてはミハイロビッチ監督の解任へと繋がりました。



 当時のミランは、アッレグリ4年目の末期――セードルフ――序盤戦以降のインザーギ――序盤戦のミハイロビッチ―と連続で個人技に頼り切りの組織力の低いサッカーを披露していました。

 それだけに、例え守備的でビッグクラブに相応しくないサッカーと言われようとも、ミハイロビッチ監督のこのサッカーは非常に魅力的に感じましたね。

 
 そもそもミハイロビッチがミラン就任以前に高く評価されていたのはこの組織的な堅守速攻でしたから、ミランでポゼッションサッカーをさせようというのであれば完全に人選ミスでしたね。


 前半戦の4-3-1-2縛りとニアンの長期離脱がなく、始めからフロントの理解とバックアップが万全であれば……と今なお思ってしまいます。



ブロッキ時代




 ミハイロビッチ監督の後任として残りの15-16シーズンを務めました。

 会長の息のかかった人物のため、「当然ながら」4-3-1-2システムで臨みましたが機能するはずもなく勝ち点をこぼし続け、最終的に7位フィニッシュとなりました。

 失礼ながらブロッキが優秀な指揮官だとは思えませんでしたが、あのチーム状況を途中就任で何とかするのはどれほど優秀な指揮官でも極めて難しいでしょう。

 非常に気の毒でしたね…。



モンテッラ時代



 16-17シーズン、就任1年目のモンテッラはシステムを4-3-3に回帰し、ジェノアから大きく成長して帰ってきたスソを軸にした(今のミランに繋がる)チームを構築しました。

 ビルドアップ時に相手のシステムに応じてサイドバック(デ・シリオなど)を中盤に組みこみ(俗にいう偽サイドバック)、円滑なパス回しを実現させるなど、戦術的柔軟性のある戦術家らしいアイディアを披露。

 攻撃時の前線では両WGが内に絞ってCFとの距離を近くすることで1トップの孤立化を防ぎ、空いたサイドのスペースはSBが使用して幅を確保。
 明確な狙いを感じる、攻撃的かつ組織的なチームでしたね。
 

 ただし、中盤以下のポジションに彼好みの選手が少なかった(おそらくトップもでしょうが)ということもあり、ヴィオラ時代のようなポゼッションサッカーではありませんでした。

それでもロカテッリを台頭させるなどして上手く凌いだことで6位フィニッシュ。久しぶりにヨーロッパカップ戦出場権を獲得しました。



 就任2年目となった17-18シーズン。フロントの刷新と共に大型補強を敢行し、いざCLへ…!と思いきや、チームが機能せず12月を待たずして敢え無く解任。

 ターニングポイントを挙げるとすれば、やはりラツィオ戦後から始めた3バックシステムへの変更でしょうか。

 ボヌッチが来たときからある程度3バックの構想はあったとは思いますが、スタメンの半分以上が新加入選手であったため当初は連携がチグハグでしたし、そういった状況下でシステムを変えたのは悪手でしたね。

 試合中でも守備時には3バックから4バックに変更するといったように、かなりの組織力が要求される戦術を試した試合もありましたし、スソをWBで起用するかなり不可解な采配もありました。


 解任後、当時スタッフを務めていたアッビアーティが「モンテッラは誰も信用していなかった」と批判していたことからして、チームの雰囲気も相当悪かったのでしょう…。


 戦術的引き出しの多さは近年のミラン監督の中でも1番だと思いますが、残念ながらそれを遂行する選手たちの心を掌握しきれなかったみたいですね。
 この点は今の監督であるガットゥーゾとは正反対と言えそうです。



おわりに


 以上、ここまで4人(実質3人)の監督時代におけるミランをそれぞれ僕なりに振り返ってみました。

 やはり個人的には後半のミハイロビッチ・ミランが好きでしたねー。次点で一年目前半のモンテッラ・ミランでしょうか。

 彼ら3人はミランでは成功とまではいきませんでしたが、こうして振り返ると凄く楽しかった思い出(試合)もいくつかありますし、ミランを指揮してくれたことに感謝したいですね。


 最後まで読んでいただきありがとうございました。

[ 2019/01/11 19:09 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(2)

チャルハノール・システム(仮)、遂に誕生か?


はじめに


 SPAL戦に2-1で勝利したミラン。

 『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によるこの試合の採点によると、4-3-3の左インサイドハーフで先発出場したハカン・チャルハノールは「6」点だそうです。

 おそらくこの試合の彼については賛否分かれると思うんですよね。「シュートを何度も外しやがって!」とフィニッシュの局面を重要視するか、「ボールに良く絡んでいたしアシストも決めた!」と組み立て~崩しの局面を重要視するかで大きく評価が変動するかなと。

 ちなみに僕は後者派です。むしろこの試合のチャルハノールが前半に見せたパフォーマンスには絶賛したいくらいです。

 それはなぜか。理由は、この試合の前半で見せたチャルハノールの戦術的役割が、今のミランが抱える「崩しの局面のアイディア不足」という問題をある程度解決し得るものだからです。


 というわけで今回は、チャルハノールのこの試合での実際のプレーを振り返っていくことで、如何にして彼がミランの勝利に貢献したか、延いては今後もミランに貢献し得るかを見ていこうと思います。


プレーポジションについて


 まず始めに、この試合のチャルハノールはピッチ上のどの場所でボールに触れたのかを見ていきます。


0チャルハノール タッチ

 こちらがWhoScoredの計測した彼の前半のボールタッチポジションです。



チャルハノールフロジノーネ前半タッチ

 そしてこちらが前節のフロジノーネ戦における前半のボールタッチポジション。


 2つを見比べると、SPAL戦のチャルハノールはセンターサークル付近で頻繁にボールを受けていることがわかります。


 以上のデータと、実際に試合を観た僕の見解を合わせるとこうなります。
この試合のチャルハノールは「央の低い位置でボールを受けて配給し、まるで司令塔のようにもプレーした」ということです。


 「ようにも」と表現をぼかしたのは、まさに司令塔(ピルロやシャビ)のようにゲームをコントロールした(できた)わけではなかったことと、チャルハノールの役割が多岐にわたったことの2つが理由です。


 なお、今回の「チャルハノールが司令塔のようにプレーした」このシステムを、当ブログでは「チャルハノール・システム(仮)」と名付けました。名前が安直過ぎるというツッコミには対応しかねますのでご了承ください(笑)

それと「(仮)」と付けた理由についてはこの記事の最後に説明します。




実際のプレー ①組み立て時に下がって2ボランチを形成


 それでは実際に、チャルハノールがこの試合でどのような戦術的役割を持ってプレーをしていたのか映像付きで説明していきます(映像の引用元はいずれもDAZN『ミラン vs SPAL』より)。。

チャルハノール2ボランチ



 こちらは4分の場面。まずここで注目していただきたいのが、チャルハノール(左インサイドハーフ起用、赤線で図示)とバカヨコ(アンカー起用、青線で図示)の距離が近いこと、そして2ボランチのようになっていることです。

 ただ実際に2ボランチだったわけではなく、ビルドアップ~組み立ての段階でチャルハノールが下がってきてボールを受ける。その結果として2ボランチのようになっているということです。

 通常の2ボランチとの違いは、前線から下がってくるため相手のマーカーが付いて行き辛く、結果的にフリーになりやすいという点ですね。

 この試合のSPALは中盤で5-3-2のミドルブロックかつ純粋なゾーンディフェンスだったため、中盤がチャルハノールの下がる動きにマンマーク気味にして付いていくことはほとんどありませんでした。そのため上記のシーンのようにフリーでボールを受けることが出来ていましたね。


 こういった動きの最大のメリットは、やはりビルドアップ~組み立てのフェーズが安定するという点でしょうかね。特に相手がハイプレスをかけてくるチームの場合、この下がってボールを引き出す動きは非常に重要になってくるでしょうね。

 ちなみにこのシーンでは、図示しているように前線に張るケシエへとハイスピードの縦パスを通し、相手の中盤のブロックを完全に無力化しています。




実際のプレー ②右サイドへのロングフィード


 この試合、少なくとも2回は観られたスソ(黄線で図示)への正確無比なロングフィード。組み立て~崩しの局面を一気にすっ飛ばす素晴らしいプレーです。

チャルハノールロングフィード


 相手が守備ラインを整える前に素早く縦に展開することにより、相手は後手に回らざるを得ず、こちらとしては決定機に繋げやすくなります。

 これこそが最初に述べた「ミランの崩しの局面におけるアイディア不足をある程度解決し得る」チャルハノールの非常に重要な戦術的役割の1つです。

 要は「引いて守りを固める相手を崩せないなら、相手が守りを固める前に崩せば良いじゃない」ということですね。

 このプレーが平然とできるのはミランではチャルハノールだけですからね。昨季のガットゥーゾ・ミランはこういった形がメイン攻撃の1つとしてあったのですが、なぜか今季はポゼッションサッカーに傾倒してこういった縦に速い展開は中々見られませんでした。

 今後も継続的にやってくれると嬉しいのですが…。



実際のプレー ③前線への飛び出し

 上記に挙げた、この試合におけるチャルハノールのプレーポジションをもう一度参照します。

0チャルハノール タッチ

 このデータを見ると、彼は組み立てに参加した後は積極的に前線に上がってボールを受け、フィニッシュに絡もうとしていることがわかります。

 実際、この試合のチャルハノールのシュート数は「6」。チームトップの数字ですからね。後はシュート精度が上がれば(もとい戻れば)申し分ないのですが…。
 
 

実際のプレー ④バカヨコとのポジションチェンジ

 前半の終盤からちょくちょく見られたのが、バカヨコとポジションチェンジしてアンカーポジションに移るというプレー。

チャルハノールアンカー1


 相手がほとんどプレスをかけてこない場合に有効な手段ですね。純粋な展開力という面ではチャルハノールはバカヨコより遥かに上ですからね(一方、プレス耐性が低いので、ハイプレスをかけてくる相手にはかなり危険だと思いますが。)。

 ちなみに、これにより前線に上がりバイタルエリアに侵入したバカヨコが、ケシエからのクロスを受けてフリーでシュートを打ったシーンも印象的でした。
 


…以上が、チャルハノールのこの試合(の前半)における具体的プレーと戦術的役割でした。



チャルハノール・システム(仮)を支える名脇役

 この試合でチャルハノールと中盤を形成したバカヨコとケシエですが、2人の役割もチャルハノールのパス精度を活かすために非常に重要なものでした。
 特にバカヨコ。彼の存在はチャルハノール・システム(仮)の存続延いては発展に必要不可欠なものです。



バカヨコの役割

 彼がこのシステムにおいて務める(今後務め得る)役割は大きく分けて2つ。1つはチャルハノールの守備力を補うことです。

 チャルハノールは運動量もあり守備にも献身的な選手ではあるのですが、フィジカルが比較的弱いのでタックルやボール奪取が上手くない。その上空中戦も弱い。
 そのため(実質)ボランチなどで起用すると守備時に相手に押し込まれてしまうリスクが極めて高くなります。

 事実、試合途中からカラブリアと一緒に2ボランチで起用されたフィオレンティーナ戦は完全に押し込まれましたからね。そして失点。


 一方のバカヨコは、もはやセリエA屈指といっても過言ではないボール奪取能力、及び無敵の空中戦を誇ります。
 
 ですので、仮にこの2人による2ボランチ形成中に嫌な形でボールを失いカウンターを食らっても、ある程度なら彼が何とかしてくれるでしょうね。


 もう1つの主な役割は、チャルハノールへといい形でボールを供給すること。
 様々な方法(敵マーカーを引き連れてフリーランすることでスペースを作るなど)が考えられますが、バカヨコだからこそできるプレーとして「強引な縦へのドリブルで相手を引き付けてからのパス」が考えられます。

バカヨコドリブル


 例えばこのシーンではバカヨコがフィジカルを活かしたドリブルで強引に縦へ持ち出し、敵を3人引き付けたところで脇にいるチャルハノールへとパスを出そうとしました。

 惜しくもここでは相手に当たってパスカットされてしまいましたが、仮にパスが通っていればチャルハノールが中央でかつフリーで前を向くことが出来ていましたし、かなり効果的なプレー選択だったと思いますね。

 余談ですが、この試合のバカヨコのドリブル成功数はチームトップの「6」回でした。



ケシエの役割

 ケシエに期待される役割は、前線へと果敢に攻め上がってチャルハノールからのパスコースを作り出すことです。

 これまでの画像からも明らかですが、この試合のケシエ(緑線で示していた選手)は非常に高い位置を取っていました。システム表記でいえばイグアインと並んで4-2-4と言っても過言ではないかもしれません。

チャルハノールサイドチェンジ

 そんなケシエに対し、相手の3バックの一角である左CBはかなり警戒していたと思います。そして彼に対するマークを優先したがゆえに左WBの裏のスペースをカバーしきれず、結果チャルハノールからスソへのロングフィードを何度も許してしまいました


 つまり今回は、直接的なパスコースを何度も作り出したわけではありませんでしたが、ケシエは自身の動きでチャルハノールからスソへのパスコースを間接的に作り出していたということですね。



 おそらく、もう少しレベルが上の相手と対戦する際はよりバランスを重視したポジショニングを取るでしょうが、その時も持ち前の運動量を活かしたフリーランでチャルハノールのパスコースを積極的に作って欲しいと思います。




終わりに


 以上、ここまでSPAL戦前半に見られたチャルハノールの戦術的役割や彼中心の攻撃(「チャルハノール・システム(仮)」)の具体的内容、及び彼を支えた中盤の役割をそれぞれ説明してきました。


 さて、ここで棚上げにしていた「(仮)」と付けた理由についてですが、それは今後もこのシステムが使われていくかわからないからです。

 というのも、このチャルハノール中心のシステムが見られたのは前半のみで、相手のシステム修正もあった後半開始からはほとんど見られなくなりました。
 加えてミランがクトローネを投入してシステムを4-4-2に変えてからはチャルハノールがサイドに追いやられたため、完全になくなりました。

チャルハノールSPAL戦後半

後半からのチャルハノールのボールタッチポジションを見れば一目瞭然ですね…。


 ひょっとすると、前半のプレーも個々人が独自の判断で勝手にやっていて、それを勝手に僕がシステムとして拡大解釈しているという可能性もゼロではありません…(ケシエの高い位置取りは間違いなく指示でしょうし、チャルハノールからスソへのロングフィードを活かす戦術は間違いなく意図していたでしょうが。)


 さらに言うと、このシステムが同格ないし格上相手にも通用するのかといった疑問もありますし…とにかくまだサンプル数が少ないため何とも言えないんですよね。



 しかし、そういった事情があるにも関わらずこうして時間をかけてじっくり書いたのは、この3MF(特にチャルハノールとバカヨコの関係性)にとてつもない可能性を感じたからです。


 チャルハノールの局面打開力の凄さはこの試合の前半だけではっきりと見て取れましたし、バカヨコの恐ろしいまでのボール回収能力やキープ力も健在でした。つまり、お互いがお互いの長所を活かし・短所を補える関係にあります。

 後はチームの組織力を高めてチャルハノールの短・中距離のパス能力も存分に活かせるようになれば、今のミランの抱えるビルドアップの脆さや崩しのアイディア不足はかなり改善されると確信しています。


 要はチャルハノール中心のシステムを作って欲しいということですね。彼はそれだけのポテンシャルを持っていると思いますし、それによるデメリットを補える男(バカヨコ)も幸い今のミランには存在しますから。


 数週間後にはリーグ後半戦が始まります。おそらく開始からしばらくはこの3MFが見られるはず。
 今後どのような展開を見せるのか……通常の逆3角形型でいくのか、はたまたチャルハノール・システム(仮)の継続、、果ては発展して(仮)が取れるほど組織としての完成度を高めていくか…。


 注目していきたいですね。



長くなりましたが、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました!

[ 2018/12/31 13:02 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

フランチェスコ・グイドリンとは何者か ~偉大な実績とその戦術的特徴~


はじめに

 ガットゥーゾ監督の去就が騒がれ始めてしばらく経ちましたが、メディアはその後任候補として様々な名を挙げています。

 ユヴェントス、チェルシー、イタリア代表などを率いた経験を持つコンテや、元アーセナルのベンゲル、ミランOBにしてかつては日本行きも噂されたドナドーニなどなど…。


 その中でも、個人的に最も注目しているのがフランチェスコ・グイドリンです。



 最近セリエAを見始めた方や、セリエA自体にあまり興味のない方からすれば「グイドリンって誰?」「プレミアのスウォンジーですぐに解任された人」などといったポジティブではない印象を持たれているかもしれません。

 しかし、戦術家としての能力と育成の手腕に関しては紛れもなく本物です。断言します。


 今回は、そんなグイドリンの指揮していた当時のウディネーゼの成績・試合などを分析することを通じて、彼の凄さや戦術的特徴について明らかにしていきたいと思います。最後に、ミラン監督就任の是非について自身の見解を表明します。


 ちなみに記事の執筆に至った理由は主に以下の3点です。

 

 ・ミランの監督に就任する可能性があるから
 ・その偉大な実績や実力に比べて知名度が低いと思ったから
 ・個人的に大好きな監督だから(これが最も重要です!笑)





ウディネーゼでの偉大な実績①CL権獲得


 彼という人物を語るにはあまりに不十分ながら、彼の凄さを明らかにする上では十分なデータがあります。

 それが、ウディネーゼの過去のリーグ戦成績です。

09-10 15位
10-11 4位グイドリン就任
11-12 3位
12-13 5位
13-14 13位
14-15 16位↓グイドリン退任
15-16 17位
16-17 13位
17-18 14位




 グイドリンが監督を務めた4シーズン(10~14)とその前後であまりに大きな差があることがわかります。
 確かに、最終シーズンこそチームの核であるディ・ナターレの衰えや移籍した主力の穴埋めに苦戦したため好成績を残すことが出来ませんでしたが、それまでの3シーズンはクラブ規模や戦力を考慮すれば望外の結果と言えるでしょう。

 特に最初の2シーズンはCL権まで獲得していますからね(予選プレーオフで敗退したため、惜しくもCL本戦に進むことはできませんでしたが)。
 
 21世紀に突入してからはユヴェントス、インテル、ミラン、ローマ、ラツィオ、ナポリに独占されていた(もとい現在もされている)トップ3の座を唯一奪ったのがこのグイドリン・ウディネーゼです。
 

ウディネーゼでの偉大な実績②選手育成


 選手育成が非常に上手であるというのもグイドリンの特徴であり、彼の本当に凄いところです。
 
グイドリン1


 これは10-11シーズンのウディネーゼの主なスタメンとそのシステム(※あくまで1例)ですが、もうこれを見ただけでお気づきの方もおられるかと思います。

 そう、メンバーが凄いんです。詳細は省きますが、彼らの多くが数年後に上位クラブへステップアップを果たしています。

 もちろん彼らはウディネーゼに来た当初から凄かったわけではなく、ウディネーゼ(グイドリンの下)で成長を遂げた選手がほとんどです。というか加入当時はほとんどが無名選手でした。

 ちなみにこのシーズンの終わりにはサパタ、インレル、サンチェスという主力3人が抜けましたが、実力未知数であった新加入選手(ダニーロなど)が穴を埋めた翌シーズンは更に順位を1つ上げる(3位)サプライズを演出。

 グイドリンの育成能力(及び組織構築能力)、そしてウディネーゼの才能発掘能力にはただただ驚かされましたね…。



グイドリンの戦術について


 いよいよ、本題であるグイドリンの戦術の話題に移ります。

 まずはグイドリン・ウディネーゼにおいておおむね見られたプレー原則(※攻守におけるチームの指針・超基本的な約束事)について説明します。
 攻撃のプレー原則は「縦に速く、素早くフィニッシュに繋げること」、そして守備のプレー原則は「中央エリア、特にバイタルエリアでは絶対に相手を自由にさせないこと」であると言えるでしょうね。

 
 続いて、こういったプレー原則を実現するための手法すなわち戦術について解説…といきたいところですが、最初に断っておきますとグイドリンが固執している戦術はありません。

 「どういうこと?」と思うかもしれませんが、これがグイドリンのグイドリンたる所以です。

 すなわちグイドリンの戦術の最大の特徴は、ほぼ常に「対戦相手に応じて攻撃・守備の戦術が明確に変わる」ことです。
 試合前に対戦チームの長所・短所を徹底的に分析し、相手の「長所を潰す」守備と「短所を突く」攻撃を練り上げて試合に臨みます。

 ですから相手の特徴に応じてシステムも頻繁に変わりますし、試合へのアプローチも様々です。

・自陣深くに引いて守ることもあれば、ハイプレスを仕掛けたりすることもある(ハイプレスはかなり稀でしたが)。

・純粋なゾーンディフェンスで守ることもあれば、相手キープレーヤーをマンマークで徹底的に封じるなどして守ることもある(WBを相手SBにマンツーマンで張り付け、ビルドアップに参加させないなど)。

・サイドから執拗にクロスを上げることもあれば、素早く相手DFラインの裏へとロングボールを蹴り込むこともある(蹴り込む位置も試合毎に変わる)。



 
 以上のように、試合毎に(場合によっては1試合の中でも)様々な戦術を「明確に」使い分け、必要とあらば試合中にシステムをも変える。そしてその複雑な指示に忠実に応えるチームの組織力の高さと、それを作り上げたグイドリンの手腕

 これこそがグイドリンと彼のウディネーゼの最大の魅力であり、純粋な戦力から予想される成績を大幅に超えた結果を残した1番の理由でしょうね。

 



具体例 ~VSミランの場合~


 以上の説明だけではピンと来ない人も多いと思うので、実際に当時(10-11シーズン)のスクデット覇者ミランに対し、グイドリンがどのような戦術を用いて臨んだのかを具体的に見ていきたいと思います。

 当時のミランのシステムは4-3-1-2。さらに当時のミランにはイブラヒモビッチを筆頭に世界最高の選手たちがいましたので戦力差は明白でした(この試合ではネスタやピルロなど欠場者も多数いましたが。)

 そんな彼らに対し、グイドリン率いるウディネーゼはどう対抗したのか。箇条書きにすると

・システムは3-5-2

・中央突破を図る傾向の強いミランに対し、まず中央をガッチガチに固めて中央エリアで出来る限りプレーさせず、サイドへボールと人を誘導。

・ミランのシステム上、サイドの幅を使うのは主にSBの役割。ゆえにサイドを「わざと」使わせることでミランのSB(主に左SBのアントニーニ)のオーバーラップを誘発する。

・ボールを奪ったら即座にカウンターへと移行。ミランはSBが上がってしまっているためもろに鋭いカウンターを浴びる場面が頻発。

・攻撃ではクロスを中心に攻めることで、相手CBのボネーラの抱える1対1と空中戦の弱さを突く。

・これに対しミランがサイドをケアすれば、今度は空きがちとなったバイタルエリアからインレルが強烈なミドルシュートで襲い掛かる。




…といった感じですね。


 結局、この試合のスコアは4-4。スコアだけ見ると攻撃は良くても本当に守備が機能していたのか怪しいと感じるかもしれませんが、ミランのゴールはほとんどがイブラヒモビッチの破壊力、パトの決定力、カッサーノの創造力といういずれもトップクラスの個の力に大きく依存したものと言えました。

 イブラとカッサーノの相性の良さは少なくとも僕の知る限り歴代最高レベルのものですし、ウディネーゼ(もといプロヴィンチャクラブ)がどれだけ見事な守備を披露してもゴリ押されてしまうレベルの個の力だったと思います。それに疲労もあったでしょう。

 実際、カッサーノが投入されたのは69分で、その後78分から92分という終盤の時間帯に3ゴールが生まれましたしね。それまでのウディネーゼは攻守ともに本当に素晴らしい組織的なサッカーでした。


 このトピックの最後に、上記の試合のデータを参照します(以下の画像はいずれもWhoScoredより引用。)

bandicam 2018-12-28 18-07-04-605

ミランの平均ポジションを見ますと、やはり左SBのアントニーニ(77)が高い位置を取っていることがわかります。


bandicam 2018-12-28 18-07-15-011


 一方のウディネーゼですが、こちらはミランに比べ縦にも横にもコンパクトですし、しっかりと組織的に守っていた1つの証拠と言えるでしょうね。
 またこの画像だと26番のパスクアーレがやや浮いていますが、おそらくウディネーゼ側右サイドにミランを誘い込んだ際に反対側でカウンターに備えていたことが原因だと思われます。




グイドリンの欠点

 最後に。ここまで彼の素晴らしい部分のみに焦点を当てて紹介してきたわけですが、もちろん彼にも欠点は存在します。箇条書きにしますと

①組織の構築にかなりの時間がかかること
②相手にボールを持たされた時の打開力にやや欠けること
③上層部と何度か対立を起こしていること
④ ビッグクラブでの指揮経験がないこと




…といったところでしょうか。

 それぞれについて解説もとい弁解をします(笑)


 ①について。最終的に4位に食い込んだ10-11シーズンですが、実は開幕から4連敗スタートだったんですよね。
 もしビッグクラブでそんなことをすればメディアとサポーターからの大バッシングは間違いなく、最悪の場合は開幕早々の解任すら起こりえます。

 途中就任から何度かチームを立て直している実績があることからも、時間がなければどうしようもないというわけではないと思います。
 しかし彼の本領は時間がたっぷりあってこそ発揮されるでしょうし、十分な猶予を保証するべきでしょう。
 その分、組織が完成した際の威力は凄まじいですからね。


 ②について。ビッグクラブではボールを持たされる試合が多いですから、この欠点はビッグクラブを指揮する上では見過ごせません。
まぁしかしプロヴィンチャクラブとは戦力の質も量も違いますし、戦力さえあれば改善する可能性はあると個人的には思います。


 ③について。何度か上層部との確執により退任ないし解任されたことがあるのですが、これは主にパレルモの名物会長であるザンパリーニ氏との間で起こったことというのは考慮すべきでしょうね(笑)


 ④について。かつてのインタビューで語っていましたが、年齢の問題もありビッグクラブでの指揮にあまり関心がないそうですね。
 確かにプレッシャーやしがらみの少ないプロヴィンチャクラブで自身の辣腕を振るうのが性に合っているのかもしれませんが…。
 彼の実力であれば、もう少し上のクラブでも十分に通用すると思うんですけどね。





終わりに

 以上、ここまで当時のウディネーゼの成績・試合の分析を通じてグイドリンの凄さや戦術的特徴、及びちょっとした欠点を見てきました。

 これでも精選したつもりなのですが…とんでもない文量になってしまいました(笑)
 それだけ僕という男がグイドリンを崇拝しているのだと好意的(?)に受け取っていただけたら幸いです。



 正直のところミランに来る可能性は低そうですし、仮に来てくれたとしても上記に挙げた欠点を考えると成功することはかなり難しいとは思います。

 ですが大好きなクラブで大好きな監督が指揮を執ることを想像したらやはりとてつもなく嬉しくなりますし、もし実現したら狂喜乱舞するでしょうね(笑)




 ものすごーーーーく長くなってしまいましたが(間違いなく当ブログ史上最長記事)、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました!

 ちなみにもしも、「自分もグイドリン大好き!」「グイドリン良い監督っぽいじゃん」などという好意的な感想をお持ちになっている方がいましたら、コメントないし↓の「拍手」で意思表示していただけると大のグイドリンファンとして非常に嬉しいです。

 押しつけがましいお願いですみませんが、よろしければご協力をお願い致します!


[ 2018/12/28 18:43 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(2)

拙攻・得点力不足の最大の原因と監督の責任



はじめに;リーグ戦3試合連続無得点


 開幕から10試合連続失点などという不名誉な記録を残したことからも明らかなように、開幕序盤は守備に大きな問題を抱えていたミラン。
 しかし一方で攻撃は比較的機能していました(10試合中9試合で得点)。

 シーズンも中盤に突入した現在。相手の拙攻やバカヨコの覚醒、ドンナルンマの復調などによってクリーンシートを達成する試合もちょくちょく出てきた一方で、攻撃においてはリーグ戦3試合連続無得点(暫定)という不振に陥ってしまいました。


 では、序盤戦は比較的機能していた攻撃が上手くいかなくなったのは何故なのでしょうか…?



拙攻の最大の原因


 様々な要因はありますが、中でも最近の得点力不足の最大の原因を僕なりに説明してみると、「ビリア、ボナベントゥーラといった中盤やエリア付近で違いを作れる選手が長期離脱してしまったことで、攻撃の単調さに拍車がかかってしまった」ということに尽きるかなと。

 以下、もう少し具体的に説明します。


 ボナベントゥーラはイグアインともピッチ上で良い関係を築けていましたし、何よりここぞという場面での決定力の高さがありました。
 また、スソ以外で崩しの局面に大きく貢献できていた数少ない選手でしたね。


 ビリアのゲームメイク能力とミドルシュートがなくなったのも痛かったと思います。現在はバカヨコがビリアの不在を補って余りある守備力を見せてくれていますし、あの屈強なフィジカルを活かした強引な縦への持ち出しはビリアにはできない芸当でしょう。

 しかし、こと攻撃面における貢献度(ロングパスや縦パスの精度・頻度・タイミングなど)はまだまだビリアの方が上だと感じますし、最近のミランの攻撃(特に4-4-2システムの際)に単調な攻撃が続くのはビリア不在の影響が大きいでしょう。



 続いて「攻撃の単調さに拍車がかかってしまった」という表現について。
 点の取れていた当時もスソの個の力に依存していた試合は多かったわけですが、それでもイグアインのボールを受けに下がりに来るプレーとボナベントゥーラの前線への飛び出しといったそれぞれのプレースタイルの特徴を噛み合わせた戦術的な攻撃の形が確かにありました(この点については、ガットゥーゾ・ミランの戦術的特徴について語ったこの記事で詳述しているため、未読の方はもしよろしければご覧ください)。

 しかしボナベントゥーラの離脱に伴いそういった攻撃の形が1つ減ったため、スソに依存する割合が更に増えた(≒攻撃の単調さに拍車がかかった)ということです。




長期離脱の理由


 そもそもなぜ、彼ら2人は長期離脱を余儀なくされたのかと言われれば、それはガットゥーゾ監督による酷使の影響が大きいでしょう。

 ここでいう酷使とは、もちろんほとんど休ませず先発起用したという意味合いも含まれていますが、ここで強調しておきたいのはピッチ上における酷使です。


 ビリア、ボナベンが健在だったころのミランが固定的に採用していた4-3-3システムでは、両インサイドハーフが積極的にCBにプレスをかけにいく関係上アンカーポジションの両脇に広大なスペースを空けてしまい、そこを相手に使われるという試合が何度もありました(こちらの記事にて詳述しています。よろしければご覧ください)。

 広大なスペースの担当を背負わされたビリアはそのカバーに走り回り、両インサイドハーフも前線へのプレス→プレスバックに奔走するという形が非常に目立ちました。

 こういった形は最後まで改善されず、その上ほとんどの試合で(特にビリアは)先発起用・フル出場していたものですから、疲労が溜まりに溜まっていつか爆発するというのは明らかでしたね。

 彼らと一緒に酷使されていた(もとい現在も酷使されている)ケシエが健在なのは、ひとえに彼自身の抜きんでた「怪我耐性の強さ」によるものでしょう。

 はっきり言って彼の頑丈さは異常なレベルです。チームにとってとても有り難い存在ではありますが、彼の健在を根拠にガットゥーゾ監督のこの采配を擁護することはできないでしょう


 ビリア、ボナベンの代役が実質的に不在だったという汲むべき事情はあり、その点についてはチーム編成の問題もありますが、彼らに過剰な負担をかけていた上記の戦術的問題の解決が見られなかったのはガットゥーゾ監督の責任だと思います。




終わりに;運命の懸かった2戦と解任の是非


 ここ最近のチームの内容・結果の不振に伴い、再び解任報道が浮上しているガットゥーゾ監督。

 『Sky』によれば、次のフロジノーネ、SPALとの2試合が彼の運命を決めるものになると報じています。


 …残念ながら、この状況では解任も致し方無いですね。


 ここまで述べてきたように、攻撃の不振は結局のところ彼の采配ひいては戦術的引き出しの少なさによるところが大きく、この点以外にも戦術家としての彼には疑問を呈すべき点がいくつもあります。


 まぁフロジノーネ、SPALとの戦力差は明白ですから、ひょっとしたら個人技のゴリ押しで勝つなんてことも充分に考えられます。

 しかし…それでガットゥーゾ・ミランが続くことで、中・長期的に見てプラスとなるか(もっと言えばCL権を獲得できるか)は…チームの現状を踏まえるとかなり厳しいといえるのではないでしょうか。
 もし解任するとすれば、ウィンターブレイク前のこの辺りの時期がベターだと思いますしね。


 ただし個人的に気にかかるのが、監督の後任有力候補がドナドーニとベンゲルという点です。
 ビッグクラブでの指揮経験が皆無の前者と、セリエAでの指揮経験が皆無の後者……どちらもガットゥーゾ監督より遥かに経験豊かな指導者ではあるのですが、どうも上手くいくとはあまり思えないんですよね…。

 まぁ実際のところやってみるまでは分かりませんし、今の閉塞感を打開する監督交代自体には賛成です。



 いずれにせよ僕の主張は、もしガットゥーゾ監督が解任されるとしても、残念ながらそれは納得できてしまう判断だということですね。



非常に長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。





サッカーランキング

[ 2018/12/24 07:00 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(2)

ハカン・チャルハノールの苦境 ~不調の原因とその解決法~ 【本編】



 【導入】にて予告した通り、今回はチャルハノールの不調の原因をピッチ上の事象から探っていきます。

 具体的な手法としては、今季の彼のパフォーマンスが良かった試合と悪かった試合における様々な相違点を見ていくことで、彼のパフォーマンスを左右した(と思われる)事実を明らかにするというものです。


〇機械採点によるベスト試合とワースト試合

 そのために、まずは彼のパフォーマンスが良かった試合と悪かった試合を特定する必要があります。

 この点、僕の独断と偏見によって決めても説得力に欠けるため、ここでは機械採点の力に頼らせていただきます。

 そこでWhoscoredの選手採点によると、チャルハノールの採点が良かった試合ベスト3は…

サッスオーロ戦;7.9点(1アシスト)
ローマ戦;7.48点
エンポリ戦;7.27点




となっています(※チャルハノールが先発出場した試合のみを対象としました。また、相手との力関係を考慮した結果、デュドランジュ戦の採点は独自の判断により対象外とさせていただきました。)

 こうして見るとサッスオーロ戦が1番良かったように思われますが、1アシストをしている事実については大いに考慮する必要があると考えます。
 というのも、Whoscoredは得点とアシストをかなり高く評価する傾向があるように経験上感じるからです(厳密な採点基準については分かりませんが)。

 先日のオリンピアコス戦(CKからサパタのゴールを「アシスト」したものの、全体的なパフォーマンスはかなり悪かった)での採点が7.2点だったことを踏まえると、やはりこの考えは強ち的外れというわけではないと思います。

 ですので、動きの質という観点からするとローマ戦がベストだったのではないかと考えます(もちろんサッスオーロ戦が悪かったとは思いませんが)。



 続いてワースト試合について。こちらは…


ユヴェントス戦;6.14点
トリノ戦;6.26点
ベティス戦(2戦目);6.29点




となっています(※先発試合が対象。Whoscoredより)。




 以上の2つのグループの試合を見比べると、早速ある1つの相違点が浮かび上がります。
 それは採用システム及びチャルハノールの起用ポジションの違いです。

 上記の良かった試合においては3試合いずれも4-3-3の左ウィングで起用されていたのに対し、ワースト試合においては4-4-2の左サイドハーフ(ユヴェントス、トリノ戦)と3-5-2の左インサイドハーフ(ベティス戦)で起用されています。




具体的なプレーポジション ①ベスト試合の場合

 「それなら4-3-3の左ウィングでプレーさせれば万事解決!」かというと……残念ながらそれは違うでしょうね

 実際のところ、上記のシステムとポジションで起用されながらも精彩を欠いた試合はいくつもありましたから。


 そこで採用システム・ポジションだけではなく、先に挙げられた試合の内容についても少し詳しく見ていく必要がありそうです。

チャルハノール ローマ戦 チャートボード タッチ


 上記の画像は、ローマ戦におけるチャルハノールのボールタッチの場所を図示したものです(右攻め。Whoscoredより引用)

 この画像から、ローマ戦におけるチャルハノールはバイタルエリアや左ハーフスペースで頻繁にボールを受け、果ては右サイドにまで顔を出していることがわかります。

 ちなみにこの試合のチャルハノールのキーパス数は「7」。2位がイグアインの「3」であることを考えると驚異的な数字ですね。

サッスオーロ戦

 こちらはサッスオーロ戦における同様の画像です(今度は左攻め。Whoscoredより引用)。おおむね、ローマ戦と似たようなプレーポジションであることがわかります。



具体的なプレーポジション ②ワースト試合の場合


チャルハノール トリノ戦 チャートボード タッチ


 一方、こちらはワースト試合の1つと定義したトリノ戦における同様の画像(右攻め。Whoscoredより引用)です。

 ローマ戦の画像と比べると一目瞭然ですが、バイタルエリアでのボールタッチ数が明らかに少なくなっています。また右サイドでのオン・ザ・ボールも少ないですね。


ユヴェントス


 ユヴェントス戦での画像(右攻め。Whoscoredより引用)においても同様の傾向が見て取れます。



具体的なプレーポジション ③カリアリ戦の場合

 最後に、「4-3-3の左ウィングで起用されたものの精彩を欠いた」試合の1つの例としてカリアリ戦を挙げます。

カリアリ戦


 カリアリ戦におけるチャルハノールのボールタッチ場所を図示した画像(左攻め。Whoscoredより引用)がこちらです。
 これを見ると、上記の①ベスト試合よりも②ワースト試合におけるプレーポジションに近いことがわかりますね。



チャルハノールの長所


 つまり、「具体的なプレーポジション①~③」から導かれる結論として


・チャルハノールのパフォーマンスを左右している要素を考えるにあたり、本質的に重要なのは採用システム・起用ポジションではなく、ピッチの中央付近やバイタルエリアでプレーできているかどうかである

・4-4-2に比べれば、4-3-3の方が上記のようにプレーできる傾向がある




という2つが挙げられます。

 では、なぜ中央付近でプレーする頻度がパフォーマンスに直結するのか。当然それはチャルハノールのプレースタイルに起因しています。

 チャルハノールの特徴は何といっても多彩なパスです。短・中・長距離のパスを状況に応じて使いこなせる精度と視野の広さを備えています。
 そのため、中央付近でボールを持てばそれだけパスの選択肢が増える、すなわち彼の武器を存分に発揮できるということですね。

 また、ミドルシュートの上手さも彼の魅力の1つです。ペナルティエリア左隅からカットインして打つミドルシュートは昨季後半戦で頻繁に見られ、相手ゴールを何度も脅かしました。




〇結論 ➊不調の原因

 以上を踏まえると、チャルハノールの不調の原因も見えてきます。


・怪我人の続出、イグアインとクトローネを共存させたいといった事情から基本システムを4-3-3から4-4-2に変更する試合が増えた。

・そして、それまでの左ウィングよりも流動性が低く、サイドに固定されやすい左サイドハーフで起用されることで持ち味のパスが更に活かせなくなった。

・また、4-4-2システムの練度の低さ(主に2トップやボランチとの連携不足)により、サイドで孤立するシーンが目立つ(=パスの出し所がない)

・かつてミランに在籍していたデウロフェウやメネズのような選手が持つ圧倒的なスピードやドリブルテクニックはチャルハノールにはない。そのためサイドで孤立した際に打開する手段に乏しい。よってボールロストやパスミスが増えてしまう。

・ボールロストやパスミスが増えていくことで自信を喪失し、消極的なプレーが増える結果試合に及ぼす影響力が小さくなり、低パフォーマンスとなってしまう(チャルハノールが非常に繊細な人物であるというのはガットゥーゾ監督が何度も言及していることです)。





 以上が僕の考えるチャルハノールの不調の原因でした。簡潔に言うと「システム等の問題によりサイドで孤立する場面が増え、持ち味のパスを活かせなくなった。またボールロストも増え、その結果として自信を失い悪循環に陥ってしまっている」ということになります。

 これらは4-4-2の場合に顕著ですが、4-3-3であってもこういう形(サイド孤立→ロスト増→自信喪失)で不調に陥っていたと考えられます。


結論 ❷不調の解決法

 では、こういった不調を解決するにはどうすれば良いのでしょうか。
 やはり一番手っ取り早いのはシステムの変更でしょうね。

 個人的には4-3-3の左インサイドハーフ、4-3-2-1の左シャドー(4-3-3の左ウィング起用の際に実質的にシャドーになる形もありますが)、もしくは4-2-3-1のトップ下辺りが良いんじゃないかなと思います。

 ただし留意しておきたいのが、上で書いたようにシステム・ポジションそれ自体よりも、実際にどのように動き、どこでボールを貰い、周囲のどれほどの距離に味方がいるかが大事だということです。

 仮にトップ下で起用しても、その周囲の適切な距離に味方がおらずに孤立すれば相手DFに潰されるだけでしょう。

 逆にサイドで起用されても、昨季のように適切なタイミングで中央に移動してボールを受けることができれば活躍することができるでしょうね。

 結局のところは、味方選手との相互理解を深めることと適切なシステム(動き方などのディテールを含む)の成熟に尽きるのかなという気がします。



最後に


 これまで主にシステム上の問題について触れてきましたが、もちろんチャルハノール自身のコンディションが悪く、個人の責任によるミスも多いというのは決して見逃せません。
 決定機を逃したり、ノープレッシャー下であるにも関わらずパスミスをしたりといった場面も目立ちますからね。

 ですが、システム変更によりかなり割を食っている選手であることに間違いありませんし、起用法(単純なポジションという意味ではありません)さえ見直せば、昨季後半戦のように輝きを取り戻せる可能性は大いにあると言えるでしょう。

 何よりチャルハノールが復活すれば、前線へのパス供給能力の質的低さ・供給頻度の少なさや、セットプレーからの得点の少なさといった今のミランの抱える課題は劇的に改善されるはずです。


 年内に行われる残り4試合で自らの価値を証明して残留を勝ち取るとともに、リーグ後半戦ではミランのCL権獲得の起爆剤として大活躍してほしいと思っています。


Forza Hakan!


非常に長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。


[ 2018/12/18 18:00 ] 考察 選手 | TB(-) | CM(2)

ハカン・チャルハノールの苦戦 ~不調の原因とその解決法~ 【導入】



はじめに;ミランのチャルハノール その来歴


 大型補強を敢行して大勢の選手が加入した昨季のミランでしたが、その1人がハカン・チャルハノールです。
 移籍金約2500万ユーロでレバークーゼンから加入しました。
 
 正確無比なキック精度を誇る彼に与えられた背番号は「10」。ボヌッチやビリアと並び、ミラン新時代の中心選手としての活躍が期待されていたことは間違いないでしょう。

 そして昨季の彼はおおむね、そのような期待に応えられたと個人的には思います。
確かに、試合勘不足やレギュラーの大幅入れ替えによるチームの連携不足、さらにイタリアへの適応に時間がかかったこともありシーズン前半戦は精彩を欠きました。

 しかし監督がガットゥーゾに代わった昨季後半戦以降、チャルハノールは見事な復調を遂げて得点・アシストを量産。
彼の復活は、今季のミランがELに参加できた1つの要因でしたね。


 このような活躍から、昨季開幕前以上の期待を寄せられて迎えた(チャルハノールにとっての)今シーズン開幕戦。相手は強豪ローマでしたが、この試合で彼は卓越したパフォーマンスを披露。チームの2-1勝利に大きく貢献しました。


 しかし、それ以降チャルハノールのパフォーマンスは大幅に低下。デュドランジュ戦など良いプレーを見せる試合も時にはありましたが、全体としてみればお世辞にも納得のいくものではありません。

 最近はその低パフォーマンスもあってか移籍話が浮上。ライプツィヒをはじめ、ブンデス方面からの興味が噂されています。



復活のために


 確かに最近のパフォーマンスを考えると放出も止む無しかなと思うのも事実…。その放出により得た移籍金をウィークポイントである中盤の補強(セスクなど)に充てるという考えも理に適っています。


 しかし、個人的に特にミランでお気に入りの選手であるということもあり、感情的には放出してほしくないというのが僕の思いです。

 ですので、彼の復活を願って、次回以降からチャルハノールの不調の理由を探るとともに、どうすれば(どのように起用すれば)復調を果たせるかを僕なりに考えていきたいと思います。


 なお、不調の理由を考えるにあたって、今回はピッチ上の事象のみに焦点をあてていく予定です。例えば離婚騒動などのプライベートな理由も不調の原因の1つだと考えることもできますが、そういうのは対象外とします。



サッカーランキング


[ 2018/12/17 19:27 ] 考察 選手 | TB(-) | CM(0)

カラブリアのプレースタイルについて ~長所と短所~

  本日はミランの下部組織出身、期待の若手選手であるダヴィデ・カラブリアの誕生日です。おめでとうございます!



 今シーズンのカラブリアはここまで公式戦13試合に出場して1ゴール1アシストを記録。コンティが離脱していたこともあり、現在右SBの絶対的レギュラーとしてプレーしています。



カラブリアの長所

  これで終わるのもあっさり過ぎますし、せっかくカラブリアについて言及したので、僕の考えるカラブリアのプレースタイルもとい長所と短所を少し語らせていただきます。


 彼の良い所といって真っ先に思い浮かぶのは何といっても攻撃における積極性です。

 豊富なスタミナで頻繁に前線に駆け上がり、ウイングのスソを追い越して相手DFを引き付けることでスソの使えるスペースを作り出してくれます。
 時にはエリア内に侵入してゴールを狙うこともありますね。
 
  昨シーズンからコンビを組んでいることもあり、この2人の連携はかなり成熟されつつある印象です。
 カラブリアの存在は、スソが絶好調を維持している理由の1つでしょうね。


 そしてもう1つ個人的に気に入っているのが、ビルドアップ時の彼のプレースタイルです。

 基本的に彼はボール回しに積極的に関与するタイプであり、かつ相手のプレスに対してすぐにロングボールに逃げることなく落ち着いて冷静にプレーできる選手です(やや覚束ないシーンはありますが)。
 ガットゥーゾ監督の求める「後方から丁寧にボールを繋ぐ」というプレー原則にマッチした特長を持つ選手といえると思います。

 その証拠として、EL第2節のオリンピアコス戦における彼のスタッツを紹介します。
 この試合で彼はボールタッチ数103回を記録し、両チームで一番ボールに触れた選手となりました(WhoScoredより)。
 ちなみにミランで2番目にボールタッチが多かったのがサパタで84回です。結構な差がありますね。

 これからパスの精度や判断が上がっていけば更に強力な選手になれるでしょう。期待したいですね。


カラブリアの短所

 一方弱点については、やはり守備力の低さが挙げられます。

 しかし個人的に、アジリティと初速の速さを活かした純粋な一対一の守備は悪くないどころかむしろ良い方だと思っています(実際、先のオリンピアコス戦ではチーム断トツ1位のタックル成功数7回を記録)。確かに緩慢な時もありますが…。


 一番の問題は守備時のポジショニングでしょうね。
 中でもDFライン裏に飛び出してきた相手への対応や、相手に自身の背後に回られた時のマークが甘いシーンが散見される印象です。



 その他の短所としては、ファイナルサードでのシュートやクロスの精度・判断といった点でしょうか。凄く良いクロスを上げる時もありますけどね。



おわりに


 彼はまだ22歳になったばかりですし、成長の余地は十分に残されているでしょう。
 個人的に大好きですし、将来が本当に楽しみな選手です。


 コンティが実践復帰を間近に控え、アバーテがコンディションを上げてきている現状を考えると、今後の右サイドバックのスタメン争いは非常に熾烈なものになると予想されます。

 カラブリアには彼らと切磋琢磨してもらい、イタリアを代表するトップクラスの選手へと成長して欲しいですね。



サッカーランキング

[ 2018/12/06 20:20 ] 考察 選手 | TB(-) | CM(0)

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴 【後編】

 このシリーズも最終回です。ラストの今回は予告通り、ミランの守備における問題点を列挙していきたいと思います。

 前回までの記事を未読の方は、以下のリンク先より閲覧していただけると幸いです。

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴【導入】

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴【前編】

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴【中編】



 まずガットゥーゾ・ミランの守備を端的に評価すると「献身的でアグレッシブ。しかし時に無秩序」と言えるかと思います。

 チーム全体がコンパクトかつ集中している場合は持ち前のインテンシティの高さを活かして相手から自由を奪う一方で、組織的に守れていないシーンも散見され、その場合は相手に好き放題ボールを回されてしまいました。

 開幕から10試合連続失点(昨シーズンからの分を含めると16試合)という記録からも分かる通り、守備に関しては上手く機能していなかったというのがここまでの実情だと思います。

 では、具体的にどこが悪かったのか。これから見ていきましょう。


アンカーの両脇のスペースの管理不足

【前編】でも語りましたが、ミランの守備戦術の1つに「両インサイドハーフがプレスに飛び出す」というものがあります。

これにより、トップのイグアインが積極的に動いて体力を消耗することなく相手のビルドアップを妨害できるというメリットがある一方、インサイドハーフが飛び出すことでアンカーの両脇のスペースが大きく空いてしまうというデメリットがありました。

ガットゥーゾミラン守備2


 残念ながら、このデメリットに対する明確な対応策をミランは持っていなかったように思われます。

 片側のインサイドハーフだけが飛び出してもう一方はアンカーと横並びの関係になる4-4-2の形も時に見られましたが場当たり的で、明確な戦術として採用されたものではなかったかなと。

 実際のところ、このアンカーの両脇のスペースを使われてチャンスを作り出されるというシーンが多くの試合で目立ちました。

 中でもサッスオーロ、インテル、ベティスといった相手はこのスペースを徹底的に狙い、ゲームを完全に支配していましたね。

ベティス ミラン2

 上図はベティス戦のマッチレポートで使用したのと同じものです。
 ベティスの場合はこのようにしてインサイドハーフを釣り出し、それにより空いたスペースを使ってボールを前進させていました。



2ラインの連携不足

 サンプドリア戦からミランは4-4-2をスタートシステムに採用し始めましたが、このシステムでは2ボランチが基本的にDFライン前で横並びに位置するため先述のような構造的な弱点は無くなりました。

 一方で、付け焼刃なシステムだということもあってか、DFとMFの8人で構成される2ラインの連携不足が目立ちました。

ウディネーゼ ミラン2
これはウディネーゼ戦のマッチレポートにて使用した図です。ウディネーゼ戦は疲労からか、このようなシーンが特に見られました。 


 中でもこの2ライン間の連係不足が致命的となってしまったのが、サンプドリア戦における2失点目に至るシーンです。

ガットゥーゾミラン守備1


 このシーンではハーフウェイライン付近でボールを持っている相手に対し、中盤は前に出てボールを奪いに行く意思表示を見せる一方で、DFラインはかなり下がってしまっています。
 その結果として2ライン間に広大なスペースが生じてしまい、そのスペースでボールを受けた選手(サポナーラ)のアシストにより2失点目を喫してしまいました。

 さらに言うと、この場面では中盤の選手のポジショニングも悪い気がします。2ボランチのビリアとケシエの距離が近すぎるかと。

 これほどの悪いシーンはそう何度も頻発したわけではありませんでしたが、2ライン間のスペースを不必要に利用されてしまうという場面は多くの試合で見られましたね。



クロス対応とパスミス


 クロス対応の悪さ不用意なパスミスにより決定機を作られる場面というのもありました。
 インテル戦やキエーボ戦における失点がその典型ですね。

 しかしこれらは戦術上の問題というよりは、個人の判断・技術ミスによるものだと言って差し支えないと思います。

 そういうわけですので詳細は省きます。ただこの点に関する戦術上の課題を強いて挙げるとすれば、クロスを簡単に上げさせてしまうシーンが散見されることでしょうか。
 特にスソがウイングバックやサイドハーフとして起用された場合にこの傾向が顕著になるので、そこは修正して欲しいですかね。



…以上が、僕の考えるミランの守備における戦術上の問題点でした。



おわりに

 これまで4回に分けて、ここまでのミランの戦術的特徴を振り返ってきました。

 最後にミランの攻守に関する僕の見解と今後の展望をまとめます。

 まず攻撃に関しては、ファイナルサードでの相手DFを崩す局面における戦術は比較的機能していると思います。
 スソに多くを依存してはいるものの、彼とイグアイン、そしてインサイドハーフが絡む攻撃にはかなりの破壊力がありますね。
 その証拠に、今シーズンのミランはインテル戦、ユヴェントス戦を除く公式戦の全てで得点を挙げています。
 今後チャルハノールが復調を果たせば更に攻撃力が高まるでしょう。楽しみですね。

 攻撃に関する課題としては、やはりビルドアップの局面における安定感の欠如が挙げられます。
 ここを修正できれば攻撃だけではなく守備面においてもプラスになりますから、今後の改善に期待したいです。



 守備に関しては、今回詳述した通りまだまだ多くの課題が残されています。
 セリエAで安定して勝利を積み重ねるには堅守が必要不可欠です。出来る限り早く修正してほしいところです。


 しかし今のミランは異常ともいえる怪我人の多さに苦しんでおり、これによりシステムすら自由に決められない位に悲惨な状況となっています。

 この状況で内容まで求めるのは流石に酷ですから、まずはどんな酷い内容でも良いので結果だけは残してもらいたいです。

 そして、冬の新加入選手や怪我人が復帰する頃には上記の課題をクリアしてもらい、盤石で安定感抜群なミランを見せてほしいと思います。

 リーグ中盤戦以降のミランにも注目していきましょう!


 随分と長くなりましたが、このシリーズを最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。



サッカーランキング

[ 2018/11/22 23:22 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴 【中編】


 今回は予告通り、攻撃の局面において見られたミランの攻撃パターンについて語っていきたいと思います。

 続き物ですので、前回までの記事を未読だという方は以下の記事を先に閲覧していただけると幸いです。

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴【導入】

ガットゥーゾ・ミランの戦術的な特徴【前編】



イグアインのスペースメイクとインサイドハーフの飛び出し

 ローマ戦を中心に見られた攻撃の組み立て~崩しの局面における形としては、トップのイグアインが(時には相手マーカーを引き連れながら)積極的に下がってきてボールを引き出し、崩しの起点として機能するというものがあります。

ガットゥーゾミラン 攻撃1


ガットゥーゾミラン攻撃2


 また、その派生形として、そのイグアインが空けたスペースにインサイドハーフのボナベントゥーラないしケシエが飛び出していくというのもありました。

ガットゥーゾミラン攻撃3


ガットゥーゾミラン攻撃4


 このメカニズムの採用には、上記3選手のプレースタイルに依るところが大きいでしょう。


 イグアインはDFライン上での駆け引きを特長とする典型的なストライカーというよりは、積極的に下がってきてボールに触ることを好む選手です。
 また、ゴール前ではヘディングに飛び込むことには消極的で、むしろ一歩下がって(それこそエリア外で)ボールを受けようとするシーンも多々見られます。

 一方インサイドハーフのボナベンとケシエですが、両者ともにビルドアップに積極的に関与するタイプというよりは、前線への飛び出しに特長のある選手です。
 特に前者はエリア付近でのチャンスメイクやエリア内に飛び込んでのシュート、後者はエリア近くまでを短時間で走り切る圧倒的なスプリントを持ち味としています。



 つまり、先に挙げた崩しのメカニズムは上述の3者の特徴(特長)を上手く噛み合わせ、組織の中で機能させようとして出来たものだといっても良いと思います。


 こういったトップと中盤の関係性は上述のローマ戦の他に、相手のプレスが緩かったジェノア、ウディネーゼ戦などでもよく見られました(後者の2つの時は4-3-3ではありませんでしたし、メンバーもこの3人ではありませんでしたが)。



ウイングのハーフスペース活用

 近年のサッカー界では「ハーフスペース」という概念が広く浸透し、重要視されるようになっています。
 念のため説明しますと、ハーフスペースとは「ピッチを縦に5分割した際のインサイドレーン」を指す戦術用語です。

ガットゥーゾミラン攻撃5


 そして最近は多くのチームがこのスペースの活用を目論んでいます。


 もちろんミランもその1チームです。
 崩しの局面においてはリカロド、カラブリアといったSBがサイドを攻め上がり、スソ、チャルハノールの両ウイングがハーフスペースへと移動。1トップのイグアインやインサイドハーフとの距離を近くし、ワンツーパスなどによるコンビネーションを活かして突破を図ります。

 しかし、このスペースを活かせない時のミランはかなり単調なサイド攻撃に終始してしまっていましたし、その際にはイグアインが中央で孤立するといった事態に陥りがちでした。そして残念ながらそういう場面は多かったと記憶しています。

 また、左サイドのチャルハノールがローマ戦を除くほぼすべての試合で本調子でなかったこともあり、ファイナルサードの局面においてはスソの個の力に多くを依存していた試合もかなり多かったですね。

 
スソを活かす2つの方法

 となれば、チームとしてはスソがファイナルサードの局面において存分に力を発揮できるようにする必要があります。

 その点については、ミランは守備免除とSBの動きにより実現させていたかと思います。

 前者については文字通り、守備にはあまり積極的には参加せず、攻撃のための体力を温存すると共にカウンターに備えるというものです。
 これは過密日程に突入してから特に顕著になっていたかと思います。


 そしてより重要なのが後者の「SBの動き」です。具体的な動きとして、SBがスソの前に飛び出していくことで対面のスソのマーカー(主に相手SB)を引き付けるというオーソドックスな動きがまず挙げられます。


 また下図のように、SBが高い位置を取ることで相手のSBを予め前に飛び出させない(飛び出した場合はカラブリアがフリーになるため)ようにすることで、スソが後方からフリーでボールを受けられるようにするというメカニズムも見られました(アバーテがSBを務めるときにも良く見られたコンビネーションだったかと思います)。

ガットゥーゾミラン攻撃6


以上のような形でスソを比較的自由にさせ、彼のキレキレのドリブル突破からの高精度シュート・クロスで得点を量産しました。
リーグ戦におけるここまでのミランの総得点が21。そしてスソの成績が4ゴール8アシストであることを考えると、彼がどれほどチームの得点に絡んでいるかが良く分かりますね。




…以上が、僕の考えるミランの攻撃の局面における具体的な攻撃戦術でした。

 ラストとなる次回は守備の局面における戦術、もとい問題点について分析していきたいと思います。


最後まで読んでいただきありがとうございました。



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[ 2018/11/20 00:31 ] 考察 戦術 | TB(-) | CM(0)